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魔法のある青春  作者: ドル
4月 魔法のあるドッジボール大会
19/103

第19話「不合格」

「お! きたきた、おつかれー」


 大悟さんに勝った俺達は始めに説明を受けた場所に戻り、そこで先に戻っていた明日香と魔昼に迎えられた。


「おう、おつかれ」


「お疲れ様です!」


 挨拶を返しながら周りを見てみると、2人のペア以外にもすでに何組かのペアは戻ってきてるようだった。まあ俺達は戦闘時間こそ、そんなに長くなかったがその前の作戦会議、というか臼井に作戦を理解させるのにかなり時間を使ったから遅い方なのは当然か。


「試験は大丈夫だったの?」


「煉さんは凄いんですよ! 煉さんの作戦通りに動いたら全部その通りになって!」


 俺より先に臼井が口を開き、まるで人を天才策士のように宣伝してくれる。だがさすがの俺でもここまで目の前で絶賛されると少しに照れくさくなる。


「まあ、確かに考えたのは俺だけど実際活躍してくれたのは臼井の方だろ」


「いえいえ私なんてちょっと大悟先輩に奇襲を仕掛けてそのまま止めを刺しただけですよ!」


 おい! そこまで詳細に話したら俺が本当に特に何も活躍してないのがバレるだろう!


 きっと魔昼の奴がすかさずそのことをつついてくると思いその顔を伺ったが、なぜか彼女は不機嫌そうな顔をしてこちらを睨んでいた。


「桃子ちゃんにちょっと褒められたくらいでだらしなく鼻の下伸ばしてんじゃないわよ」


「は?」


 全く予想外な魔昼の発言に俺は困惑し、思わず間抜けな声で聞き返してしまう。


「そういえば魔昼さん達は試験どうだったんですか?」


 しかし桃子がここで話題を変えたため、その言葉の真意を聞き出すことはなかった。


「まあ久しぶりの実戦で少し緊張したけど、ペアだったアロスくんのサポートのおかげでなんとかなったわ。先輩からちゃんと参ったとれたし。アロス君ってとーっても頼りになるのよ」


 なぜか魔昼は俺の方をまじまじと見ながら嫌味っぽくそう言う。というか魔昼とペアを組んでいたのはアロスだったのか。


 蘭アロス、迅雷と陣の言ってた幼馴染。殆ど面識はないが一応顔くらいは思い浮かぶ。けど確かアロスは俺や魔昼みたいないわゆる高魔のことはあんまり好きじゃないはずじゃ……そんな思考が頭をよぎったとき。


「そんな俺なんて大したことないよ、最後だってきめたのは魔昼さんだったし」


 いつの間にか俺たちの近くまで来ていたアロスが声をかけてくる。


「あれはたまたま私の雷魔法の方が決め手に向いてただけよ。それにそもそもあそこまで追いつめてくれたのはアロス君のおかげじゃない……っとそうだ紹介するわ今回の試験でペアになったアロス君よ」


 魔昼から紹介されると俺たちに向かって軽く頭をさげるアロス。


「君は煉くんだね、迅雷からよく聞いてるよ」


 比較的丁寧にあいさつをしてくるアロス、なんか聞いてたイメージと違う。どう見てもただの感じのいい奴だ。


「おう、こっちも迅雷からお前のことは聞いてるぜ、よかったらお前も今度迅雷と一緒に俺の部屋に遊びに来いよ」


 そのとき、多分見えてたのは真正面で向き合ってた俺だけだろうが一瞬アロスの表情が固まったようなきがした。


『どうかしたか?』 


 俺が俺がそう聞こうかと思っていると



「やめといたほうがいいわよこいつと一緒にいても疲れるだけなんだから」


 明日香のいつもの軽口が先に発せられた、こうなったらもうほぼ反射的に体は動く。


「どういう意味だよ!」


「事実を言ったまでよ」


「いーやただの嫌がらせの嘘だね!!」


 売り言葉に買い言葉でこのままいつものように不毛な言い合いが始まりそうになったが


「なんだ賑やかだな」


 加賀斗と迅雷のペアが帰ってきたことによりそれは流れてしまう。


「おつかれー」


「おつかれ、ってあれ? なんでアロスもいんだ?」


 俺たちとアロスが一緒にいるのはやっぱり迅雷にとっても意外だったらしい。


「今ちょうどみんなでお互いの試験の手ごたえを話してて、俺は魔昼さんとペアだったからそれに混ぜさせてもらってたんだ」


「へーそうだったのか」


 その時、迅雷の横にいた加賀斗はわずかに目を細めたように見えた。まるでアロスのことを強く警戒するような様子。


 なぜそんな態度を今といったか、少し気になったがさすがにこのタイミングで聞くわけにもいかないので、そのことは一旦俺の胸の中に閉まっておくことにした。



……

 数十分後。


「お前ら一旦集まれ」


 あれからさらに何組かのペアも戻ってきたタイミングで桐八からの指示が飛ぶ。その指示通りに俺たちは最初に試験の説明をされた場所で出席番号順に座っていくが。


「あれ? スグルがいねーぞ」 


 いつも俺と魔昼の間にいるはずの出席番号4番の神崎スグルの姿がないことに気づく。


「せんせー私の前のマナちゃんもいませーん」


 他にも声が上がり始め4人、つまり2ペアがまだ試験から戻っていないことが判明する


「あーそいつらは時間内に参ったといわせられなかったペアだ、担当の2年生に言われてそろそろここに戻ってくるはずだ」


 桐八の言う通りすぐにスグルと陣、一花とマヤの2組のペアが帰ってくる。


「まさかお前が時間内にクリアできないとはな」


「最後の一押しに時間が足りなかっただけで実力自体はほぼ互角だったわ」


 小さい時からの付き合いでスグルの実力はよく知っている。だからこれはきっと本当のことなんだろう。けど陣の実力は知らないがスグルともう1人を相手に互角にやるとはやっぱり2年生も中々やる。


「さてと、これで全員戻ってきたな」


 そこまで言うと桐八は俺たちの方を見る。桐八は基本的に目付きは悪いイメージだったが、今回はいつもよりもさらに数段悪い目付きで俺たちを見ている気がする。


「では残念なことに合格評価に到達していないペアをこれから発表する。今回の試験で不合格となったペアは2組だ」


 2組、当然だが時間内に試験管から参ったと言わせられず戻ってきた2組のことが頭の中をよぎる。


「まず1組目は一花、マヤのペア」


『やっぱり』


 あまりにも予想通りな結果のため、そんな空気が俺たちの中に生まれる。そしてみんな無意識のうちに時間内に戻ってこれなかったもう1組のペア、陣とスグルに目がいく。


 だが次の桐八の一言でその空気は一変する。


「もう1組はアロス、魔昼のペア」


「は?」


 俺含め何人かから困惑する言葉がこぼれる。そんな中で誰よりも早く行動したのは


「すいませんがその評価は納得できません」


 当事者の1人であるアロスであった。


「なぜそう思った?」


 勝手に立ち上がり講義をしてきたアロスに対して『座れ』とも言わずに桐八は淡々とその質問に対して質問で返す。


「僕達のペアはちゃんと試験官だった先輩を参ったと言わせてクラスの中でも2番目にこの場所に戻ってきました。なのに合格評価に達していないのはおかしいと思います」

 

 恐らく今ここにいる桐八以外の人間全員が考えていることをそのまま口に出すアロス。だがそんな正論を突き付けられても、桐八の厳しい表情は崩れない。


「合格評価……どうやらお前たちは根本的なところから今回の試験を勘違いしているようだな」


 桐八の発言をうけ直接抗議をしたアロスを含めクラス全員がその発言の意味を理解できず黙り込んでしまう。


「まず俺はお前たちに2年生に勝てたら合格などと一言も言っていない。勿論そこも重要な評価のポイントではあるがもう1つ、それよりも大切な評価のポイントが今回の試験にはあった」


「そんな話聞かされてないんですが」


 アロスと同じく合格評価に達していないと言われた一花がこの発言に噛みつく。


「確かにその重要性はあまり触れなかったが、俺はこの実技を始める前にしっかり言ったはずだ『互いのパートナーと100%の力をだしあい協力して試験には臨め』と」


 確かに、言われて見ればつい数時間前、ここで試験内容の説明の最後に桐八はそんなことを言ってた気がする。


「そろそろなぜお前たちが合格評価に満たないか教えよう。この2組のペアのみが今回の試験においてペアの片方、もしくは両者が自分の使える魔法の一部を隠したまま試験を終えたからだ」


「勿論それは今後の試験の直接対決に向けての戦略だったり、家の事情だったり、理由があってのことかもしれないが、お前たちは将来この国のために重要な任務を受持つほどの魔法使いになる人間だ。そんな任務の時たとえどんな相手だろうとチームを組んだ仲間を信頼しあい任務に望まなければならない。なぜなら実際の任務において1人の魔法使いにできることはたかが知れている。だからチームで協力する必要があるのだが、今言った2組はまだそのことを理解していないようだから今ここでそれを修正しろ。もっとプロの魔法使いになるという自覚を持て。それができないようなら俺のクラスからは出ていてもらう」


 桐八の厳しい言葉に対してそれまで反論していたアロスも一花も返す言葉を失ってしまう。


「さて合格評価に達していないペアには補習を行ってもらう。その補修でも評価を挽回できないようなら、容赦なくこのクラスから消えてもらうから真剣に取り組むよう。補修の内容は今からこの場で発表する。そのため他の生徒は先に僚に戻って今日はもう休んでもらって構わない、また明日からは元通りの授業を教室で行うから遅刻はするな。以上補習対象者以外は解散」


 こうして俺たちの始めての魔法実習は、桐八のもっともな説教で幕を閉じた


続く

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