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魔法のある青春  作者: ドル
9月 魔法がある対抗戦
83/103

第83話「奪え!」

「あ!」


「おっ!」


 9月2日月曜日。今日から2学期が始まり、騒々しさを取り戻した校舎の中で、俺と加賀斗は教室を目指し歩いていると廊下でばったり迅雷と陣の2人と出くわした。


「2人共久しぶりー!」


「久しぶりだな陣、迅雷も」


「おお、久しぶり」


 互いに挨拶を済ませると、共通の目的地である教室を目指しながら、俺たちは夏休みが終わった後にありがちな会話を始める。


「夏休みどっか行った?」


『家でずっと修行』


 俺と加賀斗は口を合わせて悲しい呪文を唱える。


 思い返してみると今年の夏は未だかつてないくらい何もない夏だった。俺の場合、自ら望んだ結果ではあるが、今もし夏休み前日に戻って同じ決断をするかと聞かれたら、イエスとは即答できない。


「お前らは?」


 自分以外の人のものでいいから、夏の思い出を聞かせてほしいと思って俺は聞いてみたが


『学校でずっと修行』


 悲しい目をした陣と迅雷はそう答えた。


「ああ、そういえばお前らは桐八の夏期講習に参加するって言ってたな」


「何それ?」


 加賀斗は納得していたが、そんなものの存在を今始めて聞かされた俺は思わず聞き返した。


「終業式の日に桐八がこの夏の間に強くなりたい奴は寮に残って夏期講習を受けろって言ったんだよ。俺と陣はそれに参加して1ヶ月間みっちりしごかれた」


「思い出しただけで変な汗が出てくる……」


「へー、そんなのあったんだ。他にも誰か参加してたのか?」


「他はアロスに黒森、途中までだけど魔昼もいたな。それから一般クラスからも何人か参加してたぞ」


「あと最初の数日だけ琢磨くんもいたね」


「ああ、そういえばそうだったな。けどあいついつの間にか居なくなってたよな?」


「というか俺ら4人共、全然青春してないな」


 加賀斗の言う通り普通2学期の初日なんて『夏休みどっかいった?』の一言で無限に盛り上がれるものだが、まさかこんな悲しい気持ちになる日が来るとは……。


「けど俺はそのおかげで強くなったぜ。だから加賀斗! 今学期こそは俺はお前より上の序列に行くぜ!」


 迅雷は加賀斗に人差し指を突き付け、高らかに宣言する。


 こいつらいつの間にそんな因縁が出来てんだ? 


 ……けど、あれまてよ。


「いや、2学期中に序列は変動しないぞ」


 俺がちょうどいま聞こうとした疑問に加賀斗は予想通りの回答をしてくれて、それを聞いて迅雷は絶句していた。



……

 始業式が終わった後のホームルームの時間、教団に立つ桐八は話始めた。


「さて今日から2学期が始まった。1学期を乗り越え、お前達もようやくこの学園に慣れてきた所かもしれないが2学期は2学期でイベントが目白押しだ、決して気は抜かず魔道に取り組むよう。特に学期末にはB級魔導師昇級試験があり、前々から言ってある通りこの試験に合格しなかった場合は一般クラスに降格となるため気をつけるよう」


 そう、このB級魔導師昇級試験が学期末である12月に行われるため、1学期にあった期末考査はこの2学期には行われない。よって今朝、迅雷に加賀斗が突っ込んだように今学期のうちにクラス内序列が変動されることはない。


「さて早速だがまず今月末には魔導祭が開かれる」


「それなに?」


 聞きなれない単語の登場したので、俺は隣の席に座る加賀斗に耳打ちした。


「ようは文化祭だよ」


 文化祭といえば売店やお化け屋敷、演劇などクラスで色々と何かしらやって大騒ぎする祭りの日。話に聞いたことはあったが、ついに当事者として俺が参加する日が来るのかと俺は感銘を受けていたが、そんな俺を加賀斗は訝しげに見てきた。


「言っとくけど、俺ら特別クラスは売店とかはできないからな」


「なんで?」


 俺の夢を打ち砕くような加賀斗の発言に思わず聞き返す。


「当たり前だろ、いいかうちの学年は少し多いが普通特別クラスは毎年少数精鋭だから1クラス10人前後しかいないんだ。それでもし売店とかやっても当番とかろくに回せないだろ」


 確かに前、炎寺先輩に聞いたが今の特別クラス3年はたった8人しかいないらしい。それで売店なんてした日には文化祭の半分くらいは店番で終わることになる。


「えー、じゃあ俺ら特別クラスは参加できないのかよ」


「バカいえ、むしろ俺らの方が主役だわ」


「は? どういうことだよ?」


「多分今から説明が始まるからそっちを聞け!」


 加賀斗に言われ、俺が再び桐八の発言に耳を戻したところ、確かにちょうどそれらしい説明が始まった。


「この魔導祭でお前達には対抗戦に出てもらう」


 対抗戦? 俺が知っている文化祭の中では聞いたことのない単語。


「神原学院から各学年を代表する数名の生徒に来てもらい。また同様にうちの学園からも同じように数名の生徒を選抜し、各学年ごとに両者の実力を競う催し。それが対抗戦だ」


 神原学院。それは魔導御三家の一角、神原家が運営する、ここ神守学園にも勝るとも劣らないとされるエリート魔法専門学校。


 つまりはそこの生徒とガチンコバトルをするのが俺たち特別クラスの文化祭における出し物というわけか。


「対戦の詳細なルールは学年ごとに少し違うが、お前達1年生の場合は5人ずつ代表を決めて各々1対1で戦い、勝ち星が多い方の勝利とする団体戦となる」


 このクラスにはいま16人の生徒がいる。つまり対抗戦に出られるのはそのほんの一部……絶対出たい!!


「このまま行けば序列1~5位の者に出てもらおうと思っているが……」


 そこで、桐八が一度言葉を切った理由は明白だ。指の先までピンとして、真っ直ぐと手を挙げている俺が目に入ったからだろう。視界の端では迅雷もまた同じように手を挙げているのが見える。あいつも俺も思うことは同じ、『俺を対抗戦に出させてほしい!』その一心のはずだ。


「まだ話は最後まで終わってないから一度手を下ろせ。そんなに心配しなくても今言った5人以外にもチャンスは与える」


 『そういうことなら』と、満足して俺と迅雷は手を下ろし、続く桐八の話に耳を傾ける。


「前にも言った通り現状、対抗戦への出場権を持っているのは序列1~5位の人間までだ。ではそれ以外の生徒が出るにはどうしたらいいか。簡単な話だ、その5人のうちの誰かと戦って出場権を奪えばいい。今日から毎日、俺は午後17時から18時の1時間の間だけ訓練ルームにいる。その時出場権を持っている5人のうち誰かに模擬戦を挑んで勝てば俺がその場で出場を認める」


 なるほど、確かに凄いシンプルな手法だ。ようは俺達出場権が無い生徒は、神原学院の生徒と戦う前にまずは同じクラスメイトに勝たなきゃいけないわけだ。


「正しいくつかの原則は存在する。特定の生徒に何度も挑戦するのはダメだ、例えばもし序列1位の桂木に臼井が挑み負けたとしたら、今度は桂木以外の4人のうちの誰かにしか挑戦することはできない。ただし、もしも桂木が臼井に負け出場権を奪われた場合は一度だけ桂木は臼井に挑戦することができる」


 毎日のように挑戦を重ねて手の内を暴き、最後に勝つという手法はダメ。あくまでも1発勝負で勝たなければいけないということか。


「期間は今から1週間後の9月9日までだ。その日、最終的に出場権を所有している5人が対抗戦に出ることとなる」



……

「面白いことになったな」


 9月3日の朝、加賀斗、魔昼、明日香の4人で久しぶりに食堂の朝食を食べている時、俺は昨日の桐八の話を思い出して呟いた。


「お前ら挑戦する側はわくわくかもだけど、俺ら挑戦を受ける側は出場権を守りきれるかドキドキだよ」


 加賀斗のその発言に俺は引っ掛かりを覚えた。


「え? 『挑戦受ける側』ってお前もう出場権持ってるの?」


「俺はいま序列5位だぞ、ひれ伏せ」


「そうなんだ。というかそもそも今の序列1~5位って誰?」


 1学期の最終日に発表されたクラス内序列だが、終業式をバックレた俺はその詳しい内容を把握していなかった。


「1位は魔昼ちゃん、2位は期末考査の決勝で魔昼ちゃんに敗れた刃、3位は界人くんで4位はスグル」


 それに今明らかになった加賀斗で5人か、さて俺はその5人のうちの誰に挑んだものか。やっぱり1番戦いたいのは因縁もあって、序列1位である魔昼だけど……


 そこまで考えたところで、ふと自分の斜め前の席でいま食事をしている魔昼に視線を向けたところで異変に気がつく。


「魔昼、お前なんか顔色悪くね?」


 思い返してみればさっきから俺達との会話に加わりもしないし、見るからに元気がない魔昼に俺は問いかけた。


「別に普通よ。いつも通り」


 そう言って本人は誤魔化したが、俺の隣にいる加賀斗がすぐに魔昼に変わり理由を教えてくれた。


「こいつ昨日、新城に負けてもう出場権奪われたんだよ」


「え?」


続く

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