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第114話 春日天音メイド長の思い

 【徳川邸】


 魔冬が徳川邸でメイドのアルバイトを始めて三日目……


「竹中君、この荷物を倉庫に運んでちょうだい」


「はい、分かりました、春日さん」


「颯君、私もお手伝いするわ!!」


「え? 魔冬、別にいいよ。これは俺の仕事だし、数回、往復するだけだし」


「ダメよ!! 私は徳川邸のメイド兼颯君のメイドでもあるんだから!!」


「えーっ!? そ、それは違うだろ!?」


 魔冬のやつ、何を言っているんだ!?

 そんな事を春日さんの前で言うなんて……バイト、クビになっちまうぞ。


「伊達さん、竹中君のお手伝いをしてくれて構わないわよ」


「えーっ!?」


「はい、有難うございます!!」



「ちょっと待ちなさい、伊達さん!! 颯君の手伝いはいいから、お父様の書斎の掃除をしてようだい」


「徳川さん……掃除は颯君のお手伝いの後でちゃんとするから」


「な、何を言っているのよ!? 私はあなたのご主人様なのよ!! 私の言う事を優先するのが当然でしょ!?」


「まぁまぁ、伊緒奈お嬢様……そんなにカリカリするのはお肌に良くないですよ。伊達さんは仕事が早いですから、別に竹中君の手伝いの後でも十分に書斎の掃除はやってくれますので……」


「春日さんは伊達さんの味方をするの!? もういいわ。しばらく私は自分の部屋にいるから誰も来ないでね!?」


「はい、かしこまりました……」


 オイオイオイッ!!


 あんなに機嫌の悪い伊緒奈を見たのは初めてだぞ。


 まぁ、これも魔冬がここでメイドをする様になったからだとは思うけど……


 それにしても魔冬は何故、徳川邸でバイトをする気になったんだろう?


 今は『学年人気投票』に集中する時でバイトどころでは無いと思うんだけどなぁ……



「伊達さん? 竹中君に少し話があるから、あなたは先に荷物を運んでくれるかしら?」


「はい、承知いたしました春日さメイド長!!」




「で、竹中君は私に何か聞きたい事があるんじゃないの?」


「えっ? そ、そうですね……魔冬……いや、伊達さんについてお聞きしたい事があるというか……」


 な、何から聞こうかなぁ……


「そういえば、竹中君は私が『漢字が読めない女』だと思っていない?」


「えっ!? い、いや……それは、そのぉぉ……」


「フフフ……大の大人が『伊達』を『イタチ』って読み間違えるわけ無いでしょ?」 


「えっ、読み間違えたんじゃないのですか!?」


「ほら、やっぱりそう思っていたのね?」


「す、すみません……でも、それじゃぁ何故、ワザと読み間違えたような芝居をされていたんですか?」


 てっきり春日さんは日頃、完璧に見せかけて実は漢字を読むのは苦手なのかなと思っていたぞ。


「竹中君……伊達さんが学園で伊緒奈お嬢様とどういった関係かは服部さんから聞いて知っているわよ」


「えっ!? そうなんですか!? そ、それなのに何故、伊達さんをメイドに採用されたのですか? 伊緒奈の気持ちを考えれば……」


「伊緒奈お嬢様の気持ちというか、お嬢様の性格を考えたからこそ伊達さんを採用したのよ」


 え? それはどういう事だ?


「意味がよく分からないのですが……」


「昔から伊緒奈お嬢様は人の為に我慢したり、自分の本当の気持ちを表に出さない性格でね……まぁ、そこが伊緒奈お嬢様の良いところでもあるのだけど、悪いところでもあるのよ」


「というと?」


「伊緒奈お嬢様は竹中君にこう言ったらしいわね? 私が生徒会長になって竹中君と形だけ付き合って、しばらくしてから別れてしまった事にすれば周りの目を誤魔化す事ができると……」


「そ、そうですね……それに近い内容を提案してくれました。だから今回、俺に告白してくれた人には『生徒会長になった人、もしくはその人を応援した人と付き合う』っていう条件を出しましたので……まぁ、伊緒奈が勝つという設定ですけど……」


「はぁ……」


「え? 何故、ため息をつかれるのですか?」


「またしても伊緒奈お嬢様が、今回は竹中君の為に自分の気持ちを押し殺して協力しているからよ」


 伊緒奈が俺の為に自分の気持ちを押し殺している?


「ど、どういう事でしょうか?」


「まぁ、あなたも『超鈍感』みたいだから伊緒奈お嬢様の気持ちに全然、気付いていないみたいね?」


「超鈍感って……」


まぁ、当たっているけど……


「はっきり言うわね? あなたに告白している女子達同様に伊緒奈お嬢様も竹中君……あなたの事が大好きなのよ。でも何故かは分からないけど、その気持ちをひたすら隠している。その隠している、我慢している伊緒奈お嬢様の姿が歯がゆくて、歯がゆくて……」


「えーっ!? 伊緒奈が俺の事をですか!? そ、それは絶対に無いでしょう!?」


「このバカッ!! この『超鈍感陰キャオタク瓶底メガネ』!!」


 わ、悪口のフルコースを言われてしまったぞ!!


「本当にあなたも救いようが無いわね……今までの伊緒奈お嬢様の態度や言動などで気が付かないなんて……まぁ、竹中君から伊緒奈お嬢様の事を好きになれと言っても難しいのかもしれないけど……あなたにも何かしらの彼女を作りたくない理由がある様な気もするし……だからこそ、今回、伊達さんを採用したのよ」


「だからこそですか……?」


「そう、だからこそよ!! ライバルの伊達さんが学校だけではなく自宅にまでいるとなれば……ライバルが自分の目の前で竹中君とイチャイチャしながら一緒にバイトをしていたら……さすがの伊緒奈お嬢様でも我慢していた感情が一気に爆発するかもしれないでしょ!?」


「な、なんか春日さんって凄い人ですね……?」


「フフフ……別に凄くは無いけど……私は赤ん坊の頃から母親のいない伊緒奈お嬢様を自分の娘の様にお世話してきたわ。誰にも負けないくらいの愛情を注いでね……だから伊緒奈お嬢様には絶対に幸せになって欲しい。自分の気持ちを押し殺して後悔して欲しくない……伊緒奈お嬢様の為なら私は何でもするわよ。だから竹中君、これから覚悟してね?」


「えーっ!? か、覚悟ですか!?」



「春日メイド長、お話は終わりましたか? まだでしたら残りの荷物も私が運びますが……」


「いえ、話しは終わったわ。それじゃぁ、伊達さんと竹中君? 伊緒奈お嬢様に聞こえるくらいに二人でイチャイチャしながら一緒に荷物を運んでちょうだい」


 春日さん、強引過ぎるでしょ!?


「はい、かしこまりました!! イチャイチャしながら運びます!!」


 魔冬もそんな命令、嬉しそうな顔をして聞くんじゃねぇ!!


お読みいただきありがとうございました。


颯に近づく為に徳川邸のメイドを始めた魔冬

それをこころよく思っていない伊緒奈

これを機に伊緒奈の感情爆発を狙っている春日メイド長

大人の女性の方が一枚も二枚も上だなと思う颯


さぁ、『学年人気投票』まで残り四日

どんな結果が待っているのか?

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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