第39話 服部華子
【徳川サイド】
「なるほどねぇ……デートかぁ……さすがは『恋愛経験』豊富な毛利さんね。颯君も断りにくいかもしれないわねぇ……どうするのかしら……?」
「伊緒奈さん、そんな余裕ぶっていて良いんですか!? で、デートですよ!? わ、私は聞いていて耐えれませんけど……う、羨ましい……やはり私達も参戦しましょうよ!?」
「嫌よ!!絶対嫌!! それに何で太鳳ちゃんが羨ましがるの? そ、そんなことよりも、これだけ騒ぎが大きくなったんだから、『あの人達』の耳にもそろそろ入るころよね……」
「えっ? あの人達? 誰の事ですか?」
「それよりも伊緒奈ちゃん!? あの『小学生』みたいな人に大学生の彼氏がいるっていうのが俺は驚いたんだけどな!! 逆にその大学生の彼氏のことを尊敬してしまうというか……マニアなのか……?」
「ハハハ、まぁ前田君の言いたい事は何となく分かるけどねぇ……でも世の中にはああいう子供みたいな人が好きな男性もいるってことよねぇ……それに前田君だって『小柄』な羽柴さんの事が好きなんだしさ……」
「ひっ、陽菜ちゃんはそこまで子供っぽく無いぞ!! それに……む、胸が……いや、止めておこう……」
「フフフ……あっ、そうだ。華ちゃん、近くにいるんでしょう? ちょっと出て来てくれないかなぁ?」
「はい、伊緒奈さんお呼びですか?」
「 「うわっ!!?? びっくりしたーっ!!」 」
「相変わらず華子の『隠れ身の術』は凄いわね? 私でも驚いたわ」
「だ、だ、誰この子は!? 急に現れたぞ!! 一体どこから現れたんだ!? それに今までどこにいたんだ!?」
「ハハハ、前田君驚かせてゴメンなさいね? この子がさっき話に出ていた私の幼馴染の一人で『情報収集』に長けている『服部華子』ちゃんよ」
「初めまして……私は一年五組の服部華子と申します。どうぞよろしくお願い致します」
「い、いえ……ご丁寧にどうもです……」
「それでさ、華ちゃん。悪いけど今から生徒会室に行って様子を見て来てくれないかな? それで、もし何も動きが無ければ……」
「分かりました。お任せください……」
シュッ
「えっ!? も、もういないぞ!? か、彼女……本物の忍者じゃないのか? それに伊緒奈ちゃんの話を最後まで聞かずに行ってしまったけど大丈夫なのかい?」
「フフフ、大丈夫よ。華ちゃんは私が何を言いたいか、全部を言わなくても分かる子なの。凄いでしょ?」
「あ、ああ……凄いというか……凄すぎるよ……」
【中庭特設会場サイド】
何が『中庭特設会場』だ!! って、俺は誰に言っているんだ……?
それよりも、とんでもないことになってしまったぞ。
さすがに今から逃げる訳にもいかないしなぁ……
「た、竹中君!? 私、あなたとの『デート権』を勝ち取る為に頑張るから!!」
「は、颯君!? わ、私の君に対する熱い想いをこの拳に込めて頑張るからね!!」
デート権って何だよ!?
それに熱い想いをこの拳にって……重過ぎるだろ……
はぁ……帰りたい……
廊下に隠れている徳川達でも助けに来てくれないかなぁ……
でも俺は友達じゃ無いからなぁ……
まぁ、きっと隠れながら俺を見てあざ笑っているんだろうしな。
「はーい、それでは今から『第三十回 中庭の合戦』を行いま~す!!」
ウワ―――――――――――――――――――ッ!!!!
す、凄い歓声だな!?
こ、こんな皆に注目されている所に俺みたいな『陰キャ』がいてもいいのか?
ってか、この戦いってもう三十回もやっているのか?
何だか歴史を感じてしまうぞ……
「あっ、カンナちゃんは私の右隣に立ってくれるかな~? それと竹中君は私の左隣にお願いね~?」
毛利さんを真ん中にして俺と山本さんが両脇に立つと、何だか子供を連れて歩いている若い夫婦の様な感じがするのは俺だけか……?
チラッ……えっ? 山本さんが赤い顔をしながら俺を見ているぞ!?
「竹中君と同じ事を考えてしまった訳じゃ無いんだからね!!」
「へっ? 同じ事? もしかして今、山本さんも……」
「こらこら、私の頭の上で会話をしないでくれるかな~? 審判に集中出来ないじゃないの~」
「す、すみません……」って、何で俺が謝らないといけないんだ!?
「茂香ゴメン……副審に集中するわ……」
「それでは、まずは各チームの『先鋒』前に出て来てちょうだ~い」
俺は『中庭の合戦』特設会場準備中に唯一の男子生徒である上杉カイトに詳しく話を聞いた。勿論、奴はめちゃくちゃ嫌な顔をしていたけどな。
とりあえずカイトの話ではこの『中庭の合戦』というのは簡単に言えば『腕相撲大会』だそうだ。
そして各チーム五人ずつ出場して一人ずつ腕相撲をするらしい。
先に三勝した方が勝ちとなる単純なルールだ。
この腕相撲により今までは武田さんと上杉さんの争いは治まっていたそうだけど、今回も勝負がつけばちゃんと治まるのか?
まぁ、どんな結果になっても俺の心が安らぐ事はまず無い様な気がするけど……
そして俺達の前に両チームの先鋒が現れた。
武田チーム・・・三年『高坂真樹』ⅤS上杉チーム・・・三年『柿崎加奈』の先鋒線が始まる。
お読みいただきありがとうございました。
遂に伊緒奈の幼馴染兼情報収集担当の服部華子が登場した。
現れ方も消え方もまさに忍者みたいで前田は驚く。
そんな中、毛利茂香の主審による腕相撲……いや、『中庭の合戦』の幕が切って落とされた!!
果たして勝つのは武田一派か上杉一派か!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆