第116話:前夜
出来るだけ、連日投稿出来る様に頑張ります。
無理だったら、優しく微笑んでください。
アリシエーゼの小言を聞きつつ、皆で昼飯を食った後、宿屋に戻るとデス1が部屋の前で待っていた。
「ハル様、帝国側の様子を確認して参りました」
「ご苦労様、どうだった?」
デス隊はどうやったかは知らないが、難無く帝国側へと潜入し、何食わぬ顔で偵察と装備の買出しを済ませていた。
帝国の間者は、徹底した管理の元運用されており、任務によりその人員は専属で集められる。
他の部隊との接点は一切無く、情報もかなり統制されており、一部の幹部連中以外には情報は一切開示されない。
何処から情報が漏れるか分からない以上、そうするのが最も最適である事は明白で、知らない事は喋れないと言う訳だ。
なので、デス隊としては例え帝国側にどこかしらの帝国密偵が潜んでいたりしていても顔も知らない為気付き様は無いのだが、もしかしたら、帝国側の間者の中にはデス隊の顔を知っている者が居ないとも限らない為、表立って目立つ様な行動は避けた結果、情報としては特に入手は出来なかった様だ。
「余り情報は入手出来ませんでした」
「うん、まぁ別にいいよ」
「ただ、確度のある情報が何かある訳では無いのですが・・・私個人の意見を述べさせて頂いても宜しいでしょうか」
「勿論!何か気になる事あった?」
「・・・これはあくまで私個人―――他の二人も同意見なのですが、どうにもきな臭いです」
そう言ったデス1は渋い顔をするが、デス1だけで無く、他の二人も感じている事ならば聞くに十分な情報だと思った。
「何か画策でもしてんのか?」
「分かりません。そう言った情報は何も出て来ませんでしたが・・・なんと言うか、街の雰囲気、特に裏の方は何か有りそうな雰囲気でした。少し浮き足立つ様な、熱量が表と裏で少し違うんです」
どう表現したら良いのか分からない様でデス1は抽象的な表現が目立つが、その雰囲気とやらを全員が感じたと言う事は、本当に普段とは違うのだろう。
「・・・このタイミングで仕掛けて来るなら、やっぱり聖女狙いか?」
「分かりませんが、十分考えられるかと。現に私達も以前は、聖女が魔界へ向かうタイミングで事を起こそうと画策していた訳ですし」
「確かに。魔界の中ならより直接的な方法を取れそうだしな」
「はい、万が一と言う事も御座いますので、一応お耳に入れておこうと思いました」
「うん、分かったよ。ありがとう」
俺も心の内に留めてはおこうと思い、それで会話を切り上げようとするとデス1が待ったを掛ける。
「後、一点。宜しいでしょうか」
「あ、うん。どうした?」
俺が答えるとデス1は手に持っていた大きめの手提げ袋の様な袋から物を取り出し俺に差し出した。
「言われていたハル様のブーツで一つ良さげな物が御座いましたので購入して参りました」
「おぉ!?マジか!」
見るとそのブーツは一見ちょっとゴツめのエンジニアブーツの様な革のブーツだった。
「表面に使っているメインの革はアークデーモンの物で、他にもオーガ等の革も使っておりますが、表面のコーティングにはあの!黒魔泥を使っており―――」
要は贅沢素材をふんだんに用いていると言う事であったが、余りにも贅沢素材過ぎているのか、デス1の興奮は収まらない。
「―――更に内側にはあの!魔羊の羊毛を使っておりますので、履き心地も極上で、戦う場合には忌々しいあの超回復の能力が毛にも多少ですが宿っておりますので、常に疲労程度でしたら癒す効果もあるのだとか!」
「う、うん、よく分かったよ。ありがとう・・・」
一通り説明し終えたデス1であったが、その顔は早く履いて感想を聞かせろ!そして褒めろ!と言わんとする顔に見えたので、俺は宿屋の廊下であったが構わずに試着してみる事にした。
転移以前から履いていたハイカットのスニーカーを脱ぎ捨ててデス1から渡されたブーツを徐に履いてみる。
履いた瞬間、成程と思える様な履き心地で、羊毛も良い具合のクッション性を保ちつつ、脚にフィットする。
使っている革も硬過ぎず柔らか過ぎずの塩梅で、ブーツの底はそこまで厚手では無いので、ちゃんと地面の感触も感じられそうだった。
「めちゃくちゃ履き易いよこれ!」
「ふふ」
俺の感想にご満悦のデス1は補足する。
「確りと手入れをして頂ければ一生使う事も出来るでしょう。疲労回復の話をしましたが、他にも対傷、対酸、対毒等――あ、勿論対物、対魔性能もかなりの物でして、要所には魔鉄を薄く伸ばした金属も縫い込んである様ですので、攻撃性能、防御性能も申し分無いかと」
また始まったデス1の説明を聞き流しながら、俺はその場でピョンピョンと跳ねたりしていると、廊下を歩く宿泊客や宿屋の従業員の人達に危ない人でも見る様な目で見られている事に気付き、コホンと咳払いを一つして話を戻した。
「良い物を見付けてくれてありがとう。助かったよ」
「いえ、ハル様のお役に立てたのなら・・・」
「それでさ、ちょっと考えてたんだけど、やっぱりデス隊はここに残ってもらおうかと思ってる」
「それは先程の帝国の動きの件でしょうか」
「そうそう。ちょっと一応動きは把握しておきたい。魔界の中で何かあればそれは俺達で処理するから、お前達は動向をそれとなく探ってて欲しいんだよね。何か計画を未然に防げとかそんな事を言ってる訳じゃないから、絶対無理はしないで欲しいけど」
デス1の報告を聞いて俺は何となくそこは把握しておいた方が良い様に思えたので、魔界に一緒に着いて来てもらう予定だったが急遽変更した。
買ってもらった装備は今後に役立てて欲しい・・・
その後、明日以降の話を立ち話だったので軽く済ませ、明日の出発時には俺達に合流する様に伝えた。
その日の夜、アルアレ、ソニ、ドエインは教会騎士団の屋敷で翌日からの魔界攻略の説明を受けて来た。
アルアレとソニはアリシエーゼ達に報告をしに行き、ドエインが俺達の部屋で篤も含めて軽く説明をしてくれた。
ドエイン曰く、屋敷と言っているが、敷地はかなり広く、多くは宿泊施設の様な建物が複数あるらしく、参加する多くの傭兵団の面々はこの宿泊施設に寝泊まりするらしい。
ホルスに支部やホームのある傭兵団はその施設は使用しない様だが、それでも大人数を収容出来るだけのキャパはあるって事かと俺はリラの所の大隊が使っている施設くらいだろうかと思った。
また、ホルスでの演説が功を奏したのかどうかは分からないが、領都に拠点を構えている大型の超が付く程有名な傭兵団がこのホルスにも拠点を構えているのだが、そこから中隊規模での人員を出す事が決まった様だった。
「知ってるか?蒼炎の牙って傭兵団なんだが」
「いや、知らんな」
牙なのに炎ってどう言う事だ?と思うが、知らないものは知らない。
「マジかよ・・・ダリスだと、一、二の規模の団員数で、このホルスでもダンジョン攻略じゃ今の快進撃の立役者だぞ」
実際、知らないし、大きかろうが小さいかろうが俺はあまり関心は無いし、有能な人材は引き抜こうとは思っているが、まだ傭兵団については全く調べていないので、この機会を了利用して参加するその中隊の練度や能力を観察するのもいいなと思った。
その中隊も何故急に参加を決めたのか分からないが、教会は今回の攻略遠征に並々ならぬ力を入れていると以前聞いているし、もしかしたらあまりにも想定した人数に届かない為、無理矢理圧力等を掛けてそう仕向けたのかも知れない。
他にもホルスに滞在するフリーの傭兵がかなりの数参加する事になったらしいが、聖女の演説に当てられた者も居るだろうが、一攫千金を夢見てだとか、燻っている現状を何とか打破したいだとかと思って参加する者もそれなりに居るんだろうなと思った。
大手傭兵団に入団する事も出来ない輩も多数居るだろうし、能力はお察しかな・・・
また、攻略は複数回に分けるらしく、一回目は肩慣らしの意味合いも込めて、一層を二日間探索するらしい。
そして一度ホルスに帰還して、そこから得た情報を元に物資の再調達や調整を行い、二回目のアタック。
この二回目が本命で、一回目から割り出した食料の消費具合だとかその辺りからたぶん臨時で荷物持ち専門のポーターを臨時で雇い入れて再度挑む事になる様だ。
「成程ね。んで結局参加人数は全部でどれくらいになったんだ?」
「凡そ、一個大隊程度だな」
大隊って千人くらいか?
多いのか少ないのか分からないが、戦争じゃあるまいしそんなに人数必要なのかねとか考える辺り、きっとダンジョンと言うと暗くジメジメした洞窟の様な場所を聖典情報と照らし合わせてイメージしているんだろうなと思う。
それと同時にダンジョンであり、皆魔界と言う事を思い出した。
ダンジョンと魔界ではその言葉を受け取る人間からしたら、広さ的な意味合いで言うと全然違う印象を受けるし、何より実際見てもいないのに勝手にイメージから決め付けている自分に呆れて自嘲した。
「大隊って千人くらい?それって多いの?」
「千はいかないくらいじゃないか?魔界攻略に挑む人数としては・・・たぶん少ない」
千もいて少ないとは魔界とは一体・・・
「前の聖女はどれくらいの人数で挑んでたんだろ?」
「詳しくは分からないが、先代の聖女が攻略に乗り出したのは五年程前だ。んで、全滅。その時は二個大隊で挑んだって聞いたぞ。あと、かなり前だが、この辺りがまだエバンシオ王国の領土だった頃、攻略と言うか調査目的でエバンシオ王国は五千の兵士を突っ込んで全滅してる」
「マジかよ・・・」
「まぁ、かなり昔の話だしその数が本当かどうかも怪しいが、生存者は居なかったからどれ程の階層に進んだのかも分からないがな」
連隊を投入して返り討ちって・・・
あのクソ聖女もこれじゃダメだな
「まぁ、俺達は途中で抜けるし関係無いか」
「・・・まぁそうだな」
その後も色々とドエインと話をしていたが、篤は興味が無いのか会話には入って来ず、ずっと壊れた手甲を眺めてはブツブツと独り言を呟いていた。
明日は朝から一回目のアタックに挑むとの事だったので俺達は早めに就寝する事にした。
さて、いよいよ本番
明日からちょっと気合い入れますかね!
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