第95話:姉弟
出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。
無理だったら、優しく微笑んでください。
姉だと!?
ドエインは滅茶苦茶メンチ切ってる女に冷や汗をかきながら何とかその言葉を絞り出した。
女はドエインを見ると眉を上げて驚き声を上げた。
「ドエインじゃないか!?」
そう言って女は兵士と密着して顔だけ此方を向けていた態勢を解除してドエインに向けて歩き出す。
「あ、あぁ、久しぶりだな・・・」
身体を硬直させながらそう言うドエインの顔はかなり引き攣っている。
会いたくない奴って自分の姉だったのか
そう思うと同時に何故?と言う思いが沸いた。
「久しぶりだな!元気にしていたか!?」
女はドエインに笑顔を見せながら近付いて来る。
その笑顔を見て、ドエインは身体の硬直を若干軟化させて自らの姉と久々の対面と言う場面を受け入れに入った。
「あぁ、こっちこそなかなか連絡出来ずに申し訳無い」
「本当だぞ。此方からは再三連絡していたのにお前と来たら全く連絡も寄越さず・・・それに―――」
ドエインの姉は今度は眉を寄せ心配していると言う言葉通りにそれを表情にも乗せる。
「軍を突然抜けるとは何事かぁぁッ!!」
「ぉごぉあッ!!!」
ドエインの目の前までやって来たドエインの姉が突然叫び、そして持っていた右手のサーベルの柄をドエインの腹に突き刺した。
うわ・・・
突然の突きにドエインは反応出来ず、鳩尾に突き刺さった柄がドエインの呼吸を止めた。
ドサリと音を立てて崩れ落ちたドエインは鳩尾を抑えて蹲り、口から胃液を吐き出して悶えた。
「ぅ、ぉうぇッ!!ッカ、ハァッ」
俺達はその光景を唯見ている事しか出来ず、皆一様にその場に固まっていた。
ドエインの姉はまるで剣戟の残心の様に刺突の構えのままドエインが崩れ落ちて行く様を目だけで追っていたが、暫くするとそれを解除してドエインが蹲るその頭元に立った。
「・・・貴様、再三の連絡に反応しないだけで無く、私に無断で軍を抜けるなど―――」
そう言ってドエインの姉はその場で右足を持ち上げた。
「お、おい―――」
俺は止めようとするが、それよりも早く持ち上げた足がドエインの頭へ振り下ろされた。
「―――舐めとるのか!!貴様ッ!!!」
振り下ろされた足は寸分違わずドエインの後頭部を捉え、ミザウアの街の門付近は石畳で整備されているが、その石畳を砕いてドエインの顔をめり込ませた。
ひぇぇぇ
すっげぇ音したけど、頭蓋骨砕けてたりしないよな・・・?
聞こえて来た音が石畳を砕く音なのか、それともドエインの頭蓋を砕く音なのかが理解出来ずに俺はただ圧倒されて固まった。
「きゃあッ!?」
ドエインの頭が踏み潰された瞬間、明莉が悲鳴を上げ、それを聞いて俺はハッと硬直が解除される。
周りを見ると、明莉以外も今の場面を見ていた通行人等が声を上げており、騒めいていた。
「バカ共!さっさと進まんかッ!!」
ドエインの頭に右足を載せながらドエインの姉は周りに怒鳴り散らす。
それを受けて、通行人や兵士が動き出すが、俺はドエインが先程からピクリとも動かない事が気になって仕方無かった。
いや、マジで死んでねぇよな・・・?
何なんだこの女は・・・
俺は未だにドエインの頭に足を乗せながら辺りに怒鳴り散らしているドエインの姉を観察する。
ドエインの姉は歳の頃なら二十代前半と言った見た目だが、ドエインの姉なので、二十代中盤辺りだろうか。
かなり若々しく見え、装備しているハーフプレートメイルも特注なのだろうか、かなり大きめの胸に合わせる様に盛り上がっており、手にはシンプルなサーベルの様な細身の剣を持っている。
外套と言うより、マントの様な紅の八潮に染まった布がハーフプレートメイルの両肩口に止められてそれが膝裏辺りまで伸びている。
このマントの色は街道警備隊の隊色を示しており、他の兵士達も紅の八潮に染まった上下を着ている。
ただ、ドエインの姉の服は上下、鉄紺色で、大隊長はこの色か?と思ったが、関所の警備隊大隊長は、マントは付けておらず、一般兵士と同じ紅の八潮の上下だったなと思い、個人でその色を選んでいるのか、他に何か軍の階級や役職等に関係しているのかは判断が付かなかった。
ドエインの頭に載せている足は少しオーバーサイズ気味の軍服を着ているからか、細いのか太いのか判断が付かず、上半身も同じだが、胸の双眸だけは判断が付いた。
篤を見ると、モニカとドエインの姉(の主に身体)を交互に見て、最後にモニカを見て無言で頷いている為、成程と何かが腑に落ちた。
「・・・そろそろ、その足を退かしてやったらどうだ」
俺は慎重に言葉を選んで、ドエインの姉に言った。
「・・・」
俺の言葉を聞き、顔だけこちらに向けたが、何も語らず無言で俺を見詰めたその目は、金春色に輝き、色白の肌と少し肉厚の唇、青藍の髪とが合わさると妙に艶かしく、蟲惑の匂いが漂って来る様な妙な感覚に囚われた。
「・・・それは私に言っているのか、小僧?」
小僧・・・
ドエインの姉は静かに俺を見詰めてそう言った。
金春色の瞳が細められ、醸し出す妙な雰囲気と相まって一瞬で辺りの緊張感が増すが俺は臆する事無く返す。
「あぁ、ピクリともしねぇじゃねぇか。死んだらどうすんだ」
俺は未だに動きを見せないドエインを指差しながら言った。
「・・・ほう?」
短くそう言ったドエインの姉は、俺をまるで猛禽類の様な目で俺を見て、そして笑った。
ゾクリと身体の奥から一瞬震えが来るが、俺はそれを悟らせまいと意識して余裕の表情を作りドエインの姉を見返した。
「・・・面白い。だがッ!」
今まで細められていた瞳を急に見開き、ドエインの姉は右足をまた持ち上げた。
!?
俺が反応する前にまたしても右足がドエインに振り下ろされる。
「このッ、程度でッ、死ぬ様なッ、鍛え方はッ、してッ、無いわッ!!!」
五度激しくドエインの頭に足を振り下ろし、最後にドエインの姉はまるでサッカーのインフロントキックを蹴るかの様に右足を大きく振り上げ、そしてドエインの胴体を蹴り抜いた。
胴体を蹴り抜かれ、ドエインは転がり、此方に吹き飛ばされる。
その間もドエインは無抵抗であり、動きを見せなかった。
おいおい・・・
やり過ぎだろ此奴
俺は段々と怒りが込み上げて来るが、まずはドエインの状態を確認しようと直ぐにドエインに駆け寄った。
「・・・・・・・・・」
良かった
気を失っているが、息はしていた。
ホッと一息付くが、骨折しているかどうか等は分からない為、直ぐにパトリックを呼ぼうとした。
「ドエインさん!!??」
すると、明莉が悲痛な叫び声を上げながら直様駆け寄って来た。
他の面々も此方に駆け寄って来ている。
俺は明莉にはあの力をこの場で使って欲しくは無いので、一応、釘を刺しておこと口を開いた。
「明莉、回復はパトリックに―――」
「お願い!治って!!」
俺が言い終わる前に、明莉は駆け寄りながらそう言って首から下げたマナストーンを両手で握り締めて叫んだ。
すると、まだ明莉がドエインに触れていないにも関わらず、走り寄る明莉の身体が乙女色に輝き出したと思うと直ぐに、ドエインの身体が翠色に光り輝き出した。
嘘だろ!?遠隔!?
そう思っている内に光は収束して行き、直ぐに光は消えた。
ドエインの身体は外見上は特に変化は見られなかったが、意識を直ぐに取り戻した。
「・・・ぅッ、あ、あれ?」
意識を取り戻し、地面に寝ていたドエインは上半身を起こして辺りをキョロキョロと見回す。
そして、ドエインの姉を確認してからハッとして鳩尾の辺りに手をやり、最後に明莉を見る。
「せ、聖女様、俺は―――」
「良かった!大丈夫ですか?痛い所は!?」
明莉はドエインの横に来て、少し涙を浮かべながらドエインに身体の状態を確認した。
「え、あ、はい。身体は大丈夫。聖女様、また俺に奇跡を・・・」
そう言ってドエインは明莉を見詰め、そしてその場で膝を着いて明莉の前に跪いた。
「一度成らず二度までも・・・改めて誓わせて下さい。俺は必ず聖女様をお護りします。この身に替えましても」
「そ、そんな・・・辞めて下さい」
明莉はそれを受けて恥ずかしそうにするが、ドエインの表情は真剣そのものだった。
お前の護衛対象は篤も入ってるんだけどな
等と思うが、それは今は心の中に留めておいた。
「・・・聖女とは何だ?それにその娘の力も」
いつの間にか俺達の元に来ていたドエインの姉は、ドエインを冷たい瞳で見下ろしながらそう言った。
「・・・・・・」
ドエインは立ち上がり、無言で姉を真っ直ぐに見据えた。
「・・・詳しく話を聞く必要がある様だな。お前もその仲間にも」
ドエインの姉はドエインと俺達を順に見てそう言った。
めんどくせぇ・・・
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