第68話:包囲網
出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。
無理だったら、優しく微笑んでください。
「一体どう言う事だ!?まさか聖女を名乗っているのかその女は!?」
大男はドエインに詰め寄る。
この感じを見ると、聖女を騙ったり、他の位が高い者を騙ったりするのはこの世界では重罪なのかもしれない。
「あ、いえ何、私は以前この方に助けて頂きましてね。それ以来、私が勝手に自分の中でこの方を神聖視しているだけです。やっぱり女性の聖なる存在って言えば聖女様でしょ?ここに本物の聖女様が居るのに、すみません。気が利かずに」
ドエインはスラスラと嘘や真実を交えてそう言った。
「む、そうなのか。てっきり詐欺を働いている輩だと思ってしまったが、そうだな。此方には聖女様が居られる。紛らわしい言い回しは控えて貰おうか」
「ハッ!申し訳御座いません!」
ドエインはキリリとした表情で胸を張りそう言った。
こいつ・・・
なかなかの食わせ物かもしれない
とりあえず偽聖女疑惑は何とか収まったので今後の方針の話に戻る。
「では、直ぐにでもここを発ち、一旦街道に戻るぞ!」
大男がそう言うと、部下の騎士が村の入口から森へと伸びる列の後ろへと駆け出した。
「イリア様は列の中程へ」
「分かりました」
イリアと呼ばれる聖女は大男にそう言われると騎士を数人伴って馬に乗り列の中程へと向かって行った。
「お前達も着いて来るであろう?」
大男は俺達にそう言った。
それに対しドエインが代表して応える。
「ハッ!御一緒させて頂きます!」
「我々は馬だが、この森を抜けるまでは速くは進まん。警戒しながら移動するので付いては来れるであろう。何、心配するな。置いて行きはせんよ」
「有難う御座います!」
そう言って大男が離れて行く。
すると直ぐにデス1が現れて、俺に耳打ちをした。
「ハル様、不味いです。街道へ続くこの道、コボルトに既に封鎖されています」
「何!?」
デス1の報告に俺は驚き、声を上げた。
それに気付き、周りの人間が此方を見る。
「封鎖って、道が封鎖されているのか?」
「いえ、森の中にウヨウヨとおります。恐らく数千はくだらないかと」
マジかよ・・・
ただのコボルトなら突破は出来ないのか?
「それは馬で突っ込めば突破は可能か?」
「不可能かと思います。物量に押し潰されてしまうかと」
不味いな
街道へはこの道以外の道は無い
デス1の話では、道以外にも森の中はコボルトに埋め尽くされている。
道を馬で突破するのも無理。道以外に逸れると馬はこの森の中ではなかなか使い辛い。
となるとバラバラに森に散って逃げるのも得策では無いだろう。
此方は五十程しか居ない
となると・・・
「八方塞がりじゃないか」
「兎に角一旦、聖女達を呼び戻すぞ」
アリシエーゼはそう言ってアルアレとパトリックに聖女達を呼び戻す事を命じる。
「俺は反対側に偵察に行く!」
「妾も行くぞ」
そう言って俺とアリシエーゼは入口とは反対に走り出した。
篤と明莉は他のメンツに任せるしか無い。
「何で囲まれてる事に気付かなかった!?」
「分からん!今も匂いがせんッ」
もし俺達の嗅覚を掻い潜れる能力があるとしたら、昨晩はそれを頼りにかなり気を抜いていた為襲撃されたら不味かったと思い知る。
急いで村の入口とは反対に向かう俺達であったが、直ぐに異変に気付いた。
「クソッ!もう囲まれてるんじゃないのか!?」
「その様じゃ!かなりの数じゃぞ!」
俺とアリシエーゼは嗅覚が使えない為に聴覚頼りに索敵を行うが、既に村の周辺は全て囲まれている事を察知する。
「マジでこんな数いつの間に展開したんだ!?」
「分からん!一旦戻るぞ!」
アリシエーゼの言葉に俺は瞬時に反応して反転し、仲間達の元に戻った。
俺達が戻って来ると既に騎士と聖女、そしてお供の傭兵達が集まっていた。
少し村の中央に移動した様だ。
「どう言う事だ!既に囲まれてるとは!?」
戻って来るなり、舌打ち―――基、イヴァンは俺達に怒鳴り散らす。
「反対側も包囲されてる。あの数をこの人数で突破するのは無理だ」
俺はイヴァンを無視して大男に言う。
「貴様ッ!俺を無視―――」
「イヴァン!少し黙ってろ!」
イヴァンが俺に突っかかって来るのを大男が一括して止める。
「ぐ・・・しかしッ」
「お前は分からんのか、此奴らの言ってる事が本当だと言う事に」
「・・・」
はぁ、本当に無能だな此奴
「しかし何故こんなに展開されてる事に今まで気付かなかった!?」
大男は自らに問う様に少し感情を昂らせて吐き出す。
「俺達も直前まで気付かなかった。多分何かカラクリがあるが、今はそこじゃない。多分もうあそこの道を強行突破するのも無理だし、バラけて森に入って逃げるのも無理だ」
「強行突破は出来んか?」
「数がヤバい。たぶん数に押し潰されて終わる」
「くッ・・・外の奴等と取り決めておくんだった」
「帰ってこなかったらどうするかとかって事か?」
「そうだ・・・」
そう言って悔しがる大男だが、まぁ今更だ。
今はこれをどうするかだが、突破が出来ないなら凌ぐしかない。
だが、それには不確定要素がデカ過ぎる。
コボルト達は俺達を既に完全に取り囲んでいるがまだ攻めて来る気配は無い。
何かを待っているのか分からないが、まだ攻めて来ないのなら今の内に此方は体制を整えるのがベストだろう。
チラリとイリアを見ると、騎士に囲まれているが、かなり不安そうだった。
一方、俺達の聖女を見るが此方は既に身体強化を発動させて臨戦態勢の様に見えた。
そんな二人の違いが何だか可笑しくなり、無意識に口角が上がっていた様だ。
「何を笑っているんだ?」
大男が俺に聞く。
「あぁ、いや。絶体絶命ってやつかなってさ」
「フッ・・・そうかも知れんが、俺はまだこんな所で死ぬつもりは無いし、イリア様は必ず御守りするぞ」
「あぁ・・・」
俺はそう返事をして、他の面々を見る。
聖女側は騎士が十、傭兵が正確には分からないが四十程だろう。
何も言わなくとも皆聖女を中心に円陣を組み周りを警戒している。
この辺りは何も言わなくてもそうしている辺り、流石だなと思う。
一方、此方の陣営も、篤と明莉とユーリーを取り囲んで円陣を組んでいる。
「さて、どうするか」
俺はそう言って考えるが、方法はもう一つしか無い様に思える。
ジェネラルをぶっ倒して、残りを排除する
それしか思い付かなかった。
だが、まだソイツは俺達の前に姿を現して居ない。
何故かは分からないが、聴力を使って探し出そにもこれだけクソみたいなコボルトが居るとその騒めきで特定の個体を見つけ出す事は困難だ。
隙を伺ってるのか?
分からない。分からないが、包囲するだけで終わる訳が無いし、いつかは姿を現すだろう。
俺達が消耗するのを待っているのか?
圧倒的物量があるにも関わらずそんな事をする意味が分からない。
何れにせよ、俺とアリシエーゼがここを離れるのは悪手であると判断した。
今の内に仲間達と話しておこうと思い、俺は篤と明莉に言った。
「篤、明莉。二人は自分の身を護る事だけに集中しろ」
「分かっている」
「はいッ」
何時もの篤と違い、緊張しているのが伝わるが、ガチガチになっている訳では無さそうだ。
明莉も特に恐怖した様には見えない。
「モニカ。ユーリーだけを護る事に集中しろ」
「えぇッ」
モニカも特に気負った感じは無く、ユーリーだけは護ると言う決意が感じられる。
一方、傭兵の四人はと言うと、此方は打って変わってその誰もが緊張した面持ちでいた。
「何、お前ら。緊張してんの?」
俺は務めて軽いノリで傭兵達に話し掛ける。
「そりゃするだろ・・・」
「何でだよ?たかがコボルトだぜ?」
「いや、普通のコボルト何かいくら数が居ようが負ける気はしねぇよ・・・けど、上位種の奴がもしモニカが言ってる位ヤバい奴なら・・・」
「それは俺とアリシエーゼが相手するから気にすんな」
「なッ!?」
「ハ、ハルくん本気!?」
「無茶ですよ!」
「・・・」
全員、俺の発言に驚きを隠せないで居るが、やっぱりそれが一番いいと思った。
「任せろよ。俺達がそのジェネラルだかミネラルだかを相手してる間、お前達は凌いでくれればいい」
「・・・なんだよミネラルって。殺れんのか?」
「余裕だろ」
そう言って俺は不敵に笑った。
その顔を見て傭兵の面々は何だか面食らった様な表情をしてそして―――
「ならさっさと殺っちまえよ」
「まったく・・・無茶苦茶ですよ」
「怪我したらボクが治すよ!」
「・・・姫様を頼みます」
皆、少し笑顔でそれぞれ俺への信頼を口にする。
別に俺を信じろなんて命令したりはしていない。
それでも何だかんだ今まで共に過ごして来た中で俺はこいつらと信頼関係を築いて来れたと言う事だろうかと少し嬉しくなった。
「さて、そろそろかのう」
アリシエーゼが言う。
確かにそろそろ此方から打って出てもいい頃合かもなと思い、最後に明莉に耳打ちする。
「あの力はアイツらの前では絶対使うなよ」
俺はそう言って聖女一団を顎で指す。
「え、でも・・・」
「明莉の力を見られたら行けない奴トップスリーには入ってる奴らだ。今後の為にもマジでやめとけ」
「・・・目の前で人が死にそうになっていたら使います」
そう言って明莉は俺を少し睨んだ。
それを見て俺は溜息をついた。
「はぁ・・・でもある程度の怪我ならパトリックや聖女だって治せるはずだからそっちに任せなよ」
「・・・はい」
絶対納得してないよなぁ・・・
まぁ、もし見られたら後で見てなかった事にすればいいか
そう思い俺はそれ以上何も言わずに明莉から離れた。そしてアリシエーゼの隣に並び立つ。
「さて、どうするんじゃ?」
「んなの決まってんじゃねぇか」
俺はそう言って円陣から抜け出す。
その姿を見て、聖女一団の騎士や傭兵がザワつく。
「お、おい、どうしたんだ」
大男もそれに気付き俺に声を掛けるが俺は無視した。
そしてある程度仲間から離れると大きく息を吸い込んだ。
そして、肺いっぱいに酸素を取り込んだ状態からそれを一気に吐き出し叫んだ。
「ぃい犬っころぉおお!!!!さっさと出て来いやぁああ!!!その獣臭せぇ息を今すぐ止めてやるからよぉお!!!!」
俺の声は村全体に響き渡る程大きかった。
こんなに声デカかったかな?と自分で思う程の声量であったが、ヴァンパイアになって身体能力が向上して肺活量も増えたのかなくらいで考えを辞めた。
俺の叫びは村全体に響き渡ったが、特に何も反応は無い。
まぁそうだろうな
この上位種は狡猾だ。俺の何となくの印象だが合っている気がする。
だったらこの位の挑発には乗らないだろう。
なので俺はもう一芝居打つ。
「何だよマジでしっぽ巻いて逃げたんじゃねーか?所詮犬だよ。大した事ねぇよ」
そう言って俺は仲間達の元へ踵を返す素振りをする。
するとどうでしょう――――
「バカめッ」
そんな言葉と共に俺の後ろに突如バカデカいコボルトが右腕を振り上げた状態で現れて俺の頭を刈り取ろうとした。
俺は踵を返す間際に端目それを捉えてほくそ笑む。
「バカはお前だよ糞犬」
「ほぉぉおおいさぁあ!!!!」
「ッ!?」
巨大なコボルトが腕を振り下ろす瞬間、横から突如現れたアリシエーゼがコボルトの頭部に飛び蹴りを食らわし吹き飛ばした。
アイツ、飛び蹴りの最中に影移動して、その勢いのままコボルトの横に現れたのか?
アリシエーゼの飛び蹴りを喰らい吹き飛んだ巨大コボルトに追撃を掛けるべく、俺とアリシエーゼは間髪入れずに走り出す。
「ナイスッ」
「ふふんッ」
俺の言葉にアリシエーゼは得意げな顔をした。
さーて、さっさと終わらせるか
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