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クリスマス

作者: 甲陽

「ヤァヤァ、クリスマスここであったが12月24日」


寒さの中で絢爛な街並みが映える日、皆が皆ニコラスの顔をしていた



話を戻そう


12月23日の出来事だ

私は平日は仕事に出、休日は趣味の読書をしたりする社会人であり、今日もニュースを片耳に聞き支度をしていると聞き慣れないワードが耳に入る。


ニコラス警報


テレビに映る専門家達が皆「ニコラス」の危険性を注意喚起している


『ニコラス警報』出勤中調べても出ることも無く、ただニコラス警報という言葉が頭の片隅に残りながら12月23日を終えた。





Merry Christmas


「ニコラスを見たか?」

「まだ見てない」

「ニコラスは危ないらしい」

「ニコラスは姿を変える」


朝の喧騒はてっきり「ニコラス色」である


私はイヤフォンの音量を少しあげて会社に着く頃には耳に悪いくらいになっていた


・・・


一仕事を終え昼休憩に差し掛かろうというその時、ふと瞬きすると周囲の人間が同じ顔に見えているのである


疲れもここまで来ると笑いが込み上げてくる


ふと隣に視線を感じたので同僚にでも気付かれたかな?と思っていると、これもまた同じ顔である




へへへ…


ちょいとばかり気味が悪くなり今度は現実逃避の笑いが出てしまう


というか誰に声をかけられてるのか顔が同じなのでわからないし、何より恐ろしいのは何を喋ってるか全然わからないのだ


顔が口を開けると人混みの音がするだけで、言葉が聞こないのだった……


・・・


私はひどく焦燥感を覚えた。私だけがおかしくなったのか、周囲がおかしくなったのか。


そんな事は最早、本人(私)にとってはどうでもよくこの世界に取り残されたという事実に変わりはないのだ



偉そうに座ってる「顔」に「具合悪いので…」

と言いトイレに行く。どうやら私の中で常識は生きてるらしい。それがなんとも不気味さを掻き立て、不安の渦を広げていく。



トイレに向かう途中で沢山の「顔」にすれ違うが服装がみな微妙に違いそしてややこちらを横目に見る。その度に私は具合の悪さを覚えてトイレに早く早く、と駆け込む


早歩きをしただけだが心臓はこれ以上ないくらい音を鳴らし額に汗が伝う


トイレの鏡に映る私は私である


自分が自分である事に安堵を覚え、まさに突然放り込まれた暗闇の中、足元が照らされた様であった


ふとよぎった「ニコラス警報」


前日のニコラス警報とは他人の顔が同じになる事なのかそう見える事なのか…


何が起こったのかわからないが、まるで取り返しのつかない様に世界が進んでいっている様な感覚を覚えた


このままいっそ逃げ出してしまおう


トイレから一直線に出口に走りそのまま電車に乗り家に向かう



振り切れた不安が体を突き動かし逃げる様にトイレから出て走った


途中でぶつかったが

追っかけてくることもなく、ただ驚いた「顔」をしているだけであり、何か申し訳ない気持ちにもなったがここで躊躇するといけないと感じ、そのまま駅まで向かう


駅も「顔」がいるが昼時だからなのか少なく、そもそも「顔」は私のことを他人と認識している様で駅でのソレは、何事もなかったのだった


家に着くまでにすれ違うたび最初こそは心臓に悪かったもののだんだん抵抗感が薄れていくのがわかる。


しかし漠然とした取り残された様な不安は消えることがなく、遂先程までに瞬時の事で精一杯だったため過らなかった「この先の」不安が頭を埋め尽くす


家に着くなり鍵を閉めスーツを脱ぎ捨てカーテンを閉ざし日の遮られた暗い部屋でただ先程の出来事を反芻する



ポケットの中身が震えだし、私は恐る恐るスマホを見ると「上司」の文字。わたしは迷う事なく携帯の電源を切る。


私は一週間ほど引き篭もった


その間にも時々カーテンの間から外を見る。顔と言葉を除き変わらない日常がある。しかし次第に変化があった。


引き篭もって三日の朝


聞き覚えのある言葉を聞き、もう少しカーテンを開けて見てみると、顔が皆それぞれ僅かながら違うのがわかる


その時から徐々に言葉が鮮明に、顔が段々と変わってきており夕方には見覚えのある隣人が窓の前の道を通る。隣人はこちらと目が合うとニコッとして会釈する



やがて皆、次第に顔が戻っていったが元通りにはなってないという気がしてならない


きっとその顔の下には顔があり、私だけがその「顔」の下を知っているのだ。

閲覧ありがとうございました

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