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窓際騎士レリアの捜査記録  作者: スライム小説家
「騎士」

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25/33

25話

 ローゼライ区担当隊の騎士団本部。そろそろ建て替えが必要なくらいボロくなってきたそこで、レリアはコーヒー片手に新聞を読んでいた。

 新聞の一面を飾る派手な見出し。そのタイトルは、『第七騎士団長の裏の顔!』である。


「……昨日もこの話題だったな」


 数日後。やはりと言うべきか、騎士団長の娘が自殺しようとした件は王都中の話題をかっさらった。それに伴い、ファウルハイトの黒い噂も注目を集めている。

 権力者相手に都合の良いように捜査を動かしているだとか、騎士団を私物化しているだとか、そんな話ばかりだ。

 その結果、第五騎士団がファウルハイトの捜査に動き、彼は逮捕された。

 それ自体は自然な流れでこそあるものの、レリアには妙な気持ち悪さがあった。


(いくら何でも、この件が広まってから捜査までがスムーズすぎる。そもそも噂の広がり方もやけに早かったような……)


 通常、ファウルハイトのような大物相手の捜査は動きが遅い。やはり大物相手だと騎士団側も腰が重いし、仮に捜査が進んだとて他の権力者からの横槍を警戒する必要もある。

 その点数日で逮捕まで至った今回は、異例な早さであった。

 予定調和。そんな言葉がレリアの脳裏をよぎる。まるであらかじめ定められた流れ通りに物事が動いているような……そんな感覚がレリアにあった。


(それに、襲撃事件の方は全く取り上げられないのはどういう事だ?)


 それだけファウルハイトの悪事に関心が向く一方、数多の暴徒達がファウルハイトの屋敷を襲撃した件は全く存在感が無かった。

 レリアが今読んでいる新聞にも、真ん中のページの端っこに記事がちょこんとあるだけ。他社の新聞にはそもそも載っていない事すらあった。


(幾ら何でも、あれ程衝撃的な事件がここまで注目されないのは……?)


 レリアがそんな事を考えていると、不意に手がにゅっと伸びてきて視界を塞いだ。それと同時に、背後から温もりが押しつけられた。


「だーれだ……っす?」


 耳元から聞こえる澄んだソプラノボイス。特徴的な語尾もある。レリアはこの悪戯をいつものようにフリージアの仕業だと思った。またか、と呆れながらもレリアは注意しようとして。


(はぁ、フリージアか……いや?)


 だが、取ってつけたような「っス」という語尾と、後ろから押しつけられた感触がその結論に違和感を抱かせた。


「……オルレア?」

「よ、よく分かりましたね、隊長」


 視界が一気に開ける。レリアが振り向くと、そこには驚いた表情のオルレアが居た。その後ろから、得意気にフリージアが現れる。


「だから言ったじゃないっスか、たいちょーなら絶対分かるって!」

「まさか本当にお分かりになるとは……声真似には自信があったのですが」


 がっくりと肩を落とすオルレア。レリアはそんなオルレアを慰めるように、彼女の技術を絶賛した。


「いや、確かにお見事だったよ。私も声だけならフリージアと間違えてしまっただろうね」

「声だけなら……ですか?」

「ああ。フリージアがいつも話すあの語尾が、どうも取ってつけたような言い方に聞こえてな。それに……」

「それに?」


 そこまで話すと、レリアは言い淀む。何か、言いにくい事がありそうな様子だった。

 その視線の先にはオルレアとフリージア、2人の胸元があった。一人前と言える歳のオルレアと、まだ幼いフリージア。その差は()()()ある。


「……なるほどっス」

「ははは……」

「……?」


 フリージアが不服そうな態度を見せると、レリアは少し気まずそうな表情を浮かべる。

 そんな中、1人だけ何も分からないオルレアは疎外感を味わっていた。


「え。それに、何なんですか? 隊長? フリージア?」

「オルレアは知らなくていいっスよ」

「純粋なままの君でいてくれ」

「本当に、何の話を……? 2人とも、教えて下さいって!」


 話を逸らすように、レリアは2人に問いかける。レリアはやけにそわそわしている2人を見て、何か用があるのは察していた。


「それで2人とも、何の用なんだ? まさかただ悪戯をしに来たわけじゃないだろう?」

「ああー、そ、それなんスけど。ファウルハイト団長が逮捕されたらしいじゃないっスか」

「らしいな。今回は第五の連中も妙に動きが早かった様だ」


 レリアは手元の新聞を放り出す。デスクの上にガサリと新聞が置かれた。唐突に、フリージアが口を開いた。


「あー……その、帝都に行かないっスか?」

「帝都? 何か用事でもあったか?」


 すると、フリージアはなんだか目を泳がせながら話し出す。


「……あー。そ、そのっスね。ちょっとフレイっちが心配なんで、様子を見に行かないっスか?」

「む、フレイか。確かに彼女のことは気になるな」


 レリアがそう言うと、オルレアもそれに同調する。


「そ、そうですね! それが良いですよ隊長!」


 だが、そう話すオルレアの声はどこか上ずっている。そしてどこかワクワクしているようにも見える。レリアは困惑していた。


(今日のオルレアは変だな。いつもならしない悪戯をしてみたり、やけに浮かれていたり。フリージアの方も、オルレアほどではないがおかしいし……)


 レリアは、壁に掛けられたカレンダーをチラリと見る。今日の日付を見ると、そこには謎の星マークと予定が書かれていた。


(第六の本部か……まあ、フレイを見に行った帰りに寄れば良いか。にしてもこの星マークは何だ? 何か他に用事でもあったかな……)


 レリアは少しの間考えるが、その答えが出ることはなかった。フリージアにいつまでも返事をしない訳にはいかない。考えることを止めたレリアは、手短に述べた。


「よし、では行こうか」

「了解っス! お、オルレア、さっさと行くっすよ!」

「は、はい! ただ今向かいますねっ!」

「……大丈夫か、2人とも?」


 やけに変な2人の様子に、レリアは少し心配だった。

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