【3】打ち明ける勇気
*** 登場人物紹介 ***
◆荒木希美……訓練校1年。趣味はロリィタ衣装を作ることだが、自分が着ても似合わないのがコンプレックス。都外の専門学校に行き、ファッションブランドを立ち上げるのが夢。
◆猪狩美咲……希美のクラスメイト。背が低く、栗色の三つ編みがチャームポイント。煌桜の御使だが、周りには秘密にしており、普通の少女として学校生活を送る。
◆志田芽琉菜……希美のクラスメイト。都議である父親の権力を振り翳し、マウントを取りたがる。
時は過ぎ、お茶会の当日がやってきた。
希美はクローゼットを開けたまま、もう何十分も固まっていた。
(どうしよう……結局、お茶会のこと、断れなかった……本当に、この服で行くの?)
美咲は学校で顔を合わせる度に参加を懇願してきて、通信機には毎晩のように連絡が飛んできた。
猪狩家は名家の中でも武闘派で知られている。美咲の兄も、煌都で片手に入る実力者だ。断ると、何か物理的な報復をお見舞いされるかもしれない。そう思うと、到底誘いを断ることはできなかった。
部屋の外から、母の声が聞こえてくる。
「希美ちゃーん、大丈夫〜?もう出る時間じゃないの〜?」
「大丈夫ー!もう出るから!」
2年前に購入した、地味なワンピースに手をかける。
(志田さんとか、他の女の子もいるんだよね?猪狩さんはまだしも、他の子には絶対馬鹿にされるもん……)
しかし、希美の写真を見た時の、美咲の顔が思い浮かぶ。
『それ、希美ちゃんだよね?かわいい〜!モデルさんやってるの?』
『わぁ、かわいい〜!お人形さんみたい!』
(あんなこと、初めて言われた……。私は……!)
***
「じゃあママ、行ってくるね」
自作の、ピンクのロリィタ衣装。革のブーツを履き、白いレースがあしらわれた日傘を手に取る。
母が、心配そうに見送る。
「希美ちゃん、着替えは持たなくていいの?本当に大丈夫?嫌な思いをしたら、すぐに帰ってくるのよ?」
「ママ、心配しすぎだよ。同級生のお家にお邪魔してくるだけだから。じゃあ、行ってくるね」
ドキドキする胸を抑え、希美は家を出たのだった。
***
昼下がりの空の下、日傘でなるべく視界を隠しながら、足元を見て歩く。大きな自分の姿は隠せなくとも、せめて周りからの好奇の視線は隠せるように。
(あー、どうしてヒールのあるブーツにしちゃったんだろ……これが一番お洋服には似合うんだけど、余計に背が高くなるし、歩きにくいし……)
希美はふんわりとした袖をまくり、手首の通信機を確認する。
(このペースで歩いてたら、時間に間に合わない……猪狩さんに連絡しておこう)
遅れることを詫びるメッセージを送り、再び歩き出す。
(私はまだ歩けなくもない距離だったけど、みんなはどうしてるんだろう?みんな、ご近所さんなのかな?)
履き慣れないブーツのせいで、歩幅は狭い。ちょこちょこと懸命に歩を進める希美なのであった。
数ある作品の中から選んで下さり、ありがとうございます。
物語の行く末を、最後まで見守って頂けますと幸いです。




