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第164話 それぞれの想い

 花火大会も後半になり市販の打ち上げ花火をする事に。


「よしっ、俺が火をつけるから!!」


「俊哉、気を付けてね?」


「うわぁ、陽菜ちゃんにそんな優しい言葉をかけられるなんて最高の夜だよ!!」


(ポッ)「バカ、よそ見しないでちゃんとしなさい!!」


 やはり陽菜さんは水泳対決で怪我をして俊哉に助けてもらってから、俊哉の事を意識している様な感じがするぞ。


 このまま二人の関係が良い方向に行ってくれるといいんだけどなぁ……


 ポンッ


「え? ああ、羽柴さん」


 突然、俺の肩を軽く叩いてきたのは陽菜さんの双子の弟、陽呂さんだった。


「俊哉は昔から陽菜の事が好きだったんだよなぁ……」


「はい、それは俊哉から聞いて知っています。だから俺としては俊哉の思いが陽菜さんに伝わるといいなぁっていつも思っていました」


「そっかぁ……僕としてもそうなってもらいたいとは思っているよ。でも陽菜が突然、颯君の事が好きになったって聞かされた時はほんと驚いたよ」


 ですよね? 俺だって驚いたし……


「しかし何で陽菜さんは突然俺の事が好きになったんでしょうね? 陽菜さんだけでなく他の人達も……別に俺は皆さんに好かれる事なんて何一つしていないのに……だから最近、クラスの男子達と、その事について話し合いをよくしていたんです」


「へぇ、そうなんだね? 僕も興味があるなぁ……そうだ。二学期になったら、その話し合いに僕も入れてくれないかな? 少しはお役に立つかもしれないしさ」


もしかしたら俺達が知らない陽菜さんの私生活の中で何かヒントになる事があるかもしれないよな。


「はい、是非参加してください!!」


「颯師匠、お二人で何をコソコソお話されているんですか? 俺も仲間に入れてくださいよぉ!?」


 今度は上杉カイトが俺達の会話に入ってきた。


「だから、その師匠ってのは止めてくれないか?」


「いくら師匠のお願いでもそれは聞けませんねぇ……」


 師匠の言う事に逆らう弟子っておかしくないか?


「ハハハ、カイト君、別に僕達はコソコソ話をしているわけじゃ無いよ。実はねぇ……」


「なるほど!! 俺もそれは興味あります!! 何故、今まで全然男性に興味の無かった姉貴が颯師匠の事を好きになったのか……いや、アレですよ。別に師匠の事を好きになるなと言っている訳ではありませんから。そこは誤解しないでくださいね? 俺は将来、颯師匠が義兄になって頂けたらめちゃくちゃ嬉しいですから!!」


 俺は同い年の義弟ができるのは絶対に嫌だ!!

 それもハーフでイケメンのカイトなんて、引け目を感じるだけじゃないか。


 まぁ、いずれにしても二学期になっても俺の日常は騒がしいって事だけは確定だな。


 パンッ ヒュー パンパンパン


「 「 「おーっ、た~まや~っ!!」 」 」



————————————————————————


「あれ? 徳川さん、花火もしないで一人ベンチに座ってどうしたの? それに顔が少し赤いけど大丈夫?」


「え? 黒田先生……よ、夜なのに顔色なんて分かるんですか?」


「そりゃぁ自分の生徒の顔色はどんな状況でも分かるわよぉ」


「さすがですね……」


「ははあーん……もしかして竹中君と何かあったのかしらぁ?」


「な、何で顔色だけでそうなるんですか!?」


「フフフ……図星だねぇ? 合宿最後の夜に本当の気持ちを竹中君に伝えたってところかなぁ?」


「えっ!?」


「フフ、当たりだねぇ? でも本当はずっと彼に本心は言わないつもりでいたんじゃないの? 私やあなたと同様に彼を陰から支えている『あの人』の事情を知っているあなたとすれば……ね?」


「はい……最後まで言わないつもりでした。でも……」


「でも自分の気持ちを抑えきれなかったんだよね? うんうん、それは仕方がないことよ。あなたはまだ十五歳、いえ十六歳になったんだっけ? あっ、もしかして……今日が……」


「今日が私の誕生日です。だから記念の日に思わず……」


「叶わない恋だと分かっていてもって事だよね……?」


「はい、叶わないことも、『あの人』に敵わないことも始めから分かっていますから」


「辛いよねぇ……?」


「辛いです!!」


「あら? 徳川さんにしてはやけに素直な返事だね? それじゃぁ……」


 ガバッ


「えっ!? 黒田先生何を??」


「フフフ……夜だし分かりにくいから先生の胸の中で思いっきり泣きなさい。先生も一緒に泣いてあげるからさぁ……」


「何で黒田先生も泣く必要があるんですか?」


「それは先生も徳川さんと同じ気持ちだからに決まっているじゃない。先生だって彼が小五の頃から……」


「黒田先生も……??」


「徳川さんの彼を思う気持ちは他の人達と違って本物だと入学当初から分かっていたわ」


「えっ?」


「あなた、アレを飲んでないんでしょ?」


「えっ!? 先生もアレの事を知っているんですか?」


「まぁね。私の方が徳川さんよりも『あの人』との付き合いは長いんだよぉ。そりゃぁ、知っているでしょう?」


「そうでしたね……」


「あなたはとても優しくて良い子だからきっとこれからいくらでも素敵な人に巡り合えるわ。だから……」


「黒田先生もですよぉ……グスン……」


「ハハハ、そうだねぇ……グスン……」


 ムギュウッ



「えーっ!? 伊緒奈と黒田先生、そんなところで二人抱き合って何をしているの!? もしかして二人は私を差し置いて『百合っこ』になったの!?」


「バ、バカな事を言わないでよ、知由ちゃん。違うわよ。わ、私が立ち眩みをしたところを黒田先生が支えてくれたんだよぉ。ね、先生!?」


「フフフ……まぁ、そういう事にしておきましょうか」


「そういう事って何ですか!? 余計に誤解を招くじゃないですか!?」


「そんな事よりも伊緒奈、一緒にロケット花火を見ましょうよ? それに今日はあなたの誕生日でしょ? 花火を囲んでみんなでバースデイソングを歌う事になっているの。早く行かないともうすぐ終わってしまうわ!!」


「ち、知由ちゃん……私の誕生日覚えてくれていたんだ……」


「当たり前じゃない!! みんなも覚えているわよ。実は春日さんにもお願いしてバースデーケーキも用意してあるんだからね。花火大会が終わったらみんなで食べる予定なのよ」


「知由ちゃん……グスン……黒田先生?」


「何かしら~?」


「私には素敵な友達がたくさんいるので全然、大丈夫だと思います」


「だねぇ……先生も素敵なお友達を作らないといけないなぁ……」



 パン ヒューーー パン パパパパ パーン


「あーっ、伊緒奈、早く行くわよ!?」


「うん、行こっか……」




 こうして花火大会も終わり、最後は伊緒奈の誕生日パーティーで締めくくられ四泊五日の『合同夏合宿』は無事に終了となった。


 仕事が完全に終わった俺と魔冬達はホッとしたと同時に一気に疲れが出てきてしまい、しばらくスタッフルームから動く事が出来なかったのは言うまでもない。






 【次の日の朝、織田邸】


 ガチャッ……


「ただいまぁ……」


「お、おかえり、のんちゃん……」


「どうしたの、ママ? 何だか元気が無いみたいだけど」


「帰って来て早々、申し訳無いんだけどリビングに来てちょうだい? パパから大事なお話があるから……」


「大事なお話……?」


お読みいただきありがとうございました。

これで長い長い『合同夏合宿編』は終了です。


次回からは遂に最終シリーズ『生徒会長選挙編』が始まります。


生徒会長になり颯の彼女になるのは一体誰なのか!?

そして様々な謎も明かされるのか!?


どうぞ最終シリーズも宜しくお願い致します。

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