「秋」
「風そよぐ」
秋の風
冷たい風に名を付ける
まだ夏の暑さが残る秋の始まり
自転車乗るにも羽虫が消えて快適に
川辺に揺れるすすきの夕焼け
日暮れて露出した肌が冷たくなる
夜風に羽織るも一枚のみ
湿った空気が乾く頃には秋深く
見上げる月夜も明るく澄み渡る
一等星をも飲み込む秋の宙模様
兎も追われる事無く月で餅つき
団子に食いつき名月よりも丸い月
緑を溶かして赤や黄色が紅を差す
山の色味に合わせ炊き込む栗と人参
枯葉の代わりに茸とお揚げを添えて
混ぜるしゃもじに上がる湯けむり
口元運ぶ箸に向け吹く風こそ秋の風
風味豊かな秋の食彩に頬も紅く秋めいて
そよぐ風は温かく実りの秋を蒔くように
「秋の田の」
田を〆て水を抜きたる土の乾きにヒビを入れ
割れた地面に秋穂の実りへの苦労を窺わせる
ポロポロと崩れる表土の荒れは肌にも見えて
抜けた栄養は秋穂に実りし垂れた米の一粒へ
稲穂を育てる春から夏の環境厳しい成長記憶
吹き荒ぶ風落ちる稲妻に風神雷神を天に見て
なびいて慄きたわわに実る稲穂で頭を垂れる
刈手に見えぬ神の姿も稲穂に願う想いの欠片
有難き事知るが上での神事に貢物とす酒造り
仲間と実り感謝し田を焚き米を炊き口を敲き
一粒まで残す事無く頂き御百姓さんにも感謝
冬に土の回復を願い炭や栄養を撒き寝かせる
田園寂しく秋深く稲穂が消えると物足りない
「衣替え」
秋は春より楽な気がするんは
重ねる服出し羽織るばかりで
春みたいにクリーニングとか
畳んで仕舞うも無いからやな
そんな気がするも暫くしたら
足寒腕寒の短い服要らんくて
嵩張る厚い服出すと収納狭く
要らんの仕舞って要るの出す
結局やる事はそれ程変わらん
クリーニングする物無いだけ
出すの面倒いからと我慢して
ファッション音痴が言う台詞
お洒落は我慢や言うとくねん
衣替えても中身は変わらんて
着痩せするかもしれへんやろ
身体は痩せんでも着痩せしよ
秋の衣替えは色々隠せてエエ
「秋のプーさん」
冬眠前にと出稼ぎ労働
都会暮らしにゃ解るめえ
こちとら腹を減らしたままじゃ眠れねえ
森の恵みは“侵攻”住宅や道路の為の伐採と
近年の猛暑で森の住人同士で奪い合いよ
都会も物価高騰で食えねえ奴が出てるとかって?
けど森を寸断する道で都の車から慈貰ってよ
その味が忘れられずに人里目指して
おいら森の恵みに慈を求めて出稼ぎ来たら撃たれてよ!
冬眠前に永眠だっての!
人にも熊にも底辺暮らしにゃ世間は冷てえ!
冬越しの恵みも慈んじゃくれねえ
この国のお上はめ組で火消しとばかりに目線逸らしよ!
熊を殺して殺すな殺せと騒いでるのを観てほくそ笑んでやがんのさ
独り身のプー観て補助金貰った餓鬼が言うんだ
ああは成りたくねえ! ってな……
補助金に使われる税金は独り身プーが吸ってるタバコ税なのによ!
熊と人の住む場所を分け隔ててたのも煙草の臭いだってのに……
世知辛え国になっちまったな
馬鹿な人間が増えたもんだ
そんじゃおいら先に眠るからよ!
アッチじゃ熊が上の社会築いとくわ!
馬鹿な政治を許してたら国はおしめえよ!
いつまで寝てんだ馬鹿な人間共!
人だって宵越しの銭も持てずなら永眠すっぞ!
「夜露」
秋深まり冷たい夜風に吹かれる河原
防風性の服を羽織っても冷える足元
川辺に近付いてなくとも濡れる靴先
草の夜露が着てる服までも湿らせる
湿った服が風を受ければ気化熱放出
防風なれど暖を奪って通るすきま風
フィットしてた服なのに痩せたかな
バッグには昼間に脱いだ厚着の一枚