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魔法のある青春  作者: ドル
4月 魔法のあるドッジボール大会
22/103

第22話「実は俺……」

 4月10日水曜日。朝の食堂で俺は人を探していた。


 この時間、食堂を利用するのが寮生だけなので比較的に人は少ないため俺が探している人物を見つけるのにはそう時間はかからなかった。


「いた! 刃ー!」


 俺が刃に声をかけると一緒に座っていたユミとソウシもこっちに気づいた。


「おはよう煉くん」


「おはようユミ、ところで口の周りにご飯つぶついてるぞ」


「ほんと? 教えてくれてありがとう」


 そう言うとユミは片方の手で口元をさすりご飯つぶを探すが当然中々見つからず困ってしまう。


「嘘だよユミ、ご飯つぶなんてついてない。煉、お前もいちいちユミをからかってないで本題に入れ」


「え! 嘘なの?」


 そうだつい、いつもの癖でユミをからかってしまったが俺は刃に話があるんだった。


「実は刃大変なんだ、ドッチボールの大会の第1回戦の相手、3年一般クラスには特別クラスのもと諸列1位の人がいるらしい」


「諸列?」


 俺は極めて真剣に話してるのになぜか刃にはあんまり伝わってない気がする。


「序列な」


「あー! それ! それ! その1位の人」


「なるほどそういうことだったのか、早めに知らせてくれてありがとう。けどその話なら昨日ソウシから聞いたから大丈夫だよ」


「え?」


「『え?』じゃねーよ。その話を大護先輩がしてたとき俺も一緒にいたろ」


 確かに言われてみればそうだったな。なんだいつも落ち着いてる珍しくあの刃が驚くところを見られると思ったんだが。


「けどなんでそんなすごい人が一般クラスに落ちたんだろな」


「ソウシに聞いた後、僕も気になってちょっと調べてみたんだ。どうやら王条先輩は一般クラスに落とされたんじゃなくて自分から望んで一般クラスに落ちたみたいなんだ」


「自分から一般クラスに? そんなことできるのか?」


 特別クラスはこの学園の中でも選ばれた人間だけが入れ、より専門的な技術の伝授や実践経験も学生のうちから積める。本気で魔法使いとして生きていきたいならその特権をみすみす手放すのには何のメリットもないと思うし、学園側もそんなことは許さないはずだ。


「いや普通出来ないはずだけど、王条家は今の魔法界でも強い力をもつ有力名家の1つだからね。家の力を使って結構学校に圧力をかけて無理いって一般クラスになったみたいだよ」


「へー、けど1位だったのにどうして自分から一般クラスになんて」


「詳しいことはわからないけど時期的には王条先輩が同じクラスのある生徒に負けて、始めて序列順位2位になってすぐのことらしいから、それが原因じゃないかって噂されてるらしい。本当かどうかはわからないけど」


 負けて悔しかったから一般クラスに逃げたってことか?


 それだけじゃいまいちピンとこないが、まあその件はこれ以上深く考えても仕方のないことか。


「そういえば王条先輩とは別にもう1人特別クラスから一般クラスになった人がいたよな?」


「宗形先輩のことだね、宗形先輩は王条先輩の護衛だから王条先輩についていく形で一緒に一般クラスに落ちたんだ。宗形先輩の序列順位はいつも中位くらいだったらしいから王条先輩ほどではないけど、相当の実力者だよ」


「それに2人とは別にまだ特別クラスの生徒と同等の実力があるとされる特待生が2人もいる」


 確かドッチボールに参加できるのは1チーム8人だけのはずだ。そのうち半数以上が特別クラスと同等の実力を持っているというならば実質3年の特別クラスを相手するようなものだ。全く考えれば考えるほど


「ワクワクするな」


「え?」


「だって今まで魔法使ったドッチボールなんてやったことなかったし、相手は俺たちより格上な魔法使いの上にどんな戦法で戦ってくるのかもわからない! きっとすげー試合になるってことを考えると、なんか楽しくなってこないか?」


「ははっ! 聞いたか刃? お前も少しはこういう思考を持った方がいいぞ!」


 なぜか俺が話終わった後面白そうに刃の背中を叩きながらそう言うソウシ。


「こいつ昨日の夜から俺にみんなをまとめられるかーとか俺なんかがリーダーで3年生に敵うのかとかずっとそんなとこに頭を抱えてたんだよ。けど聞いたろ刃? これくらいの意気込みでいいんだよ! これはただの学校の行事でスポーツなんだよ」


「おい勝手に話すなよソウシ!!」


 顔を少し赤くして恥ずかしそうな刃。どうやら今のソウシの話は本当のようだ。確かにこいつは昔から少しまじめ過ぎるところがあるからな。


「あんま1人で背負い込むなよ刃、楽しんでいこうぜ」


「わかったよ煉、ありがとう。じゃあ今日からは3年生と戦っても存分に楽しめるように一緒に練習頑張ろう。……あと今の話誰にもしないでくれよ」


「わかった、わかった」


 そう言い俺は刃たちのもとを去り自分の朝食を食堂から受け取った後、いつも通り加賀斗、明日香、魔昼の4人で食事をするときにさっきの刃の話をした。



……

 放課後、刃に呼ばれて俺は第二体育館に来ていた。


 練習はこの第二体育館とグラウンドで行えるようだが、グラウンドでは練習内容が校舎からでも全て筒抜けになってしまうため、本格的な練習は第二体育館でやるのが基本だそうだ。


 第二体育館は魔法の実戦授業や、放課後などに自由に鍛錬をするスペースとして作られているため、普通の体育館のようなバスケットゴールやラインなどは引かれておらずただ魔法で頑丈に作られた床と壁のあるだだっ広い空間で、半分は自主練用のスペース、もう半分は模擬戦用の対戦ブースとなっている。俺達もC級魔導士の資格を取得すれば休日や放課後に自由にここを利用できるようになるらしい。


 ちなみにバスケットゴールなど普通の体育をやる用の設備は全て第一体育館にある。大会当日まで体育館が使える日は格チームごとに割りふられているが、俺たちのクラスは1年生という点を考慮し他のチームより多目にもらえているらしい。


「けどなんで俺たちだけなんだ?」


 体育館に呼ばれたのはなぜか俺と加賀斗の2人だけだった。呼びつけた刃本人もまだ来ていない。


「ひょっとしたらこれは刃の奴、相手の優秀な選手を試合前に闇討ちしろとかそういう怪しい取引を俺たちに持ちかける気なのかもしれねえ」


「あいつ、いつもはあんな人の良さそうなふりしていて意外と勝つためなら手段を選ばない極悪非道なタイプたったのか、見直したぜ」


「いやいや、そんなことしないから」


 俺たちがくだらない話をしている間に刃が体育館に到着した。


「騙されるな煉、きっとこうやって油断させておいて真実を知った俺たちを闇に消すつもりだ」


「とんでもない外道だな見損なったぜ刃」


「いやだから違うって!」


「やれやれ、やっぱり他の奴に頼んだ方がよかったんじゃないか?」


 そう言いながら現れたソウシは右手でボールを抱えていた。恐らくあれがドッチボール用のボールなのだろう。


「なんだこの4人でドッチボールでもすんのか?」


「そうだよ」


『……は?』


 冗談で言ったつもりの言葉をソウシに肯定されてしまい、思わず俺と加賀斗は声を合わせて聞き返す。


「ちょうど内野に1人、外野に1人ずつ、つけば4人でできるだろう」


『何か問題あるか?』と言わんばかりの顔で言うソウシだが俺と加賀斗は状況を理解できてない。


「大会に備えてまずは実戦をするのはわかるが、なんで俺たち4人だけなんだ?」


「魔昼と刃で話し合って実際に大会に出る選手候補者のめぼしはついてんだろ? 練習するならそいつら全員呼ぶべきだろ?」


「今日お前たち2人しか呼ばなかったのは簡単に言えば刃に教えてほしいことがあるからだ」


「何を教えろってんだよ?」


「そりゃもちろんドッチボールだよ」


『は?』


 本日2回目の俺と加賀斗のハモりが決まると、刃は少し恥ずかしそうに頭をかきながら俺たちに言った。


「実は俺……ドッチボールしたことないんだ」


続く

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