第57話:上位種
出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。
無理だったら、優しく微笑んでください。
「もういいだろ」
そう言って俺はアリシエーゼの首根っこを掴んだ。
「あッ、こら!何をする!?」
「うるせぇ、とりあえず落ち着け」
まるで猫を扱う様に俺はそのままアリシエーゼに言う。
「は、離せぇ!こ奴ら、妾をバカにしておるんじゃ!許せんッ」
「そんなんだからいい様に遇われるんだよ」
「むーッ・・・分かった、降ろせ」
俺はため息を一つついてアリシエーゼを降ろした。
アリシエーゼは持ち上がった服を直しつつ、恨めしがましく俺を睨み付け言った。
「絶対この村には何かあるぞ」
「だとしても、精霊が教えてくれないんだろ?なら別の方法で探すしかないじゃないか」
「そうは言っても、何もありゃせんぞ」
そう言ってアリシエーゼは村をグルリと見渡す。
俺もそれに釣られて見るが、建物は殆どが半壊か全壊をしており、所々火の手が上がっている。
「とりあえずさ、まずは火消しをしないか?」
「・・・そうじゃの」
アリシエーゼは同意して、傭兵達に火消しを指示した。
そこからは俺達も手伝い、ある程度の火消しを行うと全員が村の中央付近に集まる。
「こんなもんじゃろ」
「あぁ、それにしてもマジでこんな建物破壊したのかなコボルトが」
コボルトが村を強襲したのは分かる。多分そんな事もあるだろう。
だが、村の人を連れ去り、態々建物を破壊して行く意味が分からないし、これだけ破壊するのにどれ程の数のコボルトと道具が必要なのだろうか。
「・・・それなんだが、これは態々建物を破壊した跡では無く、戦闘の爪痕と言う事は無いだろうか」
篤が考えを纏めたのかそう言い出した。
「どう言う事だ?」
「そのままの意味だ。村を強襲し村人を襲う際に一緒に建物も壊れた」
「コボルトが繰り出した横薙ぎとかで家の壁とかが吹き飛んだと?」
「そう言う事だ」
「そんなコボルトが居る訳なかろう!」
アリシエーゼの反応は尤もだ。
俺もこの村に着く前に戦ってみて分かったが、コボルト単体は対して強くも無い。
ちょっと大きめの犬っころが二足歩行していて、偶に武装しているだけだ。
唯のコボルトに―――
―――唯の?
「上位種か」
俺の答えに篤は無言で頷く。
「ッ!?ハ、ハイ・コボルトが居たとでも言うのですか!?」
アルアレは叫んだ。
この世界で魔物の上位種がどれ程の存在かは分からないが、アルアレの反応を見る限り、魔物の上位種とは、通常種とは比較にもならないくらいの存在なのかも知れない。
「そのハイ・コボルトと言うのがどういったものかが分からないが、もしかしたらそれより上位の存在かもな」
篤はあまり表情を変えずに淡々と話した。
それを聞いた傭兵の面々は一様に表情を強ばらせた。
「あ、有り得ない・・・」
アルアレは声を震わせながら言う。
「こんな所にそんな奴が現れる訳ないよ・・・」
パトリックは険しい表情で篤の言を否定した。
「・・・」
ソニは無言で難しい表情をしている。
「ハハ・・・」
ナッズもいつもの強気な態度はなりを潜めて、覇気無くから笑をした。
「通常種では無いのなら、その上位種では無いかと思っただけだ。それに・・・」
篤はそう言って、地面に目をやる。
「一際大きい足跡がある」
足元を見ると確かに、他の犬っころの足跡とは明らかに大きさが異なるものが混じって居た。
「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」
全員が絶句し、足元を見続けていたが、アリシエーゼが口を開く。
「確かにそれを想定して見てみると、成程のう・・・踏み込み位置も・・・」
「・・・本当にハイ・コボルトでしょうか」
アルアレはアリシエーゼに言うがアリシエーゼはハッキリとは答えなかった。
「・・・分からん。篤の言う通り、もっと別物かもしれん」
「・・・姫様。直ぐに此処を発つべきです」
アルアレは少し語気を強めてアリシエーゼにそう進言した。アリシエーゼはそれを聞き俺を一つ見た。
「・・・」
考えてみるが、そもそもそのハイ・コボルトとやらがどれ程の強さなのかが分からない。
もしも桁違いに強く、このメンバーでは勝てないと言うのなら即時撤退が望ましい。
俺やアリシエーゼの様に身体が欠損する程の怪我を負ったりしたら治す術が無い。
あ、明莉が居るか
だが、それも明莉が戦闘不能になってしまえばお終いだ。俺は出来る事なら皆が平穏無事に、面白可笑しく生きて行く事を望む。
ただそれは、長いものには巻かれて、尻尾を隠し怯える事とは違う。
そんな思いの狭間で色々考えるが、情報が少なくて判断が付かなかった。
「ハイ・コボルトってそんなに強いのか?」
「いや、妾なら余裕じゃぞ」
「ふーん・・・あ、でもどれくらいの数が居るか分からないのか」
「それもあるんじゃが、もしハイ・コボルト以上の上位種だった場合、このメンツじゃと無理じゃ」
「ハイ・コボルト以上って?」
「テンプレじゃよ。将軍級やら皇帝級何ぞが存在するらしいが、まぁ、伝承等にしか出てこんわ」
「伝説のコボルト、ね・・・」
そんな超絶レアもんが今この時、この場所に湧くか?と疑問を呈さずにはいられないが、もしもそうだった場合は即時撤退が望ましいんだろう。
戦ってみたいなぁ
俺は単純にそう思った。
ただ、俺も万全では無い。装備も無いし、魔力も無いので、全力を出すと身体が着いていかない。着いていかないと言うか、壊れる。物理的に。
直ぐに修復はするが、それは相手に与えるダメージも減衰する事を意味する。
それに俺やアリシエーゼは全然そんな感じをおくびにも出さないが、不老不死だが、他の者は違う。
明莉と言う、破格の回復魔法?が使用出来る者も居るが基本的には身体は欠損したらほぼ治せないし、何より、死ぬ。
そんなリスクがあるのにアルアレ達が恐れる様な魔物の上位種とやり合いたいかと言われれば、それは考え、悩んでしまう。
「なあ、俺達の傷の修復機能って万能か?」
俺はアリシエーゼに聞いてみた。
「万能とは?」
「この機能って体感してみたけど、なんと言うか、タイムラグほぼ無しに完全に治ってるじゃん?」
「うむ」
「例えば身体が全て無くなった、消滅したとしても復活出来るのか?」
「・・・そんなの知らんのじゃ」
「何でだよ?」
「そんな状態になった事無いに決まっておろうッ」
アリシエーゼはイラついた様に吐き出した。
そんな怒らなくてもいいじゃないか・・・
「じゃあちょっと今、消滅してみてよ」
「嫌じゃよ!?」
こいつ本気で言ってるのか!?みたいな目で俺を見て叫ぶアリシエーゼだが、完全に身体が消滅してしまってから復活出来るかどうかは重要な気がする。
消滅してしまっても復活出来るのなら、そう言ったリスクも許容して色々出来るが、復活出来ないのなら、ある程度安全マージンを取って行動をせざるを得ない。
「頭を吹き飛ばされてもちゃんと治るのか?」
「あぁ、言い忘れておった。頭の損傷はなるべく避けるが良い」
「なんで?修復されない?」
「治るには治るんじゃが、時間が掛かるのじゃ」
「へぇ・・・どのくらい時間掛かるんだ?」
アリシエーゼは、うーんと唸って少し考えてから口を開いた。
「前に一度の、ヴァンパイアの始祖の一人と殺り合った事があるんじゃが・・・」
「えッ!?始祖と戦ったの!?」
「・・・そうじゃが?」
「そ、そう・・・」
前にアリシエーゼから、吸血鬼協会みたいな話は聞いたが、そこに始祖がらどうこうと言う話が出て来たなと思い出した。
いや、でもその時は始祖と殺り合ったなんて話は・・・
「・・・何じゃ?」
「い、いや、何でもないて・・・」
「・・・ふんッ、まあ良い。して、その時にの、ちょっとばかり油断して頭を吹き飛ばされたんじゃ」
「え・・・大丈夫だったのかそれ?」
「大丈夫じゃから今こうして此処に居るんじゃろうが」
「そうだけどさ・・・」
このアリシエーゼが負けたと言う事であろうか。
それがまず想像出来ない。それにヴァンパイアの始祖を超えた存在と自分で言ってなかっただろうか・・・?
「頭が吹き飛ばされてからの、気付いたら半日程たっておった」
「頭吹き飛ばされた後よく無事だったな。俺だったら動かなくなったんだったら、そのままトドメを刺すか、無力化するけどな」
「その後再戦した時に聞いたんじゃがな、どうも丁度日の出の時刻が迫っておっての。そのまま放置したらしい」
「で、気付いたら昼頃になってた訳か」
「そうじゃ。勿論、その後再戦してボコボコにしてボロ雑巾にしてやったがのう!」
そう言ってアリシエーゼはワーハッハッと豪快に笑った。
「その始祖はどうなったんだ?」
「殺しはせんかったが、ボコボコにして配下の前に素っ裸で貼り付けにして、ちょーとばかり直射日光を浴びせる刑に処してやったわい!」
そう言ってまた豪快に笑いだしたアリシエーゼを見て、その始祖をちょっぴり哀れんだ。
火あぶりじゃなくて、直射日光に晒したって・・・
その始祖よく生きてるな・・・
「そ、そうか・・・トドメ刺さないとか、そいつに相当恨まれてるんじゃないか?」
「恨んでおるじゃろうの。じゃが、彼奴は今、復活に向けて必死に魔力を掻き集めたり色々しておる様じゃし、完全復活までまだ相当時間は掛かるじゃろうのう。まぁ復活したとてまた返り討ちにするんじゃがな」
アリシエーゼはそう言ってふふんッと得意げに鼻を鳴らした。
それを見て、何となく、ヴァンパイアを超えて、孤高の存在となり、一人ぼっちになってしまったアリシエーゼは、その始祖をなんと言うか、一緒に何かを共有出来る、友達みたいな感覚でいるんだろうかと邪推した。
まぁ、どうでもいいか・・・
「兎に角じゃ!頭は吹き飛ばされるで無いぞ?戦闘中じゃったら詰むと思っておけ」
「・・・あいよ」
俺はそう返事をしてまた思考を巡らす。
が、結局は気を付けるしか無いし、今、脅威となり得る上位種であろうコボルトの事は何も分かっていないんだから、考えても仕方が無いとすぐに諦めた。
「あ、あの・・・」
それまで黙って俺とアリシエーゼのやり取りを聞いていた明莉が遠慮がちに口を開いた。
「どした?」
「い、いえ。ちょっと話を聞いてて分からない事があって・・・」
「・・・何?」
「ヴァンパイアだとか、頭が吹き飛ばされて復活だとか・・・ どう言う事ですか?この世界にはそう言ったヴァンパイアだとか御伽噺みたいな存在がいるんですか?」
「あ・・・」
明莉に俺とアリシエーゼがヴァンパイア―――それですらもう無い気がするが―――である事をまだ言って無かった事に気付く。
・・・どうしようかな
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