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窓際騎士レリアの捜査記録  作者: スライム小説家
「騎士」

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24/33

24話

明日は投稿お休みです!

「貴方は…………娘さんの件は、申し訳ない」


 ファウルハイトとて、それが誰かは知っていたらしい。一言謝る彼に対して、アネモネの父は気にするなと言わんばかりに手を振る。


「あまり気にしないで下さい。結局あれは、親として……いや、この世に生を受けた人としての責務を果たせなかった私の問題なのです」


 いやにスッキリした顔で、彼はそう言った。それでもファウルハイトは態度を変えなかった。


「……私が捜査を中止したから、彼女は死んだ。言い訳するつもりはありません」

「それは違います」


 はっきりと、否定する。


「あれは神が私の罪にお与えになった天罰なのです。貴方は神の与えた罰を執行する代理人として、神に動かされたまでに過ぎません」

「……は?」

「あの娘は可哀想でしたが、徳を積みました。彼女は今は浄土で幸せに暮らしている事でしょう。私も再会したいのですが、罪を犯してしまいましたからね」


 理解できない理屈に、ファウルハイトは呆気に取られる。常軌を逸したその様子にレリア達も言葉を失っている。


「ですから私は、天に登る為には罪を浄化せねばなりません。善行……例えば、神の与えた罰を執行する代理人として」

「……」


 訝しげな表情を浮かべるファウルハイト。

 それを見つめるフレイは思考を巡らせていた。


(濁った、瞳。痩せすぎな体。あのおかしな様子……全部同じだ、あの時と)


 そしてそれは、レリアの方もであった。


(暴徒達は皆、異常な様子だったな。総じて皆、その体は痩せ細っていたし、眼も変だった……今思えば、彼も……)


 レリアが動き出した、その瞬間。


「ですから……貴方は死んで下さい! 神の罰です!」

「な……!」


 隠し持っていたナイフを取り出して、アネモネの父がファウルハイトを襲った。予想外の攻撃に、ファウルハイトは慌てて反応するが……


「くっ!」


 ファウルハイトが両手でナイフを持つ手を抑え込んだものの、飛び掛かってきた勢いのまま2人は激突する。そして、ファウルハイトは腰から後ろに倒れ込んだ。その目前にナイフが迫る。


「さあ、さあさあさあさあ! 神罰を受けよ!」


 レリアは止めようと走るが、遠すぎる。オルレアやローズも慌てて動き出したが、もはや2人は間に合わないだろう。フリージアは何やら魔法を撃とうとしているが、手間取っている様子だ。


(駄目だ、これは間に合わない……!)


 だが、動いていたのはレリアだけではなかった。







(あたしは、誰も守れなかった)


 彼女が思い返すのは2度の悲劇。1度目は、目の前で刺された母のこと。そして2度目は、自分に全てを隠して死んでいった親友の事。

 フレイは母の死に人生を狂わされ、そして親友の死で再起すら出来ないまま叩きのめされた。


(アネモネの事を思えば正直、今でも親父が憎い)


 その理由(ワケ)を知った今でも、怒りが収まりはしない。きっと彼女は一生憎み続けるだろう。


 それでも。


 それでも、ファウルハイトは彼女の父親なのだ。今や彼女にとって唯一の肉親で、そして彼女が騎士を目指すきっかけとなった憧れで。


 剣を抜いて、ただ、前へ。


(今度こそ……)


 剣先をまっすぐ伸ばす。かつては届かなかったその思いが……




「守ってみせる!」




 今度こそ、届いた。


「な……手が、手がああああああああ!」


 手を斬られて動揺するアネモネの父。フレイに遅れて、レリアが殴りかかった。


「とりゃああああっ!」

「ぐああああっ!」


 ばこん、と何かが凹むような音が辺りに響いた。

 レリアに続くように、他の騎士達も飛び掛かる。


「フリージア、確保しますよ!」

「御用、御用っスー!」

「離しなさい! これは神の思し召しで……!」


 あっという間に襲撃者は取り押さえられ、連行されていった。


「フレイ……」


 呆然とするファウルハイトに、フレイが歩み寄る。そして彼女はそのまま、手を差し伸べた。


「……親父、大丈夫か?」

「あ、ああ……」




(この娘は、強いな……)


 かつて何も守れなかった少女は、そこにもう居ない。レリアはフレイに、理想の騎士の姿を見たのだった。

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