第39話:討伐依頼
序盤、特に1章辺りはすみません、初投稿でかなり拙文であったりしますので、時間があればその内表現や台詞回し等大幅に変更予定です。
それまでは何卒、生温かい目で見守ってやって下さい。
宿場町を出発して早数時間。相も変わらず何も起きない街道を馬車で揺られていた。
あ、そう言えばあの宿場町の名前聞いてないや
まぁいいか
以前にも聞いた話だが、整備という整備がされている訳では無いが大きな街道などは人通りが多い事もあり、国が、領主が定期的に巡回などを行っている。
街道で旅人や商人が襲われる事になればそれは国や領主にとっては不利益以外の何者でもない為だ。
定期的な巡回がされている事もあり街道には獣や魔物はあまり姿を現さない。
街道と言うくらいだから別に森の中では無いし、この街道で言えば少し横を見れば森も見えるが基本的には平地と言う事もありかなり見通しが良い。
なので何かが現れたとしても、瞬間移動でもしていきなり目の前に現れない限りは多少警戒して移動でもしていれば大抵は事前に危険を察知出来る。
移動も馬車や馬での移動が基本だし、歩きの集団も居ることには居るが少数だし、事前に危険を察知出来れば逃げる事も出来る。
つまりは街道は比較的安全。
安全なのだが・・・
「あぁぁ!暇!暇過ぎる!暇はお肌の大敵ー」
俺は馬車の中で大の字に寝そべり暇と言う悪魔に悪態を付く。
「でも危険な世界と聞いていたのでちよっと安心です」
俺の悪態を聞き、明莉は薄らと笑みを浮べて俺に言って来た。
「さっきも言ったけど、街道は比較的安全みたいだしね。傭兵団もいるし低級の魔物くらいしか出ないこの辺じゃ更に安全みたいだよ」
俺は寝そべり続けながら明莉に答える。
「定期的に兵が巡回していると言っていたがまだ出会っていない。本当に巡回しているのか」
俺達の会話に篤も参加する。
「それは俺も思った」
確かに今のところそんな巡回兵と遭遇していないので巡回を本当にしているのか疑わしくなる。
「この辺りは関所より内側じゃから本来なら数度は遭遇しても良いと思うんじゃがなぁ」
会話にアリシエーゼも参加してきた。
「巡回数が減ってたりするのか?」
「わからん。わからんがちときな臭いのう」
アリシエーゼはそう言って眉をひそめた。
「なんでさ?」
「聖女を見たじゃろ。今丁度ホルスへ遠征に向かう所じゃった。教会はもの凄い規模がデカい。つまり権力も言わずもがなじゃな」
「まあそれは分かる」
「そんな強大な権力を持った教会が何が何でも達成させたい悲願が魔界攻略、魔族の殲滅じゃ。教会が張り切って魔界遠征を行うんじゃから国は後ろ盾として全力でサポートをするじゃろうよ」
あぁ、そう言う事か
つまりは魔界に到着する前に聖女に何かあっては一大事どころでは無い訳で、遠征期間中は国内の治安維持も通常より力を入れてるって訳だ
本来なら
「この時期本来ならもっと厳重に街道とかも巡回があっても可笑しくないって事か」
「そうじゃ」
「だったらどうして――って最初に戻るな」
「うむ」
考えた所でここで原因など分からないので考えるのを止めた。それよりもこの暇な時間をどうするかである。
とりあえず他愛の無い話をして盛り上がったりもするのだが、結局すぐ暇になる。
異世界ってこんな暇なの・・・?
そんな訳で何事も無くその日は夜を迎え、安定の外での野宿だ。
宿場町でソニは食材の他にも調理器具を数点購入しており、簡単な料理なら作れると言う事であったが、生肉などの材料は購入していない為、作れるものにも限りがあった。
今晩はとりあえず、ボアの肉を塩漬けにして乾燥させたジャーキーを入れて出汁を取りほんの少しの香辛料で味付けしたスープが出された。
後は遂にここで出ましたテンプレ黒パン!
聖典では黒パンは硬い!不味い!がテンプレだったが実際は・・・
うん、硬い・・・
え・・・ホントに硬いよこれ
スープに付けて食べるしかないじゃん!
「まぁ、センビーンよりマシか・・・」
「すみません、こんな物しか作れず」
俺のボヤきを聞きソニが謝って来た。
「あ、いや、別にソニを責めてるとかじゃないから!」
「贅沢言いおって。黙って食べんかッ」
アリシエーゼが此処ぞとばかりに偉そうに説教してくる。
「くッ・・・まさかお前なんかに言われるとは」
「なんかとは何じゃッ」
とそんないつものくだらないやり取りをしつつ食事を取り、その後は自由時間。
影術の練習は続けてはいるが一向に上達する気配は無い。
練習が飽きて来るともうやる事はほとんど無くなるので後は寝るだけである。
俺は寝なくても生きては行けるが眠くはなる。
なので極力人としての生活は意識して生活する事にしているので、今日は寝る事にした。
「あーあ、ネームドモンスターでもポップしねぇかなぁ」
フラグが立ちます様にと焚き火の近くに寝転がり眠りに着いた。
そして翌朝、フラグが立たなかった事に落胆しつつ移動を開始した。
その日も特に何かあった訳では無い。っと言うか何も無かった。
そして次の日も何もない日となってしまった。
一体どうなっているんだ・・・
これじゃ只、馬車に揺られてケツが痛くなって、侘しい飯を食べる苦行の旅なのでは!?
夜にセンビーンを食べて影術の練習を終えた俺はこの状況に絶望した。
もう耐えられなくなってきてしまったので、何かイベントを起こせる方法は無いだろうかと考える。
この辺の森を焼き払って仕舞えば、森に住む魔物とか大騒ぎして出てくるんじゃないか?
いやいや、それはダメだろう
他に何かないか・・・
ダメだ
特に何も思い浮かばない
イベント発生条件を見い出せず、俺は頭を抱えて苦悶する。暫く焚き火の周りを頭を抱えてグルグルと回っていて気付く。
これはどうだろう
俺は両手を頭上に掲げ、夜空を見上げながら身体をユラユラと揺らす。
暫くしたら上半身はそのまま今度は足はボックスを踏む様に動かす。
そのまま俺は無心でイベント乞いの舞?を踊りながら祈った。
お願いしますー
神様ー
仏様ー
イベントが欲しいですー
そんな大きなイベントじゃなくていいですからー
日常生活にほんの少しのスパイスをー
「何やってるんですか?」
大事なイベント乞いをしている最中に突然声が掛けられる。
こんな大事な時に誰だと振り返るとそこには若干――そう、若干だが引いた顔をした明莉がこちらを少しビクつきながら見ていた。
何だよその顔は
「何って祈ってるんだが?」
「だ、誰に何を祈ってるんですか変な踊りをして」
へ、変だと!?
「誰にって祈るのは何か神様的な奴にだろ?そいつにイベント発生する様に祈ってるんだ」
「え、あの、全然意味が分からないんですが・・・」
意味が分からないのは俺の方だ
この説明で理解出来ない意味が分からない
「ん?だから、イベント発生します様にって神様に祈ってるんだって」
「・・・・・・・・・ぜ、全然分からないんですけど!篤さーん」
そう言って明莉は篤に助けを求めた。
いやいや、なんだこれ?
「私は暖が頭が可笑しくなっていたのは昨日辺りから知っていたが」
「えッ!?そうなんですか!?」
いやいや嘘に決まってるでしょ
「妾も丁度、頭まで可笑しくなってしまったかと思っておったところじゃ」
「酷いなッお前ら!って言うかアリシエーゼ!までってどう言う事だ!頭までって!」
「どうもこうもその通りじゃぞ?」
「うん?」
「なんじゃ?」
お前が何だ!!
「まぁいい・・・兎に角、毎日が暇で死にそうなんだ」
「そんなにポンポンと厄介事が舞い込んで来ても面倒じゃろ」
「お前、ホントに腐ってたのか?アァッ!?」
「な、なんじゃ!?い、いきなりキャラ変とかするでないッ」
「うるせぇな。明日何か起きなかったら俺はもう帰るからなッ」
「帰るってどこにですか!?」
「明莉、こやつの言う事を一々真に受けるでないぞ」
どうやら明莉はお家に帰れるかもとか少しばかり思ってしまった様だ。
すまんすまん
さて、ひと騒ぎしたし今日はもう寝ますかね
神様ー
言いましたよー
明日こそ頼みますよー
翌朝、何だかとてもスッキリと起きれた気がした。顔を洗い、センビーンで朝食を取ると何だかとても清々しい。
はて?何でだろうか?
そんな訳で今日も馬車に揺られながらの街道をひた走ると言う旅が始まった。
途中で馬の休憩がてらに昼食をクソみたいなセンビーンで済ませ、また嫌々と馬車に乗り込もうとするとアルアレが切り出した。
「すみません言い忘れていました。飲料水の補給をしたい為に今日は何処かの集落なりに立ち寄りたいです」
「そうか、すっかり忘れておったわ。この辺りに河は無いのか?」
「森の中に小川が通っている様なのですが、集落はこの辺りは結構多いと思いますのでそちらの方が良いかと」
「ん?何故じゃ?」
「皆さん、毎回食事がセンビーンと言う旅はなかなか慣れていない様子なので、集落で何か食材も手に入れられないかと考えまして」
「なるほどの。それなら妾は別に良いぞ」
アリシエーゼとアルアレの会話を聞いていた俺と篤、明莉はもしかしたら今夜の食事は久々にセンビーンじゃないかも!?と期待に胸を膨らませた。
ボア肉のジャーキーは、この世界にはセンビーンがあるからか、保存食としての役割はあまり無く、どちらかと言うと酒の肴と言う扱いであった。なのでちょっとお高めなのだ。
そんな事もあり、ソニはあまり購入しなかった様であった。
そんな事気にしなくてもいいのにな
あの聖女とか言うクソ共から金はたんまりと頂いた訳だし
「では途中街道から逸れる道がありましたら集落や村へ続く道だと思いますので其方に向かいます」
「うむ」
「パトリックもそう言う事で頼みしたよ」
「うん、分かったよ」
そんなこんなで俺達は街道へ戻り、集落へ続く道を探す事になった。
「集落見付かるといいな」
馬車に揺られながら俺は誰に言うでも無く呟く。
「そうですね」
すかさず反応したのは明莉であった。
ふふ、良い良い、分かるぞその気持ち
「この辺りは集落が多いと言う事だが?」
篤はアリシエーゼに話し掛けた。
「妾はこの辺りに来た事が無いから知らんッ」
「アルアレくんは知っていた様だがこの辺りに来た事があると言う事か」
「そうでは無い。彼奴も来た事は無いじゃろうが、まぁその辺りは彼奴も優秀な傭兵と言う事じゃ!」
そう言って自分の事の様に誇らしげに胸を張るアリシエーゼ。
「上がダメだと下が育つと言うしね」
「あぁ、成程」
「こ、こらぁ!誰がダメな奴じゃ!篤も納得するでないッ」
「いや、しかし事実だろう?」
「ち、違うわいッ」
そんなやり取りを見ていた明莉が突然吹き出し笑った。
「あはははッ」
突然だったし、その笑顔が本当に無邪気な笑顔であったからか三人ともやり取りを忘れて明莉を見た。
「はぁぁ、皆さん面白いですね」
そう言って明莉は笑い過ぎて涙が出て来たのか右手で一度涙を拭った。
「何を言っておる。お主もさっさと加わらんか」
「え、私もですか!?」
「当たり前じゃろ。ほれこ奴らを見てみい」
そう言ってアリシエーゼは俺と篤を見る様に明莉を促した。
「アリシエーゼ弄るの面白いぞ」
俺はそう言って明莉に笑い掛け、篤は無言で頷いた。
「妾を何だと思っておるのじゃ!」
「阿呆な玩具だよ」
「な、なな、なんじゃとー!」
そしてまたじゃれ合いに発展する。
「まあまあ、ダメなこの方が構ってあげたくなるじゃないですか」
明莉はそう言って宥めに入った。
明莉さん、それディスってますぜ
「明莉・・・お主は妾がダメな子じゃと申すのか・・・」
「え、あッ・・・」
アリシエーゼの指摘を受け明莉はしまったと言う様な顔をする。
「きぃぃぃッ!なんて奴じゃ!酷いぞ明莉!お主だけは妾を理解してくれていると思っておったのにッ」
「あ、分からないと言えば、アリシエーゼさんは何故そんな、妾とか、何とかじゃとかって言う話し方をするんですか?」
「え・・・」
明莉の言葉に固まるアリシエーゼ。
「こんなに小さいのに何でそんな言葉遣いするかずっと気になってたんですよね」
またまたディスる明莉。
「え、あ・・・え?」
キョドるアリシエーゼ。
「暖くんは何でか知ってます?」
「それはな、アリシエーゼは遥か太古から生きるヴァンパイアなんだよ。こんななりだがそれはもう古い時代から生きてるから、昔の言葉遣いになっちゃうんだ、ふふ」
「あ、なるほど!そう言うごっこ遊びだったんですね!納得です」
「・・・・・・・・・」
アカリスゲェェェ!!
やるじゃん明莉!
「でもずっとその役になり切ってて凄いですね!全然ブレないと言うか」
明莉に追い討ちを掛けられてアリシエーゼは・・・
うん、限りなく不死だけど、限りなく死んでるね!
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたんですか、アリシエーゼちゃん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
明莉の問にアリシエーゼは答えず只只固まっている。
「あの・・・?」
「・・・・・・明莉」
「はい?」
「わ、妾に何か恨みでもあるのかぁぁあッ!」
「え、えぇぇッ!?」
突然喚き出したアリシエーゼに面食らい、何でそうなったのか本気で分からないと言った表情の明莉を見て、俺と篤は笑いを堪え切れなかった。
「ギャーハハハハハハッ!!ざまぁァァァ!!アリシエーゼお嬢ざまぁあッ」
「暖、そんなに笑ったら、ふふ、悪いだろう、はふふ」
「キィィィイイイイッッ!!!もう知らん!お主らなど知らんからなッ!!」
完全に泣きながらアリシエーゼは霧になって馬車の外に飛び出して行ってしまった。
何処に行ったのかと思っていたら、御者台の方からパトリックの慌てた声がした。
「え、うわぁッ!?ひ、姫様!?いきなりどうしたんで――え?な、何で泣いてるんですか!?」
「うわぁぁあん!パトリック!彼奴らが酷いんじゃ!妾の事ぉ、妾の事をぉぉ!」
「と、とと、兎に角落ち着いて下さい、は、鼻水かとんでもな――」
「うっさいわぃ!!」
どうやらアリシエーゼは御者台でパトリックに慰めて貰っている様だ。
「おぉッ!?あれが噂の種族固有スキルの!?」
「そうみたいだな、俺も初めて見たけどホントに霧みたいだ」
俺と篤は吸血鬼の種族固有スキルを生で見られた事に盛り上がる。
「あ、あの・・・私何かいけないこと言ってしまいましたか・・・?っと言うか、アリシエーゼさんがなんか霧みたいになった・・・様な・・・」
あ、明莉はこう言った事の予備知識とか無いんだったか
と言うか、俺とアリシエーゼが吸血鬼なのも黙っていたんだった
「あいつも転生する時に神様になんか能力貰ったみたいだから、それだと思うよ」
とりあえず誤魔化しておいたが、明莉に黙っておく理由も無い気がするな
今度話してみようか
その後、あかりに盛大にディスられたアリシエーゼは随分永い事不貞腐れていたが、最後には次の街で買い食いし放題と言う餌に釣られて機嫌を直した。
そんな出来事の途中で一行は街道から逸れる道を見付けてそちらに進路を取っていた。
脇道に逸れる際、二台の馬車は止まり、方向をお互い確認した。
普通なら街道沿いに村があるか、村がある辺りに街道が出来るかだが、森の中へと道が続いていた為、パトリックはたぶん凄く小さな村か集落では無いかと言っていた。
後は脇に逸れる道も殆ど隠れていて分り辛かったらしい。僕じゃないと見付けられないんじゃないかなと言っていて、現に俺は街道沿いに馬車を走らせながらなら確実に見落としているであろうと思った。
こんなのよく見付けられたな・・・
パトリックって本当は斥候なんじゃ・・・
そんなパトリックの言葉通り、脇道に逸れてから小一時間程で着いた村は寒村と言うのが相応しい、何とも寂しい村であった。
「なんだここ、こんな所に集落があって誰得なんだ?」
俺は集落を見ての率直な感想を口にする。
「確かに街道からもそれなりに離れた場所であるし、何か明確な目的が無いとこんな場所に集落を作る理由が思い付かんな」
篤もそれに同調する。
「さあの、何かこの辺りで特産品が取れるのか、単に木こり達の集まりなのか、まあどちらでもよかろう。目的はあくまで飲料水の確保じゃ」
こんな集落の事等どうでも良いと暗にアリシエーゼは告げる。
「ここで食材を分けて貰えるんでしょうか?」
明莉は・・・まず第一に食材の心配をしていた。
んー、食いしん坊さんなんだから
「とりあえずこの集落の者に話を聞かんとな。アルアレ頼んだぞ」
「はい」
アリシエーゼの言葉にアルアレは素直に従い集落の奥へとナッズと共に歩いて行った。
まだ夕方前だと言うのに集落の周りには人が見当たらない為、アルアレは集落の中で一番大きな家に向かう様であった。
「僕は馬を見てますね」
パトリックはそう言って集落の入口付近に停めている馬車を二台とも面倒見る素振りを見せていた。
「妾達はどうするかの。特に商店も無さそうだしこの辺りでもぶらつくか?」
アリシエーゼはそう言って俺に問い掛けてきた。
「そうだなあ、でもアルアレ達もすぐ戻って来るかもしれないしここで待ってた方がいいんじゃないか」
そんな話をしていると、ナッズが走ってこちらに戻って来た。
「姫、ちょっと一緒に来てくれ」
「どうした、何かあったか」
「いや、何かあった訳じゃないんだが、アルアレじゃ判断付かないからって」
「ふむ、では行くとするか。お主達も来るであろう?」
「当然」
俺が答えると、篤と明莉も頷く。
「私はパトリックと一緒に居ます」
ソニは何かあった時の為にパトリックと共にする様であった。
「うむ、そちらは頼むぞ」
「はい」
アリシエーゼはソニにそう言い、集落の奥へと歩き始めた。俺達もそれに続き集落の中を歩く。
集落は特に変わったものは見当たらなかったが、住人は皆、家の外へは出ていない様で様子と言う意味では変な感じがした。
「何かに怯えているのか?」
「そんな感じじゃの」
「これは周囲に魔物が出現して集落の――」
「ストップ!ネタバレ厳禁!」
「む、そうか、分かった」
俺は篤が最後まで言うのを阻止したが、まあ俺も篤と同じ考えに至った。アリシエーゼもそう考えている事だろう。
明莉は何も分かって無さそうだが・・・
「ここだぜ」
そう言ってナッズは集落にある家の中で一番大きな建物の入口の前に立った。
「村長かなんかの家か?」
「まあそんな感じだ」
ナッズはそう答えて入口の扉を片手で開け放ち先に中に入る。俺達もそれに続き家の中へと入っていった。
「この方が我々の代表です」
俺達が中へ入ると、入口からそのまま真っ直ぐに進むと大きめのリビングがあり、その一番奥に居たアルアレが目の前の初老の男に語り掛けた。
「何と!?まだ成人もしておらぬ子供では無いか?」
「いきなり失礼な奴じゃな」
男の不用意な発言に気を悪くするでも無く、アリシエーゼはふんと鼻を鳴らした。
「私達は年齢の高い者に仕えている訳では有りません。仕えるべき者に仕えているだけですよ」
アルアレはすかさず男を窘める。
「あ、いや、失礼しました。想定外の事に驚いただけです。気を悪くしたのなら申し訳ない」
そう言って男はアリシエーゼに頭を下げた。
「よい。で、話とはなんじゃ」
アリシエーゼがさっさと要件を言えと促す。
「私からお話ししても宜しいですか?」
アルアレが男に尋ねると男は頷いて同意した。
「まずこの集落で飲料水を頂く事は構わないそうですので後で補給は行います。それで食材に関してなのですが、分けて頂くことは可能ですが、条件があるそうです」
「ほう?」
アルアレの話を聞き、アリシエーゼの目が怪しく光る。
「何でも先日からこの辺り一帯に異様な数のゴブリンが出現する様になったらしく、それを、またはその元凶を絶ってくれないかとの事です」
「ふむ」
とりあえず俺達は一切口を挟まない。
こう言うのは慣れている奴に任せるに限る。
これでアリシエーゼがまったくの世間知らずのお嬢様で簡単に相手に手玉に取られそうな奴なら口を挟んだりするかも知れないが、こう見えてアリシエーゼは不老でそれなりに生きている。
前世での事も考えればそんな事は心配するだけ無駄だろう。
「何故妾達に頼むのじゃ?ゴブリン程度お主達でもどうにかなろう」
「数匹程度なら苦はなく追い払えるのですが、如何せん数が多く・・・」
「どの程度じゃ」
「三日前に集落に十数匹が侵入しようとして来ました。その時は丁度この村の若い連中が狩りから帰って来た所だったので、そのまま武器もあったので撃退出来ました。次の日も十数匹が村の前まで来たのですが、私共も警戒してその日は警備をらしていましたので、ゴブリン共もそれに気付いて帰って行きました」
「帰ったとは巣にか?」
確かに今男は帰ったと言ったな
つまり巣や寝床があり、そこに帰ったと言う意味だろう
あれ?
なんだ
何か違和感を感じる
「はい。昨日の事ですが、十数匹でも危ないのに、もしそれ以上の集団を形成していると厄介では済まないので村の若い連中数人に森の中を探して貰いました。ここより更に山側に森を入って行くと、麓の少し開けた場所に出ます。その開けた場所にキャンプを張っており、更に山には洞窟なども存在するのですが、そこにも住み着いていそうだと。」
「成程。では討伐依頼と言う事じゃな?」
「は、はい。そうなります」
おぉ!討伐依頼!
昨日の俺のイベント乞いが絶対に効いてるぞ!これ!
「あいわかった。それでゴブリンの巣を発見!した訳じゃな。数はどれくらいじゃ」
「少なくて五十、多くて百と言った所であろうと若い者は」
まただ
なんだこの違和感は
「そうなると確かにここで対処するのは無理がありそうじゃな。昨日は襲撃!等は無かったのか?」
「はい。今日も特には」
??
アリシエーゼの話し方に違和感を覚える
「なるほどの。では今は襲撃に向けての準備段階と言ったところかの」
「そうですね」
アリシエーゼの予想にアルアレが肯定する。
「それで引き受けて頂けますかな?」
「妾達は傭兵団じゃぞ?傭兵は報酬次第で何でもやるぞ。報酬次第でな」
そう言ってアリシエーゼは二チャリと笑った。
その顔久々に見た気がするな、うん
ブクマ、評価、感想、レビュー等頂けると泣いて喜びます。




