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魔法のある青春  作者: ドル
5月 仲間探し
47/103

第47話「負けなきゃいい」

ーーー

 それはまだ私、霞一花が神守学園に入学する前の話。


 いつも通り界人と家のすぐ近くにある修練所に向かう途中で起きた出来事だった。


『ちょっと嘘でしょ!?』


『嘘じゃないって、というかそんなに驚くようなことか? 俺の出席番号が2番って』


 出席番号が何番だろうが普通こんな大きな声をあげて驚くことはないだろうが、神守学園における出席番号は普通の学校とは順番の付け方が違う。


 聞いた話によるとあの学園での出席番号は入学試験時に得た生徒の情報を元に実力順につけられているという。それはあくまでも噂話でしかないが、実際五十音順などのお決まりの法則が当てはまっていないことから私はこの話を信じていた。


 そして界人の出席番号が2番ということは現時点で彼の実力はクラスで2番目ということになり、それがいま私が声を上げて驚いた理由だった。


『同年代であんたより強い魔法使いなんて絶対いるはずない』 


 いつも界人と一緒に魔道の鍛練に励みその圧倒的な才をつねに見せつけられている私は断言する。


『それは言い過ぎだろ。今年は御三家の天神と神崎からも入学生がいるらしいから多分1番はそのどっちかなんじゃないか?』



ーーー

 界人の予想は当たっていた。出席番号1番は現神埼家当主の実子、神埼刃だった。


 そしてそんな彼と私は入学してからまだ間もない頃、廊下でばったりと出くわし、その時の第一印象は。


『えーっと、一花さんはさっきからどうして僕のことを見つめているのかな?』


 なんかよろよろして頼り無さそう。


『うわ、なんだかだんだん目の冷たさがましてる気が……!』


(こいつさえいなければ界人が学年1の魔法使い)


『ちょっと一花何してるんだよ!』


 廊下のど真ん中で私がじっくりと刃の品定めをしている事に気がついた界人が慌てた様子で教室から飛び出してきた。


『ちょっと挨拶してだけよ』


『してましたっけ?』


『嘘つくなよ、一花』


 まあ見た目でいったら界人も別にたいしたことないし、こんなものか。


 1人で納得した私はその場を去ろうとするが、その前に振り返って彼に一言釘を刺しておくことにした。


『言っておくけど界人はあなたより強いわよ』


『へ?』


『うわー! お前何いきなり言い出してんだよ!』


『事実を言ったまでよ』


 慌ただしくこちらの肩を掴み詰め寄る界人の腕をすぐに振りほどき、用が済んだ私は教室に向かって歩み出す。


『いきなり変なこと言い出してすまん! あいつも根は悪い奴ではないんだがどうもこの学園に入ってからは気が立っていて』


『いやー別に大丈夫だよ、そんな気にしてないから』


 後ろから聞こえてくる2人の会話が不快だったので私は教室に向かう足を少し早めていると。


『あ、一花さん!』


 教室の入り口で何かにつけてよく私に話しかけてくるクラスメイト、桂木魔昼と出くわした。


『また何か用なの?』


 事あるごとに大した用もないのに私に話しかけてくる彼女にもはや不快感を隠すのもやめて私は聞いた。


『今週の土曜日に外出許可書をとって明日香ちゃんと一緒にこの辺のスイーツ巡りをしようと思ってるんだけど、よかったら一緒にどうかなって』


『悪いけど他をあたってくれる?』


『分かった、また誘うね』


『好きにしなさい』


 ダメと言ってもどうせまた誘ってくるので、私はもはやどうでもよさそうに返事を返す。いつまで続けるのか知らないが、彼女もそのうちいつかは諦めるだろう。

  


ーーー

『一花、お前また桂木さんの誘い断ったろ』


 その日の夕方、いつも通り界人と2人で食事をとっているとそんなことを突っ込まれた。


『別に私の勝手でしょ』


『そうだけど、お前どうせ他に予定もないのに断ってるだろ。いいじゃんスイーツ巡りなんて楽しそうじゃん』


『あのねー界人。私はここに友達を作りに来たわけじゃないの』


 どうも界人はそこら辺のことを履き違えているようなので、入学してから今日まで度々このように意見がぶつかることがあった。


『お前がそういう態度だからこの間、補修を受ける羽目になったんじゃないか?』


 先月行われた始めての実技試験。そこで私はペアを信用せず力の一部を隠して試験に臨み結果担任の桐八先生からお叱りを受け補修をこなす羽目になった。


『確かに試験で手を抜くのはよくなかったわ。だからこれからは誰と組まされても試験にはちゃんと全力で挑むわ。けど別にそれ以外の学園生活でもわざわざ馴れ合う必要はないわ』


(まあ、試験の時だけでも協力することにしただけでも成長したか。できれば一花にはせっかくの高校生活を謳歌してほしいんだけど)



……

 そして時間は進み2度目の実技試験が行われることになった。今回は1年生が4人、2年生1人のチームを4つ組み戦うという内容だった。まだ詳しい試験の内容は説明されていないのでそれも気になるところだが、まずはチームメンバーが誰か把握するところからだ。


 一応桐八先生から既に1年の各チームのメンバーが記された一覧表は分けられていたが、そもそも私の中で顔と名前が一致しているクラスメイトが半分もいないため、それを見ても1人を除いては誰と一緒のチームなのかぴんときていなかった。

 

「あ、一花さん今回の試験は同じチームだね、頑張ろう!」


 ちょうどいい所に唯一同じチームで顔と名前が一致している神崎刃があちらから話しかけてきてくれた。この男のことは正直いけ好かないと思っているが、学校側の過大評価とはいえ一応クラスで1番の実力者ということになっているようだし、仲間としては役に立つだろう。いけ好かないけど。


「そんなあからさまに嫌そうな顔しないでよ」


「よろしく、せいぜい私の足を引っ張らないように、ところで他のチームメンバーが誰かわかるかしら? 私まだこのクラスの人の顔と名前がちゃんと覚えられてなくて」


「ああ、だったらちょうどここにもう1人」


 そう言うとさっきからずっと刃の横にいた小柄の少女が口を開いた。


「あの、私も同じくDチームの神崎ユミです! よろしくお願いします」


 丁寧にお辞儀をした彼女もどうやら刃と同じ神崎家の魔法使いの人間のようだ。それならひとまずその実力は信頼できるだろう。


「霞一花よ、よろしく。それであと1人は?」


「ああ、あと1人は臼井桃子さんは……ほら今あそこで話してる子がそうだよ」


 私は刃が手を向けた方向に視線を向けたするとそこで見えたのは



……

「夏樹さん! 蓮見さん! 聞いてください今日、私熊に食べられたんですよ!!」


「いやじゃあなんでまだ生きとんねん!」


「あ! 間違えました! 夢が熊に食べられたんですよ!」


「熊が夢を食べるかー! 夢を食べるのはバクや!」


「夢『で』熊に食べられたって言いたいんでしょ」


「そういうことです。さすが蓮見さん!」


「あなたはもう少し落ち着いて会話をしなさい」



……

 とてつもなくどうでもいいことを比較的大声で話している少女の姿が私の目に入ってきていた。


「あれがそうなの?」


 私は頼むから否定して欲しいと思いながら刃に聞き返したが。


「うん、そうだよ。あれが僕たちのチームメイトの1人臼井桃子さん……だからあからさまに嫌そうな顔しない!」



……

 その日の放課後、私達は2年生との顔合わせと試験内容の説明も兼ねて食堂に集まった。既に2年生の先輩方が来ていて、さらにどう見てもグループごとに座って待っているような構図になっていたので私も自分のグループであるDと書かれた札が立てられたテーブルに向かった。


 その途中で他のテーブルもさり気なく見渡して私は他のチームリーダーを務める2年生の顔を確認する。私はまだ自分のクラスの人間の顔と名前も満足に覚えきれていないが、この場にいた4人の2年生のうち3人は誰なのかすぐにわかった。


 なぜなら先月のドッチボール大会のように、この学園では時に上級生と混じって競い合う学校行事があり、そういった際の準備として私は上級生で目ぼしい実力を持った生徒の顔と名前をある程度覚えていた。


 だからこの場に現在の特別クラス2年生のトップ3が揃っていることにすぐ気づけたのだが、ただ1人誰かわからなかったのが自分のチームの2年生の先輩だった。


「始めまして俺は日野回生、今回はよろしくね」


「私は霞一花です。よろしくお願いします」


 確か2年の序列順位4位の先輩の名前は姫神といったはず、やはり私の勘違いではなかった。そうなると2年のトップ3に混じってこの場に来ているこの人は何者だ? 日野回生という名は確かどこかで聞いたような気がするが……


 そう疑問に感じた私は日野と名乗ったこの先輩のことをもう一度よく観察してみた。するとすぐにあることに気づく、この人の制服の胸についているバッチの色はなんと銀色なのだ。


 私達と同じ特別クラスの生徒なら胸には金色のバッチがついているはず、銀色のバッチは一般クラスの生徒がつけるもの……その時、私は日野回生という名をどこで聞いたか思い出した。


 一般クラスの生徒でありながら学園の予想を超えた成長をとげ特別クラスと同等の実力を持つとされる特待生と呼ばれる生徒、その1人に確か日野回生という人がいたはず。


 全ての点と点が線で繋がったとき私はあまりの怒りで手が震えた。


……

 その後ではっきりと教員に対し、このどう見ても不平等なチーム編成について抗議をしたが『彼はこの場にいる他の2年生に劣らない実力者だ』などというふざけた理由でそれははねのけられた。


 だが当然私はそんな理由では納得するわけもなく今もチーム内で軽い自己紹介をしながら頭の中ではどう交渉すればリーダーを変えてもらえるかそれだけを考えていた。



……

「不味いな」


 体育館の1角でミーティングをしていた俺、日野回生は思わず小声でそんなことを呟きたくなる状況だった。理由はさっきチームメイトの1人一花さんに遠まわしに俺が実力不足と指摘されたせいなんだが、どうもあの先生達の説明じゃ彼女は納得してないみたいだし他の3人もそれに気づいて雰囲気が非常に不味い。


 まあ俺も流石に他の3人、つまり今の2年生トップ3と比べてもなんら遜色ない実力というのは流石に学園側の過大評価だと思うが、このチームのリーダーを任された以上そんなことも言ってられないな。七瀬にも頑張れって言われてきたし。


「よし、一花さんが俺の実力を疑ってるのは分かった。実際、俺は下魔だし、ましてや特別クラスの生徒ですらないからそう思われても仕方ない。けど俺だって一度任された以上、途中で投げ出したくはない、最後までこのチームで頑張りたい」


 俺なりに誠意をもって本心を伝えてるつもりだが、彼女は相変わらずこちらのことを物凄く冷たい目で見てくる。どんだけ信用されてないんだよ俺の実力。


 仕方ない、さっきここに来る途中で思いついた案を使うか。


「分かった。どうしても俺の実力が信用できないみたいならこれから直接勝負しよう。しかもハンデありで」


 ようは直接勝負して俺の実力を判断してもらおうということだ。その際、普通に俺が勝ったとしてもまあ2年生なら当然だろうとなる可能性があるため、俺はハンデ有りという条件も付けた。


 ただこの場合、彼女いかにもプライド高そうだから勝ったときにそれはそれで面倒なことになりそうな気はするが、まあやるだけやってみるか。


「ハンデというのは?」


 正直これを考えるの大分苦労した。彼女の使う魔法がわからないため確実とは言えないが、俺のようによほどトリッキーな無属性魔法の使い手でもない限りは多分この条件でも勝てるはずだ。


「俺は一度でも君の攻撃がクリーンヒット、つまりガードができず直撃したら負け。逆に君は自分で『降参』と言うまで何されても負けにはならない。基本的に俺から攻撃することはないから疲れたらその場で休んだりしてもいい」


「わかりました受けましょう、私が勝った時は……」


 そういえばそれについては明らかにしてなかったな。


「うん、俺が負けたら先生の所に直接行ってリーダーを変えてもらうよう直々に交渉するよ」


 まあそうは言ったものの、多分俺が直接言った程度で学園側の決定は覆らないんだろうな。もしそうなった時、彼女に何をされるか考えたくもないが、ようは俺がここで負けなきゃいいだけの話だ。


続く

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