走れたぬき
メロスは激怒した。
メロスは世の曇らせ展開が分からぬ。メロスは村のニートである。ハッピービターエンドを夢想し、ビターエンドを食って暮らして来た。けれど曇らせ展開には人一倍に敏感であった。
「なに?タヌキがエリクトじゃない説?」
スレッタとか言う企業の陰謀に入り込むには精神が幼過ぎる純粋培養な娘が異物混入してしまって化学反応、という学園ものあるあるな光景とは裏腹にガンダムお馴染みの毒親が三種類。この三匹から好きな毒親を選ぶんじゃ。なお4号君にはちゃんと魔女(復讐に取り憑かれている方ではない)なママがいるのでヨシとする。え?1期の終わりで2種類は和解できてるじゃないって?和解したからといってそこから順風満帆だと思うなよ(豹変)
当然ガンダムで曇らせが発生しないわけがなく、その道中を見ているメロスは曇らせの『見えている伏線』ですら狂喜しているのだが、プロローグで示された子供(ガンダムに乗れる)と1話からの主人公(ガンダムに乗れる)がイコールで結ばれないというミスリードに激怒したのだ。
「馬鹿野郎!タヌキ=エリクトで記憶喪失であっても問題ないやろがい!」
あまりにもこじつけ過ぎる。便利だよね記憶を弄るってキーワード。声も顔も弄れるのなら人間を全く別の人間にするのも不可能ではないだろう。
「それに、11基のビット全て、さらにエアリアル本体合わせて12つに水星の子供たちが入っているとなれば、それにプロスペラマッマが関わっているとなればよりスレッタを曇らせられるやろがい!」
外道であった。いや曇らせ展開を積極的に摂取している時点で“可哀想は可愛い”をしっかり理解しているのだが。
「マッマにスレッタが洗脳を受けているのはほとんど間違いないだろう。だって16歳前後だぞ。子供騙しにも気づくだろ。なら水星に同年代の子供がいなかったスレッタがエアリアルに入っている子供達のことを理解できなくても仕方ないのだ」
ニートは宣う。
家族が人体実験で子供達とAIの合いの子ですとなれば、その復讐心を剥き出しにした母親のために戦うスレッタ=サンから取れる曇らせは遊び混じりに両親を無惨に殺され手も無くしたルイスに比する純度だろう。
ワガママ気味なお嬢様の日常が崩壊させられるのを小学生の頃見ましてね……その……下品なんですが…ふふ…○○、しちゃいましてね……ついでに言うと、魔女1期最後の「人殺し…」には絶○した。
「そう安易に『アンタを受け入れる』なんて言っちゃダメなんだよミオリネさん!その前からプロスペラマッマの洗脳を見てきたのに、今更いきなり考えが変わってることに驚いちゃダメなんだよ!それは流石に頭が悪いとしか言えません。考え無しで言葉にしてはいけないんだ。信じる者は足を掬われるという言葉があるように、人を簡単に信じちゃいけないんだ!」
そう溢す声に応える者はいない。
タヌキ=エリクト説に呆れを切らしたのだとメロスは考えていたが、それより前からメロスの周りに人がいないことを指摘する者はいない。だってぼっちなんだもん。
「ああ!ああ!パーメット値が上がってエアリアルの中の12人が人間の身体を欲しがってることがあれば、もっと面白いのに!洗脳マッマに身体を欲しがる兄妹!地獄みてーな家庭環境だったことが16年の時を経て明かされればどうなるのか!興味深いね!愉しいね!」
人を呪わば穴二つという諺が示すように、復讐のために子供を使ったとなればプロスペラマッマは地獄に落ちるだろう。しかしその穴にもう一人くらい引き摺り込むのはあり得る話である。
また、12話でスレッタが洗脳され、また戦闘中にエアリアルからナニカがインストールされている可能性はなきにしもあらず。
メロスは虚空を見つめてぼやき、ただ意味のない情報を垂れ流し続ける。
水星の魔女と言いつつスレッタさんはむしろ魔女の使い魔な件。今ならプロスペラマッマを陥れれば一緒にスレッタ=サンもついてくる。