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魔法のある青春  作者: ドル
5月 仲間探し
48/103

第48話「回旋結界」

「もう始めていいんですか?」


 模擬戦ブースに移動してすぐにやる気満々の一花さんは俺にそう聞いてきた。 


「いいよ、かかってきな」


 俺が漫画に出てくるキャラクターみたいな挑発をするとすぐに一花さんは腕に魔力を込めて魔法陣を展開。


 魔法陣の中からバランスボールくらいの大きさの水の球体が浮かび上がった。正直、俺はそれを見て少し安心した。なぜならこれで彼女の魔法適正は水魔法であることがほぼ確定し、俺が懸念していたトリッキーな無属性魔法を使われる可能性がなくなったからだ。


 俺が勝手に勝利を確信していると、彼女はこちらに向けてその水球を投げつけたので、それに合わせて俺も自分の魔法を展開した。


  パシャン!!


 結果、彼女の魔法は俺の元へ届く前に俺が展開した結界に阻まれ弾けて消えた。


「……なるほど防壁魔法にかなりの自身があるようですね。だから1発でも攻撃を受けたら自分の負けなんてハンデにした」


 今の攻防でどうやら俺がハンデといいつつそれなりに自分に有利な条件を出していたことはバレたようだ。


「まあそうだね。防御力だけなら2年生で1番の自信はある」


 俺がそんな話をしてる最中に彼女は既に次の攻撃を始めていた。今度は両手に魔法陣を展開し水の球体を2つ出し、さっきと同じようにそれを放った。


 パシャン! パシャン!


 結果は2つに増えた所で同じだった、どちらも俺の所へ届く前に壁に阻まれ水しぶきをあげて弾けた。


 だがそれは彼女にとっても想定内だったようだ、俺の視界が水しぶきで遮られている間に彼女は俺の真後ろまで潜り込みさっきまでのと比べてかなり小柄な水玉を俺に向かって投げた。


 なるほど最初の2つは囮でこっちが本命なわけだ。本命だけあってこの魔法はさっきよりも小さいが、その分明らかに迫ってくる速度が増してる。今から背後に防壁魔法を展開してたら間に合わなかったろう……けど。


 パシャン!!


 結果はこれも同じ、三度彼女の魔法は俺に届く前に弾けた。


「悪いけど俺の防御に死角はないんだ」


 彼女は俺の防壁魔法を自分が意識した方向にのみ展開されていると思っていたようだし、実際一般的に防壁魔法といえばそういう使用のものだが、コレは術者である俺を中心としてそれを囲むように360度展開されている。というか特性状そのようにしか展開ができないのだ。


 俺的にはこの辺で諦めて降参してくれると楽でいいんだが彼女の目からしてそれがないことはすぐわかった。


「確かハンデとしてそちらからは手を出してこないんですよね」


「まあ身を守るために多少の応戦はしたりするけど、基本的にはそうだよ」


「わかりました」


 その確認を済ませると彼女はその場で座禅を組み目を閉じた。まあ正直、彼女の出自からこの展開は予想できた。彼女の生まれた家、霞家の魔法使いは仙人とも呼ばれている。


 彼らの特徴は自分の体内魔力だけでなくこの大気中や自然に存在する魔力を取り込み利用できる点だ。そのため霞家の魔法使いは他と比べてかなり大規模な属性魔法を使えることで有名であり、今まさに彼女はこの空間に存在する魔力を吸収しそれを行使しようとしている。


 だが逆に次の1撃さえ防いでしまえば、彼女に俺の防壁を破る手段は完全になくなるはずなので、恐らくそのまま降参してくれるはず。


 座禅を組んで5分ほど経過したところで目は閉じたまま彼女は語りだした。


「このハンデをつけたことは失敗でしたね、正直ここまで魔力を錬ったのは始めてです」


「実は俺もちょっと不安になってる」


「正直ですね」


 お喋りはそこで終わった、彼女の頭上に巨大な魔法陣が展開されたのを見て俺もすぐさま防壁魔法を再展開した。そして互いにその魔法の名を口にする。


瀑布バクフ


回旋結界かいせんけっかい」 


 爆音を生みながら彼女の魔法陣の中から大量の水が流れ出る、そしてそれは俺の全身など容易に一飲みしてしまうほどの巨大な波となって向かってくる。これに飲み込まれた時のことはあんまり考えたくなかったが俺は正直安心していた。


「あ、勝った」


 バシャ!! バシャ!! バシャーーー!!!


 そう呟くと同時に遂に俺の回旋結界と彼女の生んだ波がぶつかるが、その結果は予想通り波の勢いをものともせず俺の回旋結界はそれを全て弾いていく。


 それが5秒程度続くと俺の視界を埋めていた大量の水は消え、苦しそうに肩で呼吸してる彼女の姿が変わりに見えてきた。


「相性が悪かったね、俺の回旋結界はああいう面の攻撃には頑丈なつくりなんだ」


 結果的にほぼ俺の予想通りの展開を辿っているこの戦いだが、今まさに始めて予想外のことが起きていた。それはどう見てもまだ彼女に降参する意思が見られないことだ。状態から見てもうあれ以上の魔法をもう打つことは出来ないと思うのだが。


 彼女はまた右手の平を上に向けて空中に魔法陣を展開しようとするが、パシュン! それは一瞬で弾けた。やはり彼女に魔力はもう殆ど残されていないようだ。


 今度こそ諦めるかと一瞬期待したが、それを否定すように彼女は残り少ない魔力で纏って身体能力を強化し俺に向かってきた。正直このままほっとていても勝手に回旋結界に突っ込み弾かれて終わりなんだが、俺はあえて防壁を解除し近距離戦に付き合うことにした。



……

 私、霞一花の最強魔法である『瀑布』も回生先輩は涼しい顔でしのぎきった。この時点で自分の勝利がなくなったことは既に察していた。


 しかし、往生際が悪いのは自分でも理解してるつもりだが、それでも私は残る全ての力を振り絞って回生先輩に殴りかかった。


 もはや当初の目的であったリーダー変更の話でさえどうでもよかった。今の私の中にあるのはただ自分の技をことごとく防がれた悔しさと、その相手になんとか一矢報いたいというそんな美しくない感情だけだった。


 そんな私が放った一撃は魔法使いでなくても躱せそうな、とにかく大振りで隙だらけの右ストレート。彼はそれを少し身をよじることで躱し、そのまま私の右肩にポンと触れた。


 私はすぐにそれを振り払おうとしたが、それよりも先に異変が起きた。さっきまで地についていた足は宙に浮き、足の裏は天井に向けられていた。つまりどういうことかというと私の体はさっきの状態から180度回転していたのだ。


 その瞬間、私がこれまでの攻防で感じていた防壁魔法への違和感の正体がようやく分かった。


 ドンッ! 私はなんとか受け身をとって頭は守ったものの、背中を思いっきり床に打ち付けた。

 

 そしてその状態からもう立ち上がる力もなく、しばらく天井を眺めるはめになった。


 それから数秒かけて何とか息が整ってきたところで、私はようやく気づいた回生先輩の魔法の仕組みの答え合わせをしてみた。


「回転……ですか?」


「そう、俺の適正魔法は回転魔法だ。ようは俺が触れたもの、魔力で作ったものを回すことができる。君の魔法をずっと防いでいた回旋結界は一見ただの防壁魔法に見えてその表面はずっと高速回転してる。だから壁としての役割は勿論衝撃を分散する力を持ってる鉄壁の結界だ」


 私の水魔法がぶつかったときやけに水しぶきが派手に散っていたのはそういうことだったわけだ。


「……強いですね、私の降参です」


 ここまで圧倒的な実力差を見せつけられては認めるしかなかった。


「じゃあ俺をリーダーとして認めてくれるってことでいいのかな?」


 回生先輩はそう言いながらまだ地面に横たわる私に手を差し伸べた。


 正直まだ私の中で怒りの感情がふつふつと沸き上がっていたが、それは先輩への感情ではなく、この人のことを侮っていた過去の自分に対してだった。


「少なくとも先輩が強いのはわかりました。けどリーダーとして優れているかは分からないので、これからも間違ってると思う発言があれば意見を挟ませてもらいます」


 私は素直な自分の気持ちを示しながらも、回生先輩の手をがっしりと握った。


続く

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