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窓際騎士レリアの捜査記録  作者: スライム小説家
「騎士」

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13/33

13話

「隊長、どう思います?」

「……どう、とは?」


 オルレアの曖昧な問いかけに、レリアは思わず聞き返した。すると横からフリージアが口を挟む。


「決まってるじゃないっスか。あの男が脅迫状を送ったかどうかっスよ」

「ああ、そういうことか……」

「それで、どうでしょうか。やはり、あの方が犯人なのでしょうか……」


 オルレアの言葉からは、どうかアネモネの父が犯人であってほしくない――そんな思いがありありと読み取れた。

 レリアはオルレアと長い付き合いだ。彼女のことをよく知っている。オルレアは一見冷徹そうだが、こう見えて意外と情に弱いのだ。


 その不安を振り払うように、レリアはきっぱりと言った。


「最後の『恨んでいない』は、さすがにあり得ないと思う。だが同時に、犯行に走るほどの憎しみも感じなかったな」


 その言葉を聞き、オルレアはぱっと顔を輝かせた。一方でフリージアは、どうにも納得いかない様子だ。


「たいちょー、ホントにそうなんスか? オルレアっちに配慮してないっスか、それー?」

「オルレアっちって……あなたねえ! 私はあなたより階級が上なんですから、ちゃんと敬意を示しなさい!」


 レリアはふたりをなだめながら続けた。


「彼の怒りは、どちらかと言えば自分自身に向いていた。ファウルハイト団長に何かする気はないというか、それをする気力自体が残っていないように見えたな」

「えー、それはたいちょーの感想じゃないっスかー」


 なおも不満げなフリージアに、レリアは淡々と重ねる。


「では、切り口を変えてみよう。そもそも脅迫状を屋敷に置くこと自体、彼には不可能だろう?」

「へ?」

「ファウルハイト団長の屋敷の警備は普段から厳重だ。そのうえ二枚目の脅迫状が見つかったときには、さらに厳重になっていた」


 そこまで聞いて、フリージアはぽんと手を打った。


「そっか、そんな中で誰にも気づかれずに二度も屋敷に侵入するなんて、ふつーの人には無理っスね!」

「普通どころか、あの健康状態では激しい運動ができるかどうか……彼には不可能だ。間違いなくな」


 レリアが断言すると、フリージアは満面の笑みで親指を立てた。


「さすがたいちょーっス! よっ、天才、怪物、帝国の至宝、騎士団一の変人!」

「さ、最後のは褒め言葉なのか?……まあいい。ともかく、そういうことだから別の人物を疑うべきだろうね」


 レリアが話を締めると、オルレアが引き継ぐ。


「では、誰が脅迫状を送ったのでしょうか? そもそも、ローブの怪しい男は誰で、脅迫状と関係があるのでしょうか……」

「全然見当がつかないっスねー。外部からの侵入が難しそうだし、屋敷内部の人間っぽいんスけど」


 ふたりが頭を悩ませていると、レリアがぽつりとつぶやいた。


「……個人的に、怪しいと思う人物はいるな」

「えっ、そうなんですか?」

「誰っスかそれ! たいちょー、教えてくださいよー!」


 フリージアは教えて教えてと駄々をこねる。しかしレリアは首を横に振った。


「まだ確証がなくてな。論理的にはその人物が怪しいと思っているのだが、何かしっくり来ないというか……」

「推測でもいいから教えてほしいっスよー!」


 結局、レリアがその人物の名を口にすることはなかった。




 屋敷へ戻った後、レリアたちはいったん解散することにした。今ごろ二人は、フリージアお気に入りの店でステーキを食べているのだろう。


(ふむ、私も行けばよかっただろうか……)


 フリージア曰く、酸味の利いた木の実のソースが肉の脂とよく合っていて美味しいらしい。想像すればするほど、レリアもだんだんとお腹が空いてくる。


「……だめだだめだ。今は捜査が先だ。それに、ここにいるのがばれたらまずい……」


 レリアはいま、ファウルハイトの私室で彼について調べていた。ファウルハイトの人となりが分かれば、彼を恨む人物にも見当がつくのではないかと考えたのだ。

 しかしファウルハイトからは先ほど「出ていけ」と言われたばかり。当然、これも無断である。


(ステーキ、食べに行けばよかったな……)


 方や同僚と楽しくステーキ。方や他人の私室に無断侵入。どちらがいいかなど一目瞭然――まあ、その二択で後者を選ぶのがレリアなのだが。


(……別のことを考えよう。例えば、彼女が本当に脅迫状を送ったのか、とかな)


 脅迫状を送ったのは誰なのか。

 その問いに対して、レリアには一応の答えがあった。現時点で推測できる犯人像は、次の通りである。


・一枚目の脅迫状が丁寧かつ正式な書体で書かれていたことから、相応の環境で育っている

・屋敷への二度の侵入は現実的に難しく、犯人は屋敷内部の人間、あるいは屋敷に常にいても不自然でない人間

・二枚目の脅迫状から、犯人はファウルハイトと直接接触しているか、少なくとも彼の情報が容易に入る立場にある


 そして何より――ファウルハイト本人に強い恨みを抱いている。


 この条件すべてに当てはまり、なおかつ怪しい人物は――


『それなりの貴族教育は受けたけど……』

『今はフレイ様の護衛をしてるわ』

『あと少しで……あと少しで、捕まえられたのに……!』

『あの時は、すべてを壊そうかと思った』




 ──騎士、ローズ・シュヴァルツである。

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