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異端の紅赤マギ  作者: みどりのたぬき
第1章:異世界と吸血姫編
34/335

第34話:お小遣い

序盤、特に1章辺りはすみません、初投稿でかなり拙文であったりしますので、時間があればその内表現や台詞回し等大幅に変更予定です。

それまでは何卒、生温かい目で見守ってやって下さい。

 二チャった篤を見てふと思った。


 そういった趣味を持ってる、アリシエーゼや篤が言う所の嗜んでる人達は皆ニチャるんだろうか?

 あれ、ちょっと待てよ・・・

 俺もかなり嗜んでいる

 っと言うより俺の中ではそういった物は聖典と言っても良いくらい嗜んでる





 あれ・・・

 俺もニチャってる・・・?





 そんなこんなで篤も()()()()だと言う事が判明した為、その辺を熱く語り合った訳で。

 他にも転移者が居るか居ないかをお互い予想して盛り上がっていると突然ドアがノックされ、外からアリシエーゼの声が聞こえて来た。


「おーい、そろそろ飯にするぞー」


 折角良い所なのに邪魔すんなやッ


 俺はチッと軽く舌打ちしてドアの前に立って鍵を開け、ドアを開いた。

 俺達の部屋の前にはアリシエーゼと明莉がおり、他のメンバーは見当たらなかった。


「あれ?他の奴らは?」


「先に下に行って席を確保しておる」


「そっか。じゃあ先に降りててくれ。直ぐに行く」


「あい、分かった」


 そう言って一階の階段に向かうアリシエーゼと明莉を見送り、俺は部屋に戻って部屋に備え付けられている小さな物書き用の机の上に置いてあった鍵を手に取った。


「飯の時間だそうなんで俺達も行きますか」


 俺がそう言うと篤は直ぐに立ち上がり入口に向かう。

 その後を追って俺も部屋を出て、ドアに鍵を掛けて階段に向かった。

 一階に降りると先程よりも客が入り喧騒が若干増している酒場兼食事処が目に付いた。

 店内を確認すると、一番奥のカウンターに近い丸テーブルと、そのテーブルに一番近いカウンターの二席を席取りしているのが確認出来た。


「一番奥ですね」


「あぁ」


 篤にそう言って店の奥に向かった。

 途中、他の客のバカ騒ぎする声を鬱陶しく感じながらテーブルまで辿り着き、空いている席へと座った。

 カウンターの席も後ろを向けば直ぐにテーブルとなっている為、話をする分にはまったく問題無い様であった。


「結構賑わってるなぁ」


「そうじゃの」


 席に座り、隣のアリシエーゼと話をしていると店員と思われる女がこちらに近付いて来て声を掛けて来た。


「ご注文はお決まりですかー」


 周りが煩いからであろうか、普通に話しているとあまり会話が出来ないくらいなので若干声を張って女が注文を取る。


「まずはとりあえず皆エールで良いかの」


「エール?」


 来ました!お決まりのエールちゃん!


 俺は端目でチラリと篤を見るとそれに気付いた篤がまたもや二チャリと笑った。

 俺もニヤリと笑い返す。


 いや、二チャリでは無い

 ニヤリだ


「俺はそれでいいよ」


「私も問題無い」


 俺と篤が返事をすると、他の傭兵メンバー達も頷く。


「あ、あの、エールって何でしょうか」


 明莉は若干焦った様にアリシエーゼに問い掛けた。


「うん?そうか知らんのか。エールとはの、麦茶みたいなものじゃ」


「あ、そうなんですね。じゃあ私もそれで」


 おい、何でそんな嘘付くんだ

 酷い奴だ・・・ふふ


「ではエールを8杯と後オススメの料理を適当に3つ程持って来てくれ。ボリュームの有るものでじゃ」


「はい、エール8杯ですね。ボリューム有る物ですか。そうですねぇ、ワイルドボアの香草焼きと、大皿トマトパスタ、後はクリームシチュー人数分なんてどうでしょう」


「うむ、それで構わん」


「はーい、畏まりましたー。少々お待ち下さーい」


 そう言って女はカウンターの奥の調理室に入って行った。

 調理室は結構広めで三人の男がひっきりなしに来る注文に全力で応えていた。


 それにしても――

 パスタにトマト、クリームにシチューと来たか・・・


 全てこのまま発音していた。


 異世界語って何なんでしょうか・・・


 俺が何とも言えない表情をしていたからであろうか、アリシエーゼが俺の顔を覗き込んで来た。


「どうかしたのかの?」


「いや、何でも無いよ。それより麦茶って何だよ」


「まあまあ、良いでは無いか。今日は篤と明莉の歓迎会も兼ねておるのじゃし」


「あ、そうなのか。まぁそうか、昨日は何も出来なかったしな」


「そう言う事じゃ」


 確かに昨日は外で野営したし、白湯とセンビーンのみだったからそれで歓迎会も無いか


「お待たせしましたー、エール8杯です!」


 そう言って女がまずは4杯の木のジョッキの様なカップをドンとテーブルに置いた。

 残りはカウンターに置いてあり、2杯はカウンターに座っているナッズとソニの前に置き残りをまたテーブルに置く。


「ではまずは、篤と明莉が妾達の仲間に加わった事に乾杯じゃ!乾杯ー!」


「「「「「「「乾杯ー!」」」」」」」


 それぞれが丸テーブルの上で雑にカップをガツンと鳴らし、一口、二口と勢いよく喉を鳴らしながら流し込んだ。

 俺も遂に念願のファンタジーエールと言う事で勢いよく一口飲んでみる。


「不味い」


 なんじゃこりゃ!

 全然美味くない!

 もっと、ぷはぁぁぁッみたいのやりたいんだけども!

 先ず、温い!

 そりゃ冷蔵庫やらが無いであろうファンタジー世界だから当然と言えば当然なんだが、温い!

 多少の甘みも感じるが苦味も感じる

 シュワシュワはあまり感じない

 とりあえず不味い


「そんなハッキリ申さんでも良いではないか」


 俺の不味いの一言にアリシエーゼは苦笑いを浮かべた。


「何か思ってたのと違う」


「まあ日本のビールを思い浮かべていたらそう思うのかもしれんの。篤はどうじゃ?」


「大体想像通りだな。クラフトビールの様な物を想像していたので概ねその様な感じかと思っていたしな」


「あぁ、確かにそんな感じじゃな。明莉はどうじゃ」


 アリシエーゼはそう言って明莉の方を見たが明莉からは返事が無い。

 俺も気になり明莉を見ると小刻みにプルプルと震えていた。


「お、お酒じゃないですかこれ!」


 そう言って明莉はアリシエーゼに食って掛る。


「誰も酒では無いとは言っておらんぞ?」


「麦茶みたいって言ったじゃないですか!」


「じゃから見た感じちょっと泡立った麦茶みたいじゃろ?」


「うぅぅッ」


 明莉は恨めしそうな目でアリシエーゼを見たがその目は若干涙目であった。


「まあまあ、これはナッズにあげよう」


 そう言って俺は明莉の分と自分の分のエールをカウンターから後ろを向いてテーブルに向いているナッズに渡した。


「お、いいのか?」


「いいよ、じゃんじゃん飲んじゃって」


「やったぜ!」


 そう言ってナッズはガブガブと自分の分のエールを飲み干して、追加で渡したジョッキに手を付けた。


「俺達は別の物を頼もう。すみませーん!」


 明莉にそう言って、カウンター近くにいた店員の女を呼ぶ。


「はーい、ご注文ですかー」


「うん、ここワインって置いてある?」


「有りますよー、ボトル販売になりますけどいいですかー」


「うん、一本お願い。グラス?カップ?は二つね」


「ちょッ――」


「はーい、少々お待ち下さーい」


 明莉は何か言おうとしたが、俺と店員の女の流れる様なやり取りに口出し出来ずに結局固まった。


「何でお酒なんですか・・・」


「何でって歓迎会だからでしょ?」


「私達未成年ですよ!?」


「いや、ここでは成人だし」


「えっ!?そうなんですか?」


「そうだよ。アリシエーゼだってこう見えて成人してるって言ってたでしょ」


「こう見えてとはなんじゃ。どう見えておるんじゃ」


 アリシエーゼがすかさず突っ込んでくるがとりあえず無視して話を進める。


「俺もこっちに来るまであんまり飲んだ事なんて無かったけど、こっちに来て飲んだワインは美味かった」


「・・・飲んだ事はあったんですね」


 そう言ってジト目で睨む明莉をこれまた無視して話を続ける。


 委員長ちゃんかッ


「とりあえず飲んでみたら?合わないなら別の物頼めばいいしさ」


「うーん・・・」


 そんな話をしながらカウンターを見ると頼んだワインを持って女がこちらに向かって来ているのが分かった。


 なかなか仕事が早いな


「お待たせしましたー。ワインです」


「ありがとう」


 そう言ってワインボトルと空のカップを二つ受け取り、一つを明莉に手渡す。

 明莉は無言でカップを持ったまま固まっていたのでそれをあえて無視してカップにワインを注ぐ。


「とりあえず乾杯」


「・・・はい。乾杯」


 カップを打ち付け一口飲んでみる。

 アリシエーゼの屋敷で飲んだ物程では無いがこれもなかなか美味かった。


「うん、美味い」


 明莉を見ると恐る恐ると言った感じで少量口に含んでいた。


「・・・美味し」


 ボソリと呟いたのを俺は決して見逃さない。


「ほーら言ったじゃないか。美味しいでしょ」


「うッ・・・確かに飲みやすいなとは思いますけど、アルコールはこれだけにします」


 そう言ってチビチビとワインを飲む明莉は、恥ずかしさなのか酒のせいなのかは分からないが顔を赤らめていた。


「料理お持ちしましたー。まずはトマトパスタとシチューです」


 丸テーブルにドンと置かれたそれは八人でも十分な程の量のパスタに、小さな木で出来たボールの様な容器に入ったシチューだった。


「すっごい量だな」


 まずは物凄い重量であろうパスタが乗った大皿を片手で持ち、更にはシチューが入っている木の容器が4つ乗ったお盆をもう片方で持ってくるこのお姉さんにビックリだが、パスタその量に思わず苦笑いする。パスタはトマトパスタと言うくらいだからこの赤みはトマトソースであろうが、具材はそれに玉ねぎの様なものが適当に切られたものが合わさり、更に小さくカットしたベーコンだった。

 匂いは正しくトマトであった。

 シチューの方はスプーンで軽く掬うと、人参とジャガイモっぽいものが具材に入っている事が分かった。


「ボア肉は焼き上がりにもう少し時間かかるのでお待ち下さーい」


 店の女はそう言ってテーブルの上に残りのシチューと木で出来たフォークとスプーン、皿を人数分置いて他の客から声を掛けられてそちらに向かって行った。


「パスタは好きな様に自分で取ってたべるんじゃぞ」


 アリシエーゼはそう言って自分のシチューをスプーンで掬って一口食べた。


「うむ、なかなか美味いぞこれ」


「お、ホントだ。かなり濃厚だな」


 アリシエーゼに釣られて俺もシチューを口に入れると、濃厚なミルクとチーズの様な風味が直ぐに口一杯に広がり、ジャガイモの様なものも口の中で溶けるように無くなった。


「このジャガイモみたいなのはなんて名前の芋なんだ?」


「ポテトじゃが?」


「あ、そう・・・」


 もう気にしない

 気にしない・・・


 ナッズは自分の皿にパスタをこれでもかと積上げアルアレに小言を言われており、ソニとパトリックはシチューと酒を堪能しながら会話をしていた。

 篤は料理には手を付けずエールを飲んでいたが、通り掛かった店の女にエールのおかわりを頼んでいた。


 気に入ったのかな?


 そんな事を思い明莉を見ると、シチューの味にほっこりとしながら偶にワインを口に含んでいた。

 俺もパスタが食べたくなったので自分の皿にパスタをよそり食べてみる。

 想像していた通りのトマト味のパスタだった。

 ただ、トマトだけでは無く、ニンニクの様な香りとコショウであろうかスパイスの香りも鼻から抜けて思ったよりもガッツリ系であった。

 そうこうしながら酒と料理を堪能していると、カウンターの奥から両手一杯に広げてでかい皿を持った女がテーブルに寄って来た。


「ワイルドボアの香草焼きです」


 ドカリとテーブルに置かれたそれは、なんと言うかワイルドであった。

 何かの葉っぱに包まれたそれは正に塊と言う他無い程の塊であり、つまりはお肉界のエアーズロックや~であった。


「こ、これはなかなか・・・」


「これ何人前ですか・・・」


「・・・・・・」


 俺と明莉と篤の三人は地球でも見た事の無い肉の塊に三者三様の反応を示すが、そんな事はお構い無しにアリシエーゼがソニに言う。


「早くこの邪魔な物を剥け!剥くんじゃ!」


「姫様、はしたないですよ」


 ソニはアリシエーゼを窘めつつ、巨大な肉の塊を包んでいる葉っぱを退ける。

 するとそこには、既に人数分に切られた肉があり、肉の上にはハーブの様な物が更に乗っていた。

 よく見るとコショウの様なものが振りかけられており、肉の中まで火が通っていて焼き加減はウェルダンくらいであった。

 物凄く食欲を唆る匂いは、パスタとシチューで腹が満たされていた明莉ですらゴクリと喉を鳴らす程の物だった。


「めちゃくちゃ美味そうじゃねぇか」


「た、確かにこれは・・・」


 俺と明莉がそんな感想を漏らすとアリシエーゼは嬉々として応えた。


「そうじゃろう。ワイルドボアの肉は安い癖にもの凄く美味いのじゃ!」


「一体で凄い量の食肉が採れますからね」


 そう言ってソニはアリシエーゼの更に肉を取り分けた。

 もちろん取り分け用のフォークの様な気の利いたものは無いので、アリシエーゼの使っていたフォークを使ってだ。


「後は皆さんご自由にお取り下さい」


 そう言ってソニは自身の席に戻った。

 その間にアリシエーゼはガブリと肉にかぶり付きガツガツと肉を平らげて行く。


「うんまぁぁいッ」


 はしたないですよ、姫


 アリシエーゼのその言葉を皮切りにかどうかは分からないが、ナッズとアルアレ、パトリックも自身の皿に肉を取っていった。


 俺達三人もその後で肉を取り食べてみると、それはアリシエーゼの屋敷で食べた肉とはまた違った美味さがあった。

 かなりジューシーで噛むと肉汁が口の中に溢れ出し、塩とコショウ、後はほんの少しバターの様な香りが合わさって絶妙な味わいを醸し出していた。


「お腹結構満たされているんですが、これは全部食べきれちゃうそうです」


 明莉はそう言って満足そうな顔をした。


「確かにこれは美味しいな。これならワインもいけそうだ」


 そう言って篤は店員を呼びワインを追加で注文していた。


 えっ!まだこっちのボトル残ってるんですが!?


 他の面々もエールやワインのカップを追加で注文していた。

 一頻り料理を平らげて、皆満足顔であったがナッズだけまだ物足りなさそうな顔をしていたので声を掛けてみた。


「ナッズ、まだ足りないなら追加で頼めば?」


「え、いや金掛かっちまうだろ」


「別に大丈夫だろ。野党討伐の金一封だってあるんだろ?」


 そう言ってアルアレに顔を向けるとアルアレは少し考えてから答えた。


「まぁその金はここまでの料理や酒で既に飛んでますけどね」


 マジか

 雑魚野党は死んでも役に立たないな


「あ、そうなのね。まぁ大丈夫でしょ」


「いや、でも・・・」


 ナッズはアルアレとソニの顔をチラチラと見ながら言い淀んでいた。


「金なら心配すんなよ。なんなら俺が今直ぐに作って来てやるよ」


 そう言って席を立ち入口に向かって歩き出す。


「え?お、おい・・・」


「放っておけ、直ぐに帰って来る」


 ナッズは戸惑いながら引き留めようと立ち上がるが、アリシエーゼがそれを制した。

 俺は振り返り皆を見るとアリシエーゼ以外がそれぞれ困惑した表情を浮かべているが後ろ手に手を振りそのまま宿屋を出た。


「さて、誰からお小遣い貰おうかなぁ」


 地球でもやっていた()()調()()をこの異世界で実験してみようと店を出て何処に向かおうか思案する。


 とりあえず中央の方に向かえばいいかな


 俺達が入ってきた南門の前に大きな広場があり、宿屋はその広場から続く大通りに面した南門近くにあるが、そこから大通りを北に向かって行くと中央広場がある。

 まずはそこまで行ってターゲットを探すかと中央広場へと足を向ける。

 まだ日が落ちてから比較的早い時間であった為、大通りには沢山の人が夕食を求めてなのか闊歩している。

 宿場町なので当然旅人や商人が大半を占めるこの町にも元々住む住人や商店を商っている商人は存在するのでそれらを含めると人口は1000人はくだらないのだろうなと獲物は選び放題な状況に足も軽くなる。

 沢山の人を避け、早足で中央広場まで進むと大きな十字路になっており、北へは大通りが北門へと続いている。

 東と西にも道が伸びており、そちらは大通りと比べると若干道幅が狭くなった道が東は主に住宅地、西には問屋やら小さな商家やらの店等が建ち並ぶ区画へとそれぞれ続く。

 狭くなったと言っても道の中央は馬車一台と両端に歩行者が余裕で通れるくらいの道幅はあった。

 十字路の中央は大きな広場となっており、南門の広場の倍はありそうであった。

 中央広場には露店なども数多く出店しており、かなりの人で賑わっていた。


「まずはこの辺りかな」


 獲物を物色する様に辺りを見回していると、北門から続く大通りの方から何やら一般人とは一線を画す、身なりからして豪華な一団が中央広場へ歩いて来るのが目に付いた。

 俺は後ろから回り込む様な形でその一団に近付き聞き耳を立てる。


「――だから何で私が―」


「ですから――」


「―――だと思ってるわけッ」


 中央広場にはかなりの人が居る為喧騒により少し会話が聞き取り辛かった為、もう少し近付く事にした。

 その一団は中央の女を中心に周りをフルプレートメイルを身に付けた男達数人と一般的な標準服とは見るからに異なる少し派手で豪華そうな服を着た男達数人が囲んでいる形で中央広場から南の大通りへ抜けて行く形で話しながら歩いていた。


 女はかなり偉そうな態度だな

 見る感じ女は立場や身分がこの中で高く、鎧の男達は護衛の武官か?

 そうなると鎧以外の男達は文官的な役人とかその辺の奴らだろうか


 俺は聖典から引き出した知識と照らし合わせて予想を立てる。

 そんな事を思ってる間も女が文官の男の一人に文句を言いながら歩いているが、話の内容からも推測するが大方合っているだろう。

 話の内容は要約すると、私偉いのよ、何で庶民が利用する様な店で食事なんてしなきゃなんないのよって事らしい。


「もう、分かったわよッ!ホント最悪。宿も私が泊まって良い様な所じゃなかったわッ」


「この宿場町には元々数日滞在する事は決まっていたではありませんか」


「知らないわよッ!そんな予定表なんて貰ってません」


「いえ、お渡ししましたよ。計画表にはイリア様のサインもされておりますし」


「だから知らないっての!もういいから一番高級な店に連れて行きなさい!」


「はい、畏まりました。今先に店の方に行かせておりますので直ぐに店に入れる様にします」


 イリアと呼ばれる女はかなり傲慢な性格の様だ。

 文官は終始押され気味でタジタジと言った様子であった。


 もう此奴らでいいかな


 思考や記憶を読む必要性も感じない為、俺に全財産を渡す事だけ命じる。

 その瞬間一団全員が立ち止まり俺の方を振り返る。

 そして腰にぶら下げたり革の鞄の様な物の中に入れてある金が入った革袋をそれぞれ取り出して俺に手渡して来た。


 かなり多いな


 今この一団は全部で文官三名、武官五名、そして傲慢女一名の計九名だが、傲慢女以外全員がそれぞれ革袋を持っており、革袋の大きさはマチマチであるがパンパンに詰まってる物もあればあまり入っていなさそうな物もある。

 更に文官の内鞄を持っている一人は鞄から革袋を三つ取り出していた。


「・・・とりあえずその鞄に全部詰めろ」


 俺はそう言って文官が持っていた鞄に革袋を詰めさせる。

 鞄の大きさ的には一泊から二泊程度の荷物が入りそうなくらいの大きさのボストンバッグ型の鞄で、ギリギリ全ての革袋が入った。


「かなり重いな・・・」


 全ての革袋を詰め込んだ鞄を受け取り、最後の仕上げに俺を振り返るところから、俺が立ち去るまでの記憶を一切消去してその場を後にした。

 これで此奴らは傲慢女が一番高い店に連れて行けと喚いていた辺りから、俺が立ち去るまでの記憶をすっ飛ばして今に繋がるはずだ。


「ありがとうごさいますねっと」


 そう言って俺は口角を少し上げながら早足で宿屋まで戻った。

 宿屋の入口を入り右側に併設されている酒場兼食事処へ向かうと奥にアリシエーゼ達がまだいるのが確認出来た。

 俺は他の客にぶつからないようにしながら席まで戻って勢い良く椅子に腰掛けた。


「お待たせ」


「なんじゃ随分早かったの」


 俺が店を出てから10分程しか経っていない事からアリシエーゼはそう言ってワインを呷った。


「すぐに見付かったからさ」


 そう言って俺はテーブルの下に置いた鞄の中身をアリシエーゼに開いて軽く見せた。


「銀行でも襲ったのか・・・?」


「あるの銀行?」


「単純に預けるだけの所はあるの」


「そうなのか。でもそれは善良な一般市民も利用してるんだろ?だったらそこからは取れないかな」


「まぁ利用して無い事は無いんじゃが手数料を取られるから一般人はあまり利用せんな。貴族や商人が主な顧客のはずじゃ」


「ふーん、まぁデカい街なり王都とか行ったらちょっと調べてみるかな。叩けば埃出まくるだろうし」


「そうじゃな」


 そんなちょっぴり不穏な会話をアリシエーゼと繰り広げているのを明莉が不安そうな表情で見てくる。

 篤は特に表情を変えず酒を飲んでいるが、ちゃんと耳は傾けている様であった。

 傭兵のメンバーは既に俺がやる事は気にするなと()()()()()()あるので特に反応を示さなかった。


「ナッズ、気の済むまで食っていいぞ」


「おっ!やったぜ!」


 俺がそう言うや否やナッズは店員を呼んであれこれ注文していた。

 俺もチーズ盛り合わせみたいな物があるか聞いて、二種類のチーズなら出せると言う事だったので一人前だけスライスして持って来てもらう事にした。


「これで暫くは毎日宴会でも大丈夫じゃな」


「いや、毎日はやらないだろ」


「やらんのか!?」


「やらねーよ」


 何で毎日こんなの続けなきゃならないんだ

 偶にやるからいいんだろ、こう言うのはさ


 アリシエーゼはあからさまに気落ちした様子であったが無視して続ける。


「でもこの世界、アイテムボックスとかマジックバッグ系のアイテムとか魔法とか無さそうだから持ち歩くの面倒臭いな」


「そうじゃな。妾も精霊魔法でどうにかならんかと試行錯誤した事もあったんじゃが諦めた」


「試したんだな」


「うむ」


「精霊魔法とやらで無ければどうにかなったりはしないのか?」


 俺とアリシエーゼの会話に篤がいきなり入って来た。

 この手の内容が話せるお仲間としては割り込まずには居られなかったに違いない。


「アリシエーゼ、篤さんは・・・俺達の同志だ」


 俺がそう言うとアリシエーゼは一瞬考え込んだ顔をしたが直ぐに俺が言いたい事が伝わったらしく切り返す。


「・・・む、そうじゃったのか。なんじゃもっと早く言ってくれれば良いものを」


「まぁ今後は篤さんにもその手の話は振っても問題無い」


「うむ。それで精霊魔法以外でじゃったか。結論から言うと分からん。色々考えたり試したりはしてみたが無理じゃったし、他の魔法も余り詳しくは無いが調べた限りでは無理だと思うぞ」


「前も言ってたけど、影術では無理なんだよな?」


「そうじゃの」


「えいじゅつとは何だ?」


 篤が俺とアリシエーゼに聞いて来た。


 ふふ・・・

 影を操るなどと知ったら・・・ふふふ


「ヤバいっすよ。此奴、影を操る事が出来るんですよ」


「な、なに!?」


「操ると言う程の事では無いぞ。それに妾だけでなくお主も出来るだろうにッ」


「いや、俺はまだ出来ないし。出来るかどうかも分からないし」


「そ、その影を操ると言うのは、こう影をうにょうにょ~と操って相手の身体を縛り付けたり、影の中から硬質化した影が飛び出て来たり、影の中を自由に移動出来たりするのか!?」


 ほーらな


「い、いや、そんな事は出来んぞッ」


 アリシエーゼは焦って否定するが篤の興奮は冷めない。

 寡黙だと思っていた俺以外の全員はそんな篤の変容ぶりに驚き目を丸くしていた。


「落ち着いて、篤さん」


 そう言って俺は篤を宥める。

 篤はここで我に返り、コホンと一つ咳払いをして飲みかけのワインに口を付けた。


「取り乱してすまない・・・実際はどの程度の事が出来るのかを知りたい」


「そうじゃのう。影を使った移動術は出来るが、影で攻撃したりとかそんな事は出来ん」


「か、影渡りが出来るのか!?」


「え、いや、うん・・・まぁ」


「なんてファンタジーなんだ!」


 そう言って篤はいきなり握り締めた両拳をテーブルに叩き付けた。

 ダンッと大きな音を立てた事でアリシエーゼと明莉はビクリと身体を震わせていた。

 そんなそれぞれの反応がツボに入り俺は腹を抱えて笑い転げた。


「わ、笑ってるでない!」


「いやぁ、面白いよ君達」


 アリシエーゼを軽く往なして篤をチラリと見ると何やらブツブツを独り言を言っていた。


「こんな事なら―――すれば――いやしかし・・・」


「おーい、篤さーん」


「私には真理を―――」


「おーい」


 ダメだ完全に自分の世界に入ってる

 まぁ放っておこう


「とりあえず放って置いていいんじゃないかな」


「えぇ・・・それで良いのか」


「でも影術で物を収納出来ないってのはホント意外だわ」


「別に物を入れるだけなら出来るぞ」


「ふーん・・・・・・・・・・・・」


「「えッ!?」」


 アリシエーゼの言葉に俺は素より篤も急激に覚醒して反応した。


「出来るの!?」


「入れるだけならの」


「つまり取り出せないと言う事か?」


「うーん、取り出す事も出来るとは思うんじゃが・・・」


「じゃあ何が問題なんだ?物を入れて出せる。これは求めてる性能じゃん」


「そうなんじゃが・・・取り出そうにも何処にあるか分からんのじゃ」


「「は?」」


 又しても篤と声を被らせる。そんな俺達を申し訳なさそうに仰ぎ見る小動物の様なアリシエーゼ。


 いや、そんな顔してもダメだし

 何処にあるか分からないとはどう言う事だよ


「もしかして影の中は空間では無いのか?」


 俺とアリシエーゼが誰の得にも成らない困った顔をしてお互い見つめ合っていると篤が不意にそう言った。


「空間じゃない?」


「あぁ、影の中は無だと過程すれば・・・」


「「???」」


 俺とアリシエーゼは篤の言っている事がまったく理解出来なかった。

 そんな俺達を見て篤はどう説明したら良いか悩んだ素振りを見せ続ける。


「影渡りをする際、影の中を移動、つまり歩いたりしているか?」


「いや、しておらん。影の中に入ったらいつの間にか移動しておる」


「推測するにそれ、やはり影の中では無いんじゃないだろうか」


「「?????」」


 ダメだ、何言ってんだこの人・・・


「無なので亜空間とかそう言ったものですら無い。影の中って暗いか?」


「何も見えんぞ」


「つまり、暗い、黒いから影の中だと思っていたのだろうが、実は影では無く、無の中に入っているって事ではないだろうか」


「いやいや、無って何んすか」


「無とは何も無い状態の事。全ての物理法則や時間ですら存在しない状態だ。これは推測だが、アリシエーゼくんは自分の影の中と移動先に無と言う状態を作り出して、その間を行き来してるのでは無かろうか」


「つまりワープ・・・?」


「あぁ、そうとも言えるね。ワームホールの入口と出口の関係に近いと言えば近いのかもしれない。無だからその中に物を入れると無だけに無くなるんじゃないか。と思う」


「だから影の中をいくら探しても既に存在しないから見付からないと?」


「そうだ」


「言ってる事は分かったんだけど一つ疑問が」


「何だね」


「無の中だからその中に物を入れたら存在自体が無になるのはいいんだけどさ、それだと此奴何で存在してるの?」


 俺はそう言ってアリシエーゼを見る。


「それなんだが何故無の中で生存出来るんだろうか。・・・アリシエーゼくん、貴方本当に人間か?」


「ははは」


 俺はただ笑うしか無かった。

 アリシエーゼは目を見開いて固まっていた。





 とりあえず篤さんには説明するか・・・

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