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魔法のある青春  作者: ドル
5月 仲間探し
55/103

第55話「君のこと嫌いなんだよね」

「さていきますか」


 5月28日火曜日、実習試験2日目。昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る中、俺たちは昨日と同じスタート地点から足を踏み出した。


 今日の対戦相手はCチーム、メンバーとしては2年のカムイ先輩、1年は界人、明日香、アロス、陣がいるチーム。


 昨日、俺達はAチームと戦い結果としては引き分けだったが、CチームはDチームに勝利したらしいので現時点では勝利率1位の強敵だ。


 しかし内容的にはうちのチームもAチームに対して勝っていたし、あのれから前の試合の反省とCチーム対策についてきっちり話し合ってきたんだから今日こそは白星をあげられるはずだ。


 そう思いながら俺は昨夜チームで話し合ったCチームの対策について思い出す。


ーーー

『さて今日の試合の反省はひとまずこの辺にして、明日の作戦を練ろうか』


 試験が終ったあと俺たちはもうすでに夕飯を食べ終えていたが食堂の一角に居座り話し合いを続けていた。


『明日の相手、Cチームのリーダー神威は紅蓮くんとは使う魔法的にも戦闘思考的にも全くの性質か違う相手になる』


『違うっていうと?』


 やはりこの試験一番の肝はいかに2年生を攻略するかということを先の試合を持って痛感していた俺は遊佐奈先輩にその詳細な説明を求める。


『紅蓮くんは多対一にも対応できる強力な魔法が使えて、チームにと連携して戦うようなチームだったけど、それに対してアイツは1対1重視、特に強い魔法使いとのタイマン勝負を好む。だから戦闘が始まったらまず真っ先きに私を狙ってくるだろうね』


『なるほど、それを利用してみんなで突っ込んできたカムイ先輩を迎撃すると』


 俺は遊佐奈先輩ならきっとそういう作戦を建てるだろうと予測し発言してみたがそれに対して先輩は首を横に振った。


『いや、ほくはあえてその勝負にのってカムイを引き付けるよ。だってあいつより僕の方が強いから』


……

 バサッ! バサッ!


 目の前の茂みから何かがものすごいスピードで飛び出した。俺の目がそれを完全に捉えきるより先に遊佐奈先輩は声を上げた。


「任せて!!」


 キーーン!!!


 遊佐奈先輩の振るう刀の刃とたった今茂みから出てきた者の正体、神威先輩の突き出す刀の剣先が衝突して甲高い金属音が鳴り響いた。


 バッ!!


 初擊を防がれた後、一度後ろに身を引いたがすぐにカムイ先輩はまた遊佐奈先輩に突撃をかます。


「みんな後は作戦通りにね!」


 遊佐奈先輩はそう言うと俺たちからどんどん引き離れていく。そしてカムイ先輩はそれをどんどん追いかけ、やがて2人の姿は見えなくなった。


 これで遊佐奈先輩がカムイ先輩を戦線から連れだすという作戦の第一段階は驚くほど簡単に済んだわけだが。


 シュルシュルー!


 その時、先程カムイ先輩が姿を表した方向から無数の木のつたが触手のようにうねりながら俺たちに向かってきた。


「1本!」


 俺は両の手で親指を人差し指で弾いて炎弾を飛ばしそのつたを片っ端から燃やしていった。何本か撃ち漏らしたが仲間の3人はそれをなんなく躱す。


 だがその時、俺の視界の端に人影が写った。急いでその影に視点を当てると俺の横に回り込んだ明日香が親指を右手向きに立て人差し指だけをこちらにむけているのが見えた。


「バン!」


 明日香はその言葉と共に人差し指の先から電撃を放出した。


「おっと!」


 俺は後方に向けて跳ぶことで、その電撃を回避する。


「やっぱりプラズマはおせーな」


「絶体この試験中に1発ぶちかましてやるから」


 俺が戦闘の一間に明日香との短い会話をすませると、バッ! 俺の両脇を迅雷と魔昼が走り抜けた。2人はそのまま左右から挟み込むように明日香との距離を縮めていく。


「おっとこれは不味いな」


 明日香はそう呟きながら魔力を行使して両手に短剣を召喚し、それを1本ずつ2人に投げつけた。


 魔昼はわざわざ足を止めてから刀を震いその短剣を真っ二つにした。しかし迅雷は立ち止まることを嫌がり短剣をかわした。かわされた短剣が迅雷の後方の地面に突き刺さるのを見て俺は不味いと思い声をあげる。


「ダメだ迅雷! そいつを破壊しろ!」


 しかし迅雷は聞こえてないのかそのままかまわず明日香に単身突撃をかけた。それを見て明日香は俺の予想した通りの言葉を口にする。


「防衛誘導魔法『避雷針』」


 明日香の魔法につかまり迅雷の動きが途端に失速する。事前に明日香の魔法の話はしておいたのに迅雷の奴さては聞いてなかったろ。

 

「アクセル!」


 当然相手はその隙を見逃すわけもなく、肉体強化魔法を発動した陣が茂みから飛び出す。


「1本!」


 それを見ながら俺は急いで炎弾を飛ばして迅雷の後ろに刺さっていた短剣を破壊し明日香の魔法を無効化する。


 だがその時には既に遅く、陣は迅雷の顔面に1発飛び蹴りをかましていた。


 ドサッ!


 躱すこともできず蹴りの直撃を受けた迅雷は後方に背中から倒れ、陣はさらにそれを追い討ちをかけようと詰め寄ろうとする。


「神鳴り神楽、肆の型『飛電』」


 その陣を狙って魔昼は刀から雷撃を飛ばす。目先の迅雷しか見ていなかった陣は完全に不意をつかれ、雷撃は見事迅雷に飛びかかろうとしている陣をとらえたかに見えたが、ガガァァー! 地面から突如高さ3メートルはある氷の壁が現れた。姿はまだ見えないがどこかに潜んでいるアロスが作ったものだろう。


 ズガァン!


 結果的に魔昼の雷撃は壁に防がれたがその間に迅雷は体勢を立て直し魔昼と共に一旦俺のいる所まで下がってきた。


「連携がちゃんとしてるな」


「それもあるけど、やっぱり私達と明日香ちゃんの相性が悪すぎる」


「さっきいきなり後ろに思いっきり引っ張られる力みたいの感じたんだけど、あれが前言ってた明日香の魔法か?」


 この発言で迅雷は本当に話をちゃんと聞いていなかったことが確定したので、俺は思わずため息が出る。


ーーー

 試験が開始した時より数日前。


『次は2日目に当たるCチームの対策について話そう』


『Cチームって1年は誰がいるとこ?』


 煉は隣に座っている魔昼の方に顔を向け聞いた。


『えーっと、確か界人君、明日香ちゃん、アロス君、陣君のいるとこね』


『あーそれなら全員なんの魔法使えるか分かるわ』


『お、それは頼もしいね。ならまたさっきみたいに1番厄介な1年生から狙って落としたいんだけど、やっぱり霞家の子がそうなのかな?』


 遊佐奈先輩の言葉に同意するように迅雷と新条は頷いた。確かにこの2人もドッチボール大会を通じて界人の実力はよく知っている。それに今回の試験会場でもある裏山はあいつの得意とする地属性魔法とも相性抜群でかなりの脅威であるが、それでも俺と魔昼は首を横に振り即答した。


『いやこのチームにとっての1番の脅威は明日香です』

『いえこのチームにとっての1番の脅威は明日香ちゃんです』

  

 新条と迅雷は知らないだろうがこの学園に入る前から明日香と付き合いがある俺たちはあいつの使う魔法の厄介さをよく知っている。


『その子はどんな魔法を使うんだい?』


『明日香ちゃんの適正魔法は雷のプラズマです』


『それはつまり同じ雷属性の私や魔昼ちゃんたちの攻撃か効きにくいってこと?』


 同属性の魔法使いはその属性に強い耐性を持つため確かに雷魔法を使う魔昼との相性がいいとはいえないがそれだけなら条件はイーブンだ。遊佐奈先輩は当然そのことを理解しているので訝しげな表情をしている。


『いえ、明日香ちゃんが脅威な理由はそれだけじゃありません。彼女は避雷針魔法を使えます』


 それまで明日香がなぜ脅威なのかピンときていなそうな遊佐奈先輩もそれを聞くと納得いったという顔になった。


『避雷針魔法ってなに?』


 1人だけこの場で明日香の脅威性を理解していない迅雷は単純な疑問を俺たちに投げかけてきた。まあ使い手もあまり多くないマイナー魔法だから知らないのが普通か。


『そのまんまだよ、現実にある避雷針と同じで雷を誘導できる魔法。正確には雷属性の魔力を惹き付けるものだね。だからお前や魔昼、遊佐奈先輩とは相性最悪』


『えー! それやべーじゃん!』


……

 現在。


「正直なんか雷魔法があんまり効きにくいんだろうなくらいしか認識してなかったけどあれやベーな」


 先の攻防でようやく迅雷も避雷針の恐ろしさを痛感したようだ。


 明日香がさっき投げていた短剣には避雷針魔法の術式が込められている。つまり先ほど迅雷が陣を相手に不覚をとったのは、明日香が避雷針を発動することで、後方に刺さっていた短剣に雷属性の魔力を纏う体が引き寄せられ失速したためだった。


「悪いけど私がいる限りいつもみたいに速くかっこよく戦うことはできないわよ迅雷くん!」


 明日香はそう言いながら自分の周囲に短剣を無数に投げた。勿論あの1本1本に避雷針が込められている。


「嘘だろ~」


 その身をもって避雷針の恐ろしさを知った迅雷はその光景を見て思わずうなだれている。 


「あれじゃあ近づけもしないわね」


 まあ正直ある程度落ち着いてしまえば明日香がこういう行動に出るのは分かっていた。そして勿論その対策も前もって決めてある。


「100円」


 これまでの攻防には一切参加せずずっと息を潜め隙を伺っていた彼女、新条がその時ついに動いた。


 ドガァーン!!


 新条の黒魔術が巻き起こした爆風に明日香の姿がのまれる。



……

 そしてその爆音は既にその場からかなり離れた場所まで移動していたカムイと遊佐奈の耳にも届いていた。


「お、あっちも本格的に始まったみたいだね」


 自分の目の前で刀を片手で握りながらこちらの様子を伺うカムイに遊佐奈はそう言った。


「やっと逃げるのをやめたと思ったら今度はお喋りか」


 カムイはうんざりしたように呟いた。


「それもそうだね。そもそも君とお喋りしても全然楽しくないし……けどこれだけは最後に話しておくよ、僕がどうして君との1対1にのってあげたのか」


 そう言う遊佐奈の顔はにこやかだったが、いつもと違いその目は笑っていなかった。


「僕、君のこと嫌いなんだよね。だからここで1回叩き潰してスッキリしておきたかったんだよ」


 そう言うと遊佐奈は全身から魔力を放出し臨戦態勢をとる。それを見たカムイは心底嬉しそうに笑った。


「いいね、よく考えたら君とはこの学園に来てからまだ一度も戦ってなかった」


 カムイも遊佐奈の全力に答えるように魔力を放出し、同時に地を蹴りお互いに向かって一直線に駆け抜け刀を振り下ろした。


続く 

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