憧れのイケメンサラリーマンに私の乳が偽物だとバレました
なろうラジオ大賞2応募作品四作目です。
よろしくお願いいたします。
「なにか落としたよ」
と、同じマンションのお隣に住むイケメンサラリーマン原野さんに声をかけられた。
ミントガムの宣伝のような笑顔にテンションが急上昇した直後。
「ひぃぃ!」
と悲鳴を上げた。
なぜなら彼の手元には私の乳パットがあったからだ。
今日は仲のいい同期達と飲み会をしてほろ酔い気分で帰ってきた。
少し食べすぎて苦しかったから、途中、駅のトイレでスカートとブラのホックを…
ゆるめた……うん…私、ゆるーくした…
原野さんの笑顔が怖い。
爽やかイケメンの右手に偽乳。何これ怖い。
ミスマッチ過ぎて怖い。
「ち、違うんです!」
彼の手から乳パットを奪い取る。
人肌に温かいのが憎い。
「ホントに違うんです!」
「え、えっと…笹川さんのじゃなかった?」
「い、いえ…私のなんですけど…」
思わず手に力が入る。
シリコンが歪む。憎い。貧乳が憎い。遺伝子が憎い。
「べ、べつに毎日詰めてるわけじゃないんです」
「…つ、詰め?」
「ええ! けっして、見栄を張ってるわけじゃないんです!!」
「…見栄?」
「ちょっと人よりスレンダーなだけなんです! 貧乳を気にしてるわけじゃないんです!」
「ひ、ひん…」
原野さんの顔が真っ赤に染まる。
「えっと、ちょっと待って」
「はい! ごめんなさい! ホントは気にしてます!」
彼の視線が僅かに私の胸元に動き、素早く逸らされた。
「あの…ごめん、それって…」
「こ、これはブラと胸元の隙間に挟む、アレでっ…!」
「う、うん」
「ごめんなさい! こんなモノ拾わせて! ごめんなさい!」
手の中のシリコンが冷たくなっていく。
「いや、そんな」
「あの、見栄を張ってAカップのくせにCカップを着けてたとか、ホント恥ずかしいですよね…ドラゴンの卵を胸元で温めてたとか、そんな大義名分があったら良かったのに」
「ぐっ、ドラゴンっ…! ふふっ…ごめん、もう! なんかごめん! ぶふっ!」
原野さんが袖口で顔を隠して震えている。
もう泣いていいかな?いいよね?
恥ずかしくて死にたい。
「うぅ…」
私が黙り込むと、彼はしばらく考えこんだ後。
「そんなに気にしなくて良いと思うけど」
と、爽やかな笑顔で私の頭を撫でた。
「ひっ!」
何このイケメン!頭ポン?何これ!?
胸が真っ平らどころじゃない。抉れたかもしれない!
「可愛いなぁ」
「ひぃぃ!」
胸のど真ん中を撃ち抜かれた!
こんなの惚れないほうが可笑しいでしょ!
「もうっ!好きっ!」
勢いあまって告白すると、原野さんはとても嬉しそうに笑った。
ありがとうございました。
良ければ星マーク、感想、レビューなどよろしくお願いいたします。
キーワード「偽物」「牛乳」で並んでいたので…
貧乳に悩む女の子って可愛いよねって話です。
パニックになる巽悠衣子さんと爽やかイケメンな下野紘さんが聞きたくて書きました。
普段はトイレに閉じ込められたオッサンの話や玄関を掃除するおじいちゃんの話を書いています。