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箱庭の物語  作者: 川崎 春
回想・後日譚
8/10

俺の物語1

視点は第二王子レオニスです。

 第二王子である俺・レオニスには出自に秘密がある。

 悋気の強いかつての母……王妃が夫である陛下の浮気を疑い、侍女に成り代わって様子を見守ろうとした際に何者かに部屋に連れ込まれたのだ。


 護衛がついては気づかれる、侍女が一緒では王妃だと気付かれる。そう言い張った母だが、護衛は当然離れてついていた。ほんの一瞬、角を曲がっただけで母は消え失せ、護衛は慌てて探し、時間が経つのを怖れて即救援を要請した。しかし手遅れで事は成された後だった。

 その男は未だに何者なのか分からないままだ。


 俺は陛下にとても似ているのだが、当時、城には国外へ王配として出された王弟が滞在していた。父と叔父は似ている。だから俺の出自は疑われたままだ。 

 俺は臣籍降下もさせられず、王宮で王子として当分過ごす様に命じられた。忙しいから助けて欲しいと陛下には言われたが、俺は出自のせいだと思い込んでいた。


 王妃の事は俺にはよく分からない。俺には一切関わらない。俺は余所行きの顔の王妃は知っていても、母としては、全く分からないまま成長した。

 先行きを不安に思っていた時に、公爵家のディアナに出会った。

「俺は居場所がない」

「私もですの」

 ディアナの語る公爵家は、俺の印象とは全く違っていた。

「どれだけ優しくされても、メイフィーとの差を強く感じてしまいます」

 美しい白磁の頬を、透明な涙が落ちていく。桃色の唇は悔しそうに曲がって閉じている。この時の美しさは死ぬまで忘れないだろう。俺は、彼女を妃にすると決めた。


 出来るか分からないが、俺が王宮に呼んであげればこの子は救われる。

 義母は王妃が忌み嫌っているシルフィ夫人だ。認めてもらうのは大変だろう。申し出るには、城で地位を確立せねばならない。だから陛下に相談しようと思った。

 実子ではないから、このまま除籍されて平民にされてしまうかも知れない。……それでも願い出た。


「いいよ」

 意を決して陛下に願い出ると、あっさりと言われた。

「い、いいのですか?」

「勿論。レオニスは私の自慢の息子だからね」

 自慢の息子?

 顔に出ていたのか、陛下は吹き出して言った。

「妃が攫われた事件の犯人は私だよ」

「……え?」

「あの人は何でもできると思い込んでいたから、お灸を据えたんだよ。『他の男にこんな事をされたら処刑だね』って。お前を見ると思い出すから逃げ回っているだけだよ」

 のんびりとそう言われて唖然とする。


「しかし、臣籍降下させないって」

「宰相からの情報で、隣国が危ないと聞いてね。忙しくなるかもしれないから残ってもらっている。王族の権限を持っている人間が少なすぎるからね。助けてよ」

 忙しいから助けて欲しいは本当だったらしい。


「隣国には、何かあるのですか?」

「色々とね。説明は大変だから後で資料を渡そう。とにかく……あっちでクーデターなんて起こったら、うちも困るから臣籍降下は頃合いを見てからだね」

 陛下は苦笑してから言う。ああ、俺は本当にこの人の息子なのだとストンと胸に落ちた。


「ところで、ディアナ嬢の何が気に入ったの?」

 そう改めて聞かれて、ディアナとの話をした。

「それ、本当の事かな?」

 言われてみれば公爵はとても立派な人だし、夫人は父の婚約者候補だった人だ。もしかして……知らない事があるのかも知れない。そう思うも、悲痛な表情で涙していたディアナを見たのは本当だ。

「ディアナ嬢がそう感じているのですから、そう思う部分があるのではないかと……思っています」

 陛下は酷く暗い表情になると、大きくため息を吐いた。


「そうだよね。好きな女の子は信じたいものだ」

「陛下?」

「かつての私も愛しい人の言葉を信じて、不幸の種を蒔いたのだよ」

 陛下は酷く暗い表情で話し始めた。

「恋愛は人の思考を鈍らせて……時に取り返しのつかない事を起こす」

レオニスは王族じゃない疑惑がつきまとっていたので、両親を陛下、王妃殿下と呼んでいます。脳内で王妃に敬称なしなのは、仕方ない事かと。

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