お買い物
「バールト!今ひまー?」
元気に話しかけてくるのはアズサだ。ユリみたいで、銀色の髪の女の子だ。
「うん、暇だよ。なにかして遊ぶ?」
僕がそうきくと、アズサはにこっと笑って言った。
「お買い物に行こ!」
「んー、なんでお買い物?お金はあるの?」
思いっきりアズサのペースに流されて、僕はアズサと2人で道を歩いていた。マリーに何も言ってないけど大丈夫かな?
「うん、あるよ!マリーのお手伝いをしたら、ジル兄ちゃんが、お小遣いくれたの!」
ジル兄ちゃんは、孤児院で育った僕達のお兄ちゃんだ。もう大人で、仕事もしている。そして時々孤児院に寄り、稼いだお金を少し孤児院に分けてくれるのだ。
アズサはジル兄ちゃんの近くでマリーのお手伝いをしていたため、「えらいね」ということで、お駄賃を貰ったみたいだ。
「ジル兄ちゃんって優しいんだよね。近くでお手伝いしてると必ずお小遣いくれるのー!今度バルトもやってみなよー!」
相変わらずアズサらしい。僕達は裏道を抜けて、大通りにでる。
「ねぇ、アズサ。マリーに言わないで来たけど大丈夫かな?」
「うん、全然大丈夫だよ!私が言っておいたから!」
うん、ひとまず安心だ。マリーは優しいが、怒るととても怖いタイプなのだ。
「そういえばさ、何買いに行くの?決まってる?」
「うん!私が買いたいもの。それはねー……………人形!」
「人形?」
「うん、人形。」
アズサは長い髪をくるっと指にまいて笑った。
「え?なんで人形?また人形?」
そうなのだ。実はこの前、今回と同じような展開で、お買い物に行ったことがあった。その時もアズサは人形を買ったのだ。
「だってこの頃人形が欲しくてたまらないんだもん!」
うーん、アズサの中では人形ブームでも起きているのだろうか?謎だ。
アズサは「あっ」と、なにか見つけたような声を出した。
「バルトー!あそこ!あそこだよ!可愛い人形が売ってるお店!」
アズサは『カエデ』という女の子向けの雑貨屋を指さした。
前回は人形を買うと言っておきながら、どこで買うか分からず、大変だったのだ。アズサがちゃんとお店の場所を覚えてくれていてよかった。
うん、成長してる。
そういえば、前回はものすごーく悩んだすえ、アズサと似ている銀髪の女の子の人形を買ったのだ。今回、買う人形は決まっているのだろうか?正直、またあの意味の無い、長ーい時間を過ごすのは嫌だなぁ。
「アズサ、どんな人形買うのか、決めてる?」
「うん!」
よかった。決まってたみたい。
「どんなの買うの?」
「んーとねー、同じの。」
……ん?
「え?同じの買うの?」
「うん」
「全く同じの?」
「うん、全く同じの」
「…………………え?なんで?」
「なんでだろー?それが欲しいから?自分でもよくわかんない!」
アズサは少し考える素振りをしたあと、考えるのをやめて、またにっこりとわらった。
その後、2人は無事、アズサに似た人形を手に入れた。
アズサは満足そうに笑っていた。