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魔法のある青春  作者: ドル
5月 仲間探し
37/103

第37話「お前の兄貴なんか忙しそうだな」

 4月28日、日曜日の朝。今日からこの神守学園でも大型連休が始まった。しかし俺、加賀斗、明日香、魔昼のおなじみのメンバーは授業もないというのにわざわざいつも通りの時間に食堂に来ていつも通り朝食をとっていた。


「やっぱり人少ねーな」


 当たり前だがいつもより人気がなく、物寂しい食堂を見て俺は言った。


「まあ殆どの寮生は昨日の午前に授業が終わったらそのまま帰ってったはずだからね」


「俺達だって本当はそうしたかったんだけどな」


 加賀斗は俺を横目で見ながらそうぼやく。まあ確かに家に帰るのが1日遅れた理由は主に俺にある。


「仕方ねーだろあのクソ兄貴と一緒に仲良く下校なんて耐えられんわ」


 そう、俺達の送迎用に家の方から車を出してくれると言われたが、それは長時間あのクソ兄貴と同じ空間にいなければならないことを指すので俺は適当な理由をつけてそれを避けた。

 

「まあ私はその分魔昼ちゃんと一緒にいられたからいいんだけど」


「確かにアイツよりはお前のがマシだな」


「それは朝から私の雷魔法の的になってくれるってこと?」


「スイマセンデシタ」


 魔昼が右手に雷の魔力を集めてバチバチと不穏な音を鳴らし始めたのを見て、俺は手遅れになる前に謝った。全く冗談の通じない奴だ。


「けど本当にいいの? 今からでも頼んで魔昼ちゃんもせめて駅まで送ってもいいんだよ?」


「いいの、いいのそんなたいした距離じゃないし」


 桂木家は俺達と違って送迎用の車を用意してないため魔昼は電車と歩きで家に帰るつもりらしい。俺達3人は少しくらい遠回りになっても構わないから一緒に車に乗ろうと提案してるのだが、魔昼は頑なにこれを断り続けている。まあ実際ここから駅まではたいした距離ではないので俺は本人がそう言うならそれでいいかと思いもう誘うのはやめている。



……

 数十分後、待ち合わせの時間に校門に行くと俺のよく知る男が乗った車が止まっていた。


「それじゃあまたね」


 それに気づいた魔昼はその場で一旦足を止めて俺たちに別れを告げた。


「おう! また学校が始まったら会おうな」

 

 魔昼との別れをすますと俺達は車の中へと乗り込んだ。


「いいのかい?  別れのチューはしなくて」

 

 車のドアを開けて中に入るなり運転席に座る男が俺に問いかけてきた。やれやれちょっと久しぶりにあった俺に最初にかける言葉がそれかよ


「悪いけど、そっちと違って俺達は全然ラブラブしてないんだよ。父さん」


 俺は約1ヶ月ぶりにあった父親の天神花火にそう返した。


「わかってるなら父さん達を見習いなさい、今でも月に1度はちゃんとデートしてるんだぞ」


「すげー嬉しくない情報を聞かされたぜ」


「こないだも楽しかったぞー、一緒にプラネタリウム見に行ったら母さんが思ったより星に興味持ってくれて『あれなに? あれなに?』って聞くから色々教えてあげてたらいつの間にか凄く体を密着させてくれててな、もうそれを意識したらお父さん急にドキドキが止まらなくなって」


「あー!! もう分かったからやめてくれー!!」  


 いい歳をした自分の両親のイチャイチャ話ほど聞いてて気分が悪くなる話題は中々ないだろう。


「やれやれ相変わらず煉は人の話を聞いてくれないな。それならそっちの話を聞かせてもらおうか、どうだったんだい? 高校生活ってやつは」



……

 俺は普通に話そうとしたのだが加賀斗と明日香が横から突っ込みを入れてくるので随分長話になってしまった。まあ確かに影虎先輩は身長2メートル50はある大男で投げた玉の速度はジェット機並みというのは俺も盛りすぎたなと言いながら思っていたが。


「まあ結局どこからどこまでが本当なのかあやふやだが毎日楽しそうでなにりよりだ」


 父さんがそう話をまとめた時には車は家についていた。窓からなんとなく見えていたが車のドアを開けた瞬間、俺達を出迎えようと待っていた人物が1人はゆっくりかけより、もう1人は全力疾走でこちらに向かってきた。

 

「煉様ー!! おかえりなさーい!!」


 ドサッー! そのまま一切減速することなくその人物はトップスピードでタックル、もとい腰の辺りに抱きついてきた。


「あー、わかった! わかった! 俺も久しぶりに会えて嬉しいからあんまり引っ付くなよ! 麗美!」


 この少女の名前は加賀斗麗美(かがとれみ)、俺達より1つ年下の少女で昔から俺によく懐いてくれている。また彼女は。


「おいおい、麗美ちゃんや愛しのお兄様も一緒に帰ってきてるんだが」


「明日香さんもおかえりなさい」


「ただいまー、麗美ちゃん元気だった?」


「はい!」


「あれー? ひょっとしてお兄ちゃん無視されてる?」


 そう彼女は加賀斗暁の義理の妹でもあるのだ。全く麗美みたいないい子の兄が義理とはいえこんな残念な奴にされてると思うといつも不憫に思う。


「あき兄も明日香さんもおかえりなさい」


 麗美の襲来から少し遅れてやってきたこちらの少女の名前は加賀斗咲笑(かがとえみ)、麗美の双子の姉である。活発的な麗美とは対照的で物静かで大人しいというこの家に住む人間の中では希少なタイプだ。


「あ、あの、れれれ……!!」


 今度は俺の方をむいて声をかけてくれようとしたがどうも噛んでしまったようだ。すると咲笑は麗美の方に歩いていきそのまま麗美の後ろに回り込む。これは咲笑が一旦落ち着きたい時にする行動だ。そして咲笑は自分よりも身体が一回り大きい麗美の後ろから顔だけひょっこりとだしてこう言った。


「お、おかえりなさい煉さま」


「おう! ただいま咲笑」


 俺が返事してやるとさっきまで不安そうだった咲笑の顔に笑顔が生まれる。相変わらず可愛い奴だ。


「ちょっとえみ姉、私の後ろに隠れながら挨拶しちゃ失礼でしょ」


「あ!」 

 

 麗美の一言で咲笑の顔がまたシュンとなりかける。


「そんなこと気にすんなって!」


 俺はそう言って2人の頭を撫でてやる。そうして2人を落ち着けたところでまた新たに俺達を出迎える人が来た。


「よく帰ってきたな」


 少し遠くから声をかけてきたおっちゃんの名は加賀斗啓生(かがとけいせい)。加賀斗家の現当主にして咲笑と麗美の父親だ。


「啓生のおっちゃん久しぶり」


「だからおっちゃんをつけるなと言ってるだろ」


 久しぶりにお決まりのやりとりをできて俺は満足する。啓生のおっちゃんも満足したのか今度は明日香と加賀斗の方を向く。


「ちゃんと護衛としての仕事はしてるんだろうな」


「勿論ですよ」


「なに言ってんだオヤジ、あれ見てみろよムカつくくらいピンピンしてるよあいつ」


「なるほど確かにムカつくな」


 こちらの方を見てとんでもないことを言ってくる2人に対して抗議を唱えたのは俺、本人ではなく麗美だった。


「ちょっといくらお父さんとあき兄でも煉さまのこと悪く言ったら許さないわよ」


「おー怖い、怖い」


 そう言いながら車の助手席側まで回る啓生のおっちゃんの姿をを見た加賀斗は目を輝かしながら聞いた。


「あれ? オヤジ今日は仕事なのか?」


「ああ、このまま今日は1日花火の護衛だ」


 そう聞くと手を パチン! と叩き軽いガッツポーズまでとって喜ぶ加賀斗だったが。


「安心しろ、夜はそんなに遅くならないだろうから帰ってきたら道場で久しぶりにたっぷりしごいてやるよ」


 その一言を聞いた瞬間に膝から崩れ落ち、その場に両手をついて四つん這いの姿勢になってしまった。


「お前の兄貴なんか忙しそうだな」


「ただバカなだけですよ」


 膝から崩れ落ちた加賀斗を鼻で笑った後、啓生は車に乗り込んだ。それと同時に運転席の窓が開いて父さんが俺に話しかけてきた。


「じゃあお父さんはこれからちょっとお仕事だけど、家には母さんがいるはずだから、ちゃんと挨拶しにいきなさい」


 それを聞いた俺は少し驚く。


「母さん今帰ってきてるのか?」


「ああ、けど仕事の合間に戻ってきてるだけだからあんまり長くはいられないはずだ」


 そう、うちの母さんは基本忙しくてあまり家にはいない。なぜなら彼女こそが魔道御三家の一角である、この天神家の現当主なのだから。


続く

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