理想の自分になるためのトレーニング
自分の顔が嫌い。
あの子みたいに美人だったらと何度も自分を呪った。
可愛いあの子のようだったら、私も独りぼっちではなかった。
可愛いあの子のようだったら、私もあの人から愛された。
妬ましい。
憎たらしい。
あの顔を奪えたなら、幸せになれる?
でも、私の一番醜いところはこんな考え方なんだろう。
見た目だけの問題じゃない。
中身が醜い。
だから誰からも愛されない。
ああ、苦しい、苦しい。
息をするのが、こんなにも辛い。
綺麗になりたい。
美しくなりたい。
身も心も。
例えば顔を変えられたら違うんだろうか。
ふとそう思った。
化粧品を手に取ってみた。
でも、理想には程遠い。
そんな私に、私をいつも気にかける優しい兄が紹介してくれたのは…メイクアップアーティスト。
それも、なかなか凄腕であちこちに引っ張り凧だという人。
一日だけ、私に講習をしてくれるという。
どれほど変われるだろうかという期待と、そしてきっと何も変わらないという諦観。
どちらも、本音。
「では、まずは理想の貴女をお聞かせください」
「え?」
「どんな自分になりたいですか」
「どんな…可愛くて、美しくて、自信満々で、心まで凛とした…」
「なるほど。ではそんな自分を演出するための仮面をご覧に入れます」
そしてその人は、講習の前にまず私を理想の顔にしてくれた。
美しく、可憐で、凛とした…私じゃない、私。
「この顔を自分で作れるよう、一日で講習をしましょう。ですが一日で習得できると思わないほうがいい。メモをとって、あとはそれを元に練習あるのみです」
私は先生の言葉を全てメモして、先生の指導のもと練習に励んだ。
当然と言うかその日一日では習得しきれなかったが、私は諦めずに練習し続けた。
そして、私はとうとう理想の顔を自分で作れるようになった。
同時に、身体のスタイルも運動や食事で磨き上げた。
私は、ついに理想の自分を手に入れた。
そうなると自ずと自分に自信が湧いて、オドオドした今までの態度が堂々と出来るようになった。
今まで自分のことで必死だったのが、人に優しくできるようになった。
気付いたら、憧れの人と仲良くなっていた。
気付いたら、妬んでいたあの子とも仲良くなっていた。
気付いたら、周りに恵まれていた。
そして気づいた。
元々、兄のように私を気にかけてくれる人に恵まれていたことに。
私はそれに気づいた日、世界一幸せな女の子になった。
兄にはバイトで稼いだお金で焼肉を奢った。頭を撫でられた。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました!
楽しんでいただけていれば幸いです!
理想の自分と現実のギャップって、なかなか厳しいですよね。
この子は努力の末に理想を獲得しましたが、現実的にはこの結末はなかなか厳しいものでもあったり。
それでも理想を追いかけるため、人は化粧を施すのでしょう。
頑張る女の子は、なんにしろ素敵だと思います。
私は化粧が下手なので、この子を見習って日々努力ですね。
ここからは宣伝になりますが、
『悪役令嬢として捨てられる予定ですが、それまで人生楽しみます!』
というお話が電子書籍として発売されています。
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