第66話:再開
出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。
無理だったら、優しく微笑んでください。
モニカとユーリーの姉弟愛を見せ付けられ、何とも言えない気分になりながら、俺達は夜番を続けていた。
「それにしてもあそこの姉弟―――主に姉は異常だったなぁ」
「・・・そうじゃな」
「どうした?」
アリシエーゼが浮かない顔をしていたので尋ねてみた。
「・・・うむ、姉は異常じゃが、とりあえずユーリーも納得はしたのでええんじゃないかの」
「それにしては浮かない顔してるけど、他に何かあるのか?」
俺が再び尋ねると、アリシエーゼは少し間を置き答えた。
「・・・・・・ユーリーが片言だったが気にならんかったか?」
そんなアリシエーゼの言葉に、そう言えばそうだったなと思い出し頷いた。
「そうだな、確かに片言だった」
「あれなんじゃがな、ユーリーは妾が思っておる以上に精霊との親和性が高いのかも知れん」
「親和性?それは高いと不味いのか?」
「先程ユーリーに話したじゃろ、あまり精霊に近付き過ぎると戻って来れなくなると」
確かに先程ユーリーと話していた時にアリシエーゼはそんな事を言っていたなと思った。
「あぁ、言ってたな・・・まさか片言なのがその兆候だってのか?」
「・・・分からん。精霊と人間はお互い丁度良い距離感で付き合うのが望ましいんじゃ。精霊は無邪気での、無邪気故に自分達と親和性が高い者を寵愛する傾向にある」
寵愛?
精霊に愛されるって事だろうかと逡巡する。
「それだけ聞くとやっぱり精霊魔法使う奴にはメリットでありそうだけどな」
「バカを言うでない。低位の精霊ならそこまで問題は無いんじゃが、高位、それ以上の精霊神なぞに愛されてみよ。本当に戻って来れなくなるぞ」
「さっきから戻って来れないって言ってるけど、何処から戻って来れなくなるんだ?」
「・・・人間に戻れなくなると言う事じゃ」
人間に戻れなくなる?
一体どう言う事だ?
「・・・意味分からないぞ、精霊に愛されると人間に戻れなくなる?」
「・・・精霊神の寵愛を賜りし者は、精霊へと昇華すると言われておる」
昇華・・・
つまり精霊になると言う事だろうか
「なんだよそれ・・・ユーリーは精霊化しているって事か?」
「・・・分からん。じゃが、精霊へと昇華する過程で人間では無くなると言われておる」
「言われてるって、そりゃ伝説みたいな話か?」
「・・・そうじゃ、妾も精霊化した者なぞは見た事が無い。じゃが、高度な教育を受けられる、それこそ貴族なぞに産まれて、精霊魔法の才があると分かるとじゃな、そう言った精霊との距離感などを徹底的に教育される」
アリシエーゼは自分もそうだったと、少し悲しそうに言った。
「それを聞くと信憑性はありそうだが・・・ユーリーがそうだとは言えるのか?」
「・・・じゃから分からんのじゃ。人間性が無くなる、人が変わった様になる、暴力性が増す、人語を理解出来なくなる、人語だけでは無く、他にも持っていた知識が無くなる、思い出せなくなるなぞと言われておる」
「・・・俺には判断出来ないな」
「妾もじゃ。じゃが、不味い気がするんじゃ」
アリシエーゼにそこまで言わせるってだけで俺も何となく不味い気がして来たが、断定するのは早計だろう。
「もしそうだった場合、為す術無しなのか?」
「兎に角、あまり精霊に頼り過ぎない事じゃ」
「・・・さっきも言ってたな」
「・・・うむ、あれで聞き分けてくれれば良いが、モニカにも相談する必要があるかもしれん」
「そうか・・・とりあえずちょっと注意して見ていこう」
「・・・そうじゃな」
ユーリーにあまり精霊と関わらせないと言う事が果たして可能なのかは分からない。
分からないが、こちらでも少し注意しておくかと心に留めておく事にした。
そんな重い話や、取り留めのない話をしながらコボルトを警戒していたが、結局その夜は敵の襲撃は無かった。
翌朝、全員が起床して、センビーンで腹を満たすと、各々出発の準備に取り掛かる。
俺は特に荷物も無いので、昨日モニカに作って貰ったベルト剣帯を腰に装着し、調子を確認する。
「うん、いい感じだ。これなら気にせず動けそうだ」
そうしてそのまま外套を羽織ってこちらも動きを阻害しないか等を確認して行く。
俺の外套は、アリシエーゼの屋敷があったあの集落と言えばいいのか村と言えばいいのか微妙だが、傭兵達が暮らすあそこで貰い受けた物だ。
色は薄墨色でフード付き。ポンチョの様な形をしているが、前は胸の上辺りまでしか無く、腹の部分は空いている。
背中は腰の上辺りまで伸びているが、腰に装着した剣帯と短剣にはギリギリ干渉はしない。
外套を装備した状態で色々な体制から短剣を素早く抜き差しして確認していく。
「うん、まあ問題無いかな」
俺はそう言って寝泊まりした建物を出て、村を少し歩く。
他は皆まだ建物で準備をしている最中なので俺はその場で短剣を抜き取り、以前トイズから拝借した短剣術の知識と経験を使い、身体を動かした。
トイズの戦闘スタイルは、短剣で斬ると言うよりは、突きを多様し、手数で勝負するスタイルであった。
俺は始めはゆっくりと、右手に持った短剣をストレートに突き出す。
腕の角度等を確認しながら次は右足を出した状態から、その右足を軸にクルリと反転し、左手に持った短剣を身体を回転させながら逆手に持ち替える。
反転が終わると同時に逆手に持った短剣を仮想敵の首筋に突き刺すイメージを持って空を切らし、今度は流れる様な動きでその場にしゃがみ混んで右足で足払いを繰り出す。
その際、左手に逆手で持った短剣の柄の尻の部分を地面に押し付け軸とした。
足払いが空振りに終わった想定でそのまま地面スレスに身体を倒して一気に加速し、仮想敵の膝に両手の短剣を突き刺す動作をする。
そのまま状態を起こしつつ左右の短剣で下半身から上半身に滑らせる様に短剣の刃を立てて仮想敵を斬り付けた。
「ふぅ」
そこまでの動作を行って一旦確認を終える。
「柄を軸にするのはなかなか使えそうだけど、逆手に持ち替えるのがなぁ」
左手の短剣を瞬時に逆手に持ち替える際、一瞬頭を過ぎったのは、血濡れの手だった時に滑らないかと言うものだった。
一応短剣には柄巻として、細い革が片手巻きの様な形で巻き付けてあった。
「今は全然滑らないけど、血で濡れた時はどうかな」
もし逆手に瞬時に持ち替えた時に、滑って短剣を取り零す、又は取り零しそうになるのなら、最初から逆手に持つか、逆手での攻撃をパターンに入れるべきでは無いと思った。
「まあ徐々に慣らしていって検証しよう」
そう言って俺は短剣を鞘に収めて皆の所へと戻った。
建物に入るとすぐに小さなダイニングがあり、そのダイニングには、既に傭兵の面々が揃って居た。
俺が建物に入って来た事に気付き、ナッズが声を掛けて来た。
「おう、早いな。もう準備は終わったのか?」
「うん、別に俺は荷物何て無いしね」
そんな取り留めの無い会話をしていると、アルアレが此方に向かって言った。
「ここは狭いので外に出ましょうか」
俺達はそれに同意して外に出た。
外に出ると直ぐに俺の元へデス1(ワン)が何処からとも無くやって来た。
「おはようございます、ハル様」
「あぁ、おはよう。どうした?」
「はい。私共で、ここから街道へと抜ける道を警戒していたのですが、多数の人間が此方へやって来ます」
「なに!?」
デス1の報告では、街道からぞろぞろと人がやって来てると言う。
装備はバラバラで、国の兵はどうかは判断が付かなかったらしい。
「数は?」
「凡そ五十程かと」
「警備兵が呼びに言った援軍か?それにしては早過ぎるな・・・昨日の今日で人数集めて北の関所からここまで来れるとは思えない」
「はい。私の予想ではありますが―――」
デス1は予想であると前置きをして言った。
それは、その集団が聖女率いる魔界攻略の一団では無いかと言うものだった。
「・・・聖女は見たのか?」
「先頭集団は馬に乗り、全身金属鎧で身を包んだ騎士達の様でありました。その先頭集団の中に女性が一人」
っぽいな・・・
「聖女の一団と仮定して動こう。ナッズ、アリシエーゼを呼んで来てくれ」
「お、おうッ」
「そいつらは後どれくらいで此処に到達する?」
「恐らく、後一刻もしない内かと」
「・・・分かった。この事は後はこっちで対処するからお前達はコボルトの動向を探ってくれ」
「はッ」
俺の言葉にデス1は一度姿勢を正し、そのまま歩き去ろうとしたが、俺は呼び止めた。
「無理をして深入りは絶対するなよ」
俺の言葉を聞きデス1は深々と頭を下げた。
「・・・御意」
そしてそのまま村の入口から森へと消えて行った。
「アルアレ、聖女達は何故ここに来ると思う?」
「・・・途中で私達が見付けた警備兵の死体を同じ様に見付けていたのならば、情報収集のためかも知れないですね。ただ、あの死体がまだ残っているかは分かりません。魔物などに食われて骨しか残っていない可能性もあります。死体を見ておらずにこちらに向かっているのならば、恐らく馬を魔法などで補助して夜通し山脈迂回ルートを駆け抜けたと思います。ですので相当疲労しておられるでしょうし、物資の補給と休息目的では無いかと思います」
確かに、俺達は聖女達よりも早くあの宿場町を出たし、ゴブリンの都市を経由してかなりショートカットしてここまで辿り着いている。
そんな俺達に正規のルートで追い付くってのはかなり異常だ。
魔法の補助があるにせよ、どんだけ馬に鞭打って酷使してんだって話だ。
「成程ね。でもあの聖女の一団って数が五十も居たんだな」
「恐らく途中で魔界攻略の為の人員を募って集まった者達も含まれているかと思います。ホルスでもまだ人員募集はするでしょうし、ホルスに着く途中のミザウワの街等の大きな所でも募集するはずなので、もっと大所帯になるでしょうね」
「へぇ・・・」
よくあんなのに着いて行く気になるなと思ったがアルアレの前なので口には出さなかった。
「ナッズから聞いたが、聖女がここに来るのか?」
アルアレと話し込んでいるとアリシエーゼ達も集まって来た。
「あぁ、後一刻もしない内にここに来るみたいだぜ」
俺はアリシエーゼにここまでの話を纏めて話した。
「ふむ・・・そう言う事なら、とりあえず待つかの」
「いいのか?」
「どうせ今出発しても森の中でかち合うしの。じゃったら、一旦合流してから一緒にこの森を抜けた方がええじゃろ」
アリシエーゼは暗に聖女一団を囮にも肉の壁にも出来て便利だから合流しようと言っていると理解した。
「なるほどね、了解」
「では、待つとしようかの。聖女達が到着したら、アルアレ、モニカ、お主達でこれとまでの経緯等を説明して貰っても良いか?」
「はい、お任せ下さい」
「はいッ」
「あ、そう言えばあの二階の警備兵は?」
「あぁ、とりあえず目を覚ましたぞ。今は一階で食事をしておる。明莉が面倒を見ておるが・・・」
「ん?何かあったか?」
「・・・いや、何かあったと言うかの、まぁ、行けば分かる」
アリシエーゼの歯切れの悪さに疑問を持つが、行けば分かると言うので俺はとりあえず明莉の元へと向かった。
俺が建物の前に着くと中から何やら騒がしい声が聞こえて来た。
「だ、だから辞めて下さいって!」
「いえ!聖女様!私は分かったのです!貴方様こそ誠の聖女!」
「だ、だから私は聖女なんかじゃ―――」
何やってんだ?
聖女?
俺は首を傾げながら建物に入って声を掛けた。
「おーい、何やってんだ?」
「あッ!暖くん!?丁度良かった、もうッ、この人どうにかして下さい!」
俺が声を掛けると明莉は心底助かったと言う様な表情を浮かべて俺に返した。
明莉は今まで二階に寝かされていた男から足に縋られ、それを鬱陶しそうに足を動かし、必死に男の手を振り払おうとしていた。
どう言う状況だよ・・・
「あー、君、君。とりあえず女性の足をスリスリするのは止めなさい。変態さんになっちゃうよ」
そう言って俺は男の行動を止める。
「え?あ、ハッ!?も、申し訳無い!そんなつもりでは!」
男はそう言って明莉から離れる。
「あ、ありがとう暖くん。何かこの人が、私を見たら突然、聖女とか言い出して」
あー、まぁ何となく色々と想像は出来た
「とりあえず、もう体調は大丈夫なんですか?」
俺は明莉の足から離れて正座をしている男に尋ねる。
「お陰様でもう大丈夫だ!まだ戦闘が出来る様な体調では無いが、移動するくらいなら問題無い!あ、君は聖女様の一行の者か?」
「そうそう。ハルって言います。んで、名前を聞いても?」
「あ、申し遅れた!私はドエイン・ムルラーと申す。ムルラー家の次男で、北方警備軍街道警備隊第十五番隊隊長をしている!」
正座をしながら男はハキハキと答えた。
北方警備軍街道警備隊、ね
まぁ、予想は当たっていた訳だ
「そう。んで、早速で悪いんだけど、明莉が何故聖女?」
「それか。昨日、私の傷を癒してくれただろう!?あの傷は自分で言うのも何だが、通常の回復魔法でどうこうなる様な傷では無かった。しかも腕が無くなっていたのに、それも全て修復している。こんな奇跡を起こせて、しかもお布施も一切要らないと言うでは無いか!こんなに可憐な少女が聖女で無い訳が無い!」
可憐って今の流れで必要だったか?と思わなく無いが、まぁ大体分かった。
「あの時の事覚えているのか?言っちゃ悪いがもうほぼ死にかけてたけど」
「うむ!あの時私は聖女の愛を感じた」
あ、愛!?
「わ、私、そんな思いは込めてませんッ」
「いや、男女間の個人的な愛情とかそう言う話では無い。なんと言うか、慈愛の様な、あの時の光はとても暖かかった・・・私は聖女様に命を救われた!だからこの恩には必ず報いたい!」
元々熱い奴なのか、その聖女の慈愛と言うのに充てられてなのかは知らないが、ドエインは熱量高めで明莉に懇願する。
「だ、だから私は聖女じゃないですし、お礼とも要りませんってッ」
明莉は焦って拒否するが、ドエインは止まらない。
「その無償の奉仕精神を持ち合わせていて、しかもあの奇跡を起こせるのに聖女じゃ無いなんてそれこそ有り得ない!」
「そ、そんな事言われても・・・暖くん・・・」
明莉は困り果て俺に助けを求めた。
「ドエイン、明莉も困ってるし、今はそんな話をしている暇は無いんだ。とりあえず色々説明するから外に来てくれ」
俺は明莉とドエインの間に入りそう言った。
「む、そうであったのか。承知した。しかし、私は聖女様に必ず御恩を―――」
「あー、はいはい。後でね」
立ち上がりながらそう言うドエインを無視して俺はアリシエーゼ達が待つ所へ向かった。
そしてドエインに昨日から今日に掛けての事を掻い摘んで説明し終えた丁度その時、遠くから音を拾った。
「む、来た様じゃの」
アリシエーゼもそれに気付く。
程無くして、村の入口に馬に跨った騎士の風貌の男達が集まり、入口に放置されている警備兵の死体を確認していた。
直ぐに此方に気付き、死体の検分はそこで終わらせて、数人の騎士が此方に馬に跨りやって来た。
「お前達はこの村の生き残りか!?あの入口の死体は一体どう言う事なのだ!?・・・ん?その格好、お前は警備隊の者か!?」
馬に跨りながら上から物言うこの男―――
舌打ち野郎じゃねぇか
チッ
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