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魔法のある青春  作者: ドル
9月 魔法がある対抗戦
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第95話「必殺の太刀」

 1年前。神原大我は魔導御三家が出席するとある社交パーティーの場にいた。


 彼はその素行の悪さと彼自身の意思から基本的にこういった場には姿を見せないのだが、この日はとある人物と接触を図るためにその催しに自主的に参加し、目的の相手をちょうど発見したところだった。


「よお、久しぶりだな煉」


「げっ、なんでいるんだよ大我」


 部屋の隅っこで壁にもたれてつまらなそうな顔をしていた煉の表情は大我に話しかけられた途端に警戒の色に変わる。


「刃から聞いたがお前やっぱりまた魔法使いになるらしいな」


「まあな、おかげで毎日しごかれまくってるんだよ。そういやお前も3年前に大怪我してつい最近まで家に引きこもってリハビリ生活だったって聞いたけど」


 ドツン! 煉の問いかけに大我は言葉ではなく腹パンで答えた。


「あまりくだらんことを思い出させるな」


「ゲホッ、ゲホッ! お前、いきなり何すんだよ! 一瞬息が止まったぞ! ったく久しぶりにあったのに相変わらずキレやすいガキのまま変わんないなお前は」


「当たり前だろ、俺は俺のことをそれしか知らないのだから」


「は? 何言ってんだお前? ……ああ、そういえば言い忘れてたけどその、なんだ、残念だったな高虎たかとらのこと、今度俺にも墓参りさせてくれよ。お前と違ってあいつとは仲良かったんだよ俺」


「高虎……ふん、もう死んだ奴の名前なんて出すな、気分が悪い」


 それを聞いた煉はさっき理不尽に腹パンを受けた時よりも怒気を込めて大我に言った。


「おい、いくら腹違いとはいえ亡くなった弟に対してそれはねーだろ」


 いつもとは違う本気の怒りで染まった煉からの視線を正面から受けながらも大我はいつもの調子でめんどくさそうに回れ右をしてその場を去ろうとするが、その前にまだ自身が本来の目的を達成していないことを思い出し、声を上げた。


「あ、そうだ。お前桂木魔昼って奴と許嫁なんだって?」


「はあー? い、いきなり何の話だよ! ま、まあ一応そういうことになってるけどあれは勝手に親同士が言い出しただけで……!!」


「そうか……なら決まりだな」


「何が?」


「次会った時は必ず殺す」


「あ、そうですか」


 恐らくこれまでで合計は100回を超えるであろう大我からの殺害予告を煉は『今さら何を改まって』と思い適当に流したために気づくことはなかった。彼のこの言葉にはいつものように怒りや憎しみだけでなく悲しみも含まれていたことに。



……



 対抗戦もいよいよ大詰め、互いに2勝2敗で迎えた大将戦。つまり最後に残った俺、天神煉か神原大我、今から戦って勝った方がこの対抗戦1年の部の勝利を納めることになる。


『ほら出番だぞ、アマテラス』


 その最終戦に備えてまずは相棒の精霊の名を頭の中で念じる。


『おお、ようやく出番か! 実は私もさっきからずっとお前を通してこれまでの試合を見ていて血がたぎっていた所じゃ!』


『それなら期待してるぜ、認めるのは癪だが今回の相手は中々強敵だからな』


 アマテラスからの返事も確認したところで俺はリングの上に上がる。


「なあ煉。俺がどうして去年お前との御前試合を拒んだかわかるか?」


 先にリングに上がって俺を待っていた大我は声をかけてきた。


「俺のこと嫌いだからだろ?」


 去年俺は魔昼と共に神崎家との御前試合に出て刃とソウシの2人と戦った。御前試合は御三家の間で行われる儀礼なので、伝統的には神原家の大我と雫とも俺は戦うはずだったが、聞いた話によると神原家から正式にお断りを受けたためそれは開催されなかった。


 まあ、あの頃の俺はまだ魔法使いとして再出発したばかりで明らかに実力不足だったから、それはむしろありがたいことだった。あと雫はいいけど大我のこと嫌いだからできれば会いたくなかったし。


「そうだな、それもあるが1番の理由は違う。あの時、俺が戦わなかったのはお前が弱すぎてやる意味がないと思ったからだ。けど今は違う、あれからたった1年でお前はちゃんと俺がこの手で直接潰す価値がある魔法使いになった。そのことを誇りに思いながら散っていくがいい」


 別に、今自分で実力不足だったと思ったくらいなので別に御前試合がどうのこうのについては好きなだけ言っていればいいが……こいつは1つ大きな勘違いをしているようなのでそこだけは訂正してやる。


「確かに去年の俺じゃあ逆立ちしてもお前には勝てなかったさ。けどなんで今もそれは同じだと思ってるんだ? 今から潰されるのはお前の方だぞ、大我」



……

「どっちが勝つと思う?」


 自身の試合を終えてリング脇の最前線から対抗戦の決着を見守る加賀斗は突然横にいるソウシから受けた問いに対し、数秒考える仕草を見せた後に答えた。


「……わからん」


「使えねーな」


 開き直ったように両手の平を上に向けている加賀斗にソウシは呆れた。


「いやそんなこと言われても俺、夏休みはずっと別々で修行してたから煉が今どれくらい強いのかよくわからんし、大我のこともあんま戦ってるところ見たことないからどれくらいの実力か知らん。けど、どういう試合展開になるかくらいは簡単に想像できるな」



……

「攻め切るか、守り切るかだろうね」


 神原学院サイドから大将戦を観戦している雫と暮魔も同じような話をしていた。


「神原家は結界術や封印魔法を得意とする防御重視の一族。それに対して天神家は精霊の力を利用した圧倒的な攻撃力を誇る一族。あの2人に限らず両家の戦いはいつも神原が天神の猛攻を防ぎきるか、それとも天神が神原の鉄壁の守りを崩せるかで勝敗が決まるわ……まあそれは戦う相手が大我でなければの話だけど」



……


「ここまでもつれこんだこの対抗戦もいよいよ終幕、勝った方がこの世代の優劣を決める。対抗戦最終試合、大将戦開始ー!!」



 試合開始と同時に俺はアマテラスの宿った刀を召喚。そのまま一気に攻めに転じようとしたがそれより一瞬早く大我の魔法が発動する。


 ピッ! いつの間にか大我の手に握られていた複数の小石、そのうちの1つを指で弾きとばしてきた。


 ピカッ! 小石がこちらに向かって飛んでくる最中に僅かに光ったかと思ったら、それは突然俺の目の高さくらいまである大岩に膨れ上がった。


「護封石か」


 それはあらかじめ封印魔法の術式を刻み込んだ石で、踏みつぶした相手をそのまま封印するという厄介な代物。ただの石ならば俺とアマテラスの力で両断することは容易いが、こいつの場合はそうもいかない。


 バッ、仕方なく俺は横に跳んでそれを回避した。


『次、来るぞ』


 息をつく間もなく俺が回避した先に向かって大我は追加の護封石を弾いてくる。


 バゴン! バゴン! 石を躱す度に背後から軽い地響きがするのを感じながらも、俺はそのまま大我が次の護封石を放つよりも早く距離を詰め、刀を振り下ろす。


 カーン!! しかし俺の一振りは大我が空中に展開した結界によって阻まれる。まるで鋼鉄の塊にぶつけたような衝撃で俺の手は思わず痺れた。なるほど、こりゃバラバラのままだときつそうだな


『来るぞ!』

 

 アマテラスの警告が頭の中で響くと同時に、結界の表面にさらに小さな魔法陣がいくつか展開されその中から複数の木のツタが現れる。


 これに掴まったらヤバそうだと判断した俺はすぐに後ろに跳びながら刀を振るい火炎を振り撒き、こちらに迫るツタの先を燃やす。


『アマテラス、大技2発で一気に決めにいく。ちゃんと合わせろよ!』


『そっちこそチンタラしとったらおいてくぞ!』


 俺はアマテラスに一声かけながら大我と充分の距離を取ったのを確認すると、自身の魔力とアマテラスから引き出した魔力、その2つを刀の中で1つに合わせ、爆炎としてこれを放出する。


「烈火漆式、壱ノ型……『焔』!」


 バゴォーン!! 刀から溢れで出た爆炎の炸裂の衝撃、それと同時に俺は確かに大我の結界を叩き割る感覚を感じていた。


 攻めるのなら今!


 そう判断した俺は目の前で燃え盛る火の海に飛び込み、その中で大我の人影を探す。


「見つけた」


 俺は視界の端でこの火の海から抜け出そうとする大我の姿を捉え、そこに向かって全力で駆ける。見たところやはり今の『焔』では大我に致命的と言えるまでのダメージは与えられていない、恐らくあの強固な結界にかなり威力を軽減されたのだろう。


 しかし1度破られた結界を再展開するには時間がかかる。それが終わる前に今度は直接、俺のもう1つの必殺技を叩き込む。



 魔導精霊と契約する利点の1つは身体能力強化に割く魔力と属性魔法発動のために割く魔力を互いに分配できること、そしてこれはその究極系のようなもの。


 俺の魔力で振るう刀が相手を切り裂くインパクトのタイミングと、アマテラスから引き出す炎の魔力の波長を完璧に合わせることによって、爆ぜると斬るを同時に行う必殺の太刀。それが


「烈火漆式、弐ノ型……『加具土カグツチ』!!」


続く

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