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魔法のある青春  作者: ドル
5月 仲間探し
57/103

第57話「侵入者」

「そういえば今1年と2年が裏山で試験中なんだっけ」


 特別クラス3年生の冴木乃風果(さえぎのふうか)は同じく3年の炎寺豪火(えんじごうか)に話しかけていた。


「あーだから俺ら今日は体育館でトレーニングなのか」


 今は授業中だが彼等がいるのは教室ではなく体育館だった。なぜなら神守学園では2年生に上がると月に何度か実習という形で魔道協会から打診される任務に参加する。


 そのため基本的にクラス全員が足並みを揃えて授業を受けることはなく、高校のうちで習う一般教養科目の授業は1年のうちに全て終えて、2年生からは学校にいる時は授業ではなく体育館や裏山を使って担任の指導のもと魔法の鍛錬をするのが基本となっている。


 今も任務でクラスの半分近くで学園を出ていてここには残りの4人が鍛錬に励んでいたが


 ブッー!! ブッー!!


 体育館内、いや学園中にサイレンが鳴り響いた。3年生はその異変の理由を知るためにその場にいた3年特別クラス担任の八神ヤヒコに視線を集める。


 ヤヒコは目を閉じて眉間にシワを寄せながらこのサイレンが何を意味しているか答えた。


「今校舎の一部と裏山に事前に報告を受けていない正体不明の転送魔方陣が複数展開した。反応からして魔獣と思われるものが数十体、それから魔法使いも何人か来てるみたいだ」


「侵入者ってことか」


「ここに乗り込んでくるなんていい覚悟してんじゃん」


「確かこういう時の避難場所は第一体育館だったよな?」


「特別クラスの1年生はいま全員裏山にいるからまずは一般クラスのヘルプにいった方がいいな」


 校内に敵意を持った魔法使いが乗り込んでくるなんて非現実的な状況下でもここにいる生徒はみな冷静だった。なぜなら既に彼等は実際の現場、戦場を何度も残り越えてきた1人前の魔道師だからだ。


 そんな彼等の成長も垣間見れてヤヒコはこんな異常事態でも少し喜んでしまった。


(ここは彼等に任せても大丈夫そうだね)


「僕は今から学園の重要施設の防衛に向かう。みんなには他の学生の避難誘導を頼む、指示は真叶(まどか)、君がしてくれ」


「はい! 任せてください!」


 真叶の力強い返事を聞いたヤヒコは素早く身を翻し一瞬で体育館を後にした。

 

「じゃあさっき信羅が言ってくれたみたいに、まずは一般クラスの1年生と2年生を避難場所に誘導することを優先しましょう。侵入した魔獣と魔法使いの対処はそれが終わってから」


「一般クラスの3年と特別クラスの2年生はどうするんだ?」


「3年には王条や宗像がいるし、仮にもこの学園で2年以上学んでるんだからこれくらいのアクシデントは対処できるはずよ。特別クラスの2年だってもうそれなりに経験は積んでるはずだから、一先ず後回しで」


 その説明に納得のいった炎寺はこくりと首を縦に降って同意の意を示し、それを確認した真叶は次の指示をとばす。


「それじゃあ私と風果ちゃんは1年生のところに、炎寺と信羅は2年生のところに向かって」


「わかった!」


「了解!」


「あいよ!」


 返事をすませると各々任された役目を果たすためすぐに体育館を後にした。

 


……

 その頃、裏山の麓で試験を見守っていた特別クラス2年担任のカグヤと1年担任の桐八の2人も当然、異変には気づきその対応に追われていた。


「私はAチームとDチームの方にいく、桐八はB、Cの方に向かってくれ」

 

「分かった」


 短く分担を告げるとカグヤはすぐに裏山に入ろうと駆け出そうとしたが、すぐにその足は止まってしまった。


 なぜなら2人の前には仮面で顔を隠し、ぼろぼろの黒いコートを全身に纏ったいかにも怪しい2人組が現れたからだ。それを見て2人は即座に臨戦態勢に入っていたが、仮面の男達はそれを意に介さず、その場で跪き言った。


「始めまして、我々は『ゼーラ』真なる魔導の世界を創造する者達です。今日はあなたのことをお迎えに上がりました、夜神輝夜様」

 

 『ゼーラ』、2人共その組織のことはよく知っていた。ここ数年、魔導界の裏で暗躍し数々の悲劇を生み出してきた魔法テロ集団。特に桐八は彼らとの中に深い因縁があった。


「あんた達みたいなテロリスト集団と出掛ける予定はないんだけど」


 カグヤは男達の異様な行動にも動じず依然として警戒体制を維持していたが、彼らの次の言葉によりカグヤだけでなく桐八ですら一瞬動揺した。


「まもなく深夜様が復活し魔道協会に夜が訪れます」

 

「なっ!」


「……っ!?」


 ガシッ!!


 そしてその隙をつくように突然2人の足元から無数の樹木の触手が現れ、一瞬にして2人を拘束した。


「手荒な真似をしてしまい申し訳ありません。けどご安心ください私共に協力すると一言、言ってもらえばすぐにでもその拘束は解かさせます」


「誰が協力なんてするか! いいからさっさとこの拘束をといて一発殴らせろ!」


 そう言いカグヤは力ずくでこの拘束を振りほどこうとして魔力を全身に込めて樹木に手を当てるが、いくらやっても樹木をひっぺがすだけの力がわかなかった。


「この植物魔力を吸ってるのか?」


 違和感の正体に気づいた輝夜の叫びを無視しながら、先程から話しかけ続けている仮面の男は立ち上がり、その片方の手に鎌を召喚した。


「お分かりいただいたようにその拘束はいくらあなたでも簡単には解けませんよ。もう一度聞きますが夜神輝夜様、私達と共に魔道協会に夜をもたらしませんか? あなた達八神家だって魔道協会から随分存在な扱いを受けていると聞いてますよ」


「……今度断ったらその鎌でぐさりだぞってわけ?」


「そうなりますね、私としてもそうならないことを願いますが」


 男は口ではそう言いながらも両手で鎌を握り少しずつカグヤに歩みより始めていた。それを見て輝夜は呆れたようにため息を1つついてから言った。


「あのねぇ、私は教師なんだぞ。そんな生徒の模範であるべき私がいきなり校内に侵入してきた不審者に『はい、わかりました協力します』なんて言うわけないだろ、少しは考えろ」


「残念です」


 カグヤ言葉に対して短い反応を返してから男は鎌を振り上げた、その時これまで大人しくカグヤの横で拘束されていた桐八が叫んだ。

 

「お前らさっきから人を蚊帳の外に出しておいてグダグダと話がなげーんだよ!!!」


 そう言うと鎌を持った仮面の男の前、それから桐八とカグヤの真後ろの合計3ヶ所に魔法陣が展開され、その中から剣の形をした白い魔法が射出される。


 カーン!


 仮面の男の前に現れた桐八は拳を振るい男はそれを鎌の持ち手で防いだ。


「ほーこれが噂の『千剣』ですか」


「ああ、お前らのボスをぶった斬った魔法だ」


 一方で2人を拘束する樹木はこの剣に切り裂かれ、桐八とカグヤは自由に身動きが取れるようになっていた。


「なんでさっさとこれやらなかったんだよ」


「お前が裏切ったりしないか確認してたんだよ」


「するわけないでしょ」


「まあな、けど上の連中は簡単に納得しないだろ」


 カグヤは最初、桐八は冗談を言ってるのかと思ったが『上の連中』という言葉を聞いてその一連の行動に納得をした。なぜなら彼女はいかに自分達、八神家が魔導界で信頼されていないかをよく知っていたからだ。


「そういうことね。じゃあこれでしっかり言質もとれたんだから、次はあいつらとっちめて尋問しますか」 


続く

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