第69話「期末考査」
7月1日月曜日。全ての授業はもう終わり、後はホームルームを済ませれば放課後を迎えるというこの状況で、いま教室の中はかなりの緊張に包まれていた。
「あー怖くなってきたー!」
「今更ジタバタしても結果は変わんねーだろ」
俺は目の前で騒ぐ迅雷を窘める。そう全てはもう決まっているのだ、ちょうど今から1週間前に行われたC級魔導師承認試験で。
今日ついにその結果が返却されるらしい。中学の時にも定期試験が終わるたびにこの独特の緊張感をクラスで感じたことはあったが、今回はその比ではないくらい空気は重い。
だがそれも当然だろう、定期試験の場合どんなに結果が悪くてもせいぜい追試になって貴重な自分の時間を奪われる程度で済むが、今回試験は合格点に届かなかったらそこで文字通り終了、この特別クラスを追い出されて一般クラスへ落される。
「まあ、短い間だったがお前と過ごす学生生活悪くなかったよ」
「やめろー! 俺の存在を過去形にするなー!」
相当試験の結果に自信がない様子の迅雷の悲鳴を聞いて俺が楽しんでるいると ガラッ、教室のドアが開き廊下から担任桐八が姿を現した。
「お前ら全員席につけ」
入ってすぐに桐八はお決まりの台詞を言うので、俺はそれに大人しく従いさっさと自分の席に戻る。
「さて、お前等全員もうわかってると思うが今から先週行ったC級魔導師承認試験の結果を伝える」
桐八はそこで一度言葉を切る。そして一呼吸置いてからクラス中の注目が集まる中、宣言通りはっきりと結果を告げた。
「クラス全員、無事に合格だ。よくやった」
クラス中から歓声の声(主に迅雷)が上がった。いつもなら少しの私語でも厳しく注意してくる桐八もさすがに今回は見逃し、ことが収まるのを大人しく待ってくれた。
「もう一度言うがよくやった。これで今からお前たちははれてC級魔導師だ。まずはその証明となるライセンスを渡そう、刃から出席番号順で来い」
それから数分かけC級魔導師となった証、ライセンスという名の学生証と同じサイズのカードを桐八から手渡された。
「これでお前たちは正式に国から魔法使いとして認められた。そのためこれまで使用禁止だった訓練室や裏山といった学内の施設が使用可能となり、これからは自主的にも己の実力を磨いていってもらいたい。いや否応なくお前達は磨かなければならないと思う……少し気が早いかもしれないが今から期末考査の説明を始める」
その瞬間クラス内のお祝いムードが一気に冷めてくのを感じた。
「お前らもさすがにもう知ってはいると思うが、いまから期末考査の内容を説明する。期末考査とは現段階でのクラス内の実力を順位をつけて決めるものだ。そのためどのような結果でも今までの試験のようにこのクラスから落とされることはないが、この期末考査は1学期の終わりと3学期の終わりにしか行われない。それまでどんなことがあっても一度つけたられたクラス内での序列は動かないので当たり前のことだが手を抜くことはないように」
確かに桐八の言う通りこれは今までの試験とは違い合否が問われるものではない。クラス内の順位がつくっといっても特にそれによって報酬が貰えるわけではないので、言ってしまえばそれだけのものだが、このクラスの多くの人間にとってはそれが最も意味のあることだ。
なぜなら勝てばこのクラスで最も優れていることを公に証明できるのだから、そんなチャンスを逃す手はない。
「内容を具体的に説明すると片桐を除いた16人によるトーナメント制で試合を行う、当然最後まで勝ち残ったものは問答無用で序列1位、最後の試合そいつに負けた奴が序列2位となる。そこから下は試合の内容と結果、これまでの評価から順位をつけていくが当然、基本的には最後まで勝ち残っていた者から序列が上として扱われる。日程としては1週間後にまずはトーナメントの組み合わせを決めるくじ引きを行い、その次の週の16日に1回戦、17日に2回戦と3回戦、18日に決勝を行う」
今日が1日だから今から17日後にはこのクラスで現状誰が最強が明らかにされる。
『やってやろうじゃん』
俺は心の中で短く決意を固めた。
……
それから桐八はC級魔導師承認試験に受かったことで使えるようになったこの学園内の施設を周りながらそれらの説明を一通りした。そして最後に辿り着いた訓練室の説明が終わるとそのまま解散となった。
まあせっかくだからこのまま残って自主練に励めということだろう。
「いっちょやるか、魔昼!!」
「いやよ」
俺が記念すべきこの学園内での始めての模擬戦の相手に選んでやったというのにあいつは、つーんとそっぽを向きながら誘いを無下にした。
「なんだよそれでも俺のライバルか?」
「ライバルじゃないし。正直あんた弱いから戦っても鍛錬にならないのよ」
「なんだと!?」
珍しい魔昼からの真っ正面からの煽りに俺は完全に乗っかり彼女に詰め寄る。しかし魔昼はそんな俺に怯むことなくさらに続ける。
「けどそうね、どうしてもやりたいなら期末考査で私と当たるまで勝ち上がることね。どういう組み合わせになるかはまだわからないけど、もしも私の前に立ちはだかることがあったらその時は……ちゃんと叩き潰してあげる」
堂々と俺のことを睨み返しながら魔昼はそう言う。
長い付き合いだからわかる。魔昼がいま言ったことは恐らく全て本気だ。本気でいま俺と戦うつもりはないし、期末考査で当たった時は本気で俺のことを叩き潰すつもりのようだ。
それなら俺が返す言葉も決まっている。
「いいぜ勝負は期末考査までとっておこう。だから絶対負けんなよ?」
「自分の方の心配しなさいよね」
魔昼はそう言うと訓練室を後にした。
続く




