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異端の紅赤マギ  作者: みどりのたぬき
第1章:異世界と吸血姫編
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第37話:中央広場

序盤、特に1章辺りはすみません、初投稿でかなり拙文であったりしますので、時間があればその内表現や台詞回し等大幅に変更予定です。

それまでは何卒、生温かい目で見守ってやって下さい。

 一件目の店を早々に立ち去り、若干物足りなさを感じつつ、次なる店を探し始めていた俺達だったが、中央広場あたりに差し掛かった辺りで、何とも美味そうな匂いが鼻腔を擽って来たのでその匂いの方へ目を向けた。

 中央広場は東西南北に道路がそれぞれ伸びており、広場の広さも南門の入口付近にある広場よりも倍以上の大きさがあった。

 その中央広場は真ん中にどこの誰かも分からない大きい銅像があり、その周りに無数の食べ物や飲み物を扱う屋台が出店していた。


「おぉー、異世界屋台だー」


 俺は思わず声を上げた。

 ナッズは「異世界?」とか言って首を傾げていたが無視だ無視。


「色々ありそうじゃの」


「そうですね、何があるんでしょうか」


 アリシエーゼと明莉は近くの出店を覗き込みはしゃいでいた。


「お前らは朝食食ったばかりじゃないか」


「むッ、屋台は別腹に決まっておろうがッ!のう、明莉?」


「え、あ、はい・・・」


 明莉は俺の、さっき食べたばかりでまだ食うのかよ的な雰囲気を敏感に感じ取り、恥ずかしそうにモジモジとしていた。


 アリシエーゼもこのくらい、いや、せめて一割くらいの恥じらいと言うものがあれば・・・


「あー!さてはお主だけ食べようなどと考えてはおらぬだろうなッ」


 俺の考えを知ってか知らずかアリシエーゼは食い意地全開で俺に絡んで来た。


「おらぬも何もそう考えてんだよ。誰かが俺の朝食食っちまって腹が減ってんだ」


 俺はナッズをチラリと見ると、ナッズはそれを受けて気まずそうにしていた。


 いや、自分でも意地悪いなとは思ったよ


「わ、悪かったって」


「嘘だよ。ナッズも何か食いたいものあれば食えばいいよ」


「えッいいのか!?」


 そう言うとナッズはえらい食い付いて来た。


 ワンコかッ


「いいよ、好きにしなよ。俺も何か適当に食べるし」


「ズルいぞッ!なぜナッズだけなんじゃ!」


「何でか分からないか?」


「分からんッ!妾も食べたいぞ!」


「はぁ・・・まあ好きにしろよ」


 アリシエーゼの残念っぷりは今更だし、こんな事一々気にしてたら今後やっていけないなと思い諦める事にした。

 俺達は近くで何とも言えぬ香ばしい匂いの煙を立ち登らせてる屋台の一つを覗くことにした。


「いらっしゃい!ボア肉の串焼き、一本中銅貨一枚だよ!」


 俺達が覗くとそれに気付いたシャツを肩まで捲ったなかなかの太腕のおっちゃんが元気良く声を発する。


 串焼き一本で中銅貨一枚と言う事は日本円で大体千円くらいか


 この世界の通貨は基本的に貨幣で回っている。

 紙幣はポロンやその他の傭兵団の面々の知識からは存在していなさそうなので、この世界の人達は買い物行くのに一々ジャラジャラと重たい金や銀や銅等のコインを持ち歩いている。

 硬貨は小銅貨、中銅貨、大銅貨、小銀貨、中銀貨、大銀貨、小金貨、大金貨、白銀貨となっている。流石は異世界だと思うが、何で金貨には中が無いんだとか、白銀貨は小中大が無いんだとかは正確には分からないが、まあ希少だからってのもあるし、金貨も白銀貨も大きい取引にしか基本使われないのであまり一般では使われないものを態々作るのもってのもあったのかなと邪推するが、とりあえず硬貨の種類としてはこの国では九種類なんだそうだ。

 中銅貨一枚で日本円にして千円と言うこの日本円換算は俺がこの世界の知識を得た時に漠然と思ってかなり適当な換算をしただけなので厳密には全然違う可能性も有るが、そこまで的外れな予想では無いだろう。

 小銅貨一枚約百円、中銅貨一枚約千円、大銅貨一枚約三千円、小銀貨一枚約壱萬円、中銀貨一枚約五萬円、大銀貨一枚約壱拾萬円くらいと思っている。

 ちなみに金貨や白銀貨はこの世界の知識を与えてくれたポロン達はほぼ見た事無いのと、そんな大きな買い物をした事も無い様なので分からなかった。


「アリシエーゼ、小金貨って日本円換算でいくらくらいなの?」


 元々アリシエーゼはこう見えて伯爵家令嬢だ。

 金貨や白銀貨も見た事あるだろうと思い聞いてみた。


「うん?日本円でか?うーむ、小金貨ならたぶん一枚参拾萬万とかかの」


「そんくらいか」


「いや、待て。五拾萬万くらいかもしれん」


「今まで疑問に思ったりしなかったのかよ・・・」


 俺はそう言ってアリシエーゼを見るが、そんな俺を心底不可解な顔で見つめ返してくるアリシエーゼ。


「何でそんな事気にしなければならんのじゃ」


「え?」


「妾はこの世界に転生したんじゃ。二度と日本に戻れんのに日本ではとか考えるだけ無駄じゃ」


 確かに・・・

 日本円でいくらとかそんな事考えて何になるんだろうか


「お前、時々確信をつく様な事言うよな」


「時々では無い!いつもじゃろうがッ」


 実際アリシエーゼの言う通りかもしれない。

 この串焼きにしても日本円で千円か、高いな安いなでは無いのだ。

 この串焼きが中銅貨一枚の価値があるかどうか。他の屋台で同じ物を売っていた場合、そこと比べて安いのか、味はどうなのかと言う事が重要であって決して日本と比べてどうかが重要では無い。


 とりあえず金はあるんだし食ってみるか


「おっちゃん、一つ頂戴」


「あいよ!」


「あーッ!狡いぞ!」


「うっさい!一口やるから我慢しろよ」


 そう言ってアリシエーゼを宥めていると、屋台のおっちゃんは焼いていた串焼きの一本を焼き台から手に取り、焼き台の傍にある壺に串を突っ込んだ。突っ込んだ串を直ぐに取り出して焼き台に戻し、タレを付けて暫く焼き直したそれを俺に手渡す。


「お待ち!中銅貨一枚ね!」


「はーい。じゃあこれで」


 俺は串を受け取り、アルアレから預かっていたパンパンに膨らんだ拳大の皮袋から事前に取り出していた中銅貨を一枚おっちゃんに手渡す。


「美味そうな匂いだなぁ」


 そう言って屋台から少し離れてそのまま串焼きにかぶりつく。串焼きは野菜などは一切挟まず、ボア肉のみで構成されたワイルドなもので、肉の大きさも一粒毎にかなりデカい。

 そんなデカい肉の塊が五つも串ひに刺さっており、食べ応えは十分ありそうだった。


「うん――めぇッ!!」


 焦った。かなり焦った。

 美味すぎて焦った。

 この世界ではスパイスの類いは貴重なのでこんな屋台の料理では肉に塩コショウで下味を付ける事なんてして無いだろうと思っていたし、壺に入ったタレもまあ大味なんだろうと思っていたが・・・


「このタレはヤバいな」


 そう、タレが絶妙なのだ。

 スパイスの香りはするのだが、胡椒では無い。

 何のスパイスなのか分からないが、少しピリリとしていて更に鼻から抜ける香りもかなり良い。

 タレ自体の味も甘みと塩味のバランスが絶妙で癖になる。たぶんスパイスは数種類入っているんじゃないだろうか。正しく秘伝のタレって感じだ。

 正直これで千円―――中銅貨一枚は安いと思う。


「そんなに美味いのかッ」


 見るとアリシエーゼは串焼きから目を離さずに聞いて来た。

 ナッズもかなりもの欲しそうにしているし、明莉は・・・チラチラとこちらを見ている。


「そんな顔で見るなよ・・・ほら一口食ってみろ」


 そう言ってアリシエーゼの口に串焼きを近付けると、拳まで食いそうな勢いで肉を三切れも串から引き剥がす。


「あッ!お前!」


「ふぉ、ふぉれはふまい!!」


 アリシエーゼは目を輝かせ肉を咀嚼しまくる。


 まあいいか・・・

 残りは一切れだが・・・


「明莉、食べる?」


「えッ!?いいんですか!」


 俺の言葉に直様反応を示した明莉に苦笑してそのまま串かごと明莉に渡した。

 チラリとナッズを見ると、マジかよ俺にくれないのかよみたいな絶望した表情をして固まっていた。


「そんな顔するなよ。金なら持ってるだろ?自分で買えばいいじゃないか」


 そんなナッズにも苦笑しながら言うとナッズは肩を落として返答した。


「俺が金を持つと全部飯代か装備代に消えるからっていつもアルアレとかに取り上げられるんだ・・・今日もちょっと持たせてくれって朝アルアレに言ったのにダメだと・・・だから今まで必死に貯めたやつしか持ってなくてさ」


 おおぅ・・・めちゃくちゃ哀愁が漂う佇まいだ・・・


「そ、そうか。じゃあこれで好きに食えばいいよ」


 そう言って皮袋から小銀貨を一枚取り出してナッズに放り投げた。


「えッ!?こんなにいいのか!?」


「ちゃんと考えて使えよ。それとアルアレとかにもお土産でも買っていってやれ」


「ああ!そうする、ありがとな!」


 ナッズは清々しい程に晴れ渡った笑顔を見せて俺が次の言葉をかける前に走り出していた。


「あ・・・まあいいか・・・」


 ナッズはこのモシャモシャしてる姫様の護衛と荷物持ちを兼ねているのでは無かっただろうか・・・

 俺の勘違いだろうか・・・


「もう少し見て回りたいな」


「そうですね、どんなものがあるのか気になります」


 串焼き肉を食べ終わった明莉も俺に同意して来た。

 アリシエーゼも食べ終わっていて既に他の屋台へと向かって行っていた。


「あいつ早いな・・・」


 どんだけ食い意地張ってんだと思ったが人の事言えないなと俺は思った。

 先程の串焼きが思ってた以上に美味かったので、他の屋台も正直気になっていたのだ。

 とりあえずアリシエーゼが向かった方へと明莉と歩いて行く。


「この広場には屋台がめちゃくちゃあるな」


「そうですね、南門の方の広場には殆ど無かったと思いますけど」


「そうだね。何か露店も結構出てるしその辺見るのも面白そうだ」


 そう言って俺は広場を軽く見渡す。

 食い物の屋台も結構あるのだが、露店もそれなりに目立つ数出店していた。

 アリシエーゼを追いつつ俺と明莉は露店をチラ見して行く。

 露天で扱っている商品は大体が想像した通りと言うか、香辛料だとか、武器に防具、何処他の国の調度品なのかは分からないが、日用品みたいな物から土産物の様な物と様々だ。

 チラ見して行く中で一つ気になる物を見付けた。

 それは薄い青や黄色、赤みがかったものと様々な色のした石がアクセサリーとして売っている露店で、地べたに布の様な物を敷いた上に木製の箱が置いてあり、その上にアクセサリーの種類毎に適当に並べられているだけで、普段の俺ならそんなものに大して興味を惹かれはしないのたが、何故か少し気になったので足を止めて見てみる事にした。


「わあ、綺麗ですね」


 俺が足を止めて露店の商品を見ている事に気付いて明莉は近付いて商品を覗き見てそう言う。


「小さいけど質の良いマナストーンだよ。安くするから見ていっておくれ」


 そう言って露店で店番をしている老婆が俺達に声を掛けて来た。


「マナストーン?」


「おや、マナストーンを知らないのかい」


「うん、俺達の村では見た事ないな」


「そうかい。マナストーンってのはねこの石の事を言って、これには不思議な力があるんだよ」


 老婆はそう言って木製の箱の上からネックレスに加工してある薄い青の石を手に取って俺達に見せた。


「不思議な力って?」


「この石はね、魔力を溜め込むんだよ」


「魔力を?」


「そうさね、持っている者が魔力を注ぎ込むと石の大きさによるが魔力を溜め込んでおけるのさ」


「このくらいの大きさだとどれくらい溜められるんだ?」


「この程度の大きさでも()()()の一回や二回分くらいは溜められるよ」


「へぇ・・・」


 そう聞いた俺ではあったが、大魔法とやらがどれ程の魔力を消費するか分からないので凄さがまったく分からなかった。


「自分で魔力を注がなくても、魔力の源であるマナを本当に少しずつだけど吸収したりもしてくれるんだ」


 マナ、ね・・・


「そうなんだ。この石って希少だったりするの?」


「石自体はどの国でもある程度取れるよ。このくらいの大きさの石は別に珍しくも無いけど、大きいものはなかなか取れないって聞くね」


「なるほどね」


 俺と老婆がそんな会話をしている間も明莉は木箱の上に置かれている商品をしゃがんで眺めて綺麗だとか、いいなあと呟いていた。


「一つ買おうか?」


 そんな明莉に俺が聞くと、明莉は俺を振り返り慌てて立ち上がる。


「い、いえ!そんな、いいです」


「なんでさ?」


「わ、悪いですし・・・」


「金を出させるのが悪いって事?だったら別に気にしないでいいよ」


 俺は笑ってそう言って、商品を見る為に木箱の前にしゃがみこんだ。

 ネックレス型が一番数が多く、後は指輪型と一つだけブレスレットの様なものもあった。


「明莉は何色が好きなの?」


「え、あの・・・青、ですかね・・・」


「じゃあこれなんてどう?」


 そう言って俺は薄い蒼の小さな石が付いたネックレスを手に取り明莉に見せる。


「あ、はい、可愛いと、思います・・・」


 明莉はそう言って俯いてしまった。

 別に他意があった訳では無い。単純に魔力を溜められる石なんて何かちょっと気になるから一つ買ってみてもいいかなと思ったからついでにどうだいと言うくらいのノリだ。

 だが、一連の流れを回想してみると若干気恥ずかしくなるのも分からなくは無いが、俺は全然気にならなかった。


 まあ、金はあるしね


「じゃあこれ買おう。婆ちゃん、これと後このブレスレット型の一つ頂戴」


「ありがとうね。ネックレスの方は大銅貨一枚、ブレスレットの方は大銅貨一枚と中銅貨二枚なんだけど、二つで大銅貨二枚でいいよ」


「お、いいの?」


「いいんだよ、この程度の大きさのマナストーンなんて珍しくも無いからなかなか売れ無いしね」


 そう言ってくつくつと笑って老婆はネックレスとブレスレットを俺に手渡す。


「ありがと」


 そう言って老婆に代金を手渡して俺は立ち上がった。


「お礼を言うのはこちらの方さね。お前さん達にマナの導きがあらん事を」


 老婆のその言葉に俺は手を上げて応え、明莉と歩き始めた。

 歩きながらネックレスを明莉に手渡す。


「はい、どうぞ」


「あ、あの、ありがとうございます・・・」


 明莉は小さな声でそう言ってネックレスを受け取った。

 そしてそれを暫く手の上で転がしながら眺めて満足したのか自分の首に手を回してネックレスを付けた。

 ネックレスと言ってもマナストーンに細い鞣し革の紐が取り付けられただけのシンプルな作りで、特筆して語る様な事も無い。

 俺のブレスレット型の方も革の細めのバンドを粗めに編み込んだ様な作りで、マナストーンは編み込みの中央にあり、こちらは男心を多少なり擽りそうなレザーアクセサリーに見えなくは無い。


「へえ、いいじゃん」


 ネックレスをした明莉を見て素直な感想を述べる。


「そ、そうですか?」


「うん、似合ってるよ。俺のはどう?」


 そう言って俺は右腕に付けたブレスレットを明莉に見せる。


「似合ってると思います!何だかあっちでも売ってそうなデザインですよね」


「そうね、違和感は感じないわ」


 そんな会話をしながらアリシエーゼを探して中央広場を歩いて行くがふと気になり明莉に言う。


「でも魔力を篭めるってどうやるんだろうね」


「マナストーンにですか?」


「うん」


 そして二人して自分のマナストーンを眺めるが、それで答えが出る訳では無い。


「俺は魔力無いから自分じゃ篭められないけど、他の人にやって貰ったり、大気中にあるマナってのを自然に取り込むのを待ってるとかしかなさそだよね」


「魔力が無い?」


「あれ、言って無かったっけ?地球人は魔力を体内で生成出来ないんだよ。魔力の生成は人間の脳で行ってるみたいなんだけど、地球人には脳にそんな機関が存在しないからさ」


「そうなんですね。魔力が無いと何か問題があったりするんですか?」


「・・・この世界では大有りだね」


「そ、そうなんですか?」


 俺の回答に余程不安を感じたのか、明莉の表情が曇る。ここで嘘を言っても仕方が無いので俺はそのまま続けた。


「この世界ではファンタジーな魔法なんてものが普通に存在するけど、その魔法は魔力を使って使用するし、魔力があると身体の強化も意識せずに出来るんだ」


「魔法は何となく分かるんですが、身体の強化って言うのはなんですか?」


 確かにそっち系の話に触れる機会が無かったら想像出来ないか・・・


「んー、なんて言うか、身体のあらゆる能力、筋力だったり視力、聴力なんかも強化されると思うけど、簡単に言うと魔力を使うと身体がめちゃくちゃ頑丈になるんだよ」


「そうなんですね・・・全然想像出来ないですけど」


「まあそうだよね」


 俺は苦笑してそのまま続ける。


「だから魔力で身体強化した人としてない人にはもの凄い差があるんだ。能力にも、そして人権とかそう言った事にも」


「人権、ですか・・・」


「うん、この世界では魔力が無い人を穢人(けがれびと)って呼んで差別してるんだよ」


「・・・・・・」


 明莉の表情が更に曇るが、俺は敢えてそのまま続ける。これは知っておかないといけない事だと思うから。


「差別って言ったけど、恐らくそんな言葉では生温い、殆ど人としては扱われないと思った方がいい」


「じゃ、じゃあ私達がその穢人だって知られたら・・・」


「かなり不味いだろうね」


「・・・・・・」


 明莉は今にも泣きそうであった。

 前にも思ったが、外見はクールでサバザバしてそうな印象だが実際は少し内気で、なんと言うか純粋だ。

 同じ地球人と言う事もあるが、人間的にも護ってあげたくなるなと少し思った。


「大丈夫だよ。別に知られなきゃ良いだけだし、知られたら知られたでどうにでもなるから任せておいてよ」


 俺は敢えて笑顔を作り明莉を安心させようとしたが、それだけでは明莉の不安は解消出来そうも無かった。


「はい・・・人には魔力の話はしない様にします」


「うん、その方がいいよ。ただ、傭兵団の奴らは俺が穢人だって知ってるから大丈夫だよ」


「そうなんですか?」


「うん。()()()()()理解して貰ったよ」


「そ、そうなんですね。なら良かったです」


 そう言って明莉の表情が若干明るくなった。

 変に不安を煽り過ぎて疑心暗鬼になられるよりは少し意識して心の何処かに留めておいてもらう位が丁度良いのかも知れない。


 そんな会話をしながら歩いていると何だか聞き覚えのある声が左の露店の店先から聞こえて来たので目を向ける。


「ちょ、ちょっと姫!マジでもう無理だって!」


「なふぃふぉひうはッ!まはほへはらはそ!」


「俺の手持ちがもう無いんだよッ!折角俺も色々食べようと思ってたのにぃぃぃ」


 アリシエーゼとナッズだ。どうやらアリシエーゼが買い食いしまくってナッズのお金を使い尽くしてしまったらしい・・・


「何やってんだよお前ら・・・」


 俺が二人に声を掛けるとナッズが半泣きになりながら俺に縋り付いて来た。


「ハル!!いい所に来た!お前から折角貰った金を姫が全部使っちまったんだ!俺まだ何も食べてないんだぜ!?」


 ナッズは必死に現状を訴えて来るが、アリシエーゼを見るとまったく気にした様子は無い。左手にじゃがバターの様な拳くらいの大きさの芋が三つ乗った使い捨ての何かの葉っぱで作った簡易皿と、右手にはどこか別の店のものであろうか肉串を四本持ち、むしゃむしゃと一心不乱に食い散らかしていた。


「はあ・・・」


 俺は大きな溜息を付いてアリシエーゼが左手で持っているじゃがバター擬きを奪い取る。


「あッ!何をする!」


 右手に持っていた肉串を丁度一つ食べ終わったアリシエーゼが鬼の様な形相で俺に食ってかかってくる。


「うるせぇ!お前どんだけ食べてんだ!いい加減にしろよな」


「いいでは無いか!別に減るもんでもあるまいて!」


「減ってるんだよ!主にナッズの財布の中身と精神力がなッ」


 そこまで言って俺は奪い取ったじゃがバター擬きを明莉に手渡す。


「これ食べちゃって」


「え、あの、い、いいんですか・・・?」


「いいよいいよ、気にせず食べて」


「おいッ!!それは妾のじゃ!」


 そう言って明莉からじゃがバター擬きを奪い返そうとするアリシエーゼの首根っこを掴んで阻止する。


「は、離せッ」


 アリシエーゼはジタバタと藻掻くが俺は離さない。そのまま肉串の一本を更にもぎ取り、一口頬張った。


「あ、あぁッ!なんて事するんじゃ!」


「む・・・最初の串焼きの方が美味いな・・・」


 人の食い物を奪い取っておいて何て言い草だと俺自身思わなくないが、正直な感想だ。


「これいくらだったんだ?」


「むむ・・・誤魔化すんじゃない・・・三本で中銅貨一枚じゃ」


「三分の一の値段か・・・量を食いたい場合は有りかもな」


「そうじゃろう。妾は腹一杯食べたかったから丁度良いのじゃ」


 そう言ってアリシエーゼは鼻を鳴らすが、まだ腹一杯じゃないのかと呆れる。


「とりあえずお前は今後は買い食いしたいなら自分の金でしろ」


「金なんて持っておらんぞ!」


「稼げよ!」


 そう言って俺はもういいやとナッズに向き直る。ナッズは今にも泣き出しそうな顔をして俺達のやり取りを見ていた。


「悪いな、これで補填してくれ」


 腰の皮袋から大銀貨を一枚取り出してナッズに渡すとナッズは目を見開いた。


「えッ!?」


「あれ?これじゃ足りなかったか?」


「い、いや、寧ろ多過ぎる!」


 そう言ってナッズは焦って俺に大銀貨を返そうとして来たがそこは譲らない。


「何だ、増えたんならラッキーじゃん。迷惑料も込みだから気にすんな」


「いや、それでも多過ぎるって!俺が使ったのは小銀貨一枚だぞ!?」


「だから増えたんだからいいじゃん。やったね!」


 そう言って俺はナッズの肩を叩いて笑った。

 それでナッズは漸く諦めたのか言った。


「あ、ありがとう、助かる・・・」


「別にいいって。言ったろ、迷惑料も込みだ――って・・・」


 あ、あれ?

 何で俺がアリシエーゼの迷惑料を払ってんだ・・・?

 俺はいつからあいつの保護者になったんだろうか・・・

 寧ろ保護者は傭兵団の面々なのではないだろうか


 しかしここは深く考えたら負けだと思い思考を止める。

 そしてここでふと気付く。


「あれ・・・篤は?」


「ん?、あれ?ハル達と一緒に行動したるんだと思ってたが・・・」


 あれ?いつから居なかった・・・?

 外套とか購入した店まで居たのは覚えてるが、その後は一緒に広場まで歩いて来たか・・・?

 分からない・・・

 そもそも外套を買った店から一緒に出て来ただろうか・・・


 俺とナッズは辺りをキョロキョロと見渡し篤を探して見るが見た限りでは見当たらない。

 篤と明莉は外套を購入してそのままそれを店で装備している為、セーラー服やスーツの珍しさから見付けるのは無理だと思った。


 明莉も辺りを見渡して篤を探しているが、アリシエーゼは特に気にする訳でも無く残りの串焼きを平らげていた。


「お前も少しは焦って探せよ」


「何故じゃ?」


「いや、何故って・・・アイツこの街の事何て何も知らないし、スマホがある訳じゃないんだから連絡すら取れないじゃないか」


 俺がそう言うとアリシエーゼはスンッと一度鼻を鳴らす。


「何言っておるんじゃ。そこにおるじゃろうが」


「え?」


 アリシエーゼの視線の先を追うと、少し離れた露店の商品を屈んで覗いている篤が確かにそこに居た。


「何で分かったんだ?」


「人の匂いくらい嗅ぎ分けられるじゃろお主だって」


 あぁ、そう言う事か

 その辺の能力はまったく意識して無かった


「そう言う事か」


「お手柄じゃろ?のう?」


「・・・まあな」


 そう言ってニチャるアリシエーゼに先回りして俺は宣言する。


「だからって、食い物の追加買ったり、その為の金もやらねーからな」


「な、なんじゃと!?いいでは無いかそれくらい!い、いやそうでは無く、まだ何も言って無いでは無いかッ」


「はいはい」


 アリシエーゼを適当に遇って俺は篤がいる露店へ向かった。

 ナッズと明莉がそのまま、アリシエーゼはブツブツと文句を言いながら付いて来ている事を確認しながら篤の側まで歩み寄る。


「何やってんだ?」


「うん?あぁ、暖か。いや何、これが欲しいのだ」


 そう言って篤が俺に見せてきた物は、長さにして15センチくらいの銀と蒼を混ぜた様な何とも言えない色の金属片だった。


「なんだこりゃ?」


「金属片だ」


「いや、それは見れば分かるんだけど、何の金属なんだ?」


「店主曰く、ミスリルらしい」


 ミ、ミスリル!?


「お、おいそれって・・・」


「あぁ、そのミスリルだ」


「いやいや、そんな希少金属が何で露店なんかで売ってんだよ」


「露店なんかで悪かったな」


 俺達のやり取りを黙って聞いていた店主なのか店番なのか分からない割と若めの男が我慢ならずと言った感じで口を挟んで来る。


「悪い悪い、別に他意がある訳じゃないけど、だって・・・ミスリルだよ?」


「これは本当にミスリルだっての!」


「いやぁ・・・」


 俺が知ってるミスリルならこんな露店では売っていないんだが、そもそも何でこんなものを篤は欲しがっているのだろうか。


「何でこれが欲しいの?」


「今後役に立つと思うからだ」


 それを聞いて俺は即決した。


「オッサン、これ買うわ」


「オッサンとか言うな!こう見えて26だぞ!」


「はいはい、で、いくらなの?」


「本当に買うのか?小金貨三枚だ」


「高い。大銀貨二枚」


「おいおい、何言ってんだ。ミスリルだぞ?小金貨三枚でも破格だ」


「ダメだ。大銀貨五枚。これ以上はこんな怪しいもんに出せん」


「それにしたって限度ってもんがあるだろ!せめて交渉するなら小金貨単位でしろよッ」


「大銀貨四枚」


「減ってるじゃねぇかッ」


「じゃあ聞くがこれ何処で手に入れた?」


「・・・そんなの何処だっていいじゃねぇか」


「よくねぇよ。本物だってんならちゃんと鉱山とかで手に入れた証明出来るよな?」


「ぐッ・・・」


「何処の誰かから盗んだのか借金のカタに巻き上げたのか知らないが、出処不明の本物かどうかも怪しい代物に大銀貨を払ってやってるって言ってんだ。それで満足しておけよ」


 俺がそこまで言うと男は黙って考えを巡らせている様であった。暫くすると男は諦めたのか大銀貨五枚ならと声を絞り出す。


「クソッ!持ってけッ」


「どうも」


 そう言って俺は男に大銀貨を五枚手渡した。


「もう来んなよ」


 男は代金を受け取ると顔を背けてそう言った。

 それを見て俺は笑いが込み上げて来て可笑しくなった。


「はいよ。楽しかったよ」


 そう言って露店を後にして、金属片を篤に手渡す。


「良かったのか?」


「だって今後役立つんだろ?」


「・・・あぁ、必ずな」


 篤はそう言ってニコリと笑った。

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