#5 : 後の祭
この物語はフィクションです。実際の人物、団体、その他諸々には一切関係ありません。
#5 : 後の祭
君たちはライダーだ。
この言葉で俺は思い出した。幼い俺はライダーになりたかったんだ。そして成長した俺は、ライダーはフィクションのものとして捉えて、いつしかそんな憧れも希望もどこかに置いてきた。気が付けば社会からもドロップアウト。
そんな回想を思い浮かべようとしたその時、真芝の説明で現実に引き戻される。
「まず使う端末についてだが、ベルト型と腕時計型、それからヘッドホン型の3種類を用意した。どれでも身体能力の伸び幅は同じだ。」
「端末の装備だけでも身体能力は平均して5倍になるが、その端末にこのUSBと同じ規格の強化パッチ『リベルUSB』を入力すると、10分程度さらに2倍、つまり生身の人間の10倍の身体能力を得られる。」
まさに「変身」。幼い頃のときめき、熱が戻ってくるのを確かに感じた。
それから説明は続いたが、要約すると3点だった。
1.リベルUSBには様々な種類のエネルギー(例えば熱エネルギーや電気エネルギー。)が圧縮して保存してあり、装填するとそのエネルギーを増幅して出力することができるようになる。24時間リチャージすれば再度使用可能。
2.端末の装備には適合手術が必要で、適合手術を行わずに装備すると脳や人体に甚大な障害が残る。
3.リベルUSBを活用する武器も複数開発中で、開発完了次第3人に与える。
「それから、私、そしてもう1人端末を持つライダーが居る。後日顔合わせさせる。以上だ。」
この人もライダーなのか。まぁ開発者なら当然か。
続けて日暮が説明する。
「皆さんは身体能力や戦闘能力には長けているとの事ですから、基礎的な訓練は不要でしょう。この後適合手術を受けて頂き、その後端末を装備しての訓練を行う予定です。それでは適合手術を行いますので、施設に移動です。駐車場に車はつけてありますから、エレベーターで降りてください。」
千葉刑務所を出て3時間。俺たちは再び黒塗りの車に乗りこんだ。日暮が運転するようだ。神田がそれとなく助手席に座り、俺たちは後部座席に乗り込んだ。車は西へと動き出す。
「信じられます?ライダーですよ?」
打って変わってくだけた口調で問うたのは日暮だ。
「信じられるわけないでしょ。これってドッキリなんすか?ドッキリにしては出来すぎですよ?」
会話に加わったのは石和だ。厳つい見た目通りの低い声だが、人は良さそうで安心した。俺と神田も会話に加わる。
「僕、ちっちゃい頃仮面ライダーなりたかったんすよね〜」そんなことも石和は言っていた。偶然にも、乗車中の4人全員が幼い頃はそんな感じだったそうだ。
奇特な会話が弾む高級車は、新宿方面に向けて進んでいく。
まだまだ続きます。
不定期投稿です。