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異端の紅赤マギ  作者: みどりのたぬき
第3章:雷速姫と迷宮街編
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第98話:ロックオン

出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。

無理だったら、優しく微笑んでください。

「では早速話を聞かせて貰いたいのだが・・・」


 部屋に入って来て、入口近くの椅子へと腰を下ろしてそう言ったリラは、俺に抱かれているユーリーをチラリと見た。


「此奴は気にしないで進めてくれ」


「あぁ、では―――」


「怒鳴ったりするなよ?」


 俺はリラの言葉を遮り釘を刺す。


「・・・あぁ、分かっている」


「彼奴、子供をダシにして牽制したぞ」


「きっとユーリーを使って主導権を握りたいんですよ。卑怯ですね・・・」


 おい・・・


 俺は大きくため息をついてリラを見て話し始める。


「んで、何を話すんだ?って言うか、先ずはドエインと話したらどうだ?」


「・・・そうだな。そうさせて貰う」


 そう言ってリラはまだ立っているドエインに向き直った。


「とりあえず座れ」


 リラがそう言うと、ドエインは一度身体をビクリと震わせてから恐る恐る近くの椅子を引いて座った。


 どんだけビビってんだよ


 と苦笑しながらその様子を伺う。


「先ずはお前に聞きたいのは、何故急に軍を抜けたのかだ」


「・・・もう既に報告は上がってるでしょう」


「コボルト・ジェネラルの事か?」


「・・・そうだ。俺の隊は其奴に全滅させられた。急だった事もあるが、全く歯が立たなかったよ」


「それは知っている。お前も重症を負い、この者達に助けられたのだったな?」


「そうだ。俺は自分の力不足を痛感した。俺は隊長なんて柄でも無いし、器でも無い事を痛感したよ」


 そう言ってドエインは自嘲気味に嗤った。

 それを見てリラは少し考えてから口を開く。


「・・・お前が隊長に向いて無いとは私は思わないが、経緯は分かった。だが、軍を抜ける必要が何処にある?別に一兵士だろうが何だろうが、民の為に軍で出来る事は山程あるぞ」


「・・・俺は、別に姉貴みたいに崇高な目的を持って軍に入隊した訳じゃない。うだつの上がらない弱小貴族の次男坊なんて余っ程の才能でも無いと行き着く先は軍か何処かの商人の使いっ走りがいい所だ」


 この世界、貴族とりわけ、男爵以上の貴族は全て世襲制で、基本的には長男が家督を継ぐ。

 男子が生まれなかった家も娘が居るのなら婿を向かい入れたりして家を存続させるが、次男や三男は長男が家を継いだならばその家には居られない。

 ましてや、領地も持たない小さな力の無い貴族ならば次男や三男は自分で仕事を見付けて生きていかなくてはならなくなる。

 ドエインも変わらず、兄である長男が家督を継ぐ為、自分の居場所を作る為に軍に入隊した。

 そこにリラの様な野望や目的がある訳では無く、仕方無く生活をする為と言う事だ。


「しかし、貴族には民を護り、民の為に生きる責務が―――」


「またそれかよ!!いい加減にしてくれ!!」


 ドエインは堰が切れた様に拳を机に落とし叫んだ。

 その音と声に寝ていたユーリーが身体をビクリと震わせて目を覚ました。


 まぁ、叫びたくなる気持ちも分かる。


「何だよ弱き者の為って!そんなもんは貴族の、貴族たらしめる権利を享受してる奴がやればいいじゃないか!自分が生きる事で精一杯の俺がそんな事を気にしてる余裕があると思ってんのかよッ!!」


 ドエインは自分の思いをぶちまけて、言い終わると肩で息をする。


「・・・だが、貴族に産まれたからには、次男だろうが何だろうが民の為に生き、そして死ぬ義務があり、それは変える事の出来ない運命だ」


 リラはそう言い切り、ドエインの生き方そのものを否定した。


「・・・ふざけんなッ、何でそんな事しなきゃならねぇんだッ!民の為、弱き者の為ってじゃあ姉貴は何をしてんだよッ!家を大きくするだの何だのと言ってても結局は軍の命令に従うだけの犬じゃねぇか!」


 そう言うと、入口の兵士の顔が強ばり、少し怒気を感じた。


「・・・ドエイン。物事は長い目で見ろと教えただろう。それに民を護る方法は何も直接的に兵として壁になり護るだけでは無い。もちろんそれも一つの方法だが、民が幸せに、憂い無く生きていける国を作るのも一つの方法だし、他にも色々ある」


 そう言ってリラは少し優しげな表情をした。


 国を作る、ね


 これかと思った。リラの目的が具体的には何なのかは分からないが、多分途轍も無く険しく困難である事は何となく理解をした気がした。


「・・・俺の隊が全滅して、責任を取って辞める。此奴らには助けられた恩があるからそれを返したくて共にしてるんだ。これは俺が決めた道だ」


 ドエインはリラの言葉の意味を考えて、そして自分なりの結論を出してきっと答えたのだろう。

 何だか表情が少し変わった気がした。


「・・・・・・そうか。残念ではあるが仕方が無い」


 リラは寂しそうにそう言ってドエインを見た。

 その顔は本当に寂しそうでもあり、愛しい弟を見る優しいものでもある気がした。

 その表情を見て、緊張していたドエインも少しホッとして身体の強ばりを解いた。


「・・・で、時にその娘が聖女とはどう言う事だ?」


 先程の表情を直ぐに消し、リラは厳しい視線をドエインに向けながら言った。


「えッ!?あ、いや、それは、その・・・突然の事で頭が混乱していたと言うか何と言うか・・・」


 しどろもどろにそう言ってドエインはチラリと俺の方を見た。


「聖女って何の事だ?」


 俺は空かさず間に入ってリラに切り返す。

 俺の言葉を聞き、リラはゆっくりとドエインに向けていた身体と顔を俺に向き直した。


 怖いよ!


「・・・弟がそこの娘を聖女と言っていたでは無いか。この世界に聖女は一人しか居ない。顔も名前も弟ほ知っている。とても間違えたとは思えんのだがな」


 そう言ってリラは顔だけドエインに向けた。

 まるで、そうだろう?何か間違っているか?とでと言いたげだ。


「いや、だからそんな事ドエインは言って無いだろ?なぁ、ドエイン?」


 俺が突然話をするもんだから、ドエインは焦って俺とリラを交互に何回も見て答えた。


「え?あ、そうなの?あ、そうだよ、俺はそんな事一言も・・・言ってない」


 最後の方はリラの眼力に押されて怯み声が小さくなっていた。


 情けねぇな


 と心の中で笑いながら俺は続けた。


「ドエインがそんな事言ってたの聞いた奴いる?」


 俺は今度は他の仲間達へと話を振った。


「妾は聞いてないぞー」


「私も聞いてませんよ」


「聞いてないな」


 アリシエーゼとモニカ、篤は即答し、リラの言葉を否定した。


「・・・」


 明莉はあまり嘘が得意では無いのか、俯き黙ったままであった。

 傭兵達も黙ったまま首を横に降った。


「・・・イッテナイ」


 最後にユーリーが、俺の胸にしがみつきながら、顔だけリラに向けて眠たげに言った。


 んー、ユーリーは可愛いなぁ


 顔を潤けさせながらユーリーの頭がを撫でる俺を見てリラは若干シラケた目で俺を見るが、鼻で笑い飛ばしながら言った。


「フンッ、そんな言い逃れは出来ないぞ。私も周りの兵士も聞いているし、何よりもその娘のあの力。あれは魔法では無いな?魔力の動きが全く感じられなかった。あれは異端の力と言う以外あるまい」


 おー出た出た

 異端がまた出ましたよ


「何言ってるのか全く分からないって。見て聞いたってなら、そいつら連れて来いっての。まさかここでは自分がルールだ、自分が黒と言ったら白い物も黒くなるなんて言わないよな?だったらちゃんと証拠を提示してくれないと困るぜー」


 俺は大袈裟な動作を交え、一人芝居を打ちながらニヤけてる言う。

 ユーリーを抱っこしながらなので、若干締まらないが・・・


「・・・おい、お前達、ドエインがそのむすめを聖女と言っていたでらあろう?それとその娘が奇妙な術を使っていた事をこの場で証言しろ」


 リラは入口に立っている兵士二人にそう言って笑う。


「聖女、ですか・・・?申し訳御座いません、私は聞いておりません」


「わ、私も同じであります!」


「・・・なに?ではその娘がドエインに回復魔法の様なものを使っていただろう、それは見たか?」


 リラの顔が険しくなった事を察知し、兵士は慌てて答えた。


「も、申し訳御座いません!それも私は確認しておりません!」


「同じであります!」


 兵士達は冷や汗を書きながら直立不動でそう必死に答えた。


「・・・・・・」


 リラは兵士の言動を理解出来ずに少しの間考え込み、そして無言で俺を見詰めた。


「何か?」


 俺が敢えてニヤケながらそう言うと、それには取り合わず、入口の兵士に命じた。


「おい、あの場に居た者を数名ここに連れて来い。直ぐにだ」


 有無を言わせない迫力でリラがそう言うと兵士は慌てて出て行き、他の兵士を呼びに行った。


「全く、悪趣味な奴じゃ。さっさと終わらせれば良かろう」


 ご機嫌斜めなアリシエーゼが欠伸をしながら俺にそう言った。


「まぁ、そう言うなよ。ユーリーが怒るし仕方無いじゃないか」


 俺はそう言って膝の上に乗るユーリーを見下ろす。

 ユーリーはその視線を感じ取り、俺を見上げながら言った。


「・・・ハルウソツキ」


「勘弁してよ」


 苦笑いを浮かべながらそんならやりとりをしていると、直ぐに兵士が戻って来て、他の兵士を四名連れて来た。

 リラは直ぐに連れて来られた兵士に先程と同じ質問をするが、返って来る答えは質問と同じで変わる事は無かった。


「・・・・・・どう言う事だ」


 かなり鋭い視線を向けられるが、俺は飄々としながら視線を受け流して返す。


「だから何が?」


「・・・・・・・・・」


 リラは何も言わずに暫く俺から目を離さず、何かを必死に探っていた。

 部屋の中が妙に重苦しい雰囲気に包まれ始めて、誰も口を開く事が出来なかったが、リラが突然深いため息を吐き、肩の力を抜いて椅子の背もたれに背中を付けた。


「ふぅぅ・・・まぁいい。分かった」


 リラがそう言うと、部屋の雰囲気が軽くなった気がして、皆一様にホッとした表情を浮かべた。


「・・・今日は御足労頂き感謝する。話は以上だ」


 そう言ってリラは椅子から立ち上がる。


「とても有意義な時間を過ごせたよ」


 俺は立ち上がりながら皮肉で返した。

 皆立ち上がり、帰り支度を進めているとリラが俺に聞いて来る。


「関所からこの街に来たと言う事はホルスに行くのか?」


「そう、魔界にちょっと用事がね」


「もうすぐ聖女様も魔界へ到着して攻略を始める。あまり問題は起こすなよ?」


 そう言ってリラは笑い掛けた。


 それじゃ俺達がまるで問題児みたいじゃないか・・・


「俺達はその聖女様と一緒に魔界に潜る事になったんだ」


 会話にドエインが入って来てリラにそう言った。


「な、なに!?聖女様とだと!?」


 初めてリラが動揺する様を見る事が出来たが、きっと聖女と魔界に潜る事の意味を理解し、ドエインを案じての事だろうと思った。


「心配するな。魔界に一緒に入るが途中で抜けるつもりだ。今回は下見に来ただけだしさ」


 俺がそう言うと、リラはあからさまに安堵した表情を浮かべた。

 それを見て俺は何だか微笑ましくなり笑った。


「むッ、なんだ、何を笑っている」


 リラは俺が笑っているのに気付いて、恥ずかしさを隠す様に俺に詰め寄った。


「いやら何でも無いって。じゃあ、俺達は帰るぞ」


 足早に部屋を出ようとした俺達をリラが呼び止める。


「あ、ちょっと待て。お前達はまだ宿を取っていないだろう?私が口利きをしてやるからそこに今日は泊まると良い」


 リラの言葉に俺達は顔を見合わせた。

 そんな俺達を見てリラはクスリと笑いながら続ける。


「心配するな。時間を取らせてしまった詫びだと思ってくれ」


 俺はアリシエーゼを見ると、アリシエーゼはブスリとしながら頷いた。


「じゃあ、お願いするよ。あッ、全員大部屋とかはやめてくれよ?」


「こんな人数が一部屋に収まる程の広い宿はこの街には無いので心配するな。後で部下に話を通させに行くから、その時に要望を聞こう」


 そう言ってリラは入口の兵士に目配せをすると、それを受けた兵士は踵を合わせて直立する。


「では、先ずは少し早いが夕食にしようじゃないか」


 そう言ってリラは部屋を出ようとした。


「・・・は?いや、待て。飯って何だ」


「うん?今は時間もなかなか良いし、皆まだ夕食は済ませてはいないだろう?」


「・・・いや、そう言う事じゃない。何でアンタと飯を食うって話になってるんだって話だ」


「何を言う。久しぶりに弟と会ったんだ、一緒に夕食くらい良いでは無いか」


 そう言ってリラはフフッと笑う。

 その顔は蟲惑の香りがプンプンと漂っているが、俺は惑わされない。


「だったら、弟と家族水入らず、二人で食って来ればいい」


「ちょ、ちょっとぉ!旦那ぁ!」


 それを聞いたドエインが泣き付いて来るが冗談じゃないと思った。


「なに、愚弟が世話になっているんだ。その感謝の意味も込めて招待させてくれと言っているんだ。まさか断りはしないだろう?」


 俺は仲間を見て意見を聞こうとすると、直ぐに反応があった。


「軍の大隊長の奢りだろ!?良いもん一杯食えるんだから良いじゃねぇか!」


 ナッズ・・・この食いしん坊めッ


「私も別に構いませんよ」


「うん、皆で食べた方が美味しいよ、きっと」


 これはアレアレとパトリックだ。

 ソニは無言で頷くだけだし、明莉と篤はどちらでも構わないと言った。


「ユーちゃんがちゃんと飲み食い出来るところにして下さいねッ」


 何故かモニカはプリプリしながらそう言うが、奢ってもらう立場なのによくそんn事が言えるなと思った。


「・・・」


 ユーリーは特に意見も無いのか、俺に抱っこされた状態でリラを見向きもしなかった。

 最後にアリシエーゼを見るが―――


「破産するまで食ってやるからのうッ!!」


 と、犬歯を剥き出しにして、リラを威嚇していた。


 いやいや、お前さっきから何なんだ?


「はぁ・・・分かったよ。お呼ばれさせてもらう」


 俺は諦めてリラにそう答えた。


「そうか、嬉しいぞ。おい」


 リラは近くの兵士を呼び、リラのお気に入りなのか行きつけなのか分からないが店の名前を出し、予約をする様に命じた。


「では、この格好では少々動きにくいので着替えて来る。入口で待っていてくれ」


 そう言われた俺達はゾロゾロと建物の入口へと向かった。

 俺も動き出すとリラはまた俺の耳元に顔を近付け、魅力的な匂いを醸しながら呟いた。


「逃がさないからな」


 ひぇぇッ

 ロックオン!?


評価、感想、レビュー、ブクマ等頂けると小躍りします。

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