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魔法のある青春  作者: ドル
4月 魔法のあるドッジボール大会
35/103

第35話「驚くだろうな」

 4月26日金曜日。試合を終えた俺達1年生全員は教室に戻り桐八が来るのを待っていた。特別するとこもなく俺はぼーっとしている同じく隣席でぼーっとしている加賀斗の声が聞こえた。


「負けたー」


 そう俺たちは結局3年生チームに敗れた。


 最後、俺のありったけの魔力と根性で影虎先輩のボールを弾き返し勝ったと思ったが『アクセル3』という影虎先輩の呪文ひとことでその淡い期待は砕かれた。


 まあ、つまり何があったかというと、結局俺のカウンター攻撃でも影虎先輩には通用せず、直前の攻防で全魔力を使いきって満身創痍になっていた俺たちのチームはそれまでの接戦が嘘だったみたいに呆気なくやられた。


 会場から退場するとき観客席から試合に出てなかったクラスメイトは勿論、他にも試合を観戦してた色んな人が俺達に称賛の言葉や拍手を送ってくれた。


 確かにこの学園に入学したばかりの1年生クラスがこの超一流魔法学園の3年生相手に大健闘したのはみんなから誉められるすごいことかも知れないが


「勝てなきゃダメなんだよなー」


 桐八が俺達にこの大会で求めていたのは結果を残すことだ、どんな接戦だったとしても結果は1回戦負け。結果を残せなければ補修対象者はこのクラスから追い出すと言っていた。


「なんて顔してんのよ、いくら負けたからって落ち込みすぎよ」


 その補修対象者の1人魔昼がそんな声をかけている。本当は自分の方がこれからのことで内心不安な癖に、いつもみたいに軽く俺に話しかけることでそのことを隠そうとしているのが長い付き合いの俺にはバレバレだ。


「……悪かったな、。影虎先輩に勝てなくて」


「責めるわけないでしょ。最後こそ負けたかもしれないけど、あんたのおかげで宗像先輩や王条先輩も倒せていい所まで行けたんだから」


 まあ正直、たった1試合のみだったがこのためだけに数週間特訓を続けてきたのも納得がいく楽しさだった。


 あーこれが本当に学校の昼休みにグラウンドでやるドッチボールだったらノータイムでリベンジマッチを要求するのに。まあもう1回やったら間違いなくうちがぼろ負けするけど。


 俺が試合最中の記憶を思い出し1人その高揚感に浸っていると、ガラーっと教室のドアが開き桐八が入ってきた。


「よーしお前ら全員いるな」


 教室内に緊張が走る中、桐八はスタスタと教壇へと上がっていく。


「まずはお疲れ様と言っておこう。実際お前たちは今回の大会に向けてよく頑張った」


 珍しく俺達のことを素直に褒めるな。


「さてクラスの殆どの生徒にとってはこれで1つの学園行事が終わったわけで、これからまたいつも通りの学園生活が待ってるわけだが、一部の生徒は今これまで通りの学園生活が危ういものがいる。それは前回の魔法実習で補修対象者となった奴等だ」


 自然とクラスの視線は補修対象者の4人に集まる。


「俺が補修対象者に出した課題はいい結果を残せだった。……マナ、一花」


 突然桐八は補修対象者だった2人の名前を呼ぶ。


「お前たち2人は俺の評価を不服に思いながらもこの大会期間中クラスによく協力した。例えこのクラスから追い出されたくないという一心からの行動だったとしてもその点は評価できる。そして桂木、お前は実習での反省をかてにこの約2週間クラスを1つにまとめようとよく努力していた」


「最後にアロス、お前だけはクラスの中でも唯一この行事に非協力的な姿勢だった。だが大会1週間前からクラスの練習に参加しはじめ試合の中でもチームが危機の際に活躍し危機から救ってくれた。……まあ俺が何が言いたいかというと、確かに試合には負けだがお前たちは俺の言われた通り曲がりなりにもクラスが結束して3年生を相手に大健闘をした。これはこのクラスにとっていい結果だと充分に言える。まあつまり、なんだ……補修は全員無事合格とする。お前ら全員これからもこのクラスのために協力していってくれ」


 恐らくこの学園始まって以来だろう、1回戦負けしたクラスで大歓声が上がったのは、補修対象者は勿論クラスの人間全員がこの結果を喜んだ。


「あー、お前たちはもう負けたが午後からは決勝戦が行われその後にある閉会式には出ることになるから、食堂で昼食をすませたら各自午後にまた会場に集まること、俺からは以上だ」


 桐八は連絡事項を伝えると『やれやれ』といった表情で教室を出ていった。だが引いたドアを閉めようとしたとき桐八の口元が僅かに笑っていたような気がした。


「これでもう私のことを『補修副委員長』とは呼べないわよ!」


 嬉しそうにそう言ってくる魔昼に『じゃあこれからは元補修副委員長だな』と言おうかと一瞬思ったが口には出さず。


「やれやれお前の口うるさい小言から解放されるチャンスだったんだけどな。まあけどよかったな副委員長」


「分かればいいのよ」


 そこまで言うと魔昼は一度言葉を切り一瞬悩むような仕草をした後少し照れくさそうにこう言った。


「その……ドッチボールの時の煉、凄くかっこよかったよ。いきなり王条先輩倒しちゃうし、最後止められたけど影虎先輩のボール弾き返した所とか」


「え? お、おう。ありがとな」


 面と向かって魔昼にそんなことを言われるとは思わなかったので、俺も少しどぎまぎしてしまう。


「じゃあまた後で」


 いつの間にか頬が赤く染まった魔昼はそのまま足早に明日香の所に行ってしまった。


 こうして無事俺達の1回目のドッチボール大会は幕を閉じた。




……

 決勝戦は俺達の試合よりもさらに白熱した。そしてその大接戦を最終的に制し優勝したのは特別クラス2年生だった。


 その後にあった閉会式も終わり、俺達1年生の生徒はみなそのまま寮へと帰る中で俺、蘭アロスだけは進路を変え校舎と寮の間にある休憩スペースに立ち寄った。


 そこには俺が呼びつけた相手、一般魔法科クラス1年主任式守柚子葉先生がいた。


「待ってましたよアロス君、今日が約束の日でしたね」


 無事ドッチボール大会が終わったことにより、煉との間にあった約束もなくなり俺はもう自由に一般クラスへと編入できるようになった、だが。


「誠に勝手な願いですいませんが、やっぱり今回の話はなかったことにしてください」


 それが俺の出した答えだった


「確かに少し残念ですが、あなたがそう言うなら私はそれに従いますよ。けれど本当にいいんですか? 私が知ってるあなたは特別クラスでやってくのは難しい生徒だと思ったのですが」


 確かに昨日までの俺ならあのクラスで3年間上手くやっていける気など全くしなかった。しかし今は。


「俺の中での考えが少し変わったんです。確かにまだ高魔全員のことを好きになれません。けどうちのクラスの奴等は俺の知ってる高魔とは違うんじゃないか、そう思えてきたんです。だから俺はもう少しあのクラスにいて見極めたいんです、高魔でも心を許しあって友になれる奴がいるのかどうか……」


 今思ってることを嘘偽りなくすべて答えた後、俺に出来るのは式守先生をただ真っ直ぐ見ることしかできなかった。


「そうですか、あなたがそこまでいうならそうですね、この話はなかったことにしましょう。では、これからもよい学園生活を」


 そう言いうと、あっさりすぎるほど式守先生は行ってしまった。



……

 俺はその後自販機に小銭を入れてジュースを買ってそれを飲んで一息ついた。画面を見るとそこにはちょうど俺が今からかけようとしていた相手の名前が書かれていた。 


 ふっー、と一度深呼吸をしてから俺は迅雷からの電話に出た。


「もしもし」


「ああ、アロスか? えーっとそのよかったな、無事補修合格できて」


 迅雷は声の感じからして俺が電話に出たのに少し驚いてるようだ。


「ありがとう、ちょうど俺も今お前に電話しようと思ってたんだ。要件言っていいか?」


「え? お、おう! どーんときやがれ」


「この前はいきなり絶交してごめんな、できたらお前と仲直りしたいんだ。やっぱりお前みたいな騒がしい奴が近くにいないと人生楽しくないことに今気づいたんだよ」


「……ったくどういう理由だよそれ? けどまあ俺の心はこの学園の敷地よりも広いからな、許してやるよ。また今日から友達だ!」


「さすが迅雷ありがとな」


「なら友情を取り戻す意味も含めてこれから煉の部屋で陣と加賀斗と今日の打ち上げやるんだがお前も来るか?」


 全く、絶交のきっかけとなった人間の部屋に仲直りした途端来いと言うなんてこいつは相変わらずだ。けど


「ああ、いいね是非参加させてくれ。ついでになんか売店でお菓子買ってきてやるよ、何か希望はあるか?」


 きっと俺が突然、部屋に入ったら煉と加賀斗は驚くだろうな、そんな想像をしながら俺は売店に向かって歩き始めた。



……

「よかったですね先輩。アロス君、特別クラスに残るそうですよ」


 アロスとの話が終わった式守は職員室で自分の席に座る桐八に声をかけた。


「何が『よかったですね』だ、問題児が俺のクラスに残っちまった。わざわざお前を上手いこと利用して押し付けてやろうと思ったのに」


「他に誰もいないからと言ってそう言う発言は控えてください。それにもしも特別クラスから一般クラスに本当に移ろうとしたら退学にさせるつもりだったんでしょう?」


「さあ? どうだろうな」


「先輩のそういうところ学生の頃から変わってませんね」


「お前こそいつまで学生時代の名残で先輩って呼んでんだ、生徒の前では出ないようにしとけよ。俺はもう行く、そろそろ次の実習試験の準備を始めなきゃ行けないからな」


続く

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