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第13話 トクガワキヨシ

 徳川伊緒奈は大手ドラッグストア『トクガワキヨシ』の創業者で現会長、徳川貴世志とくがわきよしの孫娘だった。


 そしてこれもさっき徳川から聞いた話だが本多太鳳ほんだたおは徳川貴世志の執事の孫娘であるらしい。


 何だ、このアニメのような設定は!?

 本当にアニメの世界の話なら俺も好きな設定だ。


 しかし、これが現実の話だとなると少し引いてしまう自分がいる。


 それに更に引いてしまう様なことを徳川は俺に話す。


「いずれ竹中君に紹介しようと思っていたから今のうちに言っておくね? 実は太鳳ちゃんみたいな関係の子がこの学園には数名いるの……」


「なっ!?」


 俺は耳を疑いたくなったが、本当のことらしい。


 一組から五組まで本多と同じ様な関係の女子が一人ずついるそうだ。


 簡単に言えば徳川伊緒奈には五人の家来がいるようなもんだな。

 さすがはお嬢様だ……


 でも徳川はそんなお嬢様なのに全然、高飛車な感じはしない。

 どちらかと言えばその逆だ。


 やはり、この学園の『人気投票システム』の影響なのだろうか?

 いや、その確率は高いよな。


 それにあれだけ『クラス委員長』になるのを嫌がっていたのに、いざ委員長が自分に決まるとアッサリと受け入れていたからな。


 本当は『クラス委員長』になりたかったんじゃないのか?

 そして俺も徳川の作戦に上手いこと引っかかったってことも考えられる。


 それに『お付き』の本多が第三位でクラスの中心の一人になれる『風紀委員』になったのも何だか怪しく思えてきたぞ……


 でもまぁ、一番怪しいのは『陰キャ』の俺に五票も入ったことだけどな。



「オイオイオイッ!! 君達、何をやっているんだよぉぉ? 三人だけで仲良くなるのはズルいぞ!! 『美化委員』の俺も混ぜてくれよぉぉ!?」


 チッ、また騒がしい奴が来てしまったぞ。


 でも『美化委員』もクラスの中心の一人だから、とりあえず一学期の間は前田とのやり取りも増えるんだろうなぁ……


 はぁ……何だか想像しただけで疲れてきたぞ……


「で、君が『風紀委員』の本多さんだよね? 俺は『美化委員』の前田俊哉っていうんだ。よろしく頼むよ!?」


 あっ、前田の奴、本多に握手を求めたぞ。

 大丈夫かな……


「ん? 私と握手をするのか? まぁ、いいだろう。でも『本気の握手』をするから覚悟しろよ?」


「へ? 本気の握手って……?」 



 ギューーーーーーッ!!!!


「これから宜しく頼む……前田俊哉……君……」


「うっ……うっ……ウギャーッ!! 痛てぇよーーーっ!!!! 何だ、このバカ力は!!??」


 だよな。この本多太鳳の握力は相当なものだ。

 普通の男子なら前田みたいになるだろうな。


 幸い俺は小さい頃から握力も含めて鍛えていたからな。

 本多の握力には俺も少しは驚いたけど、まぁ問題は無い。



「太鳳ちゃん、それくらいにしてあげてね? 前田君、泣きそうな顔をしているわよ」


「えっ? ああ、そうですね。申し訳ありません……」


 本多はそう言うと前田の手を離した。

 勿論、前田はうずくまりながら左手で右手をさすりながら唸っていた。


「ま、前田……だ、大丈夫か?」


 さすがの俺も心配になり前田に声をかけた。


 すると前田は震えた声でこう言った。


「い、いや……大丈夫だ……。これからこのクラスをまとめていく四人の中に一人くらい『怪力』がいた方が良いと思うしな……。お、俺は本多太鳳さんを心から歓迎するぞ……」


 お前、本当に前向きな奴だな……


「前田君は本当に面白い人だね? でも前田君があれだけ太鳳ちゃんの握力に泣きそうになるくらい痛がっていたのに、竹中君は太鳳ちゃんと握手をしても平然としていたのも凄いと思うわ」


 徳川、前田の前で余計なことを言うなよ!!


「は、は、颯さん? ま、マジなのか? マジで本多さんのあの怪力に平然としていたのか!?」


 前田、何故今俺の名前に『さん』を付けた?

 もしかして俺のことを恐れているのか?


 俺は今後のことを考えると前田に恐れられるのは面倒だと思い、あまり会話などしたくは無かったが、本多に向かってこう言った。


「本多さんは俺が弱々しく見える男だから握手の時は力を抜いてくれていたんだよな? そうだよな? なっ? なっ?」 


 なんか、久しぶりに長いセリフを話した気がするな……


 すると、何故か本多は少し怯えた口調で、


「は、はい……そうです……『竹中さん』のおっしゃる通りです……」


 本多太鳳?


 なんで急に俺のことを『さん付け』して敬語で話すんだ……?


お読みいただきありがとうございました。


徳川伊緒奈の幼馴染、本多太鳳は小柄ながら腕力がある女子だった。

しかし元々、腕力のあった颯には通じず驚く太鳳。

そして颯の問いに恐怖を感じた太鳳は颯に対し『さん付け』の敬語で話す様になってしまう。


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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