「冬」
「水腹」
寒くなると欲しくなる暖
手軽に取ろうと手を伸ばす
湯を沸かしたなら注ぐは何か
珈琲を薄めてアメリカン
粉をとかしてスープは豊富
カップ麺には手を出すなと
思うもついつい蓋を開け
ちょびっとだからとパスタを
昼を抜いてたからとラーメン
イカンと思いまともに食事を作る
鍋やカレーやシチューや味噌汁と
汁物ばかりで腹を膨らませる
ホカホカに温まった処で風呂へ
温かい内にと布団に入りご就寝
夜中にトイレばかりで寒くなる
寒くて手を出すホットな飲み物
身体の中で繰り返される上下水
暖気と換気のようで効率悪く
段々と膨れる冬の腹見る
何かに似てるな
冬眠前の熊の腹……
「移ろい去る」
寒風に吹かれて乾き枯れた木々
渇きに切なく音鳴らす
同じく切ない乾く音
人も肌に感じて塗る保湿
カサカサザラザラパリパリガサガサ
ペトペトヌリヌリムニムニノペノペ
ヌメヌメプニプニモミモミサラサラ
見た目に白い粉も見えなくなれば
保湿完了感無量
中身を見れば缶無量
毎年ながら12月のアレだけは
早々に付けるイルミネーション
年を越し年末年始をも飾り彩る
片付けるのは仕事始めか成人式
鬼も竹笹も茄子と胡瓜も南瓜も
鏡餅より長々飾り年またぐアレ
日本の縁起物から言ったらソレ……
年越しそばも時代の流れに
意識も変わり麺なら何でも
昔から居るさうどん派とか
私昨年ナポリタンですから!
リア充爆破団員の出番はここかな
初詣に縁を求める神社に居る男女
番いで来るのは罰して欲しいのか?
正月早々に手元を狂わせるお賽銭
御用御用の銭形平次と五円を誤用
もう鬼が笑う事は無い筈と
世を笑うしかなく鬼になり
世で笑うのは鬼から人へと
人が笑い過ごす良いお年を
「冬籠り」
世情に思う人の世に
冬に忙しく働くを
それが正しき人の営みと
何故に態々火を焚いてまで
外の寒さに身を投じ
無駄に焚く火で忙しさを増す
冬を越す為だけならば
暖炉に焚く薪と食べ物あれば良く
自然との共生を謳う者達が言う
冬に籠もるを怠け者等と称す矛盾
無駄を無くせと言うなら休ませろ
休みを増やせば無駄は減る
自然と共生したくば冬場は籠もれ
「鍋に賑わう煙と湯気と」
学生時代に車で走り回り
辿り着いたは河口湖
当時最先端のカーナビは無が多く
ナビゲーター頼りに凡その位置だけ
地図を読まねば目的地は果ての先
とはいえ何でか富士山を目指すのは
暴走族と変わらぬ思考なのかと
着いた先で空腹を満たそうと
老舗と賑わうほうとう専門店へ
今とはまるで違う店内の様子に
煙草の煙と鍋の湯気と焼かれる肉煙
食べた事無いほうとうに胸踊らせる
けれどサイドメニューに目を丸く
鶉の丸焼きや蛙脚等の田舎メニュー
若さと旅の資金に物言わせ
注文するも少し後悔と期待の時間
全てが初体験の熱き鼓動に興奮した
先に出るサイドメニューに舌慣らし
熱さに舌を火傷しながら食べる麺
腹を満たされ座敷に横たわりたくも
並ぶ客に配慮し急ぎ店を出る
さあ山中湖へと向かう中で思い出す
脱いだ服を忘れて取りに戻った
数年前に別件で久々に寄ると
店に客は少なくサイドメニューも無い
あの濃い味付けの南瓜のほうとう
今は健康志向がどうのと文句を言われ
近くに出来た映えの店に客を取られ
見た目だけの店ばかりが増えていた
旅情に賑わう活気もなく
パシャリと響く店の中
旅情の映えはそれじゃない
私は煙と湯気に賑わう地場料理が大好きだ♪
窓と眼鏡を曇らす熱気と湯気と煙と
鍋に賑わうほうとう専門店を思い出し
南瓜を前に今夜の食事を考える
「白き靄」
冬の夜空に誘われ
星観に出かける自転車独り
劈く寒風押し退けて
登り坂に汗流し
開けた空に流れ星
カメラを準備に悔しがる
シャッターチャンスとは思わない
中々撮れない流れ星
撮れたと浮かれ調べると
夏は羽虫が写り込む
冬こそチャンスと撮影するも
白い靄に謎めく怖さ
溜め息漏らしコレだと気付く
澄んだ空気に吐く息白く
息を止めて写真を撮る
星景写真はシャッター開放30秒
三脚セットに離れて息する
時折不審者扱いされる撮影時
湖畔と宇宙はベストフレンド
撮れたら水筒からホットティー
星を観ながらくゆる湯気
吐く息も濃くなる白き靄
「もりそば」
子供の猫舌に年越し蕎麦は熱かった
以来私は冬でも蕎麦はもりそば派だ
うどんも冷やし以外は受け付けない
熱々力うどんや鍋は以ての外なので
食べても未だおでんの良さが解らず
納豆や塩辛の匂いも受け入れられず
蕎麦とうどん選べる店は山田うどん
街道沿いの山田うどんは随分減った
蕎麦屋自体も数を減らしうどん店増
偶に見かける蕎麦新規店は何か違う
店によって呼び名の違うもりそばは
せいろやざるやの違いは海苔の有無
近所の蕎麦屋が好きだったけど閉店
冬でも私の定番だったもりの大盛り
信州の刀屋で食べた蕎麦が美味しく
蕎麦湯に山葵と残りネギの味を覚え
寿司屋の大将に甘ちゃん呼ばわりも
山葵に慣れて食べられるようになり
今では山葵だけで食べられる変態だ
チューブ山葵は直ぐになくなる程で
体内の毒消し効果は相当な筈だろう
茶蕎麦の蕎麦湯は山葵と混ざり緑色
天ぷらそばも私はもりそばで食べる
つゆに大根生姜胡麻ネギ山葵を盛り
冬にも冷たく美味しいもりそば推し




