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第152話 伊緒奈の特技

 俺の気持ちなど聞いてもらえないまま、水泳対決に参加する人、しない人満場一致で水泳対決優勝者の特典は俺に全身、日焼け止めクリームを塗ってもらえるということに……


 はぁ……なんてこった……俺がそんな事をしてみんな嬉しいのか?

 キモイだけじゃないのか?



「颯、陽菜ちゃんが優勝したら俺が代わりに日焼け止めクリームを塗りたいくらいだぞ!!」


 でしょうねぇ……俺は誰が勝ってもお前に代ってほしいくらいだよ。


 俺がそんな事を思っている間に水泳対決の準備は着々と行われ、魔冬のグループ達が審判をする事になったみたいだ。


 ただ審判をする条件として魔冬だけは水泳対決に参加できる事になったらしく、やはり俺が思っていた通り、魔冬のTシャツの下は水着だったことも判明した訳だが……


 泳ぐ気、満々じゃないか!!

 



 まずは第一試合が行われるみたいだが、何試合する気だ?


 徳川邸のプールは5コース取れるプールになっている。

 そして第一試合の出場者はクジで選ばれた五名みたいだが……


 ん? 何だ、この面子は??


 第1コース…徳川伊緒奈

 第2コース…本多太鳳

 第3コース…黒田マーサ

 第4コース…石田美月

 第5コース…直江カノン


「あれぇ? 石田さんは颯君の事が好きになったみたいだから水泳対決に参加するのは分かるけど、太鳳ちゃん、黒田さん、直江さんまで参加をするとは思っていなかったわ」


 ほんとだ、伊緒奈の言う通りだ。

 何であの三人まで参加しているんだ?


「い、伊緒奈さん、ち、違うんです!! 私はただ単純に水泳対決をやりたいだけで……べ、別に特典狙いって訳ではありませんから!!」


「ふーん、それじゃぁ太鳳ちゃんは優勝しても特典は辞退してくれるんだねぇ?」


「えーっ!? そ、それは……そのぉ……」


「ハッハッハッハ!! 太鳳~? あんたもそろそろ素直になったらどうなのよぉ?」


「う、うるさいわね、知由!! と、とりあえず伊緒奈さん、特典については優勝してから考えますので!!」



「マーサ先輩も本多先輩と同じで水泳対決がやりたいだけですかぁ?」


「そ、そうよ、石田さん。私は昔から水泳が得意だから対決と聞けば上杉先輩と同じく血が騒いじゃうのよ……」


「へぇ、そうなんですねぇ? でも一昨日くらいからマーサ先輩の竹中先輩を見る目がおかしいですよねぇ? 竹中先輩とよくお話してらっしゃいますしぃ……いつの間にお互いに下の名前呼びになってるしぃ……」


「そ、そ、それは考え過ぎよ!! 別に私は颯君の事なんて……」


「それじゃぁ、マーサ先輩は優勝しても竹中先輩に日焼け止めクリームを塗ってもらわなくてもいいんですよねぇ?」


「そ、それとこれとは別よ!! 優勝したからにはちゃんと特典はいただくわよ。ただ、私は颯君に日焼け止めクリームを塗ってもらっても全然、嬉しくはないんだけどね!!」


 昨日からやけにマーサさんは俺に興味が無いアピールをしているけど、俺とすれば恋愛感情は無くてももう少し好意的な発言をしてもらえると嬉しいんだけどなぁ……



「まさか、カノンが参加するとは思わなかったわ」


「い、いや……私はアレですよ。優勝すればケイト先輩に特典はお譲りするつもりでい……い……います……から……」


「何で最後の方は小声なの? 本当は私に譲りたく無いんじゃないの?」


「そ、そ、そんな事は無いですよ!! た、多分……」


「カノン、あなた、さっきから全然、私の目を見て話をしていないのだけど……まあいいわ。私はカノンの協力をもらわなくても自分の力で優勝するから」



 第一試合の参加メンバーがスタート台の前で色々と言い合いをしているなか、今回、水泳対決の審判部長に任命された片倉小町さんが参加者にスタート準備をするようにホイッスルを鳴らしている。


 ピーッ


 そして……片倉さんから聞いた事の無い言葉が発せられる。


「テーク・ユア・マーク!!」


「 「 「 「 「へ??」 」 」 」 」


「あんた達、何が『へ?』よ!? 早く位置につきなさいよ!!」


「片倉さん、今何て言われたのですかぁ?」


「だから、『テーク・ユア・マーク』って言ったのよ。簡単に言えば『位置に付いてヨーイ』よ!! 数年前から水泳競技ではこの呼びかけになっているのよ!!」


「 「 「 「 「しっ、知らんがな!!」 」 」 」 」


「えーっ、あんた達、知らないのぉ!? まぁ、私もさっき帰国子女の蕾に教えてもらったばかりだけどね……でも普通、新しい言葉を覚えたら直ぐに使ってみたくなるのが人間ってもんじゃない!?」


 気持ちは分かるけど、使う前に参加者に説明だけはしておきましょうよ?



 という事で仕切り直しとなり……


「テーク・ユア・マーク!!」


 ピーーーッ!!!!


 ザッボーンッ!!!!!


 全員が一斉にプールに飛び込んだ。



 片道25メートルを往復しての50メートル自由形対決……


 石田さん、太鳳、直江さんはクロールで泳いでいるがマーサさんはまさかのバタフライで泳いでいる。しかし一番、驚いたのは伊緒奈が平泳ぎだということだった。


 でも伊緒奈の平泳ぎはめちゃくちゃ高速で他の参加者と同じスピードで泳いでいる。


 あんな、高速平泳ぎ見た事が無いぞ。


 そして第一試合の結果はギリギリ、伊緒奈の勝利で終わった。


「この私がクロールで負けるなんて……最近、伊緒奈さんって水泳の授業で本気を出されなかったのですっかり忘れていましたが、小学生の頃の伊緒奈さんって『平泳ぎの達人』って呼ばれていましたもんね!? 負けて当然かぁ……でも悔しいなぁ……グスンッ」


 えっ、もしかして太鳳、泣いているのか?


「フフフ……『平泳ぎの達人』かぁ……懐かしいわねぇ……久しぶりに本気で泳いだからとても疲れたわぁ……」 



「ウワーン!! めちゃくちゃ悔しいですーっ!! ウワーン!!」


 えーっ、石田さんも泣いているのか!?


「な、何か……普通に悔しいなぁ……グスッ……」

「そうね、直江さん。私はバタフライだったら勝てると思ったのになぁ……ウッ……」


 何だ!? 負けた四人全員、涙ぐんでいるぞ!!

 この対決って負けると涙が出るくらいに真剣な戦いなのか!?


「は、颯君……」


「え? ああ、伊緒奈……お疲れ様……しかし伊緒奈の高速平泳ぎ凄かったよなぁ」


「ありがとね。でも決勝はもっと凄いものをお見せするからねぇ」


「えっ、凄いもの!?」




「はーい、第二試合に出場する五名、早くスタート台の前に来てくれるかなぁ?」



 ということで第二試合が今から始まろうとしている。


 第1コース…上杉ケイト

 第2コース…島津佳乃

 第3コース…服部華子

 第4コース…酒井知由

 第5コース…榊原八雲


 これまた濃いメンバーだな!!

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