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魔法のある青春  作者: ドル
4月 魔法のあるドッジボール大会
26/103

第26話「超越魔法」

 4月20日土曜日。俺は生まれて始めて書いた外出許可書という書類を出して入学式ぶりに校門をくぐり学校の敷地外に出た。


 スマホに入ってるマップアプリを頼りに木曜の夜にクソ兄貴からチャットで送られてきた場所へ向かった。


「ここがそうなのか?」


 俺は山を少し登った所にある寂れた廃ビルにたどり着いた。曰くこの周りには民家もこれといった施設もないので、人目は気にせず思いっきり戦えるらしい。


「よお」


 中に入るとすっかり見慣れてしまったアロスのあからさますぎる嫌な顔が俺を迎えたが、すぐにその表情は崩れ何とも言えない微妙な表情となる。


「時間ちょうどだな……ところでその後ろの人がお前の言ってた2年生の立会人なのか?」


 アロスの言いたいことは俺もわかる。俺もさっきここに来る前に待ち合わせ場所であった時少し驚いた、なぜなら俺の後ろにいる今回の決闘の立会い人こと2年生の先輩はどう頑張ってみても、せいぜい中学生にしか見えない見た目だからだ。


 体が小柄だということもあるが大きな理由は顔にある気がする、いわゆる童顔というものなのだろうか。


 しかしアロスはまだ知らないのだ、そんなことよりももっと重大な問題がこの人にはあることを


「そう彼女が、今回俺たちの立会人になってもらった天堂てんどう先輩だ」


 俺が軽く紹介すると天堂先輩は1歩だけアロスの方に近づき自己紹介を始めた。


「始めまして、私は天堂。かつて第6世界の魔女と呼ばれた超越魔法の使い手だ。今日ここで新たな聖戦が起きると聞いて調停者である私がその闘争の果てにあるのが、破壊かそれとも創造か、いったいどちらの未来に転ぶのかを見届けさせてもらうことにした」


「は、はぁ」


「わーすごいっすね」


 そう、今の自己紹介ならぬ設定紹介でアロスも理解したようだが彼女はいわゆる中二病を絶賛発症中であるのだ。


 なんであのクソ兄貴はよりによってこんなクセの強い人を立会人に選んだんだ。


(なんだかんだ2年生といっても実は裏で根回しててグルなんじゃないかと疑ったが……この人なら心配なさそうだな)


「ではさっさとお互い位置につけ」


 正直言い出しっぺの俺だが、決闘なんてものをしたのは人生で2回程度しかしないので位置につけといわれてもどこが位置なのかいまいち分からない。


 とりあえず適当に10メートルくらいアロスから離れてみる。それから位置につきましたよと意味合いを込めて天堂先輩の方に視線を送る。


 それに気づいた天堂先輩は俺と目を合わせてうなずき、息を吸い込み。


「始めー!!」


 この決闘の開始を宣言した。



 天堂先輩の宣言と共に俺はバックステップを踏みながら右手を前につきだす。


「1本」


 まずは様子見の意味も込めて威力は最小だが最速の炎弾を放つ。


 一方アロスは俺とは真逆で、開始の宣言と共に一気にこちらへと距離を詰めようとして踏み込んで来ていたため、俺の炎弾の対処が間に合わず肩の辺りに直撃する。


「ラッキー」


 俺は思わず小声でそう呟きながらも同時にチャンスだと思い、すかさず後ろに傾いていた態勢を整え、怯んでいるアロスに向かって走り距離をつめたところで右足の蹴りを放つ。 


 ガツッ! アロスは咄嗟に俺の蹴りが脇腹に到達する前に左腕を入れて直撃は避けた。そして空いた右腕で俺の顔面にフックを放ち反撃してきた。


 だが俺は上半身を後ろにそらすことでその拳は空を切るだけで終わる。アロスは俺が一度身を引いてかわした隙に距離をとろうと後ろに下がろうとするので俺は追撃のためにもう一度炎弾を放つ。


「3本!」


 バンッ! 炎弾はアロスに直撃したように見えた。早くも勝負は着いたんじゃないかとさえ俺は思ったが、炎弾の爆発により生まれた砂ぼこりが消えるとそこには余裕の笑みをうかべたアロスが立っていた。


 なぜ俺の炎弾を受けて平然と立っているかはすぐにわかった。アロスの右腕には手首から肘辺りまでに氷の板のようなものがついていた、板の角の一部分が破損していることから見て氷魔法で咄嗟にあの板を作り、それを盾にして俺の炎弾を防いだのだろう。


 とは言っても1発受けただけですでに破損しているし直撃は防げていても、爆発による衝撃は受けているはず。つまりあの余裕の笑みはブラフと見ていい。このまま距離を保って炎弾で攻め続けようと俺が決めた瞬間。 


 パン! アロスは突然両手を勢いよく打ち合わせその音が響く、すると奴の頭上に魔方陣が展開される。そしてその中から直径1メートルくらいはありそうな4つの水の球体が現れ


「いけ」


 アロスの短い命令と共にそれらは猛スピードで俺に向かってきた。



……

 正直現状俺は押されていた。名家のお坊ちゃんはろくに喧嘩なんてしたことないだろうから、最初に天神煉との距離を一気に詰めて肉弾戦に持ち込んで勝つつもりだったが、それはどうやら読まれていて俺の突撃に合わせて打たれた炎弾を肩に受け体制を崩された。


 そこから逆に距離を詰められ蹴りをくらい一度立て直そうと思い下がろうとしたところで2発目の炎弾を撃たれた。咄嗟に氷魔法で作った盾でガードしたがやはり完全には防げきれなかった。


 このまま奴のペースで戦うのはまずい、魔力を一気に消費してしまうが少し派手に行くか。


 パン! 俺はそう決めると両手を合わせて魔力を練り水魔法を発動させる。


「いけ」


 俺の命令通りに魔法は天神煉に向かっていく。奴は咄嗟に足に魔力を込めてジャンプすることで上に逃げて俺の水魔法を回避する。だがこれは俺の読み通りだ。


 俺はもう一度魔力を込めて水魔法を発動させもう1つ水の球体を出し煉に向かって飛ばす。それでもあいつは決闘前から浮かべていた気味の悪いにやけ顔を崩さなかったが、目からは僅かに動揺の色が見えた。


 バシャン! 水魔法は天神煉に直撃し、そのまま地面に叩きつける。これで奴の視界から俺は消えたはずだ。そう判断して俺は一気に勝負を決めるために駆け出した。‘



……

 そんな2人の戦いを少し離れた所から見守る人影が1つあった。


「ちょっと遅れただけなのになんかすごいことになってんな」


 その影に背後から話しかけたのは特別クラス2年生の姫神恭弥ひめがみきょうやだった。彼は紅蓮からの頼みによりここに来ていた。


「ところでそれ何してんの? 大護」


 2人の戦いを観察していた影の正体は大護だった。彼もまた紅蓮の指示によりここに来ていた。


「ああ、紅蓮に言われたんだよ。万が一ドッチボールで1年が3年生を倒した時に決勝で僕たち当たることになるから念のために観察しておけって」


「うわー自分の弟の決闘も利用するとか流石に引くわ。けど紅蓮の弟と戦ってる方の1年の子も中々やるな」


「なんでも紅蓮曰く今年の1年はひょっとしたら歴代最強って言われてる今の3年生に匹敵するかもしれないくらい、素質がある子が集まってるらしいよ」


 今の特別クラス3年生の代は、長い学園の歴史の中でも特に粒ぞろいの生徒が多く集まっていて、彼らを歴代最強の世代と呼ぶ噂は学校外にまで知れ渡っている。


「いやいや、あの化け物だらけの3年の先輩にも負けないって、さすがにそれは過大評価だろ」


 1個下の学年で彼らの実力をよく知る姫神は当然それを否定するが、そこである話を思い出す。


「けどこの間の実習で試験管として行った2年生は、みんな封印魔法がかかった腕輪をあらかじめつけて魔力を50%に押さえられてたとはいえ、殆ど負けたんだってな。負けなかったのは赤城と舞の2人だけだとか」


「そうなんだけど実は赤城は腕輪つけ忘れてたらしいんだよね。だからその後で桐八先生に物凄く怒られてた」


「あいつやっぱバカだろ。けどそうなるとあいつ本気で1年生と戦ったのか?」


「そう、けどその相手の1年は試験時間が終わるまで赤城と戦い続けてたらしいよ」


「2対1とはいえやるな、その1年の名前は?」


「確か片方の1年生は途中から戦いについていけてなかったらしいけど、もう1人の方がすごく強くて頑張ってたって、名前は確か神埼ソウシ」


続く

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