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第6話 傍若無人・芹沢鴨

 1863年。七月。将軍・徳川家茂が摂海巡察の折り、新選組は警護のために大坂に入った。


 そして、この日、芹沢鴨の提案で夕方から、納涼のため、堂島川に船を浮かべる。同行したのは近藤勇ら八名。


 曽根崎川に流れ込む鍋島岸で船を降りた一行だが、土地不案内のため、道に迷ったらしい。


 そこで事件が起こった。


 通りががった一人の力士が、芹沢の足を踏んだのだ。力士は謝ったのだが、


「あっ、すいません」

「この、無礼者が!」


 と、芹沢は、ガツンと、拳で殴りつける。


 そこへ、別の力士が現れ、芹沢に向かってきた。


「オイ、謝ってる奴に、何してるんじゃ、コラ!」


 芹沢は、この力士を睨みつけ、


「何だと、お前は、何なんだ」

「見ての通りの相撲取りじゃ」

「俺を誰だと思っているのだ」

「そんなん知らんがな、アホ」


 この口論で激昂した芹沢は、


「この、身の程知らずが!」


 鉄扇で思いっきり、力士の頭を殴りつける。


 バジーンッ!


 強烈な一撃に頭を割られ、血を流しながら、力士は退散したのだが、


 すぐに十数人の力士仲間を連れて、戻ってきた。今度は、皆、棒を携えている。


「ヘボ侍が、なめんな、コラ!」

「痛い目、見せたろかボケナス」


 これに応じて、躊躇なく、刀を抜く、芹沢。


「貴様らは、死にたいのか」

「芹沢先生、やめましょう」


 近藤は必死に芹沢を止めたのだが、力士たちも、収まりがつかないようだ。


「なにが、今さらやめるや、コラ」

「やめるんやったら、土下座しろ」


 そこへ、豪胆な永倉新八が、間に割って入って、


「まあまあ、双方とも、落ち着いて」

「何が、落ち着いてじゃ、アホが!」


 力士の一人が棒を振り回して、永倉の胸を打った。


 バシーン。


 力士の怪力から繰り出される一撃に、永倉は、ひっくり返る。


 これを合図に乱闘が始まった。


 この事件で力士一人が死亡。三人が重傷を負う。


 新選組側は、永倉の他、沖田総司と平山五郎が棒で打たれ、軽傷。


 今回の一件は、その夜のうちに、芹沢、近藤の連名で、大坂東町奉行に届けられたという。



「災難でしたね、近藤局長」


 京都の屯所に戻ると、留守番をしていた土方歳三が言う。


「災難も災難。えらい騒ぎだったよ。芹沢さんにも困ったものだ」


 同行していた沖田総司も、


「災難なんてもんじゃ、ありませんよ。僕も、お相撲さんから棒で、ぶっ叩かれて」


 だが、それ以降も、芹沢の乱暴狼藉はエスカレートしていった。


 芹沢は、昼間から酒を浴びるように飲み、金は京都の商人から無理矢理、借りて、返済しない。


 そして夜の街では、気に入らないからといって、島原の角屋へ七日間の営業停止を言い渡すなど、横暴の限りを尽くしていた。


 だが、ここで、ついに大事件を起こす。


 芹沢は、借用に応じない、大和屋庄兵衛の土蔵を焼き討ちにしたのだ。


 部下を引き連れて、大和屋に押しかけた芹沢は、


「大和屋庄兵衛。お上に刃向かう不逞商人として、成敗致す!」


 そう宣言した後、部下に命じて、土蔵に火を付けさせた。


 火の手を見て、飛んできた町火消に対しても、芹沢は、


「我らは京都守護職お預かりの新選組だ。手出し無用!」


 と、抜き身の刀を突き出し、恫喝する。


 さすがに、この事件は大問題となり、京都守護職・松平容保の耳にも入った。

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