第32話:イベント発生
序盤、特に1章辺りはすみません、初投稿でかなり拙文であったりしますので、時間があればその内表現や台詞回し等大幅に変更予定です。
それまでは何卒、生温かい目で見守ってやって下さい。
二日目の夜、夕食をセンビーンで済ませて暇を持て余した為、今日もコッソリと影術の練習をしていた。影だけに。
ただ、まったくと言って良い程進展は無く、だんだんと面倒臭くなってきていた。
「やっぱりこれ出来る気がしないわ・・・」
俺はそうボヤいて胡座をかいている状態から足を投げ出し、夜空を見上げる。
今日も異世界の夜空は数多の星々が煌めき、澄んだ空気だからか異様な美しさを放っていた。
「すっげぇなぁ」
何度見てもその夜空は美しかった。
「またそれか。もう練習は終わったのか?」
アリシエーゼも食事が終わったのか、俺の隣に歩いて来てそう言った。
「まぁ少しずつやるよ」
「そうか」
そう言ってアリシエーゼは俺の隣に腰を下ろし、同じ様に夜空を見上げる。
暫く無言で時は流れて行き、時折焚き火がパチリと弾ける音が辺りに響く。
「今日は何も無かったなぁ」
「何かとは何じゃ?」
「んー、ファンタジーなイベント」
「あぁ、そう言う事か」
「うん」
「そうそうそんなアニメや漫画の様な展開にはならないじゃろ」
「まぁそうなんだけどさ」
二人して相変わらず星を見ながら話す。
二日目は森から抜けて只管道を進んだだけなので魔物などに出会う事も無く今に至る。
「何か面白いイベントが無いと異世界に来た意味が無いだろ」
「今から魔界に行くんじゃからそれで我慢せよ」
「うーん」
そんなやり取りをしていると、耳が音を拾う。
その音は小さく儚い程か細い音であったが心にある種の違和感を植え付ける。
アリシエーゼに能力を分け与えられてから身体は丸っきり別物に創り替えられた。
筋力然り視力然り、人間とは言い難い程の能力を有する事になったが、聴力も例外では無かった。
遥か先の呟き声も集中していれば聞き取る事が出来る程のその聴力が何かの音を取らえたのだ。
その音はこの静かな澄み切った夜には不釣り合いな雑音であった。故に違和感があった。
ほぼ同時にアリシエーゼも音がする方へ顔を向けた。
「なんだ。何かがこっちに向かって来る?」
「気付いたか。此方に近付いて来ておるが恐らくは・・・馬車か?」
それを聞き更に集中すると確かに馬が掛けて地面を蹄が蹴る音と耳障りな雑音が混ざっている感じがし、言われれば馬車なのかも知れないと思った。
「馬車っぽいな。かなりのスピードな気がするが・・・」
「うむ。こんな夜には危険な程のスピードじゃ。少し警戒するかの」
そう言ってアリシエーゼは他のメンバー声を掛けて馬車が向かってくる方向を警戒させた。
言っみるもんだな
これはイベント発生でしょ
俺も馬車が来る方へ意識を集中させて目を凝らす。
暫くすると音はどんどんと近付いて来て、遠くに馬車らし影も見えて来た。
予想した通りかなりのスピードで掛けて来ており、街灯も無く舗装されていない道を行くには些か速度が出過ぎている様に思えた。
「見えてきたな。かなりのスピードだ」
「見えるんですか!?」
「まあね」
パトリックが驚いて聞いて来るがとりあえず今は馬車に集中する。
そんなやり取りをしている間も馬車はどんどんと近付いて来ていて全員の緊張が増した。
俺達が野営している場所は道から3メートル程離れた平地であり、道からはかなり近い。
何かの拍子で向かってくる馬車が道を逸れればこちらに突っ込んで来る事になる。
仮に向かって来る者が野盗の類の場合、こんな爆音を響かせて向かって来る意味が分からない。
寝込みを襲うなり不意打ちを狙って強襲するなりがセオリーだと思ったからだ。
これじゃ相手に警戒されるのは目に見えているので無いだろうと思った。
いや、でもかなりの実力があって気付かれていてもどうとでもなると思っていたら違うか
だが10メートル程の距離まで近付いて来たのを見て、野盗の類では無いと思った。
もしこのままこちらを襲う気ならもう減速していないとならないだろうし、このままスピードを維持して通り抜けそうだったからだ。
そのまま俺達の横を物凄いスピードで駆け抜けていく馬車を見送り、その際に御者台を確認する。
御者台には二人乗っていて、人相はまあ悪いと言えば悪いだろうか。
外套を纏いフードも被っていた為少ししか確認出来なかったが、特筆して語る様な者でも無さそうだった。
馬車は俺達が使っている様な幌付きの荷台を引いており、俺は通り過ぎる馬車を見送りざま御者台から、荷台の入口へと目を移した。
通り過ぎる一瞬、幌の入口の幕が風で舞い上がり中が見えた。
馬車の中には人が1人座って入れる程の檻が何個かあるのが見えた。
奥側は見えないが手前に檻が二つあり、その中に男女がそれぞれ別の檻に囚われているのも確認出来た。
それを見た瞬間俺は駆け出していた。
「アリシエーゼ!馬車を止める!」
そうアリシエーゼに言いながら、身体が壊れない範囲で全力で馬車を追う。
アリシエーゼも直ぐに俺に追い付いて来た。
「御者台の奴を片付けろ!」
「うむ」
俺がそう言うとアリシエーゼはグンッと速度を一段階上げて直ぐに馬車に追い付き御者台の横まで行くとそのまま流れる様に御者台に飛び乗った。
「うわッ」
「な、なんだおま―――」
御者台に乗っていた男達の声が聞こえて来たが直ぐに静かになり馬が嘶きながらスピードを落として行く。
俺は幌付きの荷台の入口近くに陣取り中から出て来る奴に集中する。
それにしても俺が片付けろって言ったからだと思うが何の戸惑いも無く殺したな
アリシエーゼが御者台の奴らを殺したのは匂いで分かった。
吸血鬼の特性か、血の匂いには敏感になっている為、辺りに漂う血の匂いは直ぐに分かった。
その匂いの濃度から大量の血が流れているのは分かったので、つまりはそう言う事なのだろう。
俺は人を意のままに操るなんて能力があるので今まで気に入らない奴はとことん追い詰めて時には殺して来た。
ただそれは直接俺が手を下して来た訳ではない。
自死に追い込んだり、同士討ちさせたりと何だかんだ自分の手を汚す事は無かった。
それはきっと自分の手で人を殺してしまったら何となく戻れなくなると言う思いが漠然とあったと言うのもあるし、まだ人間のままで有り続けたいと言うほんの僅かな願いもあったのかもしれない。
この世界に来て何かタガが外れたのかもな
そうであったかもしれないし、もしかしたらアリシエーゼに替えられた事で心までもが別物になってしまったのかもしれない。
そんな事を考えるが、俺が心がどうのと考えた事に自身で笑いが込み上げてくるのを感じた。
二足歩行のしかも人型のゴブリンを殺した時もまったく心が揺るがなかった。
少しの戸惑いも無く、最初から殺す事を考えて身体を動かした。
アリシエーゼに替えられなくとも何の戸惑いも無くゴブリンを殺せたであろうか。
そんな思いが俺の心に渦巻くが、それもどうでもいい事かと思い直した。
だから何だって言うんだ
どうでもいいだろそんなの
「おい!どうなってる!何で急に止まったんだ!」
そんな事を逡巡していると荷台から二人の男が降りて来た。
二人とも革の胸当てを付けており、片手に小剣を持っていた。
見るからに悪党面だな
でもとりあえず確認しておくか
そう考えると同時に一人の男の記憶を読み取り終える。
思った通り男達は野盗であった。
ダリス公爵領とエバンシオ王国領を股に掛ける結構大規模な野盗の集団で、各街の中での窃盗や人攫い、街道での盗賊行為等を主に行っている様で、今も攫った商品を迷宮街ホルスに卸に行く途中であったらしい。
大規模な組織立って活動している様なので野盗では無く盗賊団かと思い直したが、正直それもどうでもいいかと思った。
「殺していいな」
そう呟いて俺は出て来た二人に一瞬で駆け寄り、右の男の水月に右の掌底を叩き込んだ。
「ごがッ」
掌底を喰らった男は上手く息も吐き出せずに驚愕の表情を浮かべたてそのまま前のめりに倒れた。
倒れた男はピクリともせずにそのまま息絶えた。
「お、お前なに――」
残った男は仲間の命を一瞬で刈り取った俺を見て何か言おうとしたが俺は言葉の終わりを待たずに左ハイキックを男の右霞辺りに放って足を振り抜いた。
蹴りを喰らった男はボギリと鈍い音を首から鳴らしながら頭が左へと吹き飛んで行ったが、正に首の皮一枚で繋ぎ止められ、頭と身体が離れる事は無かった。ただし命は一瞬で刈り取られ、膝から力無く崩れ落ちていたが。
ちょっと間を置いてやったけど全然反応出来て無かったな
やっぱりこんなものなのか
男達に放った掌底やハイキックはかなり力を抑えた。込めた力は一割にも満たなかったであろう。
殺さずに人間を無力化するなら更に力を抑える必要がある事を思うと辟易してきた。
「終わったか?」
アリシエーゼが御者台の方からこちらに歩いて来た。
「あぁ」
「それにしても綺麗に殺したのう」
俺が殺した男達を一瞥してアリシエーゼはそう言い放った。
それを聞いてこいつはどんな殺し方をしたんだと気になり、反対に御者台へと向かった。
「うへぇッ」
御者台には首から上の無い死体が二体転がっていた。
「これどうやったんだろ」
物理でぶん殴って頭だけ吹き飛ばしたのか魔法で吹き飛ばしたのか。
「引っこ抜いたんじゃぞ」
「えぇ・・・蛮族じゃねーか」
「失敬なッ」
「いやいや。そんな殺し方する奴いるかよ・・・」
いつの間にか俺に着いて来ていたアリシエーゼと問答するが、引っこ抜いたとか何処の蛮族だよと本気で思った。
「こいつらやっぱり野盗だったよ」
「・・・そうか」
アリシエーゼは、俺が記憶を読んだ事を理解して答えた。
「だが別にただの野盗くらい放っておいてもよかったのでは無いかの」
「それが通り過ぎる時に荷台の中が見えてさ。中に奴隷商に売り払う為の商品が入ってた」
「むッ、そうなのか」
馬車が通り過ぎる時、幌の中から男達が出て来る時、記憶を読んだ時にそれぞれ確認しているから確実だ。
それに―――
「中の囚われている奴らの中に転移者がいる」
「な、なに!?そいつらの頭の中も見たのか?」
「いや、とりあえず見れば分かるよ」
そう言って俺は幌の入口の幕を開け放った。
「こ、これは・・・確かに・・・」
アリシエーゼは檻の中にいる者を見て驚きを隠せないが認めざる得ないと言った感じで呻く。
それもそのはず。檻の中に囚われていた、手前二つの檻に入っていた者は男女で男の方は真っ黒い細身のスーツで中にシャツを着てネクタイまでしている。
更に極めつけは女の方でセーラー服を着ていた。
ちなみにセーラー服は見事に標準的なもので、ソックスは短い白のソックスを履いている。
「流石にこの格好はこの異世界では有り得ないだろ」
「確かに・・・」
スーツにセーラー服姿の二人を見つめながらアリシエーゼは困り果てた顔をしていたがまずは解放するのが先と思ったのか、追い付いて来たナッズ達に中から檻を出して解放する様に伝えていった。
暫くして囚われていた人達が全員解放されて俺達の前に並んだ。
全部で四人囚われており、スーツの男とセーラー服の女以外はこの世界でも標準的な服装の十代とみられる女で、見た目だけで判断するなら異世界人なのだろう。ただ、服装だけで判断はしないが。
「とりあえずあんた達を攫った奴らは片付けたから安心してくれ」
俺は四人にまずはそう言って安心させようと試みた。
標準服の二人は明らかに安心した顔をしたが、スーツ男とセーラー服女は何とも言えない表情をしていた。
「とりあえず状況を確認したいんだけどいいかな・・・とりあえずキミから」
そう言って俺はセーラー服の女を見た。
服装はセーラー服だと言う事から学生であろう。
外見は長く艶のある黒髪を腰の辺りまで伸ばしていて、目は切れ長で美人と言う言葉がピッタリだ。
身長は俺が174センチだから百七十センチくらいだろうか、女性としては高い方だと思う。
かなり整った顔をしているが性格はどうなのかは分からない。
もう一人のスーツ男の方は、黒よりの茶髪でこちらも顔はかなり整っている。
セーラー服女はザ・日本人と言った容姿だが、こちらはどちらかと言うと西洋寄りのイケメン。
背も百八十センチ程あるだろうか高く、身体付きはほっそりとした印象を受ける。
先程からずっと無言なのは気になるがかなりのイケメンだ。ムカつく事に。
セーラー服の女は自分に向いた俺の顔を困惑した様子で見つめ返して来たが答えは一向に返って来なかった。
「??どうした?」
「あ、あの――」
反応が無いセーラー服女に困惑していると、標準服の一人が俺の話に割り込んで来た。
「この人達、たぶん言葉が通じないです・・・」
「え?言葉――あッ!」
そう言えば俺はこっちの異世界語で話していた事を忘れていた。
試しに日本語でセーラー服女に話してみる。
「あー、これで話通じるか?」
「ッ!は、はい!」
日本語で話し掛けた俺に驚きながらセーラー服女は返事を返して来た。
スーツ男もいきなり日本語に切り替えた俺に少し驚いた顔をしたが特に何も言う事は無かった。
「よかった。とりあえず何でこんな事になってるのか説明出来るか?」
「は、はい。でもよかった・・・みんな言葉が通じなくて、英語とかも試してみたんですけどダメで困っていたんです。」
「そうか、俺も最初は戸惑ったよ」
「そうなんですね。あ、やっぱり日本の方なんですね。服装でそうでは無いかと思ったんですが・・・って、えっと説明ですよね。どう説明していいのか・・・」
セーラー服女はかなり慌てた様子で捲し立てて話し始めたが、もう少し落ち着けた方がいいかと思い女の言葉を遮った。
「あー、すまん。まだ混乱してるよな。とりあえずあっちで俺達は野営してて焚き火してるから温まりながらゆっくり話してくれればいいよ」
「あ、はい・・・すみません」
「いや、別に謝らなくていいし」
セーラー服女の日本人にありガチなまず謝ると言う態度に苦笑しながら標準服の女二人にも同じ様な内容を異世界語で話した。
そうして囚われていた四人を野営地まで案内して焚き火前に座らせた。
ちなみに野盗共の馬車は有難くこちらで接集する事とし、檻は特に使い道が無いので森の近くにナッズが運んで行き放置した。
「何か暖かいお茶とか無いのか?」
「そんな気の利いた物がある訳無かろう」
「だよな」
「白湯くらいしか出せんぞ」
「まあそれでいいんじゃないか」
アリシエーゼはその会話の後、ソニに指示を出し四人に白湯とセンビーンを用意させた。
ソニはすぐに馬車の右側に回り込み、木で出来たカップを四つ持って来てそれぞれに手渡した。
食器類とかはあっちの樽に入ってるのか
そんなどうでもいい事に合点がいったがまたそれもどうでもいい事かと切り替えた。
ソニはカップを渡した後、鉄製の小さな鍋に馬車から水を汲んで来て、焚き火の上にそのまま鍋を置いた。
あ、直火と言うかそのまま置くのね・・・
白湯を作っている間にソニは四人にお腹が空いているか聞いて回り、全員腹減り状態だった為にそれぞれにセンビーンも手渡していっていた。
「あの、これはなんですか・・・豆?」
セーラー服女が俺にそう訊ねて来た。
確かにお腹空いているか聞かれて渡されたのが豆とか、初見なら思うところもあるだろうと思ったら笑いが込み上げて来た。
「あぁ、それ仙●って言って、三粒くらいで腹が一杯になる豆だよ」
「センビーンな」
アリシエーゼがすかさずツッコんで来るがそこは安定のシカトだ。
「こちらも食材とか持ち合わせて無くてね。それで我慢してくれ」
「あ、いえ、頂けるだけで大変助かるんですが、これだけでお腹が満たされると言うのはちょっと信じ難くて・・・」
「俺も初めての時はそう思ったよ。まぁ食べてみれば分かるよ」
「はあ・・・」
そう言ってセーラー服女は二粒一気に口に含み軽く咀嚼してから飲み込んだ。
どうやら女性は二粒で良い様だ。ちなみにスーツ男は三粒だった。
「えッ!?凄い!」
早速セーラー服女は腹が膨れて来たらしく物凄く驚いて声をあげた。
標準服の女二人は特に驚く事無く、貰ったセンビーンを食べて満足している様であった。
スーツ男も食べた後にすぐに満腹になり多少驚いている顔をしたが、特に声を上げる事は無かった。
センビーンを食べて白湯を飲み、皆緊張と恐怖から解放されてリラックスし始めている様であった。
そろそろいいかな
「じゃあ落ち着いた事だしちょっと話聞かせてもらいたいんだけど貴方達二人は地球人でいいんだよね?」
俺はそう言ってセーラー服女とスーツ男に二人の顔を交互に見る。
スーツ男は無言で頷き、セーラー服女はちょっと複雑そうな顔をしてから頷いた。
「はい・・・その、数日前に気付いたらいつの間にか知らない場所に居て・・・私、何が何だか分からず誰か人は居ないか探してたんです。そしたら・・・」
「野盗に捕まったと」
「・・・はい」
「そうか・・・あっとごめん、俺の名前は瀧田暖って言います」
「あ、どうも初めまして。私は里崎明莉です。都内の高校に通う16歳です」
明莉は少し恥ずかしそうにしながらそう自己紹介をした。
ついでにとスーツ男に顔を向けて、暗にお前は?と問う。
「・・・私は武田篤。都内で研究職の様なものに就いている」
研究職か
何の研究してるんだろ
「何の研究してるんです?」
「・・・ある特殊な分野、かな」
「??」
全然想像出来ない・・・
語りたく無いのか、語っても理解されないと思っているのかは不明だがとりあえず置いておく事にした。
「篤さんも気付いたらこの世界に?」
「・・・そうだな。私も彷徨っていたら突然拉致された」
「そうなんだ。俺も同じで、ただ野盗とかには出会わずに此奴ら傭兵団に出会って今は大きな街に行く途中」
そう言って俺の後ろで控えていたアリシエーゼと四人の傭兵達を手で示す。
「傭兵、ですか?」
「そう、傭兵。この世界ってゲームや漫画みたいに、モンスターみたいなのがウジャウジャいる世界なんだ。俺も所謂ゴブリンってのに出会ったけどマジで俺が想像しているゴブリンそのものだったよ」
「はい、それは聞いてます」
「うん?誰に?」
「え?神様ですけど?」
「・・・・・・・・・」
えーと・・・
あれ、どう言う事だろう
「あ、篤さんももしかして神に出会った・・・?」
「あぁ、本当に神なのかは分からんがそう名乗っていて、実際にそれに近しい力も確認する事が出来た」
「マジですか・・・」
まさかここで神が出て来るとは・・・
アリシエーゼは転生時に出会い特典を貰っていたがそこはどうなんだろうか・・・
「ちなみに、転移者特典は・・・」
「はい、その話は神様にされました」
「私も貰った」
「・・・・・・・・・」
ちょっとぉぉぉぉおおおッ!!
神様ぁぁぁあああッ!!!
なんで俺だけ・・・
これは狡いよ
卑怯だよ
いきなり俺が黙り何とも言えない複雑な表情をしていたからであろうか、明莉が問いかけてきた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「・・・うん、大丈夫・・・」
「全然大丈夫そうに見えないんですけど・・・」
ちょっとショックがデカくて・・・
これはあれだろ
神様にも見放されたってやつだろ
俺が何したって言うんだ
「大丈夫じゃよ。ただ不貞腐れておるだけじゃ」
「そ、そうなんですか?あ、えっと・・・」
「あぁ、妾はアリシエーゼと申す。明莉じゃったか、宜しく頼むぞ」
「はい、よろしく―――ん・・・?」
「どうした?」
「な、なんで日本語喋れるんですか!?」
「あ・・・」
阿呆だなホントに
「あ、じゃねぇよ。ホントバカだよなお前は」
アホな困ったちゃんの不用意な発言を聞いて俺は直ぐに覚醒した。
「バ、バカとは何じゃッ」
「バカじゃ無かったら阿呆だ」
「何をぅッ」
「不用意に自分の情報バラすんじゃねぇよ」
「良いではないか!こ奴らも同じ地球人じゃぞ!」
「はぁ・・・もういいよ。って訳でこいつも元地球人の転生者だ」
そう言って俺は明莉と篤を見る。
明莉はどうも戸惑っている様だ。
篤は・・・無表情でアリシエーゼをガン見している。
「転生って・・・輪廻転生って事ですか?」
「んー、ちょっと違うかなぁ。見た事無い?小説や漫画やアニメで死んだら神様とかから色々な特典となる様な力を貰って、剣と魔法のファンタジー世界に行っちゃうやつ」
「ええと・・・」
「あ、無いか」
「はい・・・すみません」
明莉は苦笑いを浮かべながらも器用に申し訳無さそうにして謝った。
「だから別に謝らなくていいし」
俺は笑ってそう返す。
「兎に角、ここって魔物やら獣やら悪魔やら何やらが蔓延ってて、そいつ等を剣と魔法で倒して行く世界な訳だ」
「そ、そうなんですね・・・」
「ちなみにどんな特典貰ったんじゃ?」
「おい――」
「別にいいですよ」
またしても何も考えない発言をするアリシエーゼに苦言を呈そうとする俺を明莉は優しく制した。
「この世界に転移、ですか?その送られる際に神様が私に聞いて来たんです。きっと困難な事が待ち受けているから私が望むものを何でも一つだけ授けると。それはお金でもいいし、名声や知識とか非物質でも構わない、もちろん直接的な力でも何でもいいって」
そう言って言葉を区切った明莉を見て俺は黙って先を促す様に一つ頷く。
「私よく分からなくて。いきなりそんな事言われても何も思い付かなかったんで元の世界に帰して下さいってお願いしました」
「「え?」」
俺達の中ではそれはまったくもってイレギュラーな回答であった為に俺とアリシエーゼはハモって明莉の言葉に反応してしまった。
「え、でもここに居るって事はそのお願いは聞き遂げられなかったって事だよね・・・?」
「はい。それは無理だと言われました。でもやっぱり何も思い付かないと言ったんです。そしたら・・・」
「そしたら・・・?」
「気付いたら知らない所に立っていました」
「「え?」」
まさかの無能力!?
え?ホントに?
「こっちに送られる時に何か言われなかった?」
「いえ、何も・・・」
「そ、そうなんだ・・・」
何だか可哀想になってきてしまった・・・
俺とは比べ物にならない位可哀想な境遇では無いだろうか・・・
「私、間違えてしまったんでしょうか・・・」
明莉はそう言ってとても不安そうな表情を浮べた。
それを見て俺とアリシエーゼは顔を合わせ、こちらも何とも言えない表情をお互いにしていた。
「うーん・・・でも聖典を見てこなかったらそう答えたりもするよな、たぶん」
「そうじゃな・・・」
「聖典?」
「いや何でも無い。とりあえず今後どうするかは後で考えよう」
「はい・・・」
「篤はどうなんじゃ」
「・・・どうと言うのは?」
「じゃから特典に何を貰ったかと言う事じゃ」
こいつはまた・・・
「・・・すまないが答えられない」
「ほう。それは何故じゃ」
「君達をまだ信じられないからだ」
またハッキリ言いますねこの方は
でもそれが正解だと俺も思う
「助けて貰った事には感謝している。ありがとう」
篤はそう言って俺達に頭を下げた。
「いやいいですよ別に。ちなみに聞くんですけど、出会った神様ってどんなでした?」
「どんなとは?」
「外見とか何でもいいんですけど情報が欲しいなと」
「なるほど。私が出会ったのはたぶん男の神だ。それ以外は分からない」
「分からないとは一体・・・」
「見れなかった。なんと言うか、後光が差していてと表現すればいいのか見たら不味いと本能的に思って足元しか見れなかったが、声の感じだけで言うのなら多分男の神であろうと推測出来た」
「あ、私も同じです!私は神様から見てはならないと言われました。恐れ多いと言うかとても怖くて言われなくても見る事出来ませんでしたけど」
明莉は篤の言葉にそう言って同意した。
「男だったの?」
「私は女性だと思いました」
「あ、そうなんだ。何で違うんだろ」
俺はそう言ってアリシエーゼを見る。
「性別がと言う事か?」
「うん」
「さあの。心理状態など本人のその時の状態で聴こえ方が違ったのか、それか本当に別の神じゃったのか」
「あれ?アリシエーゼは男って言ってたよな?」
「うむ。妾は然とこの目で見たから確実じゃぞ」
「えッ見たの?って言うか見れたの!?」
「何か眩しいなとは思ったがどうしても確認したくての」
「何なのお前・・・」
「何がじゃッ」
吸血鬼の始祖を超える存在となったのは成る可くして成ったんだろうなと改めて認識した。
なんて言うか、呆れを通り越して感心すらしてしまう。
それから明莉と篤に話を聞き、大体の事情は把握した。
どうやら俺と同じ日に転移して来た様だ。
ただ転移前に居た場所はバラバラであったし、俺が見たあの巨大な眼は二人とも見ていないとの事であった。
二人に事情を聞いた後、標準服の二人にも話を聞こうと思ったがどうせ現地人だろうと思うと一々話を聞くのも面倒臭くなったので記憶を読む事にした。
それによると二人はここから三日程の距離にある村で暮らしており、森に薬草等の野草を採取に出掛けた際を狙われて拉致られた様であった。
そのまま運ばれてる道中で明莉と篤も捕まり今に至ると言う事の様で、想像の範疇であった。
村まで送り届けてやろうかと話すと、俺達が向かうイシスへの街道沿いに少し大きめの宿場町みたいなものがあり、そこに役人なり兵士が居ると思うから事情を話せば対応してくれるだろうとの事だったのでその言葉に従う事にした。
話が一段落したので今日はこのまま休む事になり、女性は全員馬車で、男は焚き火を囲んで寝る事にした。
俺は寝転がりながら明莉と篤から聞いた話を思い出しながら思う。
神って何者や
いや、神なんだろうけどさ
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