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魔法のある青春  作者: ドル
5月 仲間探し
45/103

第45話「一人称」

 5月13日月曜日。


「2回目の実習試験を行う」


 朝礼が始まると共に桐八がそう告げたことで、教室の空気が一気に緊張に包まれた。


「前回はペアで協力して行う内容だったが今度はもっと多くの団体、5人チームで動く内容となっている」


 ここまでの話を聞いて早速、俺の中である疑問が生まれる。


「5人チームだと数合わなくないですか?」


 このクラスのメンバーは合計17人、それでは3チーム目まで作った時点で2名ほど余ることになってしまう。


「質問があるなら手を挙げるという工程を挟め……それについては問題ない、片桐は今回も別試験を受けてもらうので残り16人。そして5人チームといってもそのうち1年生は4名までの編成だからそれを4チーム組めば4かける4で16人でピッタリだ」


 まあ確かにそれなら一応計算は合うことになるが、今の話の中でまた新たな疑問が俺達の中で生まれた。そしてそのことをさっき、俺が言われた質問があるならまず手を挙げるという工程を挟んで魔昼が聞いた。


「私達1年が5人チームのうち4人を編成するとなると残り1人はどなたが入ってくるんですか?」


「その残り1人のメンバー件チームのリーダーとして2年生が参加する」


 2年生、そう聞いた瞬間いやでも思い浮かぶのはあのクソ兄貴のアホ面、いや2年の特別クラスの生徒は10人以上いるんだ。そもそもあいつがその4人に含まれてない可能性だってある。悲観的になるな俺。


「B級魔導士はチームで働くことが殆どなのでこれはそれに向けた非常に重要な試験だ、チームわけについては今から配るプリントに書かれているので各自で確認してくれ。今日の放課後詳しい試験内容の説明も兼ねてチームの顔合わせを食堂で行うので、終礼が済んだら寄り道せず直行しろ」


 そう言いながら桐八はプリントを配り始める。そのプリントによると俺の所属するBグループのリーダーは進藤遊佐奈(しんどうゆさな)先輩。全く知らない先輩だが一先ずクソ兄貴と違うグループだったので胸を撫で下ろす。


 他に一緒のグループになった1年は魔昼、迅雷、新条マナの3人だった。この学園に来る前からの仲である魔昼は当然、迅雷も一応この学園で最初にできた友達なので、マナという子を覗けばこお互いの使う魔法すら知る仲ということになる。ただこのマナに関しては魔法どころか会話をした記憶もろくになかった。



……


「なあ、マナってどんな奴なの?」


 魔昼、明日香、加賀斗といういつもの4人で昼食を食べている途中でふと思い、ちょうど目の前にいた魔昼に聞いてみた。


「何でそんなこといきなり聞くのよ?」


 なぜか少し不機嫌そうな顔をして魔昼は俺の質問に質問を返してくる。


「ずいぶん大胆に浮気しようとしてるわね煉」


 俺がなんだこいつと思っていると横から明日香の奴が冷やかしてくる。


「ちげーよ、今度の実習の同じチームで唯一話したことなかったからちょっと知っておきたかったんだよ」 


 そう言うと『なんだ、そういうことか』と感じで納得した様子の魔昼がようやく最初の質問に答えてくれる。


「どんな奴っていきなり聞かれても困るけど、優しい子よ。私と迅雷くんがドッチボールの練習してるのを見て、うまくいくようアドバイスしてくれたりしたし。ただちょっと彼女気が強くて物言いも厳しかったから迅雷くんと少し揉めたりしてたけど」


 その話が本当なら俺以外の2人はもうマナとは多少のコミュニケーションはとっているのか。


「へー、ちなみにどんな魔法を使うかは知ってるか?」


「直接聞いたことはないわね、けど新条家は黒魔術の使い手って聞いたことあるわよ」


「黒魔術?」


「魔力を消費して超常現象を起こすのが魔法。代償を払って超常現象を起こすのが黒魔術」


 教科書にそのまま載ってそうな模範解答で答える明日香。


「それくらい知ってるわ、黒魔術の使い手と生で会うの初めてだから少し驚いただけだ」


「確かに黒魔術の使い手って全然いねーよな」


「そりゃあ代償払うのが危ないからでしょ、生半端な代償で発動させる黒魔術だったら普通に魔法の鍛錬したほうが強くなれるし」


「へー、そういうもんなのか」



……

「俺ちょっと自販機で飲み物買ってくから先に教室戻っててくれ」


 昼休みの終わりも近付き、4人で食堂から教室に戻る途中、俺はそう切り出し1人出入り口とは逆方向にある食堂の端の自販機に向かった。


 目的地の10メートル手前で俺はある異常に気がついた。それは自販機の目の前に先程ちょうど自分が話題に挙げた新条マナの姿があったのだ。

  

 勿論彼女も俺達と同じ寮生なのでこの食堂という空間にいること事態は何もおかしなことではないのだが、彼女の今の状態が異常だと俺は感じた。


 彼女が今とっている体勢は両手を地面につけて這いつくばり、自販機の床の隙間にある何かをを必死でさがそうとしている様子だった。


 そのまま俺が自販機に近づいていくと、彼女の方も俺の接近に気がつき頬を少し赤らめながら急いで立ち上がり、こう言った。 


「ご、ごめん! 邪魔だったわね!」


 彼女はそのまま今の位置から大股で1歩下がり、俺の自販機の前を譲った。


「いいのか? 自販機の下に小銭落としたんだろ? 上手く取れないなら手伝うぞ」


 相手が魔昼や明日香だったら『ざまぁー!』と笑うとこだが、さすがにまだ何の関係性もない女子にそんなことするほど俺も鬼畜じゃない。なので我ながら感じよくそう言ったつもりだったが、そうすると彼女はなぜかよりいっそう頬を赤くしながら動揺しだす。


「いや本当にお気持ちだけで大丈夫だから!! 次の授業に遅れちゃうからもう行くわ!」


 やけに早口にそれだけ言うと彼女はこの場から走り去っていった。


「変な奴」


 さらに変だったのは俺が飲み物を買ったあと、一応自販機の下を覗き込んで見たが小銭なんて1枚も落ちていなかったことだ。



……

 放課後、俺達は二回目の実習試験の説明を聞くため再び食堂に集まった。食堂の4つのテーブルの上にAからDまでのアルファベットが書かれた札が1枚ずつ立てられていて、そのテーブルの席にはすでに今回の試験を共にする4人の先輩方も先に来て座っていた。


 まあ十中八九グループごとに座って待っていろということだろうから、俺は自分のグループのBと書かれた札が立てられているテーブルについた。


『よろしくお願いしまーす』


 他のグループがやってるのにならい俺、魔昼、迅雷、新条の4人はテーブルにつく前に先輩に一礼してから座った。


「始めまして僕は2年生の進藤遊佐奈、よろしくね」


 正直そこで一切違和感を感じなかったと言ったら嘘にはなるが、別に指摘するほどのことでもない。別に1人称なんてよっぽど奇抜のものでもなければ伝われば何でもいい、ただそれだけの話だったのに俺の横にいるデリカシーブレイカーは違った。


「先輩は何で女性なのに一人称『僕』なんですか?」


 一瞬場の空気が固まった……気がしたが先輩は全く気にしてないようですぐに答えた。


「昔僕の友達に言われたんだよねー『お前に私とか女っぽい一人称は似合わない』って、こう見えて僕、昔は結構男まさりな性格でよくそいつとも殴り合いの喧嘩してたんたから、そう言われたとき『確かにな』って思って、まあそこから色々あってこの一人称になったんだよね」


「なるほどーそうなんですね」


 この先のことを考えて我慢してるのかそれとも本当に別に気にしてないのかは分からないが、一先ず先輩の気さくな返しでその場は事なきを得た。それから俺は隣に置かれている危険な爆弾を肩で小突きながら耳元でささやく。


「お前まじでそのままだと早死にするぞ」


「は?」


「迅雷君は本当に気を付けた方がいいわよ」


 背後にいる魔昼も同じようなことを呆れながら迅雷に言っていた。


続く

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