王都ラズベル①
「みんな、八年間ほんとにありがとう」
あっさりとした、だけどどこか哀愁を漂わせた顔で別れの挨拶をする。
「まだ、三か月。今じゃなくても……」
八年間共に頑張ってきた目の前の仲間たち。
僕の別れの言葉に涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにする。
卒業まで残り三か月。
卒業してからでも遅くないというけれど、それはその時になってみないと分からない。
「今が好機なんだ。この機会を逃すわけにはいかないよ」
遠くから馬車の音が近づいてくる。
馬車は数メートル先で止まり、中から執事っぽい高年の男性が降りてくる。
「じゃ、元気で!」
八年間共に過ごした仲間と、思い出の詰まった学校に背を向ける。
「王都から参りました。案内を務めさせていただきます、フェイルと申します」
執事のような服を着た高年の男性が丁寧に挨拶をしてくれる。
「ナイルと言います。お願いします」
軽く会釈をし、馬車に乗り込む。
馬車が大きく揺れる。
「ご友人はもうよろしいのですか?」
「いいんです」
一刻も早く————。
この選択を俺は後悔していない。
「では、王都ラズベルまでのもろもろの説明をさせていただきます」
「お願いします」
王都ラズベル。
それは我が国——ミシェル王国の第一都市であり、誰しもが一度は憧れたことがあるという魔法都市である。
首都ウィーンからは馬車で約二日。
首都ウィーンを抜けると、村に入る。
村を抜けると森に入るのだが、夜は危ないとのことだったので、その村で一夜を明かした。
「明日は朝六時に出発いたします。お早めのお休みをお勧めします」
「わかりました」
軽くお礼を言って、フェイルと別れる。
宿は、冒険者がたくさん泊まっていたのか、深夜まで賑やかな声が響いていた。
早朝六時。
まだみんなは寝ている。
昨晩の賑やかな声が嘘のように静かだ。
起こさないように、そーっと階段を音が鳴らないように降りる。
外に出ると、泊まった宿の食事を提供してくれるおばちゃんが見送りに来てくれていた。
「これ! 持っていきなさい」
突然、何か入った巾着を手渡される。
「あんた、ラズベルに行くんだろ? お腹すくだろうから、ね?」
中身を見てみると、塩おにぎりが三つと水。
「ありがとうございます」
お礼を言って、村を後にする。
森を抜け、王都についたのは夜だった。
約二日間、馬車に揺られながら、ついに王都ラズベルにやってきた。




