炭酸ジュースと缶コーンスープ
お題小説一回目です
学校が終わり現在下校中。カシミアのマフラーを巻いて歩く。
この道を通るのは初めてなのである。昨日自転車パンクしちゃったから仕方なくなのである。
「ケヤキの並木道」なんて洒落た名前だが、冬なので葉はほとんど落ちてしまっていた。
落ち葉ってちょっと切ない。
まあ、それ以上の感情は特にわかないんだけれども。
鼻歌でも歌ってお気に入りの場所に歩く。
私はあまり歌が得意ではない。だから鼻歌。
これはたぶんケータイのCMソングだったっけ、あれ、パン屋の宣伝ソング?どっちでもいいや
目的地の公園に着いた。私はいつも一人で帰っているのでここでだらだらするのが習慣になっている。
運動神経なんて皆無だし、絵の才能とかは生まれた頃からなかったから帰宅部所属。
天は二物を与えずなんて言うけど神様は一物すらくれない。ジーザス!
『公園』と名付けられてはいるけど遊具はそこまでない。
広めの芝生とベンチが3つほど置かれているだけ。本当に公園と言えるのか。
そういえば朝から何も飲んでなかったことを思い出した。
朝食はパンだけ掴み取って登校したし、昼食は次の授業が移動教室だったので時間がなくてそんなに食べていない。
「喉乾いたなあ・・・」
確かここには自動販売機があったはず。公園通い歴2ヶ月の自分の記憶力さすが。
座り心地のいいベンチを立つのは少しめんどくさかったけれど、これも飲み物のためだ。
ベンチから芝生を横切る。芝生を踏みながら歩道側に向かうとさくさくと乾いた音が聞こえた。
ただいま自販機前到着午後4時48分。実質歩いて一分もかかっていないがあえてつっこまない方向で。
気分的に紅茶が飲みたい気分だった。あったかいミルクティーにしようと考えながらカバンから財布を出す。
財布の中にはちょうど120円入っていた。なんだかラッキーな気がする。気がするだけ
お金を入れてミルクティーを探す。
「えーと・・・あったか~いで・・・んーミ、ミ・ル・ク・ティー、ミル」
「なにしてんの」
「うわっ!?」
後ろからいきなり声が聞こえた。びっくりしたのと同時に手元からピッという電子音。嫌な予感がする
案の定私は別の飲み物を買ってしまったようだった。しかも冷たい炭酸飲料。ついてない
「あれ、この季節に冷たいの飲むの?寒くね?」
「誰のせいだと思って・・・」
文句を言ってやろうと振り向いたら、それは学校の先輩だった。
「・・・るんですか」
「あ、怒ってる?びっくりした?(笑)」
「蹴りますよ」
「ごめんごめんw道通ってたら三浦の顔が見えたもんでさ、寄ってみた」
「ストーカーですか、あまりいい趣味だとは言えませんね」
「相変わらず手厳しいなー。やっぱ怒ってるだろ」
「当たり前でしょう!これ!私炭酸飲めないんですよ?しかも冷たいし」
「じゃあくれよ」
「ただであげるわけないでしょう」
「じゃあ俺が他の奢ってやるよ」
「まじですか!!!!」
「おう、一気に輝くんだなお前ー」
そう言って先輩は適当に飲み物を選び私に手渡す。
「ほら」
「これは・・・」
「見てのとおりコーンスープです☆」
「コーンスープ・・・」
「き、きらいだった・・・?」
ほんとはミルクティーが飲みたかったはずだった。
何も聞かずに勝手に買った先輩に多少はイラッとするべきなのかもしれない。
だけどなぜだが、嬉しかった。とても。
「私・・・缶のコーンスープってコーンがなかなか出てこないからきらいなんですよねー。飲むけど」
「飲むのかよ!」
「てへぺろ」
「あ、あとですね先輩」
「んー?」
「明日も公園来てください」
「なんで!?」
「(ミルクティー代です)なんでもないですよ」
「まあ、暇だからいいけどさ」
「暇人ですね」
「うるせー!」
「あはは」
「じゃあ、また明日、先輩」
「おう、またな三浦」
先輩は片方のポケットに炭酸ジュースを入れながら、曲がり角にすいこまれていった。
家まで私ひとり。寒空に呟く。
嬉しそうな声で、楽しそうな顔で。
「・・・あー、コーンでてこないや」