第157話 竹中詩音VS石田美月
詩音以外は招かざる客だと小声で俺に言っていた伊緒奈だが、さすがにこれだけの面子がいて乃恵瑠さん達だけ追い返すのはマズイだろうと渋々、彼女達を受け入れた。
「え? 詩音達も今夜は伊緒奈の家に泊まるのかい?」
「うん、お母さんにの許可は取っいるし、私は伊緒奈お姉さまと同じ部屋に泊まってくれていいっておっしゃってくれているの。私、凄く嬉しいわ!!」
「フフフ……私もとても嬉しいわ。詩音ちゃんとは前からゆっくりお話がしたかったから丁度良かったわ。今夜は私のお部屋で女子トークを楽しみましょうねぇ?」
「はい、伊緒奈おねえさま!!」
しかし、詩音はうちの学園女子達にはとても素直だよな?
まぁ、来年、仙石学園を受験する気満々だから仕方のないことかもしれないが……
出来ればお兄ちゃんにもそれくらい素直になってほしいというか……
「ところで颯君?」
「え? 乃恵瑠さん、どうかされましたか?」
「う、うん……あのね、少しだけ颯君とお話がしたいのだけど……休憩時間に少しだけお時間いただいても構わないかしら?」
「は、はい……別に構いませんが……」
乃恵瑠さんの話って一体何だろう?
「ケイト、まさかあんた達まで徳川さんの家で合宿をしていたなんて驚いたわ!!」
「色々とあってさ、流れでこうなったのよ。まぁ、私達は途中参加だけどね。でも静香だって茂香はともかく織田会長や颯君の妹さんとでミニ合宿をしていたなんて驚きよ」
「まぁ、こっちも色々とあったのよ……」
「それにしてもさ~凄いメンバーがここに集結しているわね~? 黒田先生までいらっしゃるし~」
「そうね、茂香……この合同合宿は羽柴副会長からの提案らしいけど、その提案に乗った徳川さんも凄いと思うわ……いずれにしてもあの二人は何を考えているのか私には分からないけどね。そしてそんな二つのグループを颯君と伊達さんグループのメイドさん達がお世話をする形になっているのもとても変でしょ?」
「上杉さ~ん? 私達が何を考えているのか分からないっていうのは失礼ですよ~」
「そうですね。上杉さんだって無理矢理、合宿に参加してきて、とても楽しんでいらっしゃるんですから」
「あら、ゴメンなさいね、羽柴福会長に徳川さん。これは私の失言だったわね」
「竹中センパーイ? 私にも妹さんを紹介してくださいよぉぉ?」
石田さんの甘えたしゃべり方には毎度、違和感しか感じないよな。
「あ、ああ、そうだね……俺の妹の詩音っていうんだ。石田さんとは同い年だからよろしく頼むよ。それと詩音? 石田さんは仙石学園中等部三年だから来年、お前が高等部に外部入学すれば、もしかすると同じクラスって事もあるかもしれないから今の内に友達になって色々と学園の事を教えてもらったらどうだい?」
「初めまして、詩音ちゃん!! 私は石田美月っていいまーす。私の事は美月って呼んでね? 学園の事なら何でも聞いてくれていいからねぇ」
「あ、ありがとう……どうぞ、よろしく……」
ん? 詩音の石田さんに対しての反応がいまいち良く無い様な……
めちゃくちゃ陽キャでコミュニケーション能力が高い詩音なのに……もしかして石田さんは詩音の苦手なタイプなんだろうか?
「それにしても竹中センパーイ? 先輩にこんな可愛らしい妹さんがいたなんてビックリですよぉぉ。将来、もしかすると私に同い年の義妹ができるかもしれませんねぇ? フフフ……」
いきなり石田さんは何て事を言っているんだ?
しょ、将来って何だよ!?
「はぁあ!? 石田さん、あなた何を訳の分からない事を言っているの? あなたがお兄ちゃんのお嫁さんになれるわけないじゃない!!」
えっ、詩音がそんなに怒る様なところだったか?
それに今の詩音の返しは何??
「あれ~? 私、詩音ちゃんに気を悪くさせる様な事を言ったかなぁ? それに私が先輩のお嫁さんになれるわけがないっていうのは何を根拠に言っているのかなぁ……?」
ヤバい、石田さんも少し怒り口調になっているぞ。
「あなたにはお兄ちゃんが好きになるような要素が全然無いってこと」
「えーっ、今会ったばかりの私を見て何故そんな事が分かるのかしら? それと先輩が好きになる要素って何なのよぉぉ?」
「あなたには教えたくない」
「えーっ、教えてちょうだいよぉぉ?」
「やだ……」
詩音、俺自身がよく分かっていないのにお前は俺の何を知っているんだ??
後でコソッと聞けるかな?
「美月っち、颯君妹ちゃんの言う通りだっつーの!! あんたみたいな腹黒女と颯っちと結婚できるわけないっつーの!! あっ、名前は詩音ちゃんだっけ? あーしは一年の長宗我部千夏っつうんだ。よろしくな!?」
「あ、はい……よろしくお願いします……」
オイオイ、千夏が間に入ったら余計に話がややこしくなるんじゃないのか?
「長宗我部先輩? 腹黒女っていうのは失礼じゃないですかぁ? それじゃぁ長宗我部先輩は肌黒女じゃないですかぁ?」
石田さん、ウマイこと言うよな。って、感心している場合じゃないな?
「はぁああ!?腹黒より肌黒のほうが全然、良いっつーの!! なっ、颯っち?」
「えっ!? え、え、えっとぉぉ……」
「こらこら、二人共、颯君がお困りじゃないですか? それに妹さんの前でそんな醜い言い争いを見せてしまって……本当にすみませんね颯君の妹さん?」
うわっ、佳乃まで現れたぞ。でも彼女は真面目な性格だから安心かもな。
「い、いえ、そんな事は……もとはと言えば私が石田さんに突っかかったのが原因ですし……」
「まぁ、何て素直で可愛らしい妹さんなのでしょう!! お名前、詩音ちゃんでしたよね? 私、詩音ちゃんみたいな子、大好きです。よろしければ今夜、ゆっくりお話でもしませんか?」
「は、はい……私みたいなのでよければ喜んで」
「ウフッ、嬉しいです。あ、私まだ自分の名前を言っていませんでしたね? 申し訳ありません。私の名前は島津佳乃と申します。これから末永くよろしくお願いします」
なんか末永くっていうのが引っかかるけど、とりあえず詩音が落ち着きを取り戻してくれたからヨシとしよう。
「ちょっと待てっつーの!! よしのん、抜け駆けはズルいっつーの!! あーしだって妹ちゃんと話がしたいっつーの!!」
「はぁ……なら仕方がないですね。三人でお話しましょうか?」
「ま、待ってくださいよぉぉ!! 私も仲間に入れてくださいよぉぉ!!」
美月は詩音にあれだけ言われても全然、気にしていないんだな?
やっぱ、腹が黒い……じゃ無くて、腹が座っているだなぁ?
「美月っちは妹ちゃんに嫌われたから仲間には入れないっつーの!!」
「ええ、そんなぁぁああ!!」
「だ、大丈夫、嫌ってはいないから。だから、み、美月ちゃんも一緒にお話しましょう」
「うわーん、詩音ちゃん、ありがとう!!」
詩音は俺なんか足元にも及ばないくらいに人心掌握に長けているのかもしれないな?
合宿後半は何となくだけど詩音が主役になりそうな予感が……
そして数時間後、休憩に入った俺は乃恵瑠さんととある部屋で二人きりになった。




