楓と湊 3話
恋、辞書で意味を調べると、特定の異性を強く慕うこと。
切なくなるほど好きになること。また,その気持ち。
そんな気持ち、中学校のときに消した。絶対に恋なんかしたくない。いつだって私は分かってる。好きな人が私を好きになってくれることなんてないのだから。
毎週金曜日、神山楓はバスケ部の練習のために隣にある男子校、聖和学園高校にいく。
今日も金曜日、楓は走って向かっていた。
掃除当番を終わらせて、すでに4時だった。練習時間は6時まで借りられる時間がそれまでなのだ。早く行かなくては、練習できなくなる。
夏で走るともっと暑くなる。
「おくれました!」
楓がそういって体育館にはいると、休憩をしていた。時計は4時半をさしていた。楓の声が綺麗に響く。聖和のバスケ部のメンバーもこちらを見る。
その中にひときわ目立つ人がいる。
奥出湊。この学校で1番のカッコイイと有名な人なんじゃないだろうか。
そんな彼と一番仲が良くなったのが、楓だ。
楓は目が合うと、湊は優しく笑って手を振った。他の人とは目をあっても自然に笑ってあいさつできるのだが…。
しかし、あのお好み焼きの日から、湊の気持ちに気づきてしまった。だが、湊はいつもどおりの様子だった。視線を合わさずに手を振る。
「楓は良いなぁ。男の子とすぐ友達になれて」
汗だくな楓に同じ学年の友達がそう言った。
楓はスポーツドリンクを飲んでいた。
「皆、あたしを女だと見てないからね?」
そう、この空間にいる男子は、自分を女だと思っている人はいないだろう。楓は鞄を探るとタオルがないことに気がついた。教室に置いてきてしまったらしい。そして、自分のTシャツで汗を拭く。顔の汗を拭くと、下着がちらつく。楓は気にするそぶりもなかった。
男子の視線は楓に集まる。湊も楓を見ていた。下着から胸がみえそうになり、すぐにタオルを持って楓の前に行く。
「お前、やめろよ」
「え?なんかした?」
キョトンとした顔をしている。
「ほら、タオル」
湊は、楓の頭にタオルをかぶせた。楓は?を浮かべながらもありがとうと言った。そして、持っていたボールを、湊に渡して誘う。
「ねぇ、練習しよ」
二人でプチゲームだ。楓は湊と打倒に渡り合えるだけの実力がある。しかし、あのお好み焼きの日から少しだけぎくしゃくしている。
楓はあの日少しだけ本心を見せてくれたと湊はそんな気がしていた。湊は楓に恋をした。それは、彼女と仲良くなる前からだった。
バスケを純粋に楽しんで、いつも笑顔でいる元気な子、たまに見せる切ない顔がたまらなく気になった。今まで付き合ってきた女の子は、自分から告白したことがなく。流れで付き合うことが多かったし、本気の恋も知らなかった。しかし、楓に対してのこの感情は、恋だと話してみて確信した。
もう恋はしないという彼女の切なそうな表情は、忘れられなかった。
練習をしながら、楽しそうにゴールを決める楓を見た。
楓は綺麗な弧を描いて入るボールを見て満足そうであった。そして、湊とハイタッチをする。
「やった!」
「ほんと、上手いな。」
「…うん」
楓はまた切なそうに笑っていた。なにか思い出したかのように、いつも、ふとそんな顔を見せる。この表情がずっと気になっていた。
「なぁ、楓…」
そう切り出す前に、練習が始まるから戻れという指示があり、湊は男子のコートに戻った。楓たちも練習に戻った。お互いのコートで練習をする。他の女子のなかで楓は一際目立った。身長がそこまで高いわけじゃない。しかし、とても華麗なプレイを見せていた。湊はそんな楓を横目で見ていた。
ラストの練習が終わると楓はすぐに着替えて聖和の門の前で瑠奈と待ち合わせをしていた。
今日は2人で新しくできたパスタ屋さんに食べに行くのだ。クラスで話し合い。二人が選出された。先に潜入捜査という形で行き、情報を伝えるという形をとっていた。楓は着替えが終わると、1人体育館の外でハンドリングをしている透に話しかけた。
「透、きいてー」
「なに?」
透からすっと一瞬でボールを奪う。
「今日は、これから瑠奈とデートするから」
楓はにっと笑った。瑠奈は透の恋人で楓のクラスメイトでもある。
透と瑠奈が交際するまでの経緯は、楓はその経過は知っている。
「ふーん」
ハンドリングをまたし始める。
「なにその反応、つれないなぁ」
楓は不満げだった。あきれ顔で透はハンドリングをやめた。
「何言ってんの。瑠奈が楓とデートしたって、浮気にはならない」
透はそういうと楓の頭にでこピンをする。
「いたっ、一緒に行かないって誘おうと思ったのに!!」
「本当?じゃぁ、湊もよんでいい?」
透は嬉しそうな表情を浮かべた。付き合ってるカップルはわりと周りにたくさんいるが、透ほど溺愛してる彼氏はみたことがない。嬉しそうに、ボールをさっさと片付けていた。
「もちろん」
楓は、即答した。透は湊を呼びに行くために鞄を楓に預け、更衣室に行く。
体育館の横にある部室で、湊は着替えていた。透が更衣室を開ける。
「湊、今日なんか用ある?」
シャツのボタンを閉じながら、湊は横目で透を見た。
「ないけど?」
あまり機嫌が良い感じではなかった。
「楓が新しいパスタ屋食べに行こうだって、僕と瑠奈も一緒だけど行く?」
「行く」
即答し鞄を持ち上げる。
「湊、なんか機嫌悪い?」
「別に」
透は、今日の楓のことを思い浮かべた
「告白すればいいのに」
「まだしない。あいつ好きな人いるんだよ」
「え?!」
「わかんねーけど、だから片思いなんだよ」
「…まさか、男にも惚れられる湊を好きにならない子がいるなんてね」
「楓は、見向きなんてしないけどな。俺、今までの彼女もそれなりに好きなつもりだったのに、こんなの初めてだ」
「何いってんの?湊は楓が初恋でしょ。だって、今までそこまで好きそうじゃなかったもん」
「…まじ?」
湊は、びっくりしたようにそういった。確かに今までは告白されてなんとなく付き合ってみることが多かった。それなりに好きだと思っていたし、大切にしていた。こんなにばっさり言われるとは思っていなかった。透と2人で学校を出ると、楓と瑠奈はすでに門の前で待っていてくれていた。4人で集まると、透は瑠奈の隣をがっちりとキープし、店に向かった。カップルを、後ろで湊と楓は見ていた。前の2人は手をつないでいた。瑠奈が後ろを気にするおかげで、二人の世界に入り切れてはいない。透は、気にしなくていいのにとふてくされていた。いつものことで、楓も湊も慣れている。
「…瑠奈、綺麗になったなー」
楓はしみじみそう言った。透のおかげで、瑠奈はますます可愛くなった。
「瑠奈ちゃんはもともと可愛いけど?」
「ほー、?でも、瑠奈は透のものだからね?」
からかうような顔をして楓は湊を見上げた。
「一般論だろ。それより、お前だって好きなやついるだろ?」
踏み切った話題を出してみた。これで自分がどんな感情になるのか、だいたい想像は出来た。楓は一瞬で切ない顔をした。いつもふと見せる表情と同じだ。そして、苦笑しながら答えた。
「……いるよ。湊はだませないね」
その一言は、湊にとって心をさされるような痛みを伴う気持ちにさせた。しかし、楓の気持ちを知っておかなければならないような気がして続ける。
「…誰?」
「私の、かわいいお姉ちゃんの旦那さん」
やっと、楓のことが本当にわかったような気がした。楓はいつだって、ガサツに豪快にふるまっているが、きっとわざとなのだろう。
そうやっていないと、自分がむなしくなるからだ。湊はそう思うと、楓の気持ちを想い心が痛くなった。楓は堪忍したように続けた
「……あき兄、堺明俊、知ってるでしょ?プロバスケットプレイヤーなの。
私の幼馴染で、7歳上で、いつもあがめてた。あき兄は、いつもあたしのヒーローで、でもずっとお姉ちゃんの彼氏だった。報われないって知ってたんだ。でもずっと大好きなの。今でも…」
「でも…堺さんて「そうだよ。奥さんは私のお姉ちゃんなの。お姉ちゃん、ほんとに可愛いんだよ。バスケしたことないの。ずっと可愛らしく育ってきたんだ。あたしなんて、こんななのにね、もうやんなっちゃうよね。ほんと、今でもラブラブなんだからさ、参っちゃうよね」
楓は困ったように笑っていた。これを打ち明けてくれたのは、たぶん近い人だと思ってくれたからだろう。湊は楓の声を聞いて切なくなった。。楓は一途にずっと一人を思ってきたのに、自分は遊びで楽しむだけの恋愛だったのだと思い知らされて恥ずかしくなった。なんとなくで付き合ってきたことを反省する。いつも明るい笑顔の楓が、今日は一段と切ない顔をしていた。
「ごめん。なんか」
「いや、あたしこそ、聞いてくれてありがと。これ話したの、湊だけだよ」
「…なんで?」
「湊が聞いてくれそうな雰囲気だったからだよ。あ、これみんなには内緒ね!わたし結構隠すのは上手なんだよね〜。変に心配かけたくないからさ」
楓は明るく笑って見せた。いつもの顔に戻っていふ。そして、楓は瑠奈に後ろから話しかけ、2人の会話に加わる。湊は楓の思いに切なくなった。パスタ屋につくと、楓はいつもの楓に戻っていた。食べている最中に透は湊の様子がおかしいのを察していた。
「ここはオススメな感じだね~」
「ね、写真もとったし、潜入捜査成功だね」
楓と瑠奈は写メを取りながらウキウキしていた。こういうところは女の子だ。
「やっぱパスタは腹がふくれねーわ」
「湊、麺の量倍にしたくせに?」
「こちとら育ち盛りの健全な高校生男子だぞ」
「僕はまた瑠奈と行きたいな」
「またこんどね」
皆で席をたち寮に戻る。女子会二人を送り届けてから、湊と透も寮に戻る。透はそこで湊に問いかけた。
「なんか話したの?」
「あ、あぁ…秘密」
「瑠奈が、行き道で話してる君たちをみて、楓はふと悲しそうな顔をするから、
放っておけないって言ってた。まるで、前の自分を見てるみたいなんだって」
「…そうだな。瑠奈ちゃんと楓、歴は違うけど境遇は似てるな」
瑠奈が透と付き合う前に泣いていたあの日々、楓は透に少し冷たかった。
透はあまり気にしてはいないようだが、楓は瑠奈と自分を重ねていたようだ。
「そうなの?」
透は不思議そうに尋ねる。
「お前は知らなくていいんだよ。瑠奈ちゃんのこと大切にしろよ」
湊は透の背中をばしっとたたいた。
忘れたはずの恋が、また戻ってきた。
「なぁ、湊。今日から新しいコーチくるらしいぞ」
教室で、同じ部の友達に話しかけられた。朝は低血圧のため湊は機嫌が悪い。起こされて、むすっとしたまま、登校するのが毎日のことだった。
「だれ?」
「なんと!!プロの堺さん!!おまえすっげー?好きな選手だろ?」
堺明俊、24歳、プロのバスケットボールプレイヤーである。海外で活躍しているが、怪我で一度戻ってきたのだ。湊は小学生のときから、彼の事を知っていた。とても素晴らしいプレイヤーだ。ポジションも自分と同じで、目指すのはいつも彼だった。もとから彼の事は尊敬していたので、湊は嬉しかった。
これで、練習の幅も広がるし、スキルもアップできる。しかし、堺敏明は、尊敬するだけじゃなくなっていた。楓の想い人で、それは、自分にとって絶対に勝てない存在でもあった。だが今は、嬉しい気持ちで満たされる。
「まじで?!今日から?」
湊は顔を輝かせた。
「お前、テンション変わり過ぎだろ!まぁ、嬉しいよな。楽しみになっただろ?」
「っつーかサボって、今から練習したい」
湊は居てもたってもいられないくらいだった。授業も手につかない。お昼もすぐに食べ、何人かと外にあるゴールでゲームをしていた。どんな人なのだろう。目の前でプレーをみるのは、小学生以来だ。午後の授業も終わると、湊はすぐに体育館へ向かった。誰よりも先につき、準備をする。
「おー、偉いな」
湊は一人で練習をしていると、声をかけられた。声のする方を振り返ると、そこに立っていたのは、尊敬する堺明俊だった。自分よりも10㎝は高い人は、はじめてみた。湊はまだ184㎝、プロならもっと身長が必要になるいかつい顔をして、凛々しい顔つきは、男女ともに人気がある。それにしても雰囲気だけで格好良い。
「あ、初めまして!!!奥出湊といいます!!」
深々とお辞儀をした。
「知ってる。楓がよく君の話しているから」
笑顔が爽やかだった。そして、明俊はボールを取りだし湊にパスをした。
「1on1してみる?」
そう誘われて、湊は顔を輝かせた。
「是非!!」
プロと練習をする機会なんて、今しかないだろう。湊は真剣に立ち向かうが、なかなか上手くボールがとれない。しばらくすると、部員が集まってきた。湊がけちょんけちょんにされている姿とプロの動きを見て、圧倒されている。エースの湊でさえ、こんな状況で、自分たちはどうなるのかわからない。
「ははっ、奥出湊、楓が絶賛するほどたいした男じゃないな」
そういって、明俊は綺麗にシュートを決めた。湊は息をあげていた。なんて俊敏な動きなんだろう。自分よりも背が高いし動きも大きい、これが世界を知ってる人か。
ついていけなくなる。まるで大きくなった楓だ。そうか、楓はこの人に仕込まれたからあんなに上手いのかと納得する。皆が圧倒される中、体育館に声が響く。
「あき兄!!!」
楓の声だ。今日はあっちで部活のはずだ。
楓は嬉しそうに明俊に近づき抱きついた。湊はその可愛らしい表情に驚く。恋してる女の子の顔だった。ボールを持っている明俊から、簡単にボールを奪う楓はとても生き生きしていた。透が2人を見ている湊に近づく。そして肩を叩いた。
「え、楓の知り合いなの?」
「あぁ」
湊はそういった。大した男じゃないな。そう言われてしまったことにショックを受ける。
楽しそうに話す楓は本当に可愛い女の子だった。楓はやっと湊に気が付いた。
「あ!湊!」
楓は湊のもとへ行き、両手をつかんだ。
「あき兄!!この人!奥出湊!凄いんだよ!カッコイイプレーするの!」
楓はうきうきしながらそう言った。しかし、湊は浮かない顔をしていた。
「やめろよ!!!」
さっき1on1をしたときに、大したことないと言われてしまった。湊は恥ずかしくなって、そういって手をふりはらった。楓は?を浮かべていた。そのまま続ける
「あき兄が磨いてあげて!ほんと、かっこいいんだから!」
楓は熱弁していた。
「そのつもり、さぁお前は出てった出てった。俺はこいつらのためにきたの。
毎週金曜に、お前のとこも来てるって、紅葉がいってたし」
「そっか、明葉は元気?半年くらい会ってなくて寂しい」
「元気だよ。あいつ、楓大好きだから、また遊んでやって」
楓は明るく笑っていた。そして、嵐のように去っていこうとする。
「じゃぁ、頑張ってね。あたし、優衣待たせてるんだ」
楓はそういうと、体育館から去る。
「じゃぁね、湊頑張ってね」
楓は笑顔でそういうと、体育館から走って出ていく。湊はそれを見ていた。練習が開始され、顧問から明俊を紹介される。明俊は、顧問の高校の同級生で、話を持ちかけられたらしい。明俊は自己紹介をし、さっそく練習を始める。プロによる指導は、的確でしかも為になる。皆とても集中していた。あっという間に時間がたち練習が終わると、湊は残って練習をしていた。もう20時を過ぎようとしている。
「えらいねー、お前」
明俊が湊に話しかけた。
「だって、大した男じゃないって」
見なとはふてくされたように呟いた。
「あぁ、あれ?だたの嫉妬。楓の言うとおり、お前は凄いよ。
あいつの目は節穴じゃないから安心にな」
素直にそう言う明俊に、湊は拍子抜けした。さっきまでの怒りはなんだったのか。ゴールしたのボールを取って、片付けにはいる。
「っていうか、帰らなくていいんですか?」
「バスケしだすと時間忘れちゃってさ、いつもそうなんだよね。帰んなくちゃね」
ボールをしまってカバンからスマホをだし、バスの時間を検索していた。
「…楓と知り合いなんですか?」
ボールを片付けて、モップがけをはじめる。
「幼馴染だよ。楓は俺にしごかれてきたから、男子顔負けのレベルだろ?」
腕時計をみて時間を確認している。モップがおわり片付けるとカバンを背負った。
「で、お前は楓のこと好きなんだよな?」
図星をつかれて、湊は吃驚した。
「…なんで?」
「見てたらわかるだろ。昔っから、あいつはひそかに想われるんだよな。あいつのまわりってかなりカッコイイやつが多くてさ、なのに楓はいっつも興味なくて、一緒にバスケするだけのただの友達って感じなんだよな。もったいねー」
明俊は湊を上からしたまでジーッとみた。
「…俺が、手助けしてやろうか?お前なら申し分ない気がする?ちなみに、勉強は?」
「いいんですか?!一応三位キープです」
「まじか、すげーな。俺なんて英語ばっか勉強してたわ。まぁいいや。
義妹のためだからな。一肌脱ぐわ」
「ありがとうございます!!」
湊はお辞儀をした。
良い時間になってしまう。湊は走って寮に戻り夕飯を食べる。すると、友達が数人来た。
同室の歩夢もいる。
「練習どうだったんだよ?」
同じクラスの友達である、泰雅が食べている湊の前で肘をついて聞いた。
「楽しかったよ」
「新しく来た人、楓ちゃんの義兄なんだって?」
泰雅に言われ、湊は大きく口にいれたご飯を食べながら答えた。
「あぁ、そうだよ。俺の応援してくれるんだってさ」
一緒にいた透は納得していない顔をしていた。
「…へー、湊はそれでいいの?」
腑に落ちていない透は、たぶん思うことがあるのだろう。
そんなことでいいのかと訴えているが、自分はなりふり構ってる余裕はない。
「いいよ。だって、あいつは進まなくちゃいけないんだ。
こんな気持ちになるの初めてなんだよ」
湊は真剣にそういうと、食べ終わり食器を片づける。
「女にはいままで無頓着なやつなのにな」
湊は今まで彼女は何人も出来ていた。モテないわけがない。
毎回、告白されては付き合ってきていた。
性格もよくて、勉強もできて、見た目もいい。好かれないはずがない。
しかし、何よりもバスケが好きで、部活に熱中する。
だから、彼女たちは離れていった。それに湊が気にしたり、後ろ髪をひかれる様子は全くなかった。だから、別れる回数も多かった。
そんな湊が初めて自分から好きになった。しかも選んだ相手は一筋縄じゃいかない女の子だ。
湊は食堂から出て行った。その様子を、湊のところに集まってきたメンバーが話す。
「あいつを狙っている可愛いヤツなんていっぱいいるじゃん」
泰雅がそういて、ため息をつく。
「そういうんじゃないだろ。初めてなんじゃない?人を好きになったのが」
透が食事を終わらせて、手を合わせながら言った。
「はぁ?彼女いたことあるじゃん?」
「でも、湊から好きになったことないだろ。だって、あいつはバスケが恋人って感じじゃん」
「そう?でも、前の彼女もその前も超かわいかったけどなぁ。
湊も面食いだと思ってたけど、楓ちゃんのこと好きとか意外だわ」
「俺は応援するよ。湊のこと。まぁかなり大変だと思うけど」
透はそういった。
「俺もべつに悪いって言ってるわけじゃないんだけど・・・・
まぁ、楽しませてもらうわ」
泰雅はそういうと立ち上がって、食堂から出て行った。
湊は、部屋でバスケットボールをいじっていると、歩夢が部屋に戻ってきた。
「おかえり」
湊は気が付いてそういうと、歩夢はそのまま窓をあけた。
秋の肌寒い空気が流れ込む。沈黙の中、歩夢はひとこと言った。
「俺も応援する」
「…は??」
湊はボールを置いて、歩夢を見た。
臥雲歩夢、同室であまりしゃべらないが、優しい性格をしている。
中学から付き合っている彼女がいる。
歩夢は192あるが、彼女は145しかない。いわゆるでこぼこカップルらしい。
巷では有名である。中学2年からもう4年目になる。
「優衣の友達なんだろ」
「あー、はいはい。そういえば、お前の彼女よく楓と一緒にいるよな」
「仲良しだからね」
「へー、そっか」
湊はベットに横たわってそういった。今日はもう眠りつくことにしよう。
そう思い目を瞑った。




