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窓際騎士レリアの捜査記録  作者: スライム小説家
「終幕」

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30/33

30話

 ──帝国一の女優、アコナイト・ツォーンに会える。

 レリア達はアコナイトという人物自体全く知らなかった。が、それでも多くの人が劇場に押しかけている現状から、相応の有名人であることは分かる。


(これだけ人気がある女優なのだ。会えるならば、会ってみたい気持ちもあるな)


 レリアにそんな好奇心が、ちょびっと芽生えた。そう思ったのはレリアだけではないらしい。オルレア、フリージアは強い関心を示したようだった。


「え、会えるんスか? 有名人には会ってみたいっス! めっちゃ自慢出来そう!」

「仕事は異なるとはいえ、そのアコナイトさんは帝国一にまで登り詰めた成功者ですよね。後学の為に色々お聞きしてみたいかも……」


 そんな2人に水を刺すように、レリアは待ったをかけた。


「そもそも、帝国一の女優と、そう簡単に会えるのか?」

「まあ、普通は会えないと思うけど……ボクが頼めば、おっけーしてくれるかなって」


 ベリルの話通りならば、アコナイトは帝国一の女優だ。それほどの人気ならば当然、そのスケジュールは多忙を極めるだろう。そんな相手に、頼むだけで面会してもらえる……?


(ただの馬鹿なのか、そうでなければ……)


 そこまで考えて、レリアは問いかけた。


「君とそのアコナイトは、どういう関係なんだ?」


 するとベリルは、満面の笑みを浮かべてこう言った。


「ただのファンと人気女優。……昔はいろいろあったけどね」

「その話、聞かせてもらおうか。どういう経緯で騎士の君と帝国一の女優が知り合ったのか……とても興味がある」

「別に、大した話じゃないんだけどなぁ」


 そう言うと、ベリルは少しずつ当時のことを語りだした。




「三年前。まだアコナイトが無名の役者だった頃から、ボクは彼女の大ファンだったんだ。彼女の悲しみと怒りの演技に魅せられてね」

「ほう。キミがまだ騎士団長になっていない頃からか」

「うん。でもその頃のアコナイトは稼げてなかったらしくてね。昼は飲食店で働いて、夜は役者として劇に励んで……睡眠すらまともに取らずに頑張ってたんだって」

「めっちゃ大変っスね、それ……私がそんなのしてたらすぐに倒れちゃいそうっス」


 それを聞いて、フリージアは体をぶるりと震わせる。サボり大好きな彼女にとっては、寝る間を惜しんで働きづめの生活は何が何でも受け入れがたいものなのだろう。


「皆そうだろうね。実際、ある時倒れている彼女が見つかったんだ」

「だろうな。そんな生活は人間には到底無理だ」


 レリアがそう言うと、オルレアがフォローするように口を挟む。


「でも良かったじゃないですか。まだ過労で倒れるだけで済んで……」

「それが、過労で倒れた訳じゃなかったんだ」


 え、とオルレアはベリルを見る。ベリルは当時を思い出したのか、痛ましそうに語った。


「背中に凄く重い傷を負ってたんだ。しかも、ほぼまともな治療もされていなかった」

「……何だと?」

「そのせいで、傷から命にかかわる病気にも感染してて……治療しようにも、彼女にはお金が無かった」


 背中に重傷、重い病気、そして治療する金もない。そうなったら、普通はもう助からないだろう。だが現に、アコナイト・ツォーンという人物は生きている。

 レリアはふと、一時期ベリルがやたらと奢ってくれと言ってきたことを思い出した。


「……そういえば三年くらい前、やけに君が奢ってくれと頼んできた時期があったな。あの時は何か変なことに金を使ったのかと思っていたが」

「うん。ボクが彼女の治療にお金を出したんだ。普通の治癒魔法使いでも治せなかったから、聖女にやってもらうしかなくて」


 となれば、ベリルがアコナイトに会わせてあげる、なんて言えてしまう理由も分かる。要するにベリルは、アコナイトの命の恩人なのだ。


「いやあ、聖女ってホントに凄いんだね。絶対痕が残るって言われてた背中の傷も、あっという間に治っちゃったんだ。高いだけのことはあったよ」

「やっぱ聖女ってすごいんスねー。私が会った時はあんまりそういう感じしなかったのに……」

「流石は聖女様。帝国一の治癒魔法の使い手なだけはあります。一度聖女様ともお会いしてみたいものですね」


 けらけらと笑いながら話すベリル。そんなベリルを見て、レリアは。


「……そういえばそういう奴だったな、君は」


 ちょっとだけ、笑みを浮かべた。

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