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異端の紅赤マギ  作者: みどりのたぬき
第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
335/335

第335話:脱出

7章のラストの話になります。

「皇帝の人が急に変わったと?」


「そこまで顕著な感じじゃねぇんだが―――何て言うかなぁ」


「待ってよナオヤ―――」


「ほら、それ。何か使い分けてる感じするよなぁ」


「・・・・・・」


 ここまで来るともうテンプレとしか思えなかった。直哉の仲介があり怪しい帝国のトップである皇帝と謁見する事になる。

 そこで直哉の何気無い一言、ある日を境に人が変わってしまったかの様な皇帝。

 そして―――


「どうだ、臭うか?」


 俺がアリシエーゼの顔を見てそう聞くと、本人は邪悪な笑みを浮かべて答えた。


「あぁ、臭うぞ。先程までは気のせいかとも思ったんじゃが、直哉の言葉がキッカケになったのかのう、下から臭ってくるのじゃ」


 そうかそうか


 アリシエーゼの言葉に俺も鼻を一つ鳴らすがあまり分からなかった。

 アリシエーゼの嗅覚と俺の嗅覚に差があるのか、はたまた経験の差か。

 それは分からなかったがアリシエーゼが言うのだから嘘は無い。


「もう我慢ならんッ、ナオヤ!一軍人の分際で皇帝陛下に何たる言い草だ!!」


 近衛騎士の一人が、急に変わった直哉の態度に堪忍袋の緒が切れた様で物凄い形相で迫って来た。

 ナオヤと呼び捨てた辺り顔見知りか?とも思ったが俺は構わずに能力を発動する。


「――ッあ!お前ッ、力使ったな!?」


「あぁ、ちょっと此処で使えるか試してみたかったしな。とりあえず問題―――――」


 なんだ?


 俺は迫って来た騎士に能力を発動して動きを止める。直ぐに記憶も抽出したのだが、どうにも違和感が無い事に違和感を覚える。


「悪魔では――ない・・・?」


 瞬時にこの場に居る全ての者へと繋がる。


「どう言う事だよ?」


「どうかしたのか?」


「ん、いや、此奴ら悪魔に操られてたり身体を乗っ取られてたり、するのかなって思ってたんだが・・・」


 そうでは無かった。普通に人間やってると言えば良いのか・・・

 ちょっと何と言ったら良いか分からないが、この騎士達は皇帝に付き従う忠臣なのだ。そこに悪魔のあの字すら出てこない。

 だがそこが逆に雑に感じてしまう。


「・・・お前が操ってるのか?」


 俺は未だに静かに玉座に座る皇帝の男を見据える。


「・・・・・・」


 皇帝は何も答えない。感情が全く見えないその表情は先程までとはまるで違い、底冷えする様な言い知れぬ不気味さがあった。


「結局どうなってんだ?」


「・・・ちょっと待て」


 周囲の騎士達は俺の能力により今は微動だにせずにそこに佇んでいるだけだが、目の前の皇帝にはまだ俺は能力を使っていなかった。


 此奴が本命だしな


「なぁ、お前何がしたい?何を―――」


「――ッ、な、何だお前らは!?ナオヤ!?な、何故此処に・・・」


「ぇ?あ、いや俺は―――」


 俺の言葉を無視する様に突然皇帝は取り乱す。

 まるで幼児後退したかの様なその振る舞いに俺だけでは無く直哉も動揺する。


「どうした、もう終わりか?此処には何も無いのだから早々に立ち去るが良い」


 あ?


「ちょっと待て、お前何言って―――」


「ナオヤッ、た、助け―――――――――――――――去れと言っているのが分からんのか?」


「「「「・・・・・・・・・」」」」


 まるでコロコロと人格が変わる様に目の前の皇帝は口を開く度にその口調や声色を変える。

 二十一面相かよと悪態を付くが、事実表情まで変化するので別人と話している気さえしてくる。


「アニアスカッ!?クソッ、どうなってんだよ!?」


「・・・俺が知るかよ。それよりあの子供っぽい口調がお前の知る皇帝アニアスカか?」


「恐らくそうだ・・・なんだってんだよ?まさか何かに取り憑かれてんのか!?」


「取り憑かれていると言うより、乗っ取られそうと言った所かのう」


 アリシエーゼの言葉に直哉は顔を顰める。


「乗っ取られるって何に!?」


 何ってそりゃお前・・・


「悪魔に決まっておろう」


「悪魔だって!?」


 大層驚くが、他に何がいるんだと俺とかアリシエーゼが直哉に言う。

 因みにラルファはもう何が何だか分からずただオロオロするばかりだ。

 今朝は急に宿を連れ出されてしまい、しかも昨日と同じく監視活動を行うとばかり思っていた為、ラルファは帯剣していない。

 していたとしてもアザエルがまだ眠りについている為持っていたとしてもあまり意味は無いのかも知れないが、どちらにしろアザエル無しのラルファは今は並の傭兵だった。


「まぁ、ここでまごついてても仕方無ぇだろ」


 そう言って俺は不気味な程表情の変化する皇帝へと繋がった。



















 あぁ、そう言う事か











 そうだ、そう言う事だ









 気付いてたのか?









 いいや、偶然だ










 そうか









 そうだ―――――――――――つぅいぃぃにぃいいいッ









「―――カハッッ」


「ど、どうしたんじゃ!?」


「だ、大丈夫か!?」


 目の前に居る皇帝アニアスカ―――いや、その中の存在である悪魔との邂逅は俺にとっては久々に強烈なものとなった。

 アリシエーゼと直哉に支えられ膝を付いていた俺は立ち上がる。


「―――フフ、フフハハハッ、ハハハハハハハハハハハァァッ!!!」


 突然、奇声の様な笑い声が聞こえて見ると、何時の間にか玉座から立ち上がり身をくねらせる皇帝―――悪魔がそこに居た。


「みぃぃいつけたぁぁああああ」


 悪魔はこの地上に顕現は出来ない。

 当然、この皇帝に取り憑くいて?いる悪魔もそうだろう。

 だが、目の前の人間である筈の皇帝アニアスカの口元は裂けんばかりに開かれ、その瞳はとことん純粋に悪に染まっていた。


「ア、アニアスカ・・・」


 余りの変容ぶりに直哉は言葉を無くす。

 それ程までに顔は醜悪に歪んでいて、先程までと同一人物とは思えなかった。


「フェイクスの雑魚がぁッ、言っていた奴はお前ぇだろぉぉ?」


「・・・・・・」


「ギャハハハハッッ!!ぃいッひぁッはッはぁああ!!最高だなぁ。なぁ、人間?あぁりぃがとよぉお!!」


 何に対してありがとうと言っているのだろうか?

 俺がこの地に来た事か、アニアスカに対して能力を使った事、それとも俺が現れた事で悪魔の夢想する未来の形を実現出来ると礼でも言っているのであろうか。

 だが、そんなものはどうでも良い。何だか俺も笑えて来る。


「どぉおいたしましてぇえッ!!俺こそありがとよ!!見付けたぜぇッ、絶対逃がさねぇからなぁ!もう滅茶苦茶にしてやるッ、漸く会えたんだ、たっっっぷりと楽しもうぜぇ、なぁ?」


 一瞬で興奮が漏れ出す。


 恐れ?


 そんなものある筈が無い。あるのは歓喜!!

 オルフェでは肩透かしだったが漸く出会えた悪魔。

 恐らく上級の悪魔と思えるそれを前にして俺は嗤った。


「・・・あぁ?テメェが楽しめる―――」


「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ、はぁハッ!テメェのそのくっせぇ舌引っこ抜いてテメェの●●●に突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやるからなぁッ、覚悟しておけよぉ?」


「げ、下品じゃな・・・」


「あぁ、最悪だ・・・」


 アリシエーゼと直哉の愚痴が聞こえるがそれすら今の俺には心地良かった。


「お前らも笑えよッ、また悪魔ぶち殺せるぜぇ!?」


「ブァッハッハッハ!お前ぇ、フェイクス殺ったくらいでよくそんな口が聞けるなぁ?」


「うぅるせぇぇぁッ、その糞臭ぇ口を閉じてろや!!直ぐにテメェん所行って殺してやるからよぉ、覚悟してとけよカスがッ」


「威勢がいいねぇ、でもなぁそう上手く行くかなぁ?行く訳ねぇよなぁッ」


 ゲラゲラと嗤う悪魔に今すぐ殺してやろうかと思ったが、それを先んじてアリシエーゼが俺を制する。


「待て、こやつは人間じゃぞ。っと言うか、ここに居る者全員人間の様じゃ」


「はぁ?どう見ても此奴悪魔だろ」


「理由は分からんが、やはり地上に顕現は出来ないと見える。これも時間稼ぎだろう」


 マジか?


 もう目の前の皇帝様は邪悪そのものと言う顔付きになっている。

 だが、確かに悪魔がこんなに簡単に地上に出れるものなのかと考え、フェイクス達は直接的な地上への干渉や顕現では無く、地獄と地上の間に煉獄を作り現在の神と人間との距離感に近いフィールドを作り出そうと躍起になっていた。

 煉獄生成のキーと成りうる俺と言う存在を知りフェイクスは俺を狙った。


 辺りを見渡す。俺に動きを止められて微動だにしない騎士達はアニアスカの様に見るからに変容してはいない。

 では何故此奴だけがと思うのだが、その答えはアリシエーゼが今言った様に分からない。


「じゃあ此奴を殺しても意味はねぇのか?」


「意味が無い訳では無いが、それだけで何か変わるかと言われればあまり変わらんじゃろうのう」


 やっぱり魔界に行き、悪魔の本体を殺すしか無いか・・・


「・・・結局、アニアスカはどうなるんだ」


「それは――――」


「此奴はぁッ、此奴の魂は変わるぜぇえ。見物だなぁ、殺そう、全部殺そうッッ」


 魂か・・・


「アリシエーゼ」


「うむ」


 一度体制を立て直す。興奮仕切りだった俺は今ではとうに落ち着いていた。


 色々と情報も欲しいしな


 俺の意図するところを正確に読み取ったアリシエーゼは踵を返す。


「おッ、おいッ!?何処行くんだ!?」


「撤退する」


「あぁ!?何でだよ!?アニアスカを助けねぇと!」


 ラルファを促し、広間を出ようと動き出した俺達を直哉が引き止める。


「助ける?どうやって?」


「そ、それは―――そ、そうだッ、悪魔を倒せばッ」


「だからそれをする為には魔界に行くしかねぇ。その為の撤退だ」


「・・・・・・」


 悪魔から魂と言う言葉が出た事を思い出す。

 それがそのままの意味なのならばそれは――――


「バァァカがぁッ、このまま行かせるかよぉ!」


 ゲハゲハと下品に嗤い目の前の皇帝だか悪魔だか分からない存在は大声で叫ぶ。

 その叫びは人間には聞き取り辛い周波数だったのだろうか、何を言っているのか全く分からなかったが、耳の奥でキーンッと響くその声―――音は悪魔の操り人形を呼び寄せる。


「曲者だッッ」


「捕らえろッッ」


「いや殺して構わんッッ」


 広間の扉が突如開け放たれ、ワラワラと騎士がなだれ込んで来る。


「ちッ」


 俺は舌打ちをしつつ瞬時に入って来る騎士達と繋がり行動不能に陥れさせる。


「クソッ、数が多い!!」


「逃げるのじゃ!」


 行動不能にした先から別の騎士がなだれ込んで来て処理が追い付きそうにない。

 それを悟るとアリシエーゼは入口では無く、広間に存在する大きな窓を目掛けて走り出した。


「二人ともッ、行くぞ!!」


 帯剣していない為、頼りないファイティングポーズを取っていたラルファの首根っこを掴み、窓の方へ放り投げる。


 同時に俺も駆け出すが、直哉が動かない。


「おいッ、早く来い!」


「・・・クソッ!!」


 直哉は逡巡したがどうにか俺達に従ってくれて先んじてアリシエーゼが突き破って脱出した窓へと三人で突っ込む。


「おおおおおッ」


「オラァッ」


「うわぁぁあッ!?」


 三者三様の叫び声と共に三階に位置していた広間から外へと勢い良く飛び出す。

 滞空など出来ずに落下する間際に後ろを振り返ると人間ではあるが操られているであろう騎士達も俺達の跡を追って何の躊躇いも無く窓から飛び出して来る。


「まだ来るぞッ、走れ!!」


 そう言って影移動を使い俺は難無く着地する。

 その後にラルファと直哉も着地するが、直哉は自身の能力で上手く着地し、ラルファは身体強化された身体で強引に着地をして転がる。


「らぁッ」


 すぐ後にバラバラと落ちて来る騎士の数名をなるべく手加減して蹴りや掌底で吹き飛ばす。

 それで死んだらそれまでだが、出来る限りの配慮はしておこうとする辺り俺は甘いのかなと思うが、今はそれどころでは無いので直ぐにアリシエーゼが向かった先へと三人で再び走り出す。


「――ハァッ、ハハハハハッッ、絶対逃がすな!次いでにあの女も連れて来いッッ」


 あの女?


 そう思ったが誰の事か分からず三階の広間から高笑いする悪魔を無視して一気に加速する。


「ララーナッ!?」


 だが、直哉は違った。悪魔の言うあの女と言うのが皇帝の妹君、ララーナ姫だと直感したのだ。


「あッ、おいッッ!!」


「先に行け!後から合流する!!」


 ふざけんなッ

 今はそれどころじゃねぇだろ!?


 俺の憤り虚しく、直哉はその場で踵を返し能力を使いまるで手足からジェット燃料を吹き出す様に勢い良く飛んだ。

 俺達が向かう方とは真逆へと引き返して行ったが、その先には離宮の様な物が見えたので、そのララーナ姫はそこに居るのかと考えたが俺は直ぐに意識を切り替えて叫んだ。


「虎だッ、虎だからな!!!」


 俺は仲間内で決めた符牒を声の限り叫んだ。

 符牒と言うよりは単語が場所とリンクしており、何かあった際はその単語の場所で集合と言う意味なのだが、俺の叫びは果たして直哉に届いただろうか。


 帝城の外に居た騎士達もどんどんと増えて行き俺達に襲い掛かろうと攻めて来る。

 俺は直哉が聞こえたかどうかを確認する事無く、再び前を向き脱出を試みた。


 あのロケット野郎がッ

 マジで無事で帰って来いよ!?


これにて7章は終わりです。

8章はダンジョン攻略メインになりそうですが、暫く構成など考えます。

また公開出来る時が来ましたら順次公開していきますので、どうぞ今後とも宜しくお願い致します。


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実はですね、下の方に☆☆☆☆☆ってところがあるんですよ。

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一瞬で★★★★★に変化するんですって!

そんな訳で、評価、ブクマ等頂けるとやる気がムクムク湧きあがります。

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