第120話:生活魔法
出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。
無理だったら、優しく微笑んでください。
昼の休憩は、二つの中隊が一時間ずつ交代で見張りを行う事となっている。
また昼に見張りを行った中隊は夜の見張り任務には加えないで、昼に見張りをしない残りの三つの中隊が夜の見張りを交代で行うと言う取り決めだ。
つまりはこのクソ聖女一団は五個中隊で編成されている。
殿の中隊も一度聖女の周りに集まり、全体への連絡事項等のやり取りを行い、とりあえず二時間の休憩となった。
休憩場所はまだ一層の中間にも辿り着いていないと思うが、高さ三メートル程の岩山の様な物を背にする形で取り、勿論その岩山の上にも一小隊は見張りで置いておくので、とりあえず気を休める事は出来るだろう。
特に引継ぎ事項も無いので俺と仲間達は一度集まって話をしようと、集団から少し離れた場所に陣取り座って休憩を取り始めた。
「さて、皆初めての魔界はどうだった?」
俺は円になって座る仲間達の顔を一人一人見て行く。
「最初は緊張したけどよ、地上と大して変わらねぇな!」
これはナッズ。
「油断は禁物ですが、順調では無いでしょうか」
これはアルアレ。
「私の伝説の槍の出番はまだまだ先になりそうだな」
この馬鹿は篤。
「あまり現地で食材の入手は出来そうに無いですね」
これはソニ、流石コックさんだ。
「あッ、聖女様がこっち睨んでるよ」
これはパトリックだが、言われて聖女を見ると、遠くから此方を睨んでいるのが分かる。
此方と言うか、俺を睨んでいる。
ウケるー
「放っておいていいよ、あんな馬鹿」
「・・・・・・」
俺の言葉にアルアレは小さくため息を付くが、俺は構わず先を促した。
「わ、私はその・・・怖いです」
「ハッハッハ、大丈夫ですよ聖女様!入口からずっと私がお護りしているの気付かなかったですか?」
明莉の言葉にドエインが軽快な笑いと共にほざくが、まぁこれは放っておこう。
「ユーちゃんは怖く無かった?」
「・・・ウン」
「だ、そうです」
これはモニカとユーリーだが、この二人もまぁ放って置いても今の所大丈夫だろう。
モニカは頭カラッポな感じに見えて、相当強い。
流石と言うべきか、弓の腕はちょっと引くくらい上手いし、ユーリーも精霊魔法に関しては所謂天才だ。
「そう言えば、この魔界でも精霊ってちゃんと存在してるのか?」
魔界と言うくらいだから、何となく精霊が嫌う場所なんじゃ?と思いユーリーに尋ねるが、相変わらず眠そうな目で俺を見て短く答えた。
「・・・ウン、イッパイイル」
「そ、そう。なら良かったよ」
「高位の精霊なら兎も角、低位の精霊は地上と変わらずにそこら中に存在しておる。まぁ、つまりは逆を言えば敵側も精霊魔法を使えると言う事じゃがな」
「ふーん・・・で、アリシエーゼはどうなの?」
「つまらんに決まっておるじゃろッ!」
えぇ・・・
何で怒ってる訳?
「そこで怒り出す意味がまったく分からないが、とりあえず一層なんかじゃ満足出来ないって事でいいか?」
「違うわいッ!!」
わいって・・・
「じゃあ何だよ、面倒臭ぇな・・・」
俺が冷めた目でアリシエーゼを見ると焼け石に水―――いや、火に油だったのか、更にアリシエーゼはヒートアップした。
「なっ!?面倒臭いじゃと!?そもそも貴様が―――」
「はいはい。、ちょっと落ち着いて下さいよ、アリシエーゼさん。ハルさんももうちょっと乙女心って言うのを分かってあげて下さいね?」
ヒートアップしたアリシエーゼを宥め、俺にダメ出しをするしたり顔のモニカに釈然としなかったが、先ずそもそも、アリシエーゼを乙女と言って良いのだろうかと首を傾げた。
「あ、その顔は全然分かって無いですね?良いでしょう、私が教えて上げます!」
そう言って得意げに胸を張るモニカは、自分のバインバインが揺れまくって、それを篤が凝視しているのを気付いているのだろうか・・・
「いいですか、アリシエーゼさんはハルさんがあのファイとか言う人間とずっと仲良さそうに話してて相手にしてくれなくて拗ねているんですよ!」
どうだぁ!と威風堂堂とそんな事を言うモニカを、アリシエーゼは目と口を大きく開いてワナワナと震えながら見る。
「な、なな、何を言っておるんじゃ!」
「ん、あぁ、そうなのかすまなかったな。ちょっとアイツとは話しておきたいと思っててさ」
「だ、だから違うと言うておろうに!勘違いするでないッ」
狼狽するアリシエーゼに俺は素直に謝ったが、当の本人は違う違うと必死に否定する。
「違う訳無いじゃないですか。ハルさんがファイって人と楽しそうにお話をする度に寂しそうに―――ッ!?」
モニカが俺がファイと話し込んでる間のアリシエーゼの状態を説明しようとするが、その途中で左斜め向かいに座っていたモニカの目の前に突然アリシエーゼが現れて仁王立ちした。
めっちゃ近いんですが・・・
モニカの顔とアリシエーゼの胸がくっつきそうなくらいの距離にある。
突然現れたアリシエーゼに身体をビクリとさせて固まっていたモニカであったが、ゆっくりと首を後ろに反らせて天を仰ぎ見る。
「アヒィィィッッ!!」
アリシエーゼの顔を見た瞬間にモニカは口から泡を吹きそのままバタンと後ろに倒れて気絶した。
何なのホント・・・
アリシエーゼを本気で怒らせてしまったから当然そうなるだろうと思い、同時に南無三と心の中で唱えてからモニカを無視して話を戻した。
「まぁ、そんな訳でまだ暫くこのままで行こうと思ってるって言うか、一回目のアタックはそのまま、二回目はとりあえず明日帰ってから考えよう」
俺の提案にモニカ以外全員頷き、そのまま休憩となった。
因みに、攻略最中の食事は基本的に聖女側から支給される。
と言っても保存食の肉のジャーキーだとか、そう言った物だけだが。
俺達も支給を受けるが、全員配給を貰うとまた一箇所に集まり、配給品を持ち寄った。
「やっぱり保存食ばかりだな・・・」
そう言ってチラリとソニを見ると、無言で頷き近くにあった大きめのバックパック型の革で出来た背負い袋から手際良く様々な調理器具等を用意し出した。
そう、俺は準備期間中にソニとナッズには魔界でも料理を楽しめる様に色々と用意させていたのだ。
「ハルに言われて色々探したんだけどよ、使えそうな魔導具一つしか無かったんだよ」
ナッズはそう言って調理用火種セットだろうか、手斧とそこまで大きくない丸太を別の背負い袋から取り出してその場で器用に丸太を割っていく。
直ぐに一組の薪が完成し、アリシエーゼを呼んでそこに火を付けて貰った。
「結局何買ったんだ?」
頼んだはいいが、結果を聞いていなかった為俺はナッズに聞くと、ナッズはソニの顔をチラリと見る。
ソニはナッズの視線を受けて取り出していた鍋を火の上に置き、もう一つ何かを手に持って俺に言った。
「これは水を飲み水を作り出せる魔導具です」
そう言って手に持った木製の手持ちの付いていないジョッキの様な物を俺に見せる。
「飲み水を作れる?」
「はい、本来ならこの魔導具は大きな傭兵団や貴族くらいしか持っていない物なんですが、運良く売りに出されていましたので」
金額も然ることながら、希少な物の様で、この魔界で壊れていない状態で極稀に見付かるか、何処ぞの有名工房が作り出して数量限定で年に一回程売りに出されるくらいしか入手方法が無い物らしい。
大きさはジョッキ程度だが、新鮮な水が魔力を注げば直ぐに湧き出る仕組みで、飲料水は勿論、料理用、食器洗い用、洗濯用と色々な用途で旅やダンジョンアタック中に水場を探す事無く水が手に入ると言う事だった。
「普通はさ、あんな風に中隊で一つとか、大隊で一つダンジョンに持って行って、休憩中に仲間の水袋に水を補給する形で運用するんだ」
ドエインがそう補足したので、俺はファイの所を確認すると、確かに一人が水の出る魔導具を持ち、そこに水袋を持った奴らが列を作っている。
聖女の方を確認すると、此方も魔導具は一つだけの様で、ファイ達の所以上に長蛇の列が出来ている。
成程・・・
あれ捌くだけで休憩終わっちゃうんじゃない・・・?
一人に一つとは言わないが、小隊に一つは揃えたいなと思うこの魔導具、お値段は如何程なのだろうかと思い口を開くが、直ぐにナッズが制する。
「おっと、値段は聞くな・・・目ん玉が飛び出ちまうからな・・・」
そ、そんなに!?
とりあえず心の中にある欲しいものリストに水が湧き出る魔導具と書き記しておき、値段は聞かない様にした。
「それにしても、どんな仕組みで水が出てくるんだ?」
ソニが魔力を注ぐとジョッキの中に水がどんどんと溜まり始め、一秒程でジョッキ一杯分の飲み水が生成されるのを見て、先程から気になっている事を口にする。
「ふんッ、そんな事も知らんのか。全く仕方無い奴じゃの!妾が教えてやろう!」
先程までモニカを威嚇して殺しかけていたアリシエーゼがもう立ち直った?様で、いつもの尊大な態度になった事に全員が苦笑する。
アリシエーゼはそんな事お構い無しに俺にこの魔導具の仕組みについて講釈を垂れ始める。
「そもそも、水の生成は精霊魔法で行うんじゃが、何も無い所に水を作り出すのは中々に難しいんじゃよ―――」
アリシエーゼの説明はこうだ。
本来、精霊魔法は、触媒となる物質と魔力、そしてその物質を司る精霊を掛け合わせて使うのが基本らしい。
つまりは、水の魔法を使いたいなら、水辺で使うとかそう言う事だ。
だが、水が無い所で水を生み出すとなると元となる物質が無い為、水の精霊と魔力でどうにかするらしか無くなる。
触媒となる物質が多ければ多い程、魔法の発動は簡単になるので、大気中の水分を使う事は出来るが、それでは基本的に飲み水を作るのにも苦労するらしい。
「その触媒を無しにアリシエーゼはさっき火を出してたのか」
「そうじゃ!凄いじゃろ!?」
ワッハッハと豪快に仰け反りながら笑うアリシエーゼをまた全員が生暖かい眼差しで見ていたが、やはり本人は気付いていなかった。
結局、触媒が無しだと膨大な魔力と結構精密な精霊の制御を要求される様で、普段から肉体だけで無く精神を鍛え魔力量を増やしたり、魔力操作を最適化したりしている傭兵や騎士達とは違い、一般人には触媒無しに精霊魔法を使うと言うのは中々に高度な事の様だ。
勿論、出来なくは無いが、効率を考えると触媒を用意して置いた方が良いので、一般家庭で火を使いたい時は家の何処かに蝋燭等で火種を常に確保したり、水瓶に水を蓄えておいたりしてそれを触媒とするのが一般的と言う事だった。
あれ、この火を灯すとか、水を出すって所謂生活魔法ってやつか?
そんな事を一瞬考えるが、俺には使えないしといつもの考えに至り、すぐに意識を戻す。
この水を作り出す魔導具は、水の精霊が良く集まる水辺に咲く鈴蘭の様な花の一部を特殊な製法で結晶化し、それをまたまた特殊な魔力回路に組み込んでおき、一度水を生成して使い切った精霊を直ぐにジョッキの周りに強制的に集める様な仕組みとなっているとの事だった。
水の触媒はその鈴蘭の結晶なのか?と思ったが、どうやらその特殊な魔力回路で高効率で魔力循環をさせる仕組みの様で、集まる精霊もかなりの数になる事から、少し魔力を込めただけでジョッキ一杯分くらいの水をなら瞬時に作り出せると言う事であった。
つまり触媒無しの水生成を水の精霊と魔力で無理矢理行う力技って事だ。
「そう言う仕組みだったのか。理解したよ、ありがとう」
俺は納得してアリシエーゼにお礼を言う。
「う、うむ・・・まぁ、そのなんじゃ、分からない事があれば妾に聞くが良いぞ」
照れ隠しをしているのか、顔を背けながらそう言うアリシエーゼを見て、怒ったり恥ずかしがったりとコロコロと表情を変える奴だなと可笑しくなり俺は笑った。
「な、何を笑っておるかッ」
「いや、別に」
また騒がしくなったが、ソニの作る料理が出来始めた為に俺はそれを軽くあしらって昼食を皆で食べた。
やっぱり食事は騒がしい方が良いな
実はですね、下の方に☆☆☆☆☆ってところがあるんですよ。
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