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箱庭の物語  作者: 川崎 春
茶番劇
1/10

私の物語1

ディアナ視点です。

 私の実母は私を産んだ後で儚くなった。どんな人なのかは分からない。その話は出来なかった。質問したいと思った頃には義母が私の母だったからだ。

 実母の事は幼い頃は全く気にならなかった。……シルフィは優しい義母で、父も優しかったから。

 しかし、その日々は妹のメイフィーが生まれて静かに終わっていく事になった。


 四歳下の妹。


 父の色を持ち、母にそっくりなメイフィーの誕生は、公爵家を大きな喜びで包んだ。

 そして父が私を抱き上げて言ったのだ。

「お前の妹だよ。……仲良くしておくれ」

 その時は素直に頷いた。


 その二年後、弟のカイルが生まれた。この子も色は母にもらって顔立は父にとても良く似ていた。

 跡取りであるカイルの誕生に、メイフィーの時以上に公爵家は盛り上がった。

 この時に父が家族の肖像画を描かせた。今もエントランスから見える正面に飾られているのだが……私だけが両親とも妹弟と似ていないのが分かる絵だった。


 実母の家は公爵家の寄子の伯爵家で、私はこの母方の祖母によく似ていると言う。

 公爵家に私が居る事で支援を受けて事業をしているからか、何も言って来ない。こちらから手紙を出しても返事も来ない。心の内を語る事も出来ず、逃げ込める場所でもなかった。


 見えない何かが私に絡みついていて、息苦しさが募っていく。


 両親はそんな心を知らぬまま、公爵家の長女として私を扱った。

 次女だからと甘やかされているメイフィーを見るのは辛くて、だんだん一人になる事が増えていく。

 メイフィーが話したそうに近づいて来るが、私は気づかない振りをして近づかない様になった。


 辛くても公爵家の長女として前を向く。私に出来る事はそれだけだった。

 だから必死に勉強して学園では上位の成績を収めていた。そんな私に縁談が来たのは学園を卒業する間際の事だった。

 宰相様の息子で、同じく公爵家のクリス様だ。

 将来、宰相になる事を目指しているお方となら、私は上手く行くと思って了承した。私は政策でも特に福祉に興味があった。異国の政策を学ぶために数カ国の言語も覚え、家に居づらくて通っていた図書館で本を読んでいた。

 交流の為の茶会やデートの先で話すのは、それらの事。彼は笑顔でその話を聞いてくれていた。

 しかし二か月後……


「申し訳ない。……あなたとの婚約を白紙に戻したいのだ」

「そんな……どうしてですか?」

「あなたの妹に恋をしてしまったのだ」

 そういえば、彼女もよく出かけていた。浮気していたのだ。

 酷い。許せない。

「分かりました。婚約はこちらから破棄します!」

 こんな年齢になっては婚約してくれる人なんていないわ。何でこんな事をするのよ!信じていたのに。


 酷くふさぎ込んでいると、花束が届いた。

『あなたの辛さが和らぎますように あなたの信奉者より』

 そんな風に花束は毎日届いた。私はそれを心待ちにするようになった。


 半年程経って、私は第二王子に求婚された。

「あなたに求婚したかったのに、婚約者が既に居て申し込めなかった」

「もしや、あなたは花束の……」

「そうです。どうか私の妃になって下さいませんか?」

「ええ、喜んで!」

 私は求婚に応じた。


 婚約破棄の後、屋敷から姿が見えなくなっていた妹のメイフィーは、クリス様と共に国外追放になっていた。もう、私を害する人はいないのだ。その事に心底安堵した。

「今まで苦労をかけたね。……これからは何も気にせず、健やかに過ごしなさい」

 結婚式で手を引いてくれた父の言葉に、世界は明るく幸福に満たされた。

 こうして、私は王子妃になった。

前半は6/14朝7時に、後半は6/14昼14時に公開し、完結します。

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